無視を選んで
なんだこの最悪な選択肢は。
クロードを怒らせるような選択肢ばかりだった。
どれを選んでも、クロードの好感度が上がるとは思えなかった。
ウインドウに表示されたもの以外のことを言えるのだろうか?
私は口を開いたが、なにも言葉が出てこない。
喉に何か詰まったように、一音すら発せなかった。
だが、先ほどメイドには自由に言うことが出来た。
どうやら、ウインドウが表示されている最中は選択肢意外の言葉は言えないらしい。
この最悪な三つの選択肢の中から、よりましな最悪を選べということか。
この中でよりまともそうなのは・・・・・・
私は『3 無視』を選択した。
ここで、再び選択肢以外の事が言えるか試してみることにした。
選択肢を選び、口を開こうとする。だが、唇ははじめから動かなかったように、開こうとしなかった。
不自然にならないよう、最大限力をかけるが、口はびくともしない。
おそらく、ゲームのシステムに沿うようにしか動かないのだろう。
そんな私の様子を知る由もなく、クロードはため息をついて言った。
「無視か・・・・・・」
とたんに、口が開くようになる。どうやら、『無視』の選択肢が達成されたらしい。
さぁ、どうなるか。
クロードの方を見ると、こちらを困惑した顔で見ている。
「・・・・・・泣いているのか?」
言われたことに怪訝になったが、すぐに自分の状態を自覚する。
確かに、顔に力を入れていた反動で私は涙目になっていた。
だが、別に泣いているわけじゃない。
なんと答えていいかわからず、黙っているとクロードが続けた。
「涙を流すくらいなら、はじめから愚かな行動は慎むように。・・・・・・以上だ」
悪役令嬢のセリアらしくない態度に、困惑したのだろうか?
どうやら、なんとか切り抜けることが出来たらしい。
長居は無用だ。早く一人になってこの状況を改めて考えたたいし、余計なことを言って処刑ルートに行きたくない。
私は立ち上がって、ドアを開ける。
ふと、部屋から出る直前に気になったことがあった。
選択肢を選ぶ意外で、攻略対象と話すことは出来るのだろうか。
振り返ってクロードに向かって口を開く。
「ごめんなさい、お兄さま」
クロードの目が見開かれる。話すことが出来たし、相手にもちゃんと伝わった。
もう一つ収穫が出来た。
どうやら、あのゲームウインドウが出ていない間は自由に話せるらしい。
いったん今の状況を整理しなければ。私は頭を下げながらドアをしめた。