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壊闢のエバーノーツ   作者: えんどう/まじめ/teil
2/12

第一話 「動き出す夢」――②

「しかし――見ただけでメンターっわかんねーのか。うーむ…」

勢い任せに飛び出し、野生の獣よろしくメンター確保に乗り出した開斗だったが、数刻持たずに方向性を見失っていた。

町を見渡せば様々な人がいる。

サラリーマン、ビラ配り、蕎麦屋、警官、幼稚園児、ナース、画家、蕎麦屋、サーファー、蕎麦屋…

「………腹、減ったな。蕎麦でも食うか…」

心がそっぽを向くのに、そんなに時間はかからなかった。

街を練り歩くのを諦め、蕎麦屋――もとい、飯屋街へと足を向けた、そのとき。

「あ、あの…お兄さん」

弱々しい声が、背後からかけられた。

「よ、よかったら。ぼく、お、お兄さんの、力になれるかも…」

何かにおびえるような学ランの少年だ。視線は斜め下を右往左往し、全身が自信のなさを主張している。

開斗が声をかければ吹き飛んでしまいそうな儚さ――小動物系とでもいうべきか――が漂っていた。

「ホントか!?ぜひ頼む!今すぐにでもエバーノーツをしたくてたまんないんだよ!!」

ほとんど反射的に出た大声に、少年はたじろいでこそいたが、開斗の言葉に控えめながらも頷いた。

「うん、い、いいよ。良かった。じゃあ――こっちに来て」

少年は開斗を路地裏のほうへと誘導する。振り返り、振り返り――開斗が道に迷わないように。


「いやー、助かったぜ。勢いセンティメントを組んだはいいものの、メンターが見つからずに途方に暮れてたんだ」

「うん」

「しっかし、よく俺がメンター探してるって分かったな。やっぱ、プレイヤーにはプレイヤー同士通じるものとか、あるの?」

「う、うん」

ほとんど息つく暇のない開斗の猛攻に、少年は適当に相槌を打つ。

都度振り返り、開斗を誘導することも忘れない。

「そういえば、俺、十分開斗!君の名前は?あと、一体俺をどこまで連れて行くんだ?」

袋小路にたどり着いたところで少年は踵を返し、立ち止まった。

高めのビルに挟まれた、見通しも空気も劣悪な場所だ。

壁際近くには、エバーノーツのSRシンクロリアリティスポットを表す看板が申し訳程度に立っている。

あれこそが、エバーノーツがここまで劇的に普及した理由の一つ――

街の各所に置かれた、インスタントマッチに対応したゲームスポットだ。

近くにあるSRテーブルに着席すれば、いつでもだれでもエバーノーツを楽しむことができる。

従来のVRゲームよりも進化した拡張現実システムが、それを可能にしていた。

少年は、控えめに両手を差し出す。

「うん、もう…いいかな。僕の名前は三木マキオ。まずは、よかったらお兄さんのセンティメント…見せてもらえない?」

「ああ、もちろんだ!これが俺のカイトカイザーだ!!」

開斗は懐から赤と白に塗り分けられた真新しいセンティメントを取り出し、マキオに渡す。

「わあ…ノーマルフレームのスターターキットだね。でも、グロスカラーの差し色、ハードタイプアーマー…いい塗りだね。とってもいい機体だ」

光にかざしながらマキオは開斗のセンティメント――カイトカイザーをうっとりとした表情で見つめる。その反応に、開斗もついつい頬をほころばせる。

「おー!わかるか!!最高だろ、俺のカイトカイザ―!」

「うん。パーツもしっかり磨かれて奇麗だし、問題なさそう。登録も――うん。じゃあ、」

そして、持ち上げていたその両手を、胸元に引き寄せて、

「じゃあ、これ、頂戴?」

邪悪な顔で、ほほ笑んだ。

「…え?」


――③につづく。

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