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悪役令嬢に転生したけど、最悪の選択肢しか選べなくて処刑ルートまっしぐらな件  作者: 冬原光


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クロードの秘密

次の日、学園は休みだったのでのんびりと出来る一日だった。

お茶会を乗り切れたことで緊張の糸が切れたのか、昼近くまでぐっすりと寝ていた。


だが、その穏やかな時間は長くは続かなかった。


目が覚めて、室内用のドレスに着替えて終わったとき、ドアをノックする音がする。

声をかけるとセルジュが気遣いながら声をかける。


「お休みのところ申し訳ございません」


「大丈夫。今起きたところだった。何かあった?」


「・・・・・・クロード様がお話があると」


ゆるんでいた気持ちが引きしまる。昨日のお茶会に関して何かあるのだろうか。

私はすぐにクロードの部屋へ向かった。


部屋にはクロードが一人だった。すでにお茶が用意されて、その場所に座る。


クロードははじめ何か迷うようにしながら、口を閉じたり開いたりしていたが、意を決したのか私に言った。

「昨日はすまなかった」


耳を疑い、聞き直してしまう。

「・・・・・・はい?」


「レナが倒れたとき、おまえが何かしたのかと疑ってしまっただろう。軽率な行動だった」


そう言って頭を下げた。

おそらく、エリクが私が犯人ではと言った時に、疑いの視線を向けたことを言っているのだろう。


信じられない光景だった。今までの生活でクロードはアデレード家の後継者として絶対的な存在で、セリアは家のお荷物で使用人からも下に見られている。


そんな彼が私に頭を下げていることが驚きだった。


何と言っていいかわからず、固まっていると突然目の前にゲームウインドウがが開かれる。


『悪役令嬢ルート限定シナリオが解放されました。「クロードの秘密」を見ますか?

1 はい

2 いいえ』


限定シナリオ?

前世の知識を思い出した。悪役令嬢ルートで、攻略対象の新たな一面が見られるというものだった。それを見ることが出来るということだろうか。


これを選んで大丈夫だろうか。

けれど、セリアの身で生きていく以上、家族であるクロードのことを知ることは今後のためになると思った。


私は意を決して「1 はい」を選択した。


すると、身体の自由が奪われる。口が勝手に開いた。

「謝るのはそれだけですか?」


「え?」

クロードが困惑しながらこちらを見る。


口はそのまま自動で話し始めた。

今までのように、選択した会話を発言したら自由が戻ってこなかった。

それに内心焦っているが、もちろん表情には出すことは出来ない。

鋭い目線で、冷たい声が口から漏れていく。

「あなたは、まだ私に謝ることがあるでしょう?階段から突き落としたと濡れ衣をかけたこと。あれ以来、私はアデレード家でもっとも下の存在となった」


何を言っているのだろうか。混乱しながらも、目の前のクロードを見る。

彼は、セリアが言っていることわかってきたようで顔から血の気が引いていく。


「あなたの父親が亡くなり、懇意にしていたアデレード家の当主に引き取られてこの家に来た。一人っ子だったセリアは兄が出来たことを喜び、あなたにまとわりついた。慣れない環境と、唯一の肉親である父親を亡くして悲しむあなたから見れば、脳天気にまとわりついてくるセリアの存在が負担だったのでしょうね」


セリアの口からは、通常のゲームでは語られなかったクロードの過去が開かされていく。


その日も、セリアはクロードの後をついていた。

彼女の声すら聞きたくなくて、クロードはセリアから距離をとろうと階段を急いでおりようとした。

その時、足を踏み外して階段から落ちてしまった。


階段の下でうずくまるクロードと、階段の上で驚き固まるセリア。

普段から彼にまとわりついていたセリアのせいで、彼が落ちたと見られる光景だった。

その場にアデレード家の当主もやってきて、セリアをきつく叱る。


混乱しながらもセリアは自分がやったのではないと訴えていた。

クロードはそれを見て、あえて訂正することはしなかった。それでしばらくセリアと距離がとれると思ったからだ。

だが、事態はクロードの想定より深刻なものになっていた。


足をひねったことで部屋で療養している間に、家中にこのことが広まってしまっていた。


セリアがクロードを突き落としたこと。

セリアは罪を認めず、自分がやったのではないと言いはっていること。


今までのセリアは貴族の令嬢には珍しくはないが、わがままな娘だった。一人っ子であったからそれは余計だろう。

その様子を見ている使用人達には、『あり得る話』で通ってしまったのだ。


運悪く、当主はその後外交で家を離れ、真実を伝えるタイミングはうしなわれてしまった。


何より、クロードは恐ろしかった。

今の状況を「実は違うんです」と言うことは、アデレード家から追い出されるのではと

思ってしまったのだ。

そうこうしているうちに、罪を認めないセリアに国の宰相としての役目を果たすアデレート家の後継者とするには不適合と判断され、後継者はクロードとなる。

ますます本当のことが言いづらくなった。

幼く、後ろ盾が何もないクロードは事を荒立てるのをおそれ、結局そのことから目をつぶった。


そして、誰にも信じてもらえず、嘘をつき人を傷つける事をいとわない悪役令嬢のセリア・アデレードが出来上がった。


それが事のあらましだった。


ここまで語り、ようやく身体の主導権が戻ってくる。

セリアが話した内容に、私は呆然としながらも目の前のクロードを見る。


クロードは深く頭を下げながら震えていた。


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