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温和怜悧


3人で向かった先は居酒屋

個室になっているモダンな雰囲気の飲み屋


「蓮、メニューとれ」

「はいよー、何頼むかね」

「取り敢えず飲み放題にして食べたい物頼むか」


2人の会話が凄くフランクで変な感じがするなと思う篠宮

さっきまで仕事モードだったがそりゃあプライベートは違うかとしみじみ


「篠宮も好きな物頼めよー」

「は、はいっ!」

「そんな緊張しなくていいよ、此処には怖い先輩達いないから遼とも気兼ねなく話せるよ」

「え!?そ、そんな…」

「大丈夫大丈夫、俺君のとこの先輩よく知ってるから」

「おい困らせるなよ蓮、俺も何となくもう察してるんだからな」


地味な意地の張り合いのなか注文をしまずは乾杯

そしてなぜ桜庭が篠宮を誘ったのか、という経緯を説明


「成程な…あいつ癖あるからいってきそうだ」

「だろ!?あいつ絶対ロリコンだぜ!」


爆笑しながらビールを飲む桜庭


「でも、その会議俺たちの部署の松阪さんもいたんだろ?」

「ああ、いたけど自分の部下がパワハラされてるのに何も動かなかったぜ」

「俺も篠宮に当たりが強いのは見てて疑問には思っていたんだが…いただけないな」

「あの人挨拶返してくれないし声小さいし自分のメンツばかり守る感じが嫌いなんだよ」

「本社にいた時から苦手だったけど…まさか上司になるとは思ってなかったよほんと」

「お二人とも、松坂さんの事知ってるんですね」

「「俺は嫌いだよあの人」」


2人の声がきれいにシンクロした

元々この2人は大学時代から友人で同じ会社に入り本社勤務からそれぞれ異動してきたのだという

そして今回、逢坂が劣悪な環境を改善する為に送り込まれたらしい


「本社でもよくない噂は届いていたが報告はなくて隠して動いている可能性があるから俺が暫く此処で働くことで体感し、探るというなんとも面倒な役割だよ本当に」

「自分のメンツを守りたいから部下が辞めようとも体裁だけ繕ってきた訳さあいつは…社員の事なんてなんも考えないで自分のキャリアアップだけしか気にしてない…昔からそうだから飛ばされてんだよあの人は」

「そうなんですか…確かにもう3年目になりますねあの人が来てから」

「それに上にいる女性社員の固定化されているのが問題だな」


桜庭の方がこっちに来てから年数は3年くらい経っているので職場の状況も把握している様で

特に松坂の事は前から知っていたが接する機会が此方で発生し余計嫌いになったようだ

そして問題は他にも山積みらしいこの職場の話は続く


「古株はそれなりにツテがあって上には媚びを売り生き残ってきている」

「言えばお局って事だろ、俺は女のそういう所理解し難いんだよな」

「2人共…女性には苦労されてそうですもんね」

「いや、なんて言うか職場が男に偏っているところもあれば逆なところもあってその差にやられる」


そこで桜庭が逢坂に突っ込む

「いや、篠宮ちゃん実はこの男モテるんだよ」

「”実は”って言わなくても分かります」

「入社した時からこいつはいつも注目の的だった」

「おい待てよ!蓮だって先輩たちに随分可愛がられてじゃないか」

「お前に比べりゃ雲泥の差だよ!遼がこっちに来た途端俺の部下たちも色めきだって困ったもんだ!!」


悔しいぜ!といいながらビールを飲み干しおかわりを注文する桜庭

でも、はたから見てもこの2人が並んでいたら目を引くと思う


「で、篠宮ちゃんって彼氏いるの?」

「は!?い、いきなりなんですか!いないに決まっているでしょ私なんて」

「いやいやいや…彼氏いそうだと思ったんだけどいないならラッキーかな」

「ラッキー、ですか?どうして…」

「蓮、からかうな篠宮が困っているだろ」

「俺冗談じゃなくて篠宮ちゃん興味あってさ、下の名前ってなんて言うの?」

「あ、唯織っていいます」

「唯織ちゃんか、素敵な名前だね」

「ありがとうございます!」

「うん、やっぱり会議の時から実は結構気になっててさ…俺なんてどう?おじさんかな」

「いえいえ!私26ですからもう逆に若くないですよ!」


いきなりのアタック?に少し驚いている篠宮に逢坂が話しかける

「すまんな、桜庭酔うとあんな感じになるんだよ」

「まさかのナンパ男に変貌ですか…」

「おい!誤解生むようなこと吹き込むな遼!!」

「事実だろ…あの時の合コンは「わーー!!あーーーーー!!」


そして逢坂が立ち上がりいったん個室から退室し桜庭と2人きりに…

冗談とは言え褒めてくれた人と一緒にいるのは照れくさいもので


「唯織ちゃん、さ」

「はい?」

「遼の事、気になってたりする?」

「逢坂さんをですか?いえ、確かにお仕事の面では憧れはありますが恋愛感情は特に…」

「そう、なら良かった」

「私、そう見えてます?」

「見えてないけどさ、もしも恋敵が友達ってなったら嫌じゃない」

「恋敵って、どういう…」

「つまり俺は、篠宮さんの事好きになってきてるところだから篠宮さんの近くにいつもいられる遼の存在が気になるのさ」


じっと真剣に見つめる桜庭の目は篠宮を捕らえて逃そうとはしてくれない

思わず篠宮の頬も少し紅潮してしまい俯き取り敢えず目の前にあるお酒を口にする

ちょうどタイミングがいいのか悪いのか逢坂が戻ってきた


「大丈夫か篠宮、顔赤いけど飲みすぎるなよ」

「は、はい!大丈夫です!」

「桜庭もへらへらしやがって出来上がる前にまず水を飲め水を」

「ははは!お前面倒見良すぎて俺の母ちゃんに見えてくるわ」

「…母ちゃんって言うのはやめろ」


そんなこんなで波乱?の飲み会はお開きになり篠宮が財布を出しお会計に向かうと

店員さんから思わぬ言葉を言われた


「お会計はすでに済んでおりますので大丈夫ですよ」

「え?でも・・・今出てきたばかりですけど」


そこでふと思い出した

ついさっき逢坂さんいなくなって外に出た時…と思い逢坂さんを見ても平然としている

だがその出来事に驚いたのは篠宮だけではない


「あ!遼お前!先に会計さらっと済ませやがったな!かっこつけやがって」

「いや、かっこなんてつけてないさ…今日飲みに誘ってくれた礼と思ってくれ」

「うわぁ、イケメンだ」

「逢坂さん、すみません私の分まで…」

「気にするなよ、俺達から誘ったくせに女性に払わせる訳にはいかないだろ」

「で、でも」

「今日のお昼俺に付き合ってくれたお礼と思っといてくれ」

「そ、そんな私だって逢坂さんと一緒にお昼過ごせてとても楽しかったんですから私にもお礼をする権利はあります!」


逢坂は口元に手を当てながら少し下を俯きそうか…とつぶやいた

それを見た桜庭が逢坂の表情を少し気にしつつも平静を装い逢坂をいじりながらタクシー乗り場に向かった




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