第一話 「動き出す夢」――④
「か、勝手に入ってきて何なんだてめえ!!」
少女の出現に――少女の出現のあまりの可憐さに、長身の男は明らかに狼狽しているが、マキオはフン、と鼻で笑う。
「旬馬くん、大丈夫だよ。僕も聞きたいな――君、誰?」
旬馬と呼ばれた長身の男を制し、不敵な視線を少女に向ける。
しかし――少女は彼らを見向きもしない。
「ボクは、キミに聞いてるんだよ?」
少女は開斗にまっすぐ問いかける。
「キミが諦めないなら、ボクがキミのメンターになる!」
少女の気迫は誰よりも強い。マキオも、旬馬も、そして開斗も――誰もが息を呑んだ。
少女と、開斗の視線が交錯する。
「俺は…」
喉から絞り出すように開斗は声を出す。擦れた声。こんな少女に、こんな返事でいい訳がない。
開斗は頭を振ってキッと少女を見据える。
「俺は、諦めたくない――!!俺は十分開斗!!頼む…俺と一緒に戦ってくれ!!」
少女は少し微笑んだように見えた。そして小さく、かろうじて聞き取れる程度の声で呟く。
「――知ってる…」
その言葉が、開斗のどの言葉に向けてなのか。開斗には伺い知れなかった。
「僕は加添歌百悔。よろしくね――開斗!!」
百悔は言葉とともに左手首につけたギアを高らかに掲げた。
ギアからは光の線が奔り、空に消える。
「チッ!やられた!」
手元のカイトカイザ―を見たマキオは、あからさまに不機嫌そうに舌打ちをした。
「どうした!?マキオ!!」
慌てた様子で駆け寄る旬馬。
「あのアマ…この距離でこのセンティメントのコードを読み込んでメンター登録しやがった…!!」
苛立ちの濃いマキオの視線に対して、百悔が返すは不敵な視線。
開斗には何が起こっているかわかるはずもないが、とにかく百悔が何かやってくれた、ということはかろうじて理解できた。
「もうこれでキミたちはボクの許可なくそのセンティメントを扱うことはできない。――で?キミたちにはセンティメントはあるのかな?」
「舐めんなよ。俺たちにだって当然自前のセンティメントくらいあらぁ。それになにより――」
マキオの目が、カイトカイザ―に移る。
今までで、一番邪悪な視線。
「お前たちのセンティメントは、今から戦闘不能になるからなあ!!!」
マキオは大きく振りかぶって―――、カイトカイザ―を地面に振り下ろした!!!
――⑤につづく。




