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第八話 発覚③

「……は?」


 アンネが、呆然とした声をもらした。それはボクも同じで、思わず動きを止めてしまったくらいだ。扉の向こうにいるボクや、アンネにはお構いなしに、テレーゼは続ける。


「アンタもう三十超えたオバサンじゃない。それなのに、男ひっかけて遊んで、自分が一番ってツラしてる。馬鹿みたい。腐って死んじまえ、クソババア」


 テレーゼは、人と接することを極端に避けているような素振りをとることが多い。けれどもこの瞬間、テレーゼは明らかに、アンネを罵倒した。


 アンネも酷かったとはいえ、テレーゼも言い過ぎだ。けれどもボクは、「よく言い返した」と、テレーゼを褒めてあげたくなってしまった。最悪だ……。


 自己嫌悪に陥っていると、パチンッ!! という乾いた音が耳の奥に張りついた。次いで聞こえてくるのは、


「ッざけんじゃあないわよ! 調子に乗んな!!」


 という、アンネの怒号。扉越しでも分かる、アンネはテレーゼを叩いた。そこまでしても怒りが収まらないらしいアンネは、声を荒げて言い放つ。


「よほど痛い目みたいのかしら。いいのよ、アンタ如き、適当に殺したってバレやしないわ。連続殺人犯のせいになるってんだから好都合よ!」


 それに負けじと、テレーゼも言い返す。


「ならやればいい。ルッツを殺した時みたいに、醜いツラを晒してやってみろ!」


「誰が醜いですって!? 見てないくせに! 第一、あの男が悪いのよ! このアタシが結婚してやったんだから、アタシの言うことを黙って聞いていればよかったのに! あれもダメ、これもダメって、口煩く説教垂れるから!」


「だからエルマーに乗り換えたっていうの?」


「そうよ。エルマーが話の分かる子で助かったわ。ちょっと話を誇張しただけで、ルッツを悪者に仕立てあげてくれたんだもの」


 まさか、エルマーまで欺いていたなんて。エルマーは知っていたのだろうか……分からないけれど、とうとう言葉が出てこなくなった。「今まで何も知らずに、こんな人と同じ屋根の下で暮らしていたのか」って後悔が、ボクの心の中に渦巻き始める。


「アンタもよ、テレーゼ。崖から突き落としてあげましょうか。あの男のところへ行けるわよ? あの世で慰めてもらいなさいよ!」


 本格的にまずい状況だ。ボクは湧き上がる恐怖心を飲み込んで、もう一度ドアノブに手をかける。


「テレ――――」


「黙ってろ!!」


 テレーゼに怒鳴られた。間違いない、今の絶対ボクに向けて言った。思わず口を閉ざしてしまうほどの気迫に圧されながらも、扉を押し開けようとドアノブを回す。するとダンッ!! と扉が叩かれた。まるで「やめろ」と言われているようだった。


 そして、話はまだ終わっていない、といったふうにテレーゼは静かに、それでいて語気を強めて口にする。


「アンネ、我は本気よ。アンタの本性をバラすことは容易い」


 脅しの、言葉を。

 テレーゼの言葉にアンネは一瞬息を飲んだが、すぐに平静を取り戻す。


「アンタ如きの話を聞いてくれるとでも思ってんの?」


「でも、噂を流すことは出来る。アンタ達の悪行を、国中に、そして世界中に広めることは出来る。顔を上げて生きていけないようにする算段もついている」


「あはっ、そんなこと出来るわけないじゃない」


「出来るから言っている」


 今度は、アンネがテレーゼの気迫に圧され始める。たしかに、追い込まれていたとはいえ、とっさの出任せを言うほどテレーゼは焦っていない。「算段はついている」とも言っていたし、本当に何かしらの準備をしているのだろう。


