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ツンデレな友達(?)ができました  作者: 黒輪サン
第四章:二人の明日
22/22

episode4(22) 二人だけの場所へ

 勢いに任せて教室を飛び出した私は逃げるように家に帰ってしまった。私はなんてひどいやつなんだろう。自分のことを機にかけってくれる親友すら傷つけて。私は今何をすればいいのだろうか。今の私にできるとするなら橘さんに会って話すくらいしかない。私が橘さんのもとに行けばかえって傷つけてしまうかもしれないけど今は他に何も思いつかない。私は橘さんのもとに向かった。



橘さんは家を訪ねると案外簡単に私を招き入れてくれた。

「何の用? 学校休んだことなら風邪ひいただけ」

「別に隠さなくてもいいよ、分ってるから。ごめんね、気づいてあげられなくて」

「そっか。バレちゃったんだ」

橘さんはそう言うとそのまま泣き出してしまった。

「私もう嫌だよ……ただ委員長のことが好きなだけなのにどうしてなの」

「橘さん……」

どう声をかけてあげればいいんだろうか。私はただ橘さんを抱きしめて一緒に涙を流すしかできなかった。私も嫌だよ橘さんは何も悪くないのに傷つけられて。もう二人だけでどこかに行ってしまいたい。二人だけの場所に。

「私と委員長だけのどこかに行っちゃいたいな。そこでずっと幸せに二人で暮らしてさ。最期までずっと」

「私も同じようなこと考えちゃってた」

橘さんはそこで少し笑った。私もそれがうれしくて顔がほころんだ。

「行っちゃおっか。二人で誰もいないところまで」

「何言ってるの?」

「私たちが同じ思いでいるならきっと歌恋や実莉ちゃんみたいな私たちの味方は背中を押してくれるよ」

橘さんは困惑しているようだった。まさか本当にこんなことを実行しようとするなんて考えてもみなかっただろう。

「本気なんだ」

「嫌なの?」

「別に私に未練なんかない。委員長とは違うからさ。加賀美さんたちには礼くらいしときたいけど」

「じゃあいいじゃない。別に離れていたって友達は友達だよ。歌恋と私の仲はそんな簡単に引き裂かれないって」

もう決めたんだ。橘さんが好きだから。橘さんが笑うところが何よりも好きだから。そのためなら全てを捧げるって告白したあの日に決めたんだ。だから悔いなんてない二人で遠くまで、誰もいないところまで行くんだ。



その夜。私たちは歌恋の家を訪ねた。

「歌恋、今日はごめん」

「大丈夫だって、私も悪かった。まさかそれだけでこんな時間に? なわけないよね」

玄関で話している私たちの前に実莉ちゃんがやってきた。

「あれ、二人そろってどうしたんですか?」

「私たち二人でどこか遠くで暮らすことにしたの」

「何言ってんの華」

当然、歌恋も実莉ちゃんも私の言ったことにきょとんとしていた。

「もう高校生だしどうにかなるよ」

「そういう問題じゃないでしょうがって言ってもどうせ考えを曲げないことぐらいわかってるよ」

「じゃあお別れを言いに来たってことですか?」

「別に遠くに行ったって友達じゃなくなるわけじゃないし、いつでもまた会えるでしょ」

実莉ちゃんの言葉に意外にも橘さんが答えた。その優しい声に曇っていた実莉ちゃんの表情が晴れた。

「意外にいいこと言うじゃん。華先輩が認めただけある」

「そういうわけだから長いこと会えないかもだけど」

「わかったよ。二人がそれでいいなら私も実莉も止めたりしないから」

「ありがとう」

私たちは声をそろえて二人に感謝の気持ちを伝えて旅立った。



私たちは夜が明けた後、行くあてもなく電車で移動しているところだ。

「結局どこに行くの?」

「まずは家だよね。超安いとこ」

「虫とか出るの嫌だからね」

「贅沢言わないの」

これから私たちはどんな人生を歩んでいくのだろうか。まあ、何が起ころうと二人なら乗り越えられるし心配する必要なんかない。今はこの幸せな瞬間をかみしめていたい。

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