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悪役令嬢の提案

困惑する二人を差し置いて、私は周りの生徒に茶器とお湯を手配してもらう。

すぐに用意されたものに、前世でよくやったように茶葉とお湯をいれてしばし蒸らす。

それが手慣れて見えたのだろう。

クロードがいぶかしげに言った。

「自分でお茶を入れられるとは思わなかった」


まさか前世は庶民だったので、と言うわけにはいかず、クロードの会話を止めるような話題を出す。

「・・・・・・使用人が忙しい時などに」


アデレード家ともなれば、そんな状況はあり得ない。

だからこれはセリアの境遇が悪いことを遠回しに言ったのだ。

クロードは正しく理解したようで、罰が悪そうにそれ以降口を挟むことはなかった。


蒸らし時間が終わり、カップに注ぐ。

そして、それをすぐに一口飲んで見せた。

「どうです?これで毒味になりましたでしょうか?」


フェリクス、クロード、そして多くの生徒が証人だ。

セリアが自ら動いて証明したのだ。それで皆納得したようだった。


とりあえず不参加は免れた。

だが、一緒に買ってきたこれはだめだろう。

私は茶葉と一緒にお茶菓子も買ってきていた。町に出た際に通りがかったお店で見かけたものだ。

それにめざとくクロードが気がついた。

「まだ何かあるのか?」


クロードの問いに答える。

「買った茶葉と相性のいいお茶菓子を見つけたので、みなさんと楽しもうと買ってきたいたのです。女生徒の担当である茶葉ではないので、あくまで楽しむ用と思っていたのですが、規定の飲食物を増やすのは防犯上よくないですね。持ち帰ります」

そう言ってお茶菓子をしまおうとしたとき、クロードがそれを止めた。

「・・・・・・せっかく持ってきたものだろう。私が毒味をする」

クロードはさっと小さなレモンタルトを取り出して食べた。

その行動が以外だった。彼がセリアのために動くとは思わなかったからだ。

先ほど匂わせたセリアの境遇で後ろめたかったのだろうか。


クロードは食べ終わって口を開く。

「この通り私は無事だ。遅効性の毒の可能性はあるから、このままお茶会開始までは様子を見て問題なければ私たちのテーブルに加えよう。殿下?よろしいでしょうか?もちろん殿下は口になさらなくて大丈夫です。王室の毒味役ではない者の証明なので、殿下が口にする必要は・・・・・・」


「いや、次期宰相であるクロードが口にしたんだ。これ以上の証明はないだろう。テーブルに出たら私ももらうとしよう」


簡単にことが進み、内心驚いた。

セリアに対して、想定していたより友好的だったからだ。

二人とそれぞれ話したことで、状況が変化しているのか。


とりあえずお茶会の参加資格は得たから、もうこの場にいる必要はない。

部屋を離れようとした時、目の前の紅茶とレモンタルトを見て思いついたことを言った。

「お茶の味で席を分けるというのもおもしろいんじゃないでしょうか」


私の言葉に二人は驚き、聞き返す。

「お茶の味?」


「えぇ。お茶会はお茶とお菓子のマリアージュなのでしょう?一つの席に複数の味のお茶が合った方が楽しめるのではと思ったので」


その提案は二人にとって腑に落ちるものであったらしい。

「たしかに・・・・・・いい考えかもしれない」


「貴族の序列だけでなく、お茶会本来の『お茶の味』で分けられるのならば、面目も保たれるだろうしな」


フェリクスはさっそく見取り図にペンを入れていく。


少しは役にたてたようだから、ここを離れてももういいだろう。

私は輪を離れて部屋を出て行こうとした。


その時、クロードに呼びかけられる。

「待ちなさい」


「まだ何か?」


クロードは困惑しながらも言った。

「・・・・・・ありがとう。席順で時間がかかっていたから助かった」


「アデレード家の者として役にたてたならよかったです」


クロードがそれにぎこちなく笑った。


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