邂逅遭遇
昼からは企画・販売計画会議
何もご飯食べた後に眠くなるような会議やらなくたって…と内心思う篠宮
でも、出席しろと言われたものはしょうがない
資料を持ち会議室に向かう
会議室に向かう中で今回の会議内容をさらっと確認
「今日の議題は…新しい個人向け所品旅行の発案、ねぇ」
自分が当てられるか当てられないかわからないが一応考えては来ている
今回の会議には自分の上司もいるので少しやり辛いがまた怒られたら怒られただと思い溜息をつく
すると、先ほど見たような背中が前を歩いている…気がする
気付かれないようにそろーりと廊下を歩いていたが自分が入らなくちゃいけない場所に入っていった
つまり、篠宮の出る会議に先ほど嵐のように去っていった桜庭がいるという事
「ま、でも大丈夫だろう…逢坂さんいないし」
そう思い会議室に入り着席して会議が始まった
いつも通りの計画指針や今後の企画展開のの話やらで…正直瞼が重くなる
大体自分たちはそこまで企画だの何だの携わらず販売をしているだけだ
商品の詳細は知っており説明が出来るが、その企画の裏側がどうなっているのかなんて知らない
聞くと面白いなと思うことはあるが、収益がどうこう…というのまでいくとややこしくなる
簡単に言うと受けがいい商品を開発すればいいんだろう…なんて考えていたら
「販売部の篠宮さんはどのような商品が人気が出そうだと思いますか」
早速当てられてドキッとしたがもう頭にあることを言葉にした
「今、女子旅というテーマが大きく取り上げられていまして私はそこに注目して女性の方達向けのサービスを含めた個人旅行を提案致します」
反応もなくシーンとする会議室だが負けじとそのまま詳細を説明する
「今注目すべき場所はまず”石川県”です、北陸新幹線開通後に人気が急上昇しましたが近年金沢にあります兼六園が人気でありましてテレビでも金箔ソフトクリームが取り上げられ人気が高まっており…ひがし茶屋街は古き良き日本の街並みがありカメラ女子達をはじめ、インスタグラムでアップするのが流行しているんです」
サラリーマンの出張向けパックや家族のパックが多い中で女性目線で旅行商品を展開したいと思っていた篠宮は他にもホテルのサービス券を付けたりレディースルームを手配可能にできる商品の提案
一通り終えると特に否定的な意見は出ないで終えることが出来てホッとしていた、が
しかしそこである男性社員が呟いた
「でも、それって結局計画的に言ってるようで無計画に聞こえるなぁ」
篠宮はドキッとしながら見ると自分より役職が上の他部署の役員だった
男性社員は自分よりも下の者で特に女性が意見しているのが面白くないかのように見つめてくる
「無計画とは、どうしてでしょうか」
「いや、女子旅って最近確かにやたら聞くけど若い女の子達対象にして考えていいのかなって思ったら…君くらいの子が考えた内容だと渋かったりしないのかなって」
「つまり…何が言いたいんですか?私は20代女性のアンケートを基準に観光地をピックアップしました」
「ふうん…君が行きたい場所をあげて夢のような旅行計画に聞こえてきて、若い子達に受けるように考えないとダメなんじゃないの?君だって20代後半でしょ?その数年が大きいと思うなぁ」
「すると何人かの男性がクスクス笑っているのが聞こえた」
まるで”お前はもう若くないんだから”って言いながら私の提案をバカにしている
取り敢えず女であり自分よりも下の役職の奴の発言にはケチつけたいのだろう
悔しくて拳をぎゅっと握りながら堪えて反論しようとしたら
「すみません」
そういい立ち上がったのは桜庭だった
皆一気に桜庭に視線が集まる
「実は私も今回提案しようとしていましたのが”女子旅”なんですけでも、つまり今の発言からしますと考えたやつが若くてピチピチな女性でないと面白くならないじゃないか!と言いたいんですよね」
「ま、まあ…」
「ですが、他社も含め女子旅商品は数多くありますが貴方はその商品すべてにケチをつけることになる…何故なら女性を中心としてはいますが男性もいたり年齢層も様々ですから、本社に今回の会議の意見でこの様な発言が上がり商品見直しをするべきかという旨をお伝えいたしましょうか?」
「それは、その…いや」
「私の意見に対しては追及しないのに篠宮さんには随分楽しそうに意見し笑っておられましたが…顔色が急に変わりましたようで、大丈夫ですか?」
「・・・・・」
会議室が静寂に静まり返る
先ほど笑っていた複数名も気まずそうに下を向いている
「それに、私は先ほど貴方が仰っていた20代後半女性に対する”その数年”ですが…その数年があるからこそ経験し学び輝き楽しんでいるからこそ柔軟な発想をし提案ができるんだって思いますよ」
最後は桜庭の爽やかな笑顔で会議は締めくくられた
気まずそうに去っていく何名かを他所に桜庭が篠宮に話しかける
「お疲れ様」
「あ、桜庭さん…ご迷惑おかけしてすみません」
「なんで?君が謝ることじゃないよ」
「でも、私何も言えなくなってて悔しくて…そんな時に桜庭さんが」
「俺だってムカついたしさ、篠宮さんの提案凄くよかったよ」
「桜庭さんも私と同じような企画だったんですよね。ですから共感してくれて…」
「いや…さっきの女子旅考えてました発言ウソなんだ、篠宮さん助けたくてさ」
「え!?」
「俺だってこんな可愛い子の正義のヒーローになりたいじゃん!それにさっき変なこと言ってたやつ癖あって俺嫌いだから篠宮さんのおかげでギャフンといわせられてすっきりしたよ、ありがとう」
笑顔で篠宮にお礼を言うものだから先ほどの悔しさや怒りが吹っ飛んだ気がした
そして桜庭の笑顔に返すように篠宮も笑顔でお礼を言った
「ありがとうございます!私、もう戻らなくちゃ…今度お礼しますから!」
桜庭はお礼なんかいいよという前に篠宮は走って行ってしまった
更に桜庭もまた、その言葉を発せなかったのを逆にラッキーと思ってしまった
「お礼しに…会いに来てくれるのかな」
そう考えるだけで少しだけ照れくさくなった
さっきの感謝の言葉を伝える篠宮の笑顔を思い出すだけで
もっと、照れくさくなった