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ショートショート12月~3回目

0/1理論(ゼロイチリロン)

作者: たかさば

 ……人の歴史に、数値あり。


 有るものを数える。

 有るものを数字で表す。


 数字という考え方は、人を発展させた。


 数を使い、物質を管理する。

 数を使い、生活に利用する。


 数字を使うための、計算という技術が生まれた。


 数字を使い、予測をする。

 数字を使い、答を出す。


 数字を使う上で、人は足りないものに気付いた。


 数字は、有るから使うものである。

 数字は、無いものには使えない。


 無いものを表す数字がない。


 無いものがあれば、有るものと比べることができる。

 無いものが有れば、有るものが無くなることがわかる。


 ないものをあらわす、0が生まれた。


 人にとって、0の発見は偉大であった。

 人にとって、0の発見は分岐点であった。


 0を使い、人はあらゆる事象を計算した。


 有るものが、0になるまでの過程。

 有るものを、0にするための方法。


 人は、0に傾倒した。


 有るものとないものが、人を夢中にさせた。

 有るものと無いものが、人を育てた。


 人は、0なくしてはいられなくなった。


 有るものと無いものが、人に制約をかけた。

 有るものと無いものが、人の未知を阻んだ。


 0は、可能性をも無いものにしたのだ。


 有るものと無いものがある、その考え方に囚われた。

 有るものと無いものが有る、その考えのもと答えを出した。


 0を使うことで、可能性を無にしている。


 無いという思考は、宇宙にそぐわない。

 無いという思考が、宇宙との関わりを削ぐ。


 宇宙には、すべてが存在している。


 あるもの、ないもの、すべてが存在している。

 宇宙で発生した事象はすべてあるものである。


 ゼロという考え方は、宇宙においては戯言だ。


 無いという考え方で、有るものを見ようとしても見えまい。

 無いという判断ありきの計算式を使っているうちは…見えてこないだろう。


 0を使って有るものを判断しているうちは、宇宙へは進出できまい。


 数にこだわる、人ならではのさだめなのか。

 肉体という限られた器を持つ、人ならではの宿命なのか。


 人の生み出した数字という仕組みだけで判断しているうちは、宇宙を理解できまい。


 人は、未知を知るための心構えができていないのだ。

 人は、未知を知るうえで不要なものを手放せないのだ。


 人は、自ら枷にしているものに気がつけない。


 真に、遺憾である。

 実に、残念でならない。


 宇宙で発生する前の事象は、無いものではないのだ。

 まだ発生していない事象は、まだ発生していないだけなのだ。


 宇宙において、発生することは在ることである。

 新しく発生することは、宇宙ではすべて受け入れられる。


 ……人が、0を手放す日もいつか発生する。


【可能性はゼロではない】・・・いい言葉だ。


 だがしかし、私は0という数字を使っていることに不満を覚えるのである。


 長く人を研究した結果、私もまた0に囚われ始めたのかも、知れない。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 久しぶりに数の世界へ [気になる点] 何かやりますかねえ。と言いながらなかなか書けない [一言] 卒論で0と1を捨てたのは良い思い出
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