「アンタが大の男好きで、でもそれ以上に自分のことが大好きすぎる痛い女で、医者のくせに人を死に追いやったという事実を。世界各地に広めてやる。ここで我を殺したとしても、この小屋の中で盗み聞きしている人が、アンタ達の悪事を広めてくれる」


「!?」


 テレーゼ!? あれだけ隠れていろ、的な行動をしておいて、そんなあっさりバラしていいの!? と、ボクは思わずツッコみそうになった。でも、もしかしたらアンネにカマをかけているだけかもしれないし、一応静かにしておくことにする。


「……あぁ……そういうこと……」


 アンネの声が、途端に静かになった。納得したかのような、テレーゼの思惑(ボクは全部を察していないけど)に気がついたかのような、そんな呟きだった。


 そして、アンネはこちらに向かって呼びかけた。いつものような声色で。ボクの知るアンネの喋り方で。


「マリウス、怖がらせてごめんなさいね。驚いたかしら。顔を見てお話したいわ。誤解を解かせてくれないかしら」


 名指し。どうしてボクだって分かったんだろう。

 ……あ、皆館の中にいるからか。


 他人事のように考えながら、ボクは扉の前に立ち尽くす。


「駄目よ、マリウス。この女、殴る準備してる」


「やだわ、テレーゼ。この拳はアンタにあげるものよ」


「や、やめてアンネ!」


 このままでは、またテレーゼが傷ついてしまう。それだけは何としてでも阻止しないと、とボクは声を張り上げた。


「やっぱりマリウスなのね。よかった、盗み聞きしていたのがアンタで」


 アンネはくすくすと笑って、とんっ、と扉を叩いた。そして、低い声で、


「ここで聞いた話、起こったことは黙っていなさい。さもないと、ヴィムを殺す」


 と言い放った。もう、ボクの前で取り繕うことはやめたらしい。


 アンネの脅しの言葉に、ボクは一瞬動揺したけれど、驚くほどに冷静だった。ボクがここにいるってバレたらどうしよう、って思った瞬間もあったから、もっと緊張すると思っていたけれど。


 扉越しで会話しているからかな、とても落ち着いている。


「ねぇ、マリウスならこの意味が分かるわよね。いい子にしてたら、ヴィムを見逃すようにアタシから言ってあげる。ドーリスは何が何でも殺処分させるけど」


「それは――――」


「選びなさい。ヴィムを助けるか、見捨てるか」


 とはいえ、アンネの気迫は想像以上のものだ。多分、脅すことに慣れている。

 ボクがヴィムのことを好きだと知っているから、いとも簡単に脅しの言葉を並べることが出来る。人の嫌だと思うことを、面白がって出来る人。正直、同じ人間だとは思えない。


 でも、これはチャンスかもしれない。アンネは酷い人だけれど、考えなしに行動しているわけではない。むしろ、ちゃんと考えているから、こういった行動を取れるはず。


 アンネはテレーゼから脅しの言葉を受けた時、一瞬動揺した素振りを見せた。それはつまり、アンネは自分の本性を人に知られるのは困ると思っている、ということの証明だ。提案次第では、何とかなる。


 そう頭の中で整理をつけたボクは、一度息を吐き出して、テレーゼに呼びかける。


「……テレーゼ、開けて」


「マリウス、それは駄目よ。扉越しでないと危険だわ」


「ボクなら大丈夫。だから、お願い」


「…………」


 テレーゼは少しの間沈黙した。悩んでいるのだろう。けれども最終的には鍵を開けてくれた。カチャンッ、と音がしたのを聞いてから、ボクは扉を押し開ける。


 瞬間、アンネが手を振り上げた。ボクは彼女の手首を掴んで、止める。


「あら、止められちゃったわ」


「予想はしてたからね」


「あっそ」


 とはいえ、テレーゼが「殴る準備をしている」と言ってくれてから、警戒していただけなんだけどね……。あの一言がなかったら絶対殴られていた。


 掴んでいたアンネの手首を放すと、彼女は溜息をこぼしながらボクを睨みつけてくる。とても怖い、テレーゼはずっとこの目のアンネと対峙してたのかと思うと、改めてゾッとした。


