聖女の評判
家に帰り、クロードにフェリクスから聞いた話をする。
「なんとか助け出せないかしら。別宮に忍び込んで助けるとか」
「あそこは別宮といえど王家の敷地内だ。厳重な警備がされているから、まず無理だろう。それに万が一連れ出すことができたとしても、王家が管理する人間を連れ出すなんて反逆罪も等しい。アデレード家といえど、取りつぶしになるかもしれない」
私の無謀な提案に、クロードは少しあきれながら答える。
正直に言えば、私としてはこの家がどうなろうと最悪セルジュを助け出せればそれでいいと考えているが、クロードに協力してもらう必要がある以上、その選択肢を選ぶことは出来ない。
「取るべき手は他にもあるだろう。むしろ、それが一番安全だと思う」
「どんなもの?」
「セリアが殿下と結婚し、王族となれば彼に会う立場になれるのでは?」
言われてはたと気がついた。ゲームのシナリオでは、どのルートでもセリアはフェリクスと結婚することはなく断罪される。
だから、彼と結婚することは無いものだと思っていた。
たしかに、クロードの言うとおり私は現在もフェリクスの婚約者。このまま婚約破棄されなければ、王族の立場になるだろう。
「学園を卒業して成人を迎えれば、セリアは殿下と結婚をする予定だ。このまま何事もなく、あと2年も待てば会うことはできるだろう」
言われた事は理にかなっている。
だが、ゲームのシナリオを知っている身としては、クロードの言うとおりに進むとはあまり思えなかった。
それを口に出す。
「・・・・・・けれど、それが確実になるとは保証されていない。私の評判はあまりよくないものだし、婚約破棄されて覆ることもあるかもしれない。聖女様もいるし」
それにクロードは首を振る。
「王族の婚約だ。そんな簡単には覆らないと思うが・・・・・・それに、セリアの評判は前より良くなっているよ」
「そうなの?」
「あぁ。学園でもセリアの話が出るときは良い話題のことが多い。レナの評判と反比例していくようだ」
レナの評判が下がっているとはしらなかった。私が意外そうな顔をしていたのだろう。
クロードが続ける。
「レナは貴族社会のマナーやルールが疎い。はじめはこの世界に来てまもないからと大目に見ていた部分はあるが、もう二ヶ月以上になる。特に、婚約者がいる異性に近づくなという貴族のマナー以前のことができていないところが目に付いているようだ。セリアの態度がはじめひどかったのも、今となっては当然だろうという意見もあるくらいだ」
そんなことになっているとは思わなかった。
レナの評判は悪くなっているのか。ゲームでは、終盤ではレナは国中にあがめ奉られていたような状態だった。
または、ゲームでもそうだったのだろうか?
レナの視点だとそう見えていただけで、レナに対して良くない感情を持っている者もいたのだろうか?
「・・・・・・だが、悪い評判はレナだけではない」
そのとき、クロードの言葉を遮るように使用人から声がかかる。
エリクが訪ねて来た。




