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壊闢のエバーノーツ   作者: えんどう/まじめ/teil
1/12

第一話 「動き出す夢」――①

エバーノーツ!

それは、世界最高峰のホビーアクションゲーム。

EmotionalVersusNodes!

それは、少年たちの夢。

EVN!

それは、誰もが夢中になる、最高の舞台!


EmotionalVersusNodes――通称、「エバーノーツ」。

それは10年前、電撃的にスタートした最新鋭のVRゲーム。

現実のロボットフィギュア「センティメント」を集め、改造し、完成度を競うだけでなく、そのフィギュアに2人1組で乗り込んでVR対戦格闘ゲームを楽しめる、名実ともに世界最高のゲームである。

当初一部のプラモ・フィギュアマニアの間だけで騒がれるだけに見えたこのゲームは瞬く間に全世界に広がり、プレイ人口は3億人を突破。一大ビジネスに成長した。

今やエバーノーツは、少年たちの夢であり、操縦を担当する「センター」、管制を担当する「メンター」のプロプレイヤーは、誰もが憧れる職業の一つだ。


そしてここ、サウスセントラルシティに、そんな夢を抱く少年が、一人。


「おっちゃん!次のエバーノーツの大会、いつやんの!?なぁ!」

サウスセントラルシティゲームショップ、「ベルランド」店内。

騒がしく店主とカウンター越しにやり取りする少年は十分開斗じゅうぶん かいと

サウスセントラルシティ市立南中高校に通う、子供らしさと髪型の主張が激しい高校二年生だ。

「分かった、分かったから落ち着け、開斗。馬鹿みたいにショーケースを叩くんじゃない。割れる」

今にもカウンターを乗り越えようとする勢いの開斗に、店主である小太りの男――増田不敗ますだ ふはいはため息交じりに切り返す。

「そもそもお前、初センティメント買ってからまだ二週間も経ってないじゃないか」

「モノは買ったその日に組んだ。プログラムは徹夜で覚えた。大事なのは、経歴じゃなくてハートだろ!!」

無邪気というべきか、夢中というべきか。

子供らしさの玉手箱のような瞳で、開斗は増田の目をまっすぐに見据える。

――俺にも、こんな時代があったかな。

そんなささやかなうらやましさと、若干の苦手意識を漂わせながら、増田はもう一度大きなため息をついた。

そもそも増田は、彼のような気持ちよりも先に体が動くようなタイプは嫌いじゃないのだ。

「分かった分かった。ショップ大会はまだしばらく先だが、お前がパートナーを連れてきたらちょうどいい対戦相手位見繕ってやるよ」

「…パート…ナー?」

何気なく放った一言への開斗のリアクションに、そこからか、と増田は今日一番のため息をついた。

「お前…説明書は読んだか?」

「読んだことと、覚えてることはイコールじゃないぜ!」

「だよなあ…」

言いながら増田は店の奥からエバーノーツの初心者向けのフリップを取り出してくる。

そこには、「よく わかる エバーノーツ !」

とポップ体で書かれており、その下には図解で分かりやすくゲームの進め方が書かれていた。

「まず、原則エバーノーツは1機のセンティメントを2人のプレイヤーで動かすのは知ってるか?」

「えっそうなの!?一人乗りじゃないの!?」

「そこからだよなあ…いいか、センティメントは役割の異なる2人…機体の操縦を担当する『センター』と、パーツや火器、レーダーの管制を担当する『メンター』で動かすんだ。つまり開斗、お前1人じゃ折角組んだセンティメントも、動かすことができんということになる」

言って増田は例外はいるがな、と付け加える。

言われた開斗は思案顔。うーん、と考える素振りを見せる。

「困ったな…俺、とにかくセンティメントを組み立てて動かすことしか考えてなかったから、今のところ特に相方のアテがないぜ…」


交友関係は比較的広いほうだとは自負している。

しかし、思い返せばエバーノーツの話をしている友人は大体二人組だった…気がする。

まったくの盲点だった――というか、それ位教えてくれてもいいのに、みんな友達甲斐のない奴だ、と内心独り言ちる。

「お前の性格的にセンターだよな。てなるとメンターを探すことになる。いや、メンターはなぁ、いつの時代も貴重なんだよ。好き好んでデータ処理してくれる逸材なんかいないもんだ。おめぇ、エバーノーツが始まってすぐの頃なんてよ…」

と、油断しているとすぐに店主の長話が始まる。これはまずい。増田の長話は、本当に長いことで有名なのだ。

「おっちゃん!ありがとな!とりあえずメンター探してみるわ!!」

「あ、おい!開斗!!話はまだ途中だぞ!!」

上った太陽が沈んでしまう前に、と開斗は店を飛び出した。


――②に続く。


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