「それで、どうするの?」


「……ボクはヴィムを助けたい。ボクもテレーゼも、アンネの本性のことは黙ってる。だから約束して。ヴィムは犯人じゃないと皆の前で訂正する、って」


 一方的に脅すのも、脅されるのも、根本的な解決には至らない。なら、アンネが恐れている「本性をバラさない代わりに、ヴィム以外に犯人がいる可能性を提示してもらう」という条件を出すのが最善のはず。


 ボクの提案を受けて、アンネはくすっ、と一笑した。


「いいわよ。明日、訂正してあげる。殺人が起こっても、『部屋に軟禁していたヴィムに犯行は不可能だ』って言えるし、起こらなかったら起こらなかったで、それらしい理由を述べることは出来るもの」


「それから、もう一つ約束して」


「なによ」


「テレーゼに二度と手をあげないで。傷つけるようなことを言うのもダメだ」


 ボクのもう一つの提案が予想外だったのか、テレーゼとアンネは揃って目を見開いた。


「それは、アンタ達の態度次第、といったところかしらね。でもいいわよ。頭に置いておいてあげる」


 アンネはにやりと笑みを張りつける。その笑みには、他の感情が隠されていそうで、ゾッと背筋が凍ったような感覚がしたけれども。


 ひとまず、提案は受け入れられた。それだけでもよしとしよう。


「それじゃあ、アタシは先に戻っているわ。アンタ達も、風邪ひいても知らないわよ」


 それだけ言い残すと、アンネはボク達に背を向けて館に戻っていってしまう。完全に姿が見えなくなって初めて、心がふっと軽くなった。


「……こ、怖かった……」


 ボクが呟くと、テレーゼが同意するかのように「我も、慣れない……」と口にする。


 「ボク達も戻ろうか」とテレーゼに言って、ボク達も歩き始める。結構雨にうたれちゃったし、部屋に戻ったらすぐに着替えないと。服が肌に張りついて気持ち悪いや。


 うへぇ……、と溜息をついていると、おずおずといった様子でテレーゼが言ってきた。


「怖がらせてごめんなさい。アンネは犯人じゃないから、殺される、なんてことはないはずよ」


「あ、うん……どうして分かるの?」


「……アンネは、自分の手は汚さないタイプだから……」


 そうは言っても、百パーセントの保証があるわけじゃない。やっぱり、テレーゼは一連に事件の犯人の正体を知っているのかもしれない。


 ……言いたくないんだろうな。

 犯人がテレーゼだから断言出来るのかは分からないけれど、問い詰めても答えてはくれなさそう。


 なら、ボクが犯人の証拠を掴むしかない。そう、決意した。


「ねぇ、テレーゼの言っていた好きな人、って……さっき話に出ていた『ルッツ』って人?」


 手始めに、ルッツという名の人物について探ることにする。

 テレーゼはこの質問が来ることを予測していたのか、静かに視線を動かしながら答えてくれた。


「……そうよ。教師をしていて、驚くほど優しい人だった」


「そこが好きだったの?」


「…………」


 テレーゼは、静かに頷く。

 そして、雨に濡れたリボンに触れながら、語り聞かせてくれる。


「……アンネも言っていたけれど、このリボンは、ルッツがくれたの。誕生日のプレゼントに」


「そうなんだ。素敵だね」


「……うん」


 テレーゼはいつも、胸元にリボンをつけていた。アンネが言っていた通り、「形見だ」と言っていたけれど、本当は恥ずかしくて言えなかったのかな。


 たしかに、流行りのデザインではないし、かなり年季が入っているようにも思える。でも、テレーゼは大事そうに、愛おしそうにリボンに触れている。よほど嬉しかったんだろうなぁ。


