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朝ごはんとチートと旅立ちと

 翌朝。

 早朝の、朝日が昇り始める頃、俺は目が覚めた。ちょっと寒かったけど、朝露の湿気を感じながらの目覚めは実に心地よい。

 なんていうか、肺が清らかになるっていうか?

 ともあれ、俺は目をこすって周囲を見渡して、未読通知をしきりに報せるステータスウィンドウを見つけた。


 反射的に開けると、それぞれの能力値が天元突破していた。


 見たことのない数値だ。どれもこれも余裕で一〇〇万突破してる。うっひゃあ。

 うっかり物を掴んだら砕くとかないよな?

 ちょっと不安になって石ころを拾ってみるが、大丈夫だった。


 ほっと安心して、俺は次にスキルを確認する。案外少ない。というか、どうやらスキルそのものは獲得しているが、使用可能条件を満たせていないらしい。


 スキルツリーは全解放したけど、取得にはポイントが足りませんってやつだ。

 これはちまちまとやっていかなきゃダメか。いやまぁ構わないんだけど。


 一応、現時点で使えそうなのは、


 《完全感覚共有》

 《取得経験値減SSS》

 《念力B》

 《見破りSSS》

 《テレキネシスSSS》

 《鑑定SSS》

 《弱点克服SSS》

 《打撃・斬撃・魔法耐性SSS》

 《自己再生SSS》

 《治癒粘液SSS》


 ってとこだ。

 十分すぎる気がする。つか、耐性もちと再生能力の掛け合わせはヤバい。


「ん……おはよう、ございまふ」


 辟易していると、フェリスがむっくりと起きた。眠そうな顔に、寝癖。またちょっとへなってる猫耳。


 やば可愛い。


 なんかもう色々ともう本当にやばい。

 思わず愛でたくなるのを我慢して、俺は笑顔を作る。ブラック企業で覚えた愛想笑いだ!


『顔ひきつってるよ、マスター』

『あれだけの天使を見せられたら、そりゃ顔もニヤけるってもんだけど』

『『しまらないね』』


 もうホントにぐりぐり抉ってくるのやめてもらえませんかね?

 背中からやってくる悪夢の言葉たちに負けそうになりながら、俺はため息を吐いた。


「とにかく、だ。朝ごはんの調達にでもいこうぜ」

『わかった』


 ちょうどお腹も空いてきたし。

 顔とかも洗いたいと思ってたら、フェリスが魔法でいっぱい水を出してくれた。


 ハンモックに水を入れてもらって、桶代わりにした。


 朝日を反射してきらきらしてる水をすくって、俺は顔を洗う。

 うん! 冷たくてきもちいい!


