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悪役令嬢に転生したけど、最悪の選択肢しか選べなくて処刑ルートまっしぐらな件  作者: 冬原光


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落とされたのはどちら?


ウッドデッキの上に攻略対象がすべてそろってしまった。

エリクとの会話に集中していて、彼らが近づいてくることに気がつかなかった。


私は冷や汗をかきながら必死に考える。

今からでも遅くない。ここからぬけだそうと席をたとうとしたときに、すかさずレナから話しかけられる。

「今、こちらにケーキとお茶を持ってきてもらうように頼んだんです。皆で一緒にお茶をしましょう」


そう言って、レナは私の席に座り、腕をつかんだ。

力が強く、席を立つには振り払うしかないがそんなことは出来ようもない。


私は観念して、ことが済むまでここでおとなしくしていることにした。

皆が思い思いに席に座る。セルジュをちらりと見れば、先ほどと同じく湖の縁に立っていた。

そこでレナがセルジュに向かって言う。

「セルジュさんもよかったらこちらにいかがですか?立ちっぱなしは足が疲れちゃいますよ!」


セルジュは困惑して、首を振る。

レナは今度は私に向き合った。

「セリアさん、使用人の方をあんな場所に立たせたままなのはかわいそうじゃないですか?」


彼があそこに立つことになったのは、エリクが原因でもある。

ちらりと見れば、エリクは視線を外していた。自分で説明する気はないらしい。

悪いことはすべて私が請け負えばいいとでも思っているのだろうか。


私は小さくため息をついて言った。

「わかりました。ではいったん彼を下がらせます」


ここでセルジュを同席させて、レナと接触をさせるよりは一人で部屋に帰した方がマシだ。

私は立ち上がり、セルジュの方に向かって歩き出した。

だが、それをレナが止めようとした。

「そんな!席も余っているし、わざわざ帰っちゃうこともないですよ」


そう言って、私の手をつかんで・・・・・・そして叫び声をあげた。

「キャッ!」

レナの手が放れた直後、水しぶきがあがる。

慌ててそちらを見れば、レナが湖に落ちていた。


それは一瞬の出来事だった。

エリクが気まずさから視線を落とし、フェリクスとクロードが互いを見て話していた一瞬。誰も私とレナを見ていなかったその一瞬。


湖に墜ちたレナと、振り払ったように見えるセリア。

レナを突き落とした悪役令嬢へと仕立て上げられたのだ。

他ならぬレナの手によって。



水しぶきでエリクが顔を上げ、そばに立っていた私を突き飛ばしてレナを助けるべく湖に飛び込む。

フェリクスとクロードも慌てて立ち上がり、落ちたレナの引き上げを手伝っていた。


起きてしまった。イベントが発生してしまった。

私は突き飛ばされた衝撃で地面に座り込んで呆然としていると、後ろから暖かい温度を感じる。

ぎこちなく見上げれば、セルジュが私を支えていた。

倒れた私を見て、とっさに走ってきたのだろう。


「お嬢様、大丈夫ですか!?お怪我は!?」

慌てて訪ねるセルジュの手を握り、なんとか答える。

「大丈夫、怪我はないわ」


セルジュと会話をする間、レナが湖からあがっていた。


レナは湖の水を飲んだのか咳こんで、フェリクスにもたれ掛かっている。

彼女はそのままおびえながら、こちらを見て言った。

「ごめんなさい、私がセリア様の手をつかんでしまったから。セリア様からしたら、聖女とはいえ平民にさわられるのは失礼でしょうし・・・・・・私がセリア様の使用人の方について言ったのも失礼な行為だったかもしれません。ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・」


そう言って、濡れた身体で過剰に謝る。それは加害者の立場がより明確にするものだった。

おまけに、先ほどレナが落ちたシーンは誰も見ていないようだった。

つまり、彼女の今の言動でセリアがレナを突き飛ばしたという場面が成り立ってしまったわけだ。


エリクが湖から上がり、私の前に立った。

「どういうつもりですか!?なぜレナを湖に突き落としたのですか!?」


ここで私がほんとうのことを言っても信じてくれるだろうか。

ちらりとフェリクスとクロードを見る。

フェリクスは咳込むレナを見て心配そうに背中をなでていた。

クロードは困惑しながら私を見ている。


つまり、ここに私の味方は一人もいない。

どうしよう。どうすればいい。考えていると、後ろから震える声がした。

「お嬢様は何もしておりません」


見上げれば、セルジュがエリクに向かって言っていた。

「お嬢様はそちらの方を突き落としてはいません。私は湖の縁で見ていました」


騒動の輪からはずれていたセルジュはしっかりと見ていたのだ。

このメンツで使用人が口を開く立場ではないだろうが、勇気を持って証言してくれたのだ。

だが、状況は変わらない。

エリクは吐き捨てるように言った。

「自分の使用人に嘘を証言させるのか、なんて低俗なことを・・・・・・」

セルジュは震えながらもしっかりと反論した。

「違います!私はお嬢様に命令されていません。見たままを申しているだけです」


セルジュの様子が嘘を言っていないとわかったのだろう。

その場で不穏な空気が流れる。


どうなるのか、私とセルジュのためにどう動けばいいのか。

思考回路をフル回転させていた私の前にゲームウインドウが現れた。

『なぜレナを湖に落としたのかとエリクが聞いています。なんと答えますか?


1 ゴミを湖に捨てただけよ

2 平民が私と同じ席に座るからでしょ

3 ここには不要な存在だからよ』


すべて、レナを突き落としたことが前提の回答だ。


これはすべて、私をかばってくれたセルジュを裏切ることになってしまう。

頭に酸素が回らない。身体が芯から冷えていく。


だが、考えなければ。ここで選択肢を間違えれば、私の命だけでなく偽証をしたとしてセルジュの命まで危うくなってしまう。


皆の視線が私に集まる。

困惑するフェリクスとクロード、疑うエリク、こちらをじっと見つめるレナ。


どうする。この回答の中でもっとも一番いいのはどれだ。

そして、どう回答すればいい。


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