「……ルッツ、は……アンネの夫だったの?」


 そして、一番知りたかったことを聞いてみる。

 アンネが結婚していたなんて話は聞いたことがない。何なら、「結婚なんて面倒。アタシは自由でいたいの」とよく言っていたから、それらしい話を耳にした時、かなり驚いてしまった。


 もしかすると、「結婚なんて面倒」という言葉は、一度離婚した経験があるからなのかもしれないけれど。


 ボクの質問に、テレーゼはまたもや頷く。


「そうよ。わだかまりがあって別れた、じゃなかったから……我はアンネのことが嫌い。共同生活している以上、嫌な空気は作りたくないから、距離を置いているけれど……」


「そっか……」


 テレーゼからすれば、好きな人だったルッツと結婚していたんだものね……。しかも、後で何事もなかったかのようにエルマーと付き合うんだから、いい印象を抱かないのも当然かもしれない。ましてや、あんな酷いことをつらつらと並べるアンネを見た後では、テレーゼに同情するしかなかった。


 他に聞いておくべきことは……、と考えていると、「ッ、くしゅん……!」とテレーゼがくしゃみをした。身体が冷えているらしく、ボクは慌てて羽織っていた上着を彼女に被せる。


「本当に風邪ひくかもしれないし、戻ろう」


「そうね。また、あとで」


「うん。またね」


 ボクも一旦部屋に戻って着替えよう、と歩き始めた時。別れたばかりのテレーゼが走ってこちらに戻ってきた。


「マ、マリウス!」


「ど、どうしたの?」


「い、今思い出したのだけれど……」


 そう前置きしてから、テレーゼは赤く染まった顔で呟くように、けれども強く言った。


「我、ルッツのこと想像しながら……し、してないから……!」


「……何を?」


「何を、って……さっき、アンネが言っていた……あの……マ……」


「…………あっ! ごめん! わ、分かってる! 大丈夫だよ」


 アンネの挑発か、と思っていたけれど、雰囲気からして本当っぽい……。

 とは思っても、流石にこれを言うのは失礼すぎる。忘れることにしよう。うん。


「それに、ここだけの話だけど……ボクもその……好きな人がいるから気持ちは分かるよ。おかしいことじゃないから、心配しなくて大丈夫だよ、うん……」


「……そっか……内緒にしてほしい……」


「ボクもだよ。二人だけの秘密ね」


「じゃあ、今度こそ……またあとで」


「うん……」


 そんなやり取りを経て、ボク達は今度こそ、それぞれ部屋に戻った。




 雨に濡れた身体を拭いて、新しい服に着替えてから、僕は思い出す。

 今日は一日、ヴィムは部屋に軟禁されている。ドーリスの餌やりもまだ……というか、行く途中でエルマーの死体を見つけたから、急がないと。


 ボクはもう一度裏口を通って、厩舎に向かう。その頃にはもうエルマーの死体はなかった。ヨハンネスが涼しいワインセラーに運んだのかもしれない、と自分の中で片付けておく。


 厩舎に到着すると、ボクは違和感に気づいた。鍵が開いていたのだ。

 ……誰かいる。中から微かに話し声のようなものが聞こえてきたので、おそるおそる扉の隙間から覗き込んでみる。


「うぅむ……もう少し口を開けられないのかね。これだから言葉の通じない獣は苦手なんだ」


 ヨハンネスの声だ。ヨハンネスも、滅多にここには訪れないのに、どうしたんだろう。ドーリスの入れられている檻の前に立って、何かを確認しているらしいが、後ろ姿しか見えない。


「ほら、口を開けてくれないか。それとも、何か脅しの言葉を加えたほうが言うことを聞いてくれるのかね」


 ……あれは……何をしているんだろう……。


 ヨハンネスは神に仕える聖職者だけど、全然聖職者らしくない。タバコは吸うし、お酒も飲むし、宝石のような煌びやかなものも集めている。節制、とか多分ヨハンネスの頭にはないのだと思う。何故、聖職者になったのか疑問だ。


