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壊闢のエバーノーツ   作者: えんどう/まじめ/teil
10/12

第二話「疾蒼の騎士」――①

「うおおおおおおお!!!カイトブレーーーード!!!」

カイトカイザーの剣が、漆黒のセンティメントを脳天から一気に両断する。

通算15回目のリプレイ動画を見て、開斗は心から興奮しきった表情でもう一度巻き戻しボタンを押した。

自然と体が動いてしまう。――傍から見れば、完全に不審者のそれだ。

「いやー、やっぱすげーな!!ハマってる感じあるな俺!!!」

昨日、別れ際に百悔から渡された腕時計のようなもの。

――「ノーツギア」と呼ばれる、腕時計型のエバーノーツ専用ガジェット。センティメントの登録や、試合風景――リプレイ動画の録画など、多彩な機能を搭載したものだ。

当然、初のセンティメントであるカイトカイザーを購入した際、増田も開斗にその説明をしているはずなのだが――

初めてのセンティメントを手に入れて、脳味噌の中身が夢一色になっていた開斗の脳内には、悲しいかな一片たりとも残っていなかった。

結果、百悔をから決して安くはない(それすら把握していないだろうが)それを受け取り、説明書と格闘してリプレイの再生の仕方を学んでからというもの、開斗はひたすら自分の初プレイ、初勝利動画を見倒していたのだ。

「エバーノーツ界の新星!!十分開斗!!って感じだな!!」

振りかぶって、カイトブレード。小学生同然のはしゃぎ方で、気炎を吐く開斗。

当然そのドタバタは、階下にも、隣家にも届いているわけで――。

「開斗、五月蠅い。その奇声、お隣まで響いているわ。自重しなさい」

ノックもお粗末に、ただ要点だけ言って去っていくのは姉の十分凪咲じゅうぶんなぎさ

不要なことは一切しない、徹底した効率、成果主義。――度を過ぎたスタイルは、効率厨、とも。

「ごめん、ねーちゃん」

すでに影は去ったあと、聞こえているのかいないのか。

何にせよ、不要なことは一切しない姉のスタンスを理解しているからこそ、わざわざ言いに来たということは相当うるさいのだろう。夜ももう遅い、そろそろおとなしくしたほうが良さそうだ。

――今日はもう寝よう。

明日へのアラームをセットするために、携帯端末を触る。画面を見ると、見慣れたSNSの通知。

何の気なしにウインドウを開くと、表示されたのは見慣れないアドレスからの、チャットルームへの招待だった。

「えっと…アドレス名、Q-10.hundred…?誰だ、これ…」

しばし思案。しかし、思いつくような心当たりはない。とりあえずチャットルームに入室してみると、すぐにスタンプが送られてきた。

可愛いネコのアニメキャラクターがあざとくウインクをしているスタンプ。「Hey!」と添えられたメッセージからも、陽気さがうかがえる。

何より、スタンプのチョイスのセンス的にも、アドレスの雰囲気的にも、おそらく相手は――女。

――再度、思案。やはり思いつかない。そもそも、開斗のSNSに登録されているのは、クラスの男友達ばかり。女性のフレンドは、家族か隣に住む幼馴染のそれくらいだ。

少なくとも、いきなり誘ってきて、いきなりスタンプを送ってくるような間柄の女性はいないはずだった。

「…ま、いっか」

スパムか何かだろう。ぼんやり考えて、特に返事もしないまま、開斗は布団をかぶった。

――未だ、勝利リザルトの画面を脳内で再生しながら。


――②につづく。

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