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空白

家に帰って昼間のことを思い出し、そしてうんざりする。


彼の傍に近付いている理由を忘れて、まるで普通の女子学生のように過ごしていた。やるべきことのタイミングに震え、もうすぐだというのにどこか緊張感をなくしている。


自室の鏡を睨みつけると、表情の優れない顔が写り込む。


これからきっと、自分は平凡から外れてしまう。非凡を今隠しているからだが、もしこれを隠し通すことが出来たのならどれだけ幸せだろうか。


目的がなければ彼には近付くことはなかったし、彼も自分と話すことはない。そうすることで自分も彼も、この先にあるものに巻き込まれず、平凡に過ごして、平凡に誰かと出会い、もしかしたら誰かと結ばれて天寿を全うするかもしれない。事故や病気で死んでしまう可能性はあっても、二人で死ぬ未来というものはなかっただろう。


彼を巻き込むことが怖い。だが、彼を巻き込まなければ、その到達点は最悪なものだ。


まるで本当に目撃したもののように、強く脳裏にフラッシュバックを繰り返す。それが頭痛を伴ってちらつくから、抑えようと頭に手を当てる。荒くなる息と共に頭痛は増していき、ある瞬間でふっとおさまる。


薄暗い空間。血だまりの中。倒れ伏す男の子。首から血が流れ落ちる。女の笑みの口元。彼の血で汚れていく自分。


切り取ったようなその瞬間ごとが明滅して、ついぞ見えなくなった。深呼吸の後、穴が開きそうなほど強く下唇を噛む。とうとう切れて血が伝い、一滴、また一滴と床を汚した。

その整った顔に、どうしてかひどくその血が似合っていた。


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