第一話 「動き出す夢」――⑧
「うおおおおおおお!!!カイトブレーーーード!!!」
大上段に振りかぶられた剣が振り下ろされる。
対し、左右から接近する輝く刃。
どちらが速いか紙一重―――という逼迫した瞬間、相手の手が一瞬止まる。
開斗の手は、止まらない。
――今はもう、この剣を振り下ろすだけだ!!!
「マキオ!!!クレイモアだ!!!」
「うるっせぇ!!!わかってんだよ、愚図が!!!」
マキオの言葉と共に、攻撃モーションは継続したままにバクン!と音を立ててナイトストーカーの肩部が開く。
そこに埋まっているのは、秒間1000発のベアリング弾を巻き散らすナイトストーカー最強の対超近接殲滅兵器。対人地雷――クレイモア!
「死ねぇええぇぇぇえええ!!!」
「開斗!!」
振り返る百悔に目もくれず、開斗は真っ直ぐにカメラの先にいるナイトストーカーを見据えていた。
――不思議だ。驚くほど、視界も、思考もクリアに感じる。
敵の両肩から巻き散らされるベアリング弾は、あっという間にカイトカイザーをハチの巣にするだろう。
そのうえ、左右から迫るビームダガー。どちらももう、避けようがない。
――否、もとより、避けるつもりなど、ありはしない!!
「いい!!!突っ込む!!!」
次の瞬間、視界が銀色の弾丸で埋め尽くされる。
一瞬遅れて衝撃。SRを通じて激しい振動が伝わる。
左腕の肘関節が吹き飛び、腰部の前面アーマーが粉々に砕かれる。
しかし、開斗は――カイトカイザーは止まらない。
相手が自分の予想を上回る武装を見せるなら――自分は、さらにその上を魅せてやる!!
踏み込まれた右足が、力強くアスファルトを踏み割る。
左右から迫る刃が、機体を切り裂くより速く。大量のベアリング弾に晒された機体が、瓦解するよりなお速く!!
カイトカイザーの実体剣が、漆黒の機体を一刀のもとに斬り伏せる!!
「―――!!??!?!?」
マキオの断末魔の悪態が声になるより早く。ナイトストーカーの爆音が、SR空間に響き渡った。
――即ち。
「おめでとう!!開斗、キミの勝ちだ!!!」
―――⑨につづく。




