エリクの秘密
それからは急展開だった。
騒ぎを聞きつけた護衛の騎士達がやってきてセルジュを拘束。そして、その主人である私も同じく囚われた。
クロードが異論を唱えてくれていたが、皇太子と聖女に危害を加えようとした疑いにより、地下牢に閉じこめられた。
一応、皇太子の婚約者であるという立場ではあるので、普通の囚人とは異なる扱いであったが、窓はなく必要最低限のものだけが置かれたカビのにおいがひどい部屋だった。
だが、その部屋に入れられたことは気にしている余裕はなかった。セルジュがどうなったのかが気になって、自分のことにかまっていられなかった。
外にいる看守に尋ねても、一言も話してくれず、情報が入ってこないことがより恐怖と不安をかき立てた。
今はどういう状況なのだろうか。
これは処刑待ちであれば、私はバッドエンドに入ってしまっている。
ここから挽回することはできないのだろうか。
何もできない地下牢の中で考え込んで三日。エリクが訪ねてきた。
エリクは私と二人で話したいと、看守に地下牢から出るように言った。
鉄格子越しに、エリクを見る。彼は地下牢にいる私をしげしげと見ていた。
その視線が不快で、私から口を開く。
「私の使用人はどうなりましたか」
その問いにエリクが驚きながら答える。
「こんな状況で使用人のことを心配するのか。今までのあなたであったら考えられないな」
エリクはゲーム設定時のセリアの印象が色濃いようだ。というよりも、人を見ていないのだろう。
実際に対面しながら話して実感したことがある。
彼は上辺でしか人を見ていない。前に話したときも、悪役令嬢としてしか見られていなかった。
ゲームの世界である以上、そうなってしまうのかと思ったが、クロードの変化を考えればそれも違う。
この先私がどんな行動をしても、きっと悪役令嬢としての行動でしかみないのだろう。
これが彼の真実の姿なのだろうか。
だが、それだけではなかったようだ。
目の前にゲームウインドウが開かれる。
『悪役令嬢ルート限定シナリオが解放されました。「エリクの秘密」を見ますか?
1 はい
2 いいえ』
この状況をどう打破できるかはわからないが、その秘密を知ることで何か動きがあるかもしれない。
わたしは『1 はい』を選んだ。
身体の自由が奪われる。私の意志とは関係なく口が開いた。
「自分以外の人間は愚かで、女は特に低俗だと考えているあなたらしい考えね」




