episode2(9) そう簡単にはいきません
夜。電話の着信音が静かな部屋に響く。その音に私は眠りから覚まされた。どうやら橘さんのようだ。
「でるのが遅い。私が電話してるんだから3秒以内に気づきなさいよ」
「寝てたんだってば」
電話してる時の橘さんはいつもと少し違う。顔が見えてないからか、素直になる。いつも素直じゃないのは表彰を見られるのが苦手だからなのだろうか。
「委員長さ。あの……あいつ」
「実莉ちゃんのこと?」
「そう。あんたあいつどう思ってんの」
少し考える。この質問はどんな意図からのものなのか。橘さんはよくわからないけど実莉ちゃんに対して対抗意識があるみたい。どう思ってるって好きかってことなのかな。
「うーん、好きだよ」
「そうなんだ」
橘さんの声はどこか残念そう。あれ? なんかまずいこといっちゃったかな……
「私とどっちが?」
「ええっ! そんなの選べないよ~」
「はあ、あんたの言ってるのはそういうことね。ならいいわ、おやすみ」
「う、うん」
答えられなかったのに安心した様子で橘さんは電話を切った。
数日後。私は橘さんと実莉ちゃんを誘ってショッピングに行くことにした。
「ねえ、委員長。誘ってくれたのはまあ嬉しいけど、なんでこいつがいるのよ」
「こっちのセリフなんですけどぉ」
顔を見るや否や早速突っかかり始めた。この二人を見てるとなんだか子供の喧嘩を見てるみたいでなんだか和む。
「では、橘さんと実莉ちゃんを仲良くしちゃおう計画スタート!」
「無理」
「無理です」
やっぱり似てるよこの二人。
「あ、この服華先輩に似合うと思います!」
「何言ってんのよ。こっちのほうが絶対いい」
「あのクレープたべましょうよ」
「こっちのほうが絶対美味しいとおもうけど?」
「華先輩は私のほうが好きなの!」
「何よ偉そうに、キスされたことあんの?」
「ぐぬぬ。またそれを~っ」
服屋さんで、クレープ屋さんで。どこでもこんな調子。これはかなり難しそうだ。
ていうか橘さん、大人げないよ。
「ていうか委員長。なんでそんなにこいつと私を仲良くさせたいわけ?」
「そりゃあ大好きな友達同士、喧嘩してほしくないもん」
二人が好き勝手言いあってるのも好きだけど、やっぱり仲良しが一番じゃない? 押しつけがましいかも仕入れないけど私はただただそうあってほしいだけだ。
「まあ、華先輩がそう言うなら仲良くしてあげる」
「それならまずその態度をなおしなさいよ」
「何? 年上だからって偉そうにしちゃって」
「ほんとムカつく!」
……だめだこりゃ。