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悪役令嬢に転生したけど、最悪の選択肢しか選べなくて処刑ルートまっしぐらな件  作者: 冬原光


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ランチの時間

さすが噂好きの貴族の学校といったところか、午前中の授業が終わる頃には学園中にセリア・アデレードが頭を下げたことが広まっていた。


朝来た取り巻き達も、聖女とはいえ平民に頭を下げたセリアに失望したのか寄ってこない。


おかげで、落ち着いて昼を取ることが出来た。

セルジュが用意してくれたサンドイッチなどの軽食を持って、学園内にある庭園へ向かう。


お昼は食堂やサロンで食事を取ることがほとんどのようで、この時間に庭園にいる生徒は一人もいなかった。

まだ勝手がわからない学園の施設を使うことはためらわれたので、しばらくは家から昼と持ってきて適当に外で食べることにしていた。


木陰がかかるベンチを見つけ、腰をかける。


ゲームに何度か出てきた庭園は、スチルの通りとても美しかった。

今は春だから白とピンクの花を中心に整備されているようだ。たしか、月ごとに花の色が変化していく用だった気がする。


この庭園の花が三回変わる頃までに、私は生き残れるのだろうか。

感傷的になりながらも、お腹は好いたので持ってきた包みを開く。


野菜たっぷりのサンドイッチと、デザート用のフルーツはおいしそうだった。

さっそくいただこう。


手を伸ばそうとしたとき、背後で足音がした。


驚いて振り返ると、そこにフェリクスが立っていた。

なぜこんなところに、と呆然としていると、フェリクスが話し始めた。

「今、話は出来るか」


突然の出来事に冷や汗をかきながらもなんとかうなずき、フェリクスのためにベンチのスペースを開ける。

だまって座り、じっと前を見つめるフェリクスの真意がわからず黙っていると、フェリクスが口を開いた。

「なぜ何も話さない?」


言われたことがわからず、なんと返せばいいのか考えこんでしまう。

フェリクスは続けた話した。

「いつもはこちらの都合などおかまいなしに、私にまとわりつき話をするだろう」


そう言われて、ゲームのシーンを思い出した。フェリクスを攻略するときは、たいていセリアもセットで登場していたものだ。

序盤のうちは、彼と話をすると必ず会話に参加してきていた。


それをいぶかしんでいるのだろうか。取り急ぎ、彼が納得するようなことを言う。

「あのようなことがあった後ですから、私からフェリクス様に話しかけるようなことは出来ません」


フェリクスはそれでなお疑問に思ったらしい。

「いつものおまえであれば、そんなことは気にしないはずだ。・・・・・・何を考えている」


どうやら、殊勝な態度が何かをたくらんでいると疑われたらしい。

悪役令嬢はその役柄通り、どんな行動ををしても悪いように取られるのだろうか。


そうであれば、彼と何を話しても無駄かもしれない。

だが、せめて真摯な態度を心がけようと殿下に向かうために食事を中断しようと包みを閉じかけた時、彼が私が逃げると判断したのか、手を取られる。

「待て、まだ話は終わっていない」


その拍子に、セルジュが作ってくれたサンドイッチが地面に落ちてしまった。


お腹が好いていたから、食べ物が無くなったことはショックだが、それ以上にせっかくセルジュが作ってくれたものがむげにされたことが悲しかった。

家の使用人から好感度最悪の私のために、普段は作らないはずのサンドイッチをつくることを調理人がいぶかしんで渋ったのだろう。

なれない料理をしたからか、自信なさげに「お口に合えばいいのですが・・・・・・」

と差し出してくれたセルジュの顔が目に浮かぶ。


彼に申し訳ないことをした。せっく作ってくれたのに。

攻略対象相手に余計なことをするのは愚かな行動だろう。けれど、はじめからこちらを悪としてくってかかるフェリクスの態度に怒りが収まらなかった。


だから、ほんの少しだけ反撃をすることにした。


私は落ちたサンドイッチを拾いながらフェリクスに言った。

「フェリクス様の気持ちがわかりました。自分の言葉が相手に伝わらないのは悲しいものですね。殿下は腹立たしかったようですが」


「何?」


「そのままの意味です。『私からフェリクス様には話しかけません』それ以外の意味も意志もありません。・・・・・・元々私たちの会話は、私が話しかけて始まっていました。私からお声をおかけしないということは、これからはフェリクス様のお手間をかけることはないでしょう」


フェリクスが怒ってゲームエンドにならないか、突然ゲームウインドウが発生しないかなど緊張しながら見守っていたが、特に何も起こらなかった。


フェリクスはどこか呆然としていた。

受け取った内容はさておいて、セリアの・・・・・・私の言葉がちゃんと伝わったようだ。


また何か会話が発生する前に、もうここを離れよう。お昼はせめて一人でのんびり食べたい。

まだデザートのフルーツは残っているはずだから、それは食べないと。


私は包みを持って、頭を下げる。

「では、私はこれで失礼いたします」


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