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思わぬ事態

お茶会の会場である庭園に到着した。

時間にはぴったりに来たがはずだが、まだ準備が終わっていないらしい。

どうやら今日の明け方に振った雨の影響で、設営が遅れているらしかった。


フェリクスは生徒会メンバーなので、様子を見に行くと言った。

まさかだったが、ここで私も行かないかと声をかけられる。

「クロードが先に準備に取り組んでいるはずだ。妹として助けられることもあるだろう」


ここで断っても、好感度を下げるだけだろう。

私は観念してフェリクスについていくことにした。


学園の一室でクロードは生徒に囲まれて、庭園の見取り図を見ていた。

雨の影響で地面がぬかるんでいる箇所があり、テーブルやイスの配置を一部変えなければならないということだった。


だが、配置変換はそう簡単なものではない。

学園に通うのは多くは貴族の子息達。その序列に応じて席が決められる。

入念に調べ、決まった席をそう簡単に変えられるものではないのだという。


ゲームでは主人公は聖女というポジションからか、攻略対象がそろう最高クラスのテーブルに配置されていた。

それ以外のテーブルでは、そんな配慮が合ったなんて知らなかった。


フェリクスも輪の中に入り、いろいろと案を出していく。

ゲームの知識はあるが、モブとして出てきた貴族の地位など知る由もない私は、邪魔にならないよう輪から離れた。


ふと、部屋の隅に茶葉が並べられていることに気がつく。

それぞれの茶葉には持ってきた人の名前と茶葉の種類が書かれていた。


じっと見ていた私に、近くにいた生徒がおそるおそる話しかけてくれた。

「これは毒味用のものです」


「毒味?」


学園を牛耳っていたセリアが恐いのだろう。びくびくしながらも答えてくれた。

「はい。交流会をかねたお茶会は、女生徒がお茶を、男子生徒がお菓子を用意します。お茶とお菓子のマリアージュを名目に、生徒同士の交流をはかるという目的がありますが、それは様々なお茶やお菓子が生徒同士で交換し合うということ。万が一・・・・・・がないようにです。こちらはすでに済んだものですね」


「すべてではないの?私のものは出していないけれど」


それに、生徒は困惑しながら答える。

「王族やある程度の地位の貴族の皆様のものはいたしません。疑うことは不敬にあたりますから。ですが、それに値する証明書をお持ちいただきます」


「証明書?」


「えぇ。あらかじめ毒味をしていただくなど問題がないことを書面で証明するのです」


証明書?そんなものは用意していない。

動揺して顔が恐くなっていたのだろう。悪名高いセリアを怒らせたと焦ったのか、説明してくれた生徒は大げさに頭を下げる。

「すみません!何か至らぬ点があったでしょうか!」


彼が大きな声で謝ったことで部屋宙に響きわたり、皆の視線が私に集中する。

端から見れば、セリアが一般生徒をいじめている図に見えるだろう。


これ以上悪評が広まっても困ると焦っていると、フェリクスとクロードがやってくる。

「なんの騒ぎだ」


事態が悪化しないように自分から素早く説明する。

「今日のお茶会に持ってきた茶葉に、証明書が必要なことを教えてもらったのです。私がそれを知らなかったので焦ってしまっただけのことです」


それにクロードは怪訝な顔をする。

「証明書?家で用意した茶葉についていただろう?」


あいにく、家にあったものではなく自分で買ったものを持ってきていた。

説明すると、クロードは何をやっているといった顔でこちらを見た。

フェリクスもあきれた顔でこちらを見ている。

目に見えて二人の好感度が下がっていくのがわかる。


立場上、セリアは皇太子の婚約者でアデレード家の令嬢。

茶葉の証明書がないという理由でお茶会を欠席することはありえないのだろう。


これ以上好感度を下げるわけにはいかない。

私はあわてて口を開いた。

「では、今この場で証明すればよいでしょう?」


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