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ツンデレな友達(?)ができました  作者: 黒輪サン
第三章:夏休み
17/22

episode5(17) 精一杯の大好きを

 やはりこの不思議ななつかしさは気のせいなんかではなかったんだ。なぜ忘れていたんだろう。


「橘さん。私たち……」


「うん」


 歌恋の言う通り。運命だったんだ、私たちの出会いって。橘さんと私は昔もこうしてここで花火を見た。そう、昔私がこのお祭りで迷子になってた時に橘さんが助けてくれたんだ。今もあのころの面影がある。


「やっぱりあの時私を助けてくれたのって橘さんなの?」


「そうみたい」


 どうしてこれまで忘れてたんだろう。あんなにお礼が言いたかったのになぜ気づかなかったんだろう。


「あのときはありがとう。ずっと言いたかった」


「忘れてたくせに。」


「ごめん」


「別に謝れなんて言ってないでしょ」


 感慨深くなって涙が出てきた。奇跡みたいな運命がずっと前から私たちをつないでいたんだ。


「ほら花火始まるよ」


「何泣いちゃったからって話そらしてんの」


 花火が打ち上げられ始めた。夜空に咲くその大輪の花は一面の黒を一瞬の光で照らす。


「綺麗だね~」


「委員長。言いたいことがある」


「何?」


 橘さんはそう言ってまた私の顔をじっと見つめる。私は照れからか顔をそむけてしまった。


「だめ。ちゃんと見て」


 橘さんは私の顔を自分に向けるとつづけた。


「委員長。えっと……」


 どうやら言葉が詰まってしまったようで橘さんの声が途切れた。


「私も言いたいことあるから一緒に言っちゃおうよ」


「でも」


「一緒なら大丈夫でしょ?」


 あの時橘さんが一人で心細くて泣いていた私にかけてくれた言葉。


「わかった。あとそれ私のセリフ」


「じゃあいくよ」


 せーの。で声を合わせて。私は橘さんに気持ちをぶつける。橘さんはなんていうんだろう。でも今は気にしないことにした。橘さんが何と言おうと私はただ気持ちを伝えるだけだ。


「委員長!」


「橘さん!」


 私たちの声はそろった。もちろんそのあとに続く言葉も。


 ――私と付き合ってください――


 一句も違わずに声が重なった。お互いに顔を見合わせてそこから何も話せなくなる。声が出ないけれどこの感動は確かにここにある。やっぱり私たちは運命の赤い糸ってやつでつながってたんだ。決して断つことのできないその糸で。


「いいの? 私で」


「他に誰がいるっての。私には委員長しかいない」


「じゃあ……よろしく橘さん」


「うん」


 こうして私たちは恋人同士になった。




 どうしてこうなった。あれから5日。電話を毎日する。一緒に毎日出かける。それなのに必要最低限の会話しかしていない。もっと橘さんを愛でたい、もっと甘えたい。でも、恥ずかしくてできない。きっと橘さんも一緒だろう。もっといちゃつきたい。てか恋愛ってこんな感じなんだ。もっと何も考えずにラブラブしているものだと思っていた。ついこの間まで恋人いない歴イコール年齢だっただけあるな。全然誇れるようなことじゃないけど。いったんの山場はこえたもののまだまだ私たちの関係はいまいち進歩しそうになかった。

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