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悪役令嬢に転生したけど、最悪の選択肢しか選べなくて処刑ルートまっしぐらな件  作者: 冬原光


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クロードの秘密2


これが、『クロードの秘密』。

主人公ルートでの彼を思い出す。義理とはいえ宰相の息子として、いつも正しく冷静にあろうとしていた。

それが、こんな秘密を抱えていたとは。


もし、自分が主人公ルートしか知らなければ、彼に慰めの言葉をかけられただろう。

しかたないよ、あなたはそんなに悪いことはしていない、と。


けれど、セリアの目線から見れば、そう言うことは出来なかった。

その事件以来、セリアのアデレード家での扱いはひどいものとなった。使用人からさげすまれ、誰にも自分の言葉が届かない。


それを身を持って体験しているので、目の前のクロードに何の言葉もかけられなかった。


クロードは頭を上げて、私に言った。

「申し訳なかった・・・・・・」


彼の階段での事件に対しての直接の謝罪は、おそらくこれが初なのだろう。

クロードがこの家に来たのがゲームの設定では10年前だ。

その間、ずっとセリアは苦しんだ。


私は考えた。

クロードの苦しみと、セリアの苦しみ。引き算したらどちらが上だろうか。


ここでどうするのがいいのだろうか。

ゲームのことを考えれば、下手をすれば処刑される立場を考えれば、私はここで彼を許したほうがいいのだろう。


けれど、それだと・・・・・・。


私は自分の、セリアの身体を抱きしめた。


きっと、ずっとつらかった。家族から信用されず、自分の立場を後から来たクロードにとって変わられた。

そして、それが10年以上も続いた。


悪役令嬢の起源はクロードだった。


それがわかった途端、目の前にゲーム画面が現れた。


『クロードが謝罪しています。どうしますか?

1 許す

2 許さない』


どちらを選ぶべきなのだろう。


生き残る確率が高いのは『1 許す』だろう。

攻略対象であるクロードの好感度をあげることは必須だからだ。


けれど、セリアのことを考えると、そう簡単には選ぶことが出来ない。

彼女の長い間のつらさは、この謝罪一言で許されるものではなかった。


私は悩んだ。出されたお茶が完全に冷めるまで。

その間もクロードは頭を下げ続けた。私が何かのアクションを起こすまでそのままのつもりだろう。


悩んで、最終的に『2 許さない』を選んだ。


命に関わる選択だ。けれど、自分の身を優先してセリアの苦しみを無視することが出来なかった。

クロードの好感度は今までの行動で多少はあがっているはずだ。それが例え0になってもかまわない。

万が一マイナスに突入して処刑ルートに入りそうなら、その場で土下座だってなんだってしてやる。


だから聞きたかった。セリアの言葉を。


身体の自由が再び奪われる。

セリアは立ち上がって、クロードに向かって叫んだ。

「今更遅いのよ!!!!」


大声に驚き、クロードが頭を上げた。

セリアは続ける。

「そんな謝罪一つで私の苦しみがなくなると思っているの!?子供の頃から父にも、使用人達でさえもわたくしの言うことを信じなかった!10年以上!その状況にいた私の悲しみがあなたにはわかるの!?許さない。絶対に許さない!」


目の前のクロードの顔が変化していく。目に涙をため、こちらを必死に見ていた。

罪から逃げないよう、必死に自分を奮い立たせているように見えた。


ここで身体の自由が戻ってくる。

身体が強ばっていたのだろう。全身がすごい疲労感だ。

先ほどの叫びが彼女の本心だった。


改めて、ゲーム中での彼女を思い出す。

フェリクスやクロードに近寄るとセリアはすぐにやってきて主人公に難癖をつけた。


疑心暗鬼になって、人を信じられなくなったのだろう。

だから、周りはみんな敵だと思った。

クロードを憎み、自分をさげすむ使用人達を嫌悪した。

そして、そこに主人公がやってきた。自分のものを取られることに敏感なセリアにとって、婚約者であるフェリクスにすり寄っているのをみてしまったら。


彼女を突き飛ばしたのはその過剰反応なのだろう。

自分の言葉が軽いことを身にしみてわかっていた彼女は、思わず手を出してしまったのかもしれない。


セリア。あなたの言葉、今ちゃんと届いたよ。

だから今からは私と新しいセリアを築いていこう。


私はクロードに続けていった。

「この屋敷に来た当初、あなたは父親を亡くしていた。そして、後ろ盾のない中で本当のことを言うことは恐ろしかったでしょう。そして徐々に手をつけられなくなっていたセリアの後始末をしていたことも事実です。あなたのことを許すことは出来ない。『今は』」


最後の言葉にクロードが反応した。

「今?・・・・・・チャンスはあるということか」


私はうなづいた。

「えぇ。今までしてきたあなたの罪、私の罪を差し引きして、残ったものを償って。・・・・・・そうしたら、きっと私たちは新しい関係になれると思う」


そう言って、ほんの少しだけクロードに笑った。

彼はそれに驚いて、そしてぎこちなく笑いながらうなずいた。

「・・・・・・ありがとう」


立って部屋を出る間際、身体の力が徐々に解けていくのを感じる。

今まで恨みで満たされたセリアの身体。クロードに面と向かって伝えたことで、少しだけほどけたのかもしれない。


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[一言] サブタイトルが クロードのの秘密2になってます。
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