 とはいえ、多分ヨハンネスは本当にドーリスの仕業なのか調べに来たのだろう。それなら話がしやすいかもしれない、とボクは思い切って扉を開けた。


「ヨハンネス、ここにいるのは珍しいね」


「あぁ、マリウスか……ちょうどいいところに来たな」


 顔を上げたヨハンネスは、自身の方へ来るように手招きする。ボクがヨハンネスの隣に並び立つと、今度はドーリスを指さした。


「どうすれば言うことを聞いてくれるのだ」


「うぅん……ドーリスは賢いけど、ボクには出来ないよ。何か、気になることでもあるの?」


「口の形を確認したい。そういえば、ちゃんと見たことがなかったからな」


 ヨハンネスも疑っているのか……。

 でも、ここへ来た、ってことは、ちゃんと調べに来た、って解釈していいはずだ。


「そっか。ボクはヴィムの代わりに餌やりに来たんだ。ご飯を食べる時、口を大きく開けてくれるから、それを見てよ」


「分かった」


 餌やりの仕方は教わったし、ヴィムが何度かさせてくれた。早く準備しなくちゃ、と奥の部屋へ向かう。ボク達が食べるお肉とは別に、ドーリスの分も用意されている。


 手前のものから出していく、とヴィムは前に言っていたので、その通りに準備を進めようと足元のバケツに手を伸ばす。


「あれ……?」


 バケツの中身が汚れていた。赤黒い液体……血かな? いつもドーリスの餌を入れているバケツだから、もしかすると昨日の分が残っていたのかもしれない。後でちゃんと洗っておかないと、と別のバケツを用意して、準備を進める。


 いつもヴィムが用意しているのと同じ分量を量って、厩舎の方へ戻る。


「ドーリス、こっちにおいで」


 呼びかけると、ドーリスはぴくりと耳を動かしてこちらに来てくれる。ボクよりも体が大きいから、最初の頃は怖かったけれど……真っ白でよくよく見ると可愛い顔をしているんだ。


「ご飯の時間だよ。はい、お口を開けて」


 ……。


 …………。


 いつもなら口を開けてくれるのに、ドーリスは反応してくれなかった。ヴィムがいないからかな? 「ドーリス」ともう一度呼んでみるけれど、反応はない。


「…………」


「あ、あれ……おかしいなぁ……」


 ヨハンネスから向けられる視線が痛い。奥の部屋からナイフを持って来て、肉を小さく切って、もう一度呼びかけてみる。


「ドーリス、ご飯食べないの?」


「……もしや、腹がいっぱいなのか?」


 ヨハンネスの考察に、ゾッと背筋が凍った。


「ち、違う、そんなはずない」


「何故、断言出来る?」


「だって……最後にご飯をあげたのは昨日の夜だよ……? お腹、空いてるに決まってる……」


「…………」


 ヨハンネスは何も言わない。ボクはじりじりと追い詰められているような気分だった。


 ボクも、テレーゼも、アンネも。凶器は農具の可能性が高いと思っている。


 ヨハンネスだって、他の可能性があるかもしれない、ってここに来たって言っていた。でも、その言い方じゃ、まるで……。


「……エルマーの腹部の傷を見た時、違和感があった。一思いに噛まれた、というより、少しずつ食い荒らされた、と言ったほうが正しい気がしてな。それに、目立った傷跡が後頭部と腹部だけ、というのも不思議だ」


 ヨハンネスはドーリスに視線を向けながら、冷静に自身の考察を語る。


「獣に襲われたのなら、足や腕にも傷があるはずだ。だが、エルマーにはなかった。獣に襲われた、というわけではなさそうだと思っていたが……。詳しく調べるべきじゃないか?」


「…………」


 ドーリスはやっていない。その一言が、どうしてか口から出てきてくれなかった。


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