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悪役令嬢に転生したけど、最悪の選択肢しか選べなくて処刑ルートまっしぐらな件  作者: 冬原光


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エリクの秘密2

自分の口からでている言葉に驚く。そして、目の前のエリクが見たこともない表情をしはじめたことも。

言葉は続く。

「二年前だったかしら?殿下とのお茶会に遅れた時に、あなたと殿下が話しているのが聞こえたの。『身なりを着飾ることがご婦人の仕事ですからね』遅れる私をかばう言葉としてあなたはいったけれど、それは私をかばう言葉だったのかしら?」


「遅れて現れたあなたをフォローしたのです。普通であれば、非公式とはいえ王族との

予定に遅れるのなんてあり得ない。そんなあり得ないことをしたあなたをかばった私に、ひどい言いぐさですね」


「あのときは、我がアデレード家の領地で大きな事故が起こったのです。現当主の父が外交にでていて、次期当主のクロードが対応に当たっていました。ですが、一人では対応が追いつかない。私も共に対応いたしました。それは伝言を預けた我が家の使用人から聞いたはずでしょう?なのに、なぜあなたは私が身なりを着飾っているから遅れたと思ったの」


エリクはため息をついていった。

「宰相の家であるアデレード家の有事に、女性であるあなたが対処できるものではないと思ったのです。言い訳に体よくつかったのかと」

彼はまったく悪びれずに言った。


口が再び動く。

「それだけじゃないわ。あなたはことあるごとに殿下に言っていたわね?生徒会の仕事を手伝おうとしたときも『難しい仕事は女性には荷が重い』。外交問題について話していた時も、『よく勉強されているようですね?意外です』。ほとんど同じ意見を時間を変えてクロードが話したときは深く関心していた様子だった。・・・・・・あなたは、騎士として表面上は女性を敬っているようだけど、実際は下に見てばかりだった」


そこまで言うと、エリクが突然鉄格子をつかんだ。

地下牢に大きな音が響く。それはまるで脅しのようだった。

「失礼。あなたが思い違いをしていることがショックで、思わず力が入ってしまいました」


「別にいいわよ。そんなにショックだったとは思わなかったわ。だって、あなたわかりやすいんだもの。バレてもいい覚悟だったんでしょ」


「・・・・・・どういうことだ」


エリクがにらむ。だが、セリアの口は止まらない。

「あなたが騎士の皮を被った最低男だということなんて、あなたと会話した女性だったら皆知ってることじゃないかしら」



「嘘だ!」

ガシャンと再び鉄格子の音が響く。


これが、エリクの秘密なのか。

騎士として女性を守るエリクの裏の顔。今セリアが言った言葉はゲーム中に出てきていない。

シナリオ外でエリクが言っていたという事だ。

だが、言われてみれば思い当たるところもある。彼のルートではレナは聖女として活躍するシーンが抑えめに演出されていた。あのドラゴンの場面ですら、レナではなくエリクが倒していた。

その演出が押さえられたものが、エリクが守ってくれているからだと思っていたが、それが彼が主人公のことを下に見ていたから表に出る機会を与えられていなかったのだとしたら。


必要以上に過保護になることは、相手の力を信用していない現れなのだ。


そこまで思い当たり、ようやく身体の力が戻ってくる。


改めてエリクを見た。もう素敵な騎士はいない。

私を下に見てさげすむ男しかいなかった。


「あなたの戯れ言につきあうのはこれまでにします。ここには、あなたと使用人の処遇が決まったので伝えに来ただけなので。クロードからの話を元に、セリア殿が先のドラゴンの件で関わりがなかったことがわかったので釈放されます。そして、あの使用人ですが、王族の預かりとなります」


「王族の預かり?」


「彼は王族に危害を加えようとしましたが、あのドラゴンのようなものが我が国にまだ眠っているかもしれない。目覚めた怪物を統制するための道具となる。あの力は、万が一他国と戦争になったときに大きな力となるからな」


セルジュを戦争の道具に使うなんて。自分の釈放より、そのことにショックを受けて後ろによろける。

だが、セルジュの力はあのとき発作的におきたことではないのか。彼と話してきた内容を思い出すが、彼がドラゴンを操ったなんて話はなかった。

隠し事をしていたようにも見えない。そんな不安定な彼を戦争の道具に?

王族に危害を加えるのはいかなる理由があっても処刑されることになる。

彼の命がつながったことに安堵しつつも、その処遇に疑問を持った。


だが、エリクの次の発言でその疑問が解けた。


「あのときのように制御が聞かなければ、レナ殿の力で押さえ込むこともできる。レナ殿が強く主張したのでな、希少なドラゴンマスターの血を絶やすことは国益に反すると」


やられた、と思った。

彼女がどこまで今回のことを想定していたのかはわからないが、セルジュが彼女の手に落ちた。


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