episode6(18) 惚気ちゃってもいいよね
今日も今日とて橘さんとデート。今日こそは絶対にたくさん話してあんなことやこんなことも……なんて考えてはみたが最近の自分たちを振り返ると全く期待できそうになかった。
公園につくと橘さんはすでにベンチに座って私を待っていた。
「遅い」
「ごめんごめん」
私は橘さんに寄り添うように隣に座る。最近は進展がないけどこうしているだけでも幸せだ。
「暑い」
「そうだね~」
「委員長がくっついてるからでしょ」
「嫌?」
橘さんはそのまま黙る。これは嫌がってない反応だ。なので私はくっついたままでいようとしたが、そうは言っても今日の気温は35℃。橘さんの言う通りくっついたままではいられないので名残惜しかったが離れることにした。
「やっぱり外暑いしどこか行く?」
「う~んどうしよう」
「てか委員長宿題終わった? 学校来週からだけど」
「あ」
そう言えばそうだ。まだほとんど終わっていない。残りの宿題のことを思うと寒気がしてきた。暑いから寒気はウェルカムだけど。
「手伝ってあげるから図書館でも行ってやるよ」
「ありがとうございます」
図書館の中は冷房が効いていてとても涼しい。ここならなんとか橘さんもいることだし宿題を片付けられそうだ。
「ほらさっさと始めるよ」
「う~めんどくさい」
「つべこべ言わずにやるの!」
私たちが宿題を進めていると、ちょうど図書館に来ていた歌恋がやってきた。
「お! なんだなんだ告白成功したなら連絡してよ」
「あ。忘れてた」
「まあいいや。お邪魔しちゃ悪いしこれで」
早々に退散しようとした歌恋を橘さんは止めた。
「加賀美さん。今暇? 暇でしょ。委員長の宿題手伝って」
「え? ああ。いいよ」
橘さんの勢いに困惑している様子だがどうやら手伝ってくれるらしい。それにしてもなかなか強引だ。
「二人ってどこまでいったの?」
「はあ? いきなりそれ?」
「何恥ずかしがってんの~立花さん結構かわいいじゃん」
「でしょ?」
ここで私の惚気スイッチがオンになった。真っ赤になる橘さんを差し置いて歌恋とどんどん盛り上がっていく。
そうしているうちに日が暮れた。もちろん宿題はほぼ進んでいない。
「すみませんでした」
「ごめんなさい」
橘さんは恥ずかしさのあまり思考が停止しているようだ。
「じゃあこの辺で~」
歌恋は瞬く間に逃げて行った。
「……帰ろう。しっかりして橘さん」
「いつの間にかもう日が暮れてるし」
「ごめんね。盛り上がっちゃった」
「明日委員長の家行くから覚悟しといて」
そう言えば今日はしっかり話せた。それだけで十分な進歩だよね。宿題は全然進んでないけど。




