財政破綻のレトリック、銀行預金で国債を買っている~
いわゆる国の借金問題で、財政破綻論者はこう言う「国債は銀行預金を使って購入している~だから、民間預金が潤沢な今は良くても民間預金が尽きたら破綻するゥ~」要するに、政府が国債を発行すると、民間資産は”減少”するという主張だ。ま、もっともらしい主張に聞こえるが、サラ金と銀行の区別も無く、予算執行の実態と乖離した主張である。一言で終わる話である。
『国債を買う場合に市中銀行が使用するのは、銀行預金ではなく日銀当座預金である』
日銀当座預金というのは、銀行・政府・中央銀行の間でのみ流通する代物であり、一般経済への関与というのは、銀行預金を現金に換える際の引換券程度の役割しかない。そもそも、こんなのは信用創造というか銀行業に絶望的に無知であるが故の主張に他ならない。預金を振り込みに使おうとしたら「申し訳ありませんが、貴方の預金は投資に回されているので使用できません」とか言われた事があるヤツが居るのか? 銀行業は貸金庫業ではない事をいい加減に理解すべきだろう。
銀行が銀行預金を貸し出すのに、現金など不要である。何故なら、銀行預金は銀行がデーターを記帳するだけで発生する代物なのだから。今の世の中、日本銀行券や硬貨などより銀行預金のが遥かに流通してるカネである。銀行預金の裏付けは現金ではなく、日銀当座預金であり、そして、銀行が銀行預金を作り出せるように、日銀は日銀当座預金というカネを自分の裁量で創り出せる。
勿論、実態経済への貨幣流入によるインフレという問題はある。しかし「ハイパーインフレになるまで財政拡大すると、ハイパーインフレになる~」とかいう主張に何か意味があると本気で思っているのは財政破綻論者ぐらいである。そもそも、30年以上もデフレ・低インフレを続けた挙句に、このコロナショックで凄まじいデフレ圧力が生じて倒産ラッシュになっている。モノが全く売れなくて困っているというに、モノが売れすぎて商品が店頭から無くなる事を心配するという訳である。根本的に、インフレ=ハイパーインフレぐらいの理解度なのだろう。いまだにジンバブエドルが~ドイツマルクが~である。そもそも、何故にインフレが過熱したのか? という観点が全くないのだ。生産能力の棄損によるインフレも、需要過熱によるインフレも区別が無い。要するに、白人の国外脱出による農場管理者の消滅という問題や、占領&ストライキで停止しているルール工業地帯の生産能力などが、”カネを減らす”というコマンドを押せば解決するとマジメに信仰している訳である。
この訳の分からない宗教が世に蔓延りだしたきっかけは1970年代のスタグフレーションだろう。この時期に中東戦争が起きているのだが、産油諸国の石油戦略に端を発する石油危機により、世界は財政破綻論者が思うインフレ、すなわち不景気を伴うインフレに見舞われたのだ。
極めて常識的な思考回路を以てすれば、なんでインフレが起きたのか? と問われれば、そりゃあ、現在より石油依存度が遥かに高い状態で産油諸国が計画的に原油輸出を絞ればインフレになるだろとしか言いようが無い。勿論、投機による石油価格の高騰という面もあるが、根本は生産の問題であり、政治の問題である。しかし、”カネの量が多かったから”とマジで言っているのが新自由主義という思想である。
そもそも、財政破綻論者は時間の流れすら理解出来ない連中である。いや、難癖付ける事しか考えていないので文脈ガン無視の藁人形叩きしか出来ないと言うべきか。例えば、財政破綻論者の主張で国の借金1000兆円! とかいうやつがある。MMTというか、従来の経済学の範疇でも”額面そのもの”は問題になどならない。政府債務というヤツは繰り越しされ蓄積されており、明治から現代を考えると実質値ですら500倍以上増えている訳だ。コレは世界中でそうである。故に、額面そのものが問題なるわけでないという意味で、債務残高が5000兆になっても問題にならないと述べる。
すると彼らは”今すぐ”5000兆円発行して財政拡大しても問題にならないと言った~という風に解釈する訳だ。MMTにしろリフレにせよ、インフレ値に規制されるとハッキリと述べているにも関わらずだ。コレを藁人形叩きと言わずにどうするのやら?