03 裏話
リシェルさんは、それはそれは楽しそうに二件のおめでた裏話を語ってくれたのです。
「メイジ主任とセルマ先輩がツァイシャ女王様に退任のご報告に伺った時のことなんですけど、謁見の間への入室から退室までずっと手を繋ぎっぱなしだったそうなんです。 もちろん女王様とのお話し合いの最中もずっと、ですって」
「最初から最後までそんなあつあつなところを見せつけられて表情を崩さないようにするのが大変でしたよ、って女王様くすくす笑っておられましたっ」
それは大変でしたね、ツァイシャ女王様。
メイジさんはともかく、セルマさん本当におめでとうございます。
「アランさんの特使公爵の任命式の時のことなんですけど、ツァイシャ女王様から直接授与された特使公爵バッチをアランさんが上下逆さまに付けてしまってですね」
「ご存知の通り特使公爵を任命されたのはアランさんが初、なので急遽上下逆さまの状態が正式ということになりました、ですって」
「自分がデザインしたバッチがひっくり返っているのを見せつけられて表情を崩さないようにするのが大変でしたよ、って女王様くすくす笑っておられましたっ」
それはそれは大変でしたね、ツァイシャ女王様。
アランさんはともかく、ユイさん本当におめでとうございます。
ぴよぴよぴよぴよ!
「いけない、忘れてたっ」
気の抜けるようなアラーム音に、立ち上がったリシェルさん。
「すみません、妹と待ち合わせだったので、これで失礼させてもらいますっ」
妹さん?
「はいっ、私が特使勇者モノカさんチームの担当で、妹が特使公爵アランさんチームの担当なんですっ」
「今日は本部に戻る前に待ち合わせしていたんですっ」
「それでは皆さんっ、これからよろしくお願いしますっ」
リシェルさんは、元気いっぱいの笑顔で『転送』していきました。