「ひゃーっ。朝から気持ちいいな」

「そう言ってもらえるとうれしいです」


 同じようにフェリスも顔を洗って、にかっと笑ってくれた。

 すっきりしたところで、朝ごはんだ。


 後片付けも必要なので、三班に分けて行動する。


 狩猟組と、収穫組、そして後片付け組だ。

 朝からがっつり肉は辛いんだけど、そこは分かってるはずなのでお任せだ。

 俺は考えごともあるので、後片付け組である。

 ロープを解いて、ハンモックを下ろしていく。高いところに設置してあるのは、形状変化で腕を伸ばして対処だ。

 筋力値とかが異常なことになってるので、まぁ楽なこと楽なこと。


 それは『俺』たちも同じことで、次々と獲物をしとめていってる。


 完全感覚共有が手に入ったので、手に取るように分かった。これは便利だなァ。


「カナタさま。今日は人里にでるんですよね?」

「ああ、そうだよ。ちゃんと解決できるようにしないとな」

「あの、作戦とかあるんですか?」


 フェリスは不安そう、というより、心配している感じだった。


「ちゃんとあるから大丈夫。そんな人里全部を敵に回すようなことはしないよ。というか、たぶん、今回は人里の人たち、あまり関係なさそうなんだ」

「そうなんですか?」

「うん。なんとなくだけどね。どっちかというと、あんまり関係ない人がでしゃばってきてるんじゃないかなって」


 例えば、貴族のぼんぼんとか。

 全然ありえる話だ。

 色々調査していけば分かるだろう。まずはチョビを連れて行って、依頼人に接触。そこから辿るのが一番手っ取り早い。


 万が一戦闘になったとしても、負ける気はしない。


 だって、このレベルだしな……。

 ただ、なるべく戦闘はしたくない。俺は平和にのんびりいきたいんだよな。まぁそのためには色々と必要だし、それ以前に、村をなんとかしないといけないから。


「そうなんですか」

「まぁとにかく、任せてみて」


 言いつつ、俺は水で濡れたハンモックに触れ、水分を吸収する。スライムになると、こういうこともできる。今知ったけど。

 できるかなって思ったらできちゃったのだ。

 すぐに乾いたハンモックを折り畳み、一か所に集めていく。それが終わったら、大きい葉っぱとかを用意して、簡易的なお皿にしていく。


 準備が終わってしばらく待っていると、『俺』たちの気配がした。


 どっちも充分な量を確保したみたいだな。

 戻ってきた『俺』たちは、用意した葉の皿に果物をいっぱい並べ、また、パンを並べてくれた。ほくほくとまだ湯気が立っている。

 そうか、魔物倒したらパンまで出てくるかー。なんかもうびっくりする方向性を見失いそうだな。

 乾いた目をしていると、フェリスはキラキラと目を光らせて、大きなよだれを垂らした。もう分かりやすすぎる。


「わぁー、すっごい! 美味しそうな匂いがしますよぉ!」

「うん。香ばしい小麦の香りだなぁ」


 本当に焼きたてのパンって感じだ。

 俺は早速、ひとつ手にとった。ちょっと熱いくらいだけど、大丈夫。

 香ばしい小麦色のパンは、あんパンみたいな形をしていて、見た目からも食欲を誘ってくれる。早速食べてみよう。


 さくっ。もちっ。


 薄い表皮はパリパリしてるくらいなのに、中はもっちもちだ。口いっぱいに、はふっとしたくなるような熱と、パンの自然な甘さが広がる。小麦がしっかりしてるのが良く分かる。美味しい。

 けど、それだけじゃなかった。

 さらに噛み進めると、とろっとしたものが舌に落ちて来た。

 肉と野菜の旨味が凝縮されたスープ。シチューだ。その奥から広がってくるのは――


 キノコだ。キノコの旨味だ!


 芳醇とした森の旨味。予想通り、おおぶりのキノコの食感が乗ってきた。

 きゅっきゅと噛みしめると、さらに旨味が広がる。それをパンが吸収して、より美味しさを引き立ててくれる。


「お、おいひぃっ……!」


 はふはふと口から湯気を吐き出しながら、フェリスは言う。

 あー確かにちょっと熱いよな。うん。

 でもこの熱さもまた、美味しさなんだよな。


『うん、このうまさはヤバい』

『果物も瑞々しいなぁ』

『これ、梨だな。こっちはリンゴ』

『バナナだね、これは』


 俺の好きな果物オンパレードだな。

 思いつつ、俺は果物にも手をつける。こんなお腹のいっぱいになる朝ごはんって、もう何年振りだろうなぁ。

 いつもはクラッシュゼリーか栄養ドリンクか。むしろありつけたらいい方で、食べない時の方が多かった気がする。


 朝ごはんをしっかり食べられるって、こんなに幸せだったんだなぁ。


 噛みしめていると、『俺』たちも同じ様子で、みんな目をとじて幸せそうに笑んでいた。

 しばらくその余韻に浸ってから、俺たちは朝ごはんを食べ終えて片付ける。

 後は出発するだけだけど、まずはチョビを迎えにいかないと。


「あ、ここにいた」

「『『チョビ!?』』」

「あひいぃぃぃっ!?」


 驚いてみんなが声を出すと、チョビは驚いて腰を抜かした。

 だからそんなにビビらないで?

 むしろチョビ、君の見た目の方が怖いから。


「おいおい、大丈夫か?」


 でもここまで情けない姿みると逆に可愛くなるよな。

 俺はチョビに手を差し出す。チョビは涙目になりながら俺の手を取った。


「い、いきなり驚かすからだろ!」

「驚かしてないしむしろ驚かされたのは俺だからな?」


 ぐっと引っ張って起こす。力加減の具合を心配したけど、大丈夫だった。どうもあの反則的な数値は、出そうとしたら出るって感じなのかも。

 ちなみに試しに軽く力をこめてみよう、とかは思わない。もしそれで何かあったら絶対にイヤだし。俺はそんなのしたくない派だ。


「っていうか、なんでここにいるんだよ。しかも一人で」

「ああ。村長さんに釈放されたんだ」

「え?」


 意味が分からず、俺はあほな声を出してしまった。


「昨日、遅くまでみんなを治療して、一晩牢屋に入れられたんだけど……それで朝、釈放されたんだ。好きなとこいけって」


 なんとも剛毅なことである。

 フツー、村を滅ぼしかけたヤツを一晩で解放するか? つか俺、チョビを連れていくって話をしてたはずなんだけど。

 まさか、村長は自分からチョビがくるって分かって解放したのか? ありうる。いやもうホント、あの村長はなにものなんだ。

 呆れていると、フェリスは「村長らしい」と微笑んでいた。ってことはいつものことか。


「……だから俺は好きにする。まだ、償いが終わったわけじゃないから、俺はここに来たんだよ。あんたらについていって、協力する」


 ぶっきらぼうに口をアヒルみたいにしてから、チョビは言う。


「チョビ。お前も大概男前だな。ビビりなのに」

「ビビり言うな!」

「いやだって」


 俺は腕を形状変化させる。とろ、っと垂らしてから。


「溶かしちゃうぞ?」

「あっひょおおおおおっ!?」

「ほら」


 また腰を抜かしてがっつり尻餅をつくチョビに俺は微笑む。すると、なぜか近くにいたはずのフェリスも顔をひきつらせて遠くに逃げていた。


「カナタさま……それ、わたしも怖いです」

「………………あれ?」


 俺は首を傾げた。


次回の更新は夜から深夜です。

面白い物語にしていきます。応援お願いします。

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