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臥薪嘗胆


今日も一日の仕事が始まる

平日の一週間の真ん中の水曜日は比較的お客様が少ない…気がする

定時に帰れるなと思いながらコピー機の前に立ち印刷が終わるのを待っている


すると先輩たちの雑談が耳に入ってきた

「逢坂さんって素敵よね」

「ほんと、顔もいいしエリートでしょ?」

「東京の〇〇大学卒業なんだってー!」

「え!?その情報マジ?」

「だってウチの支社の経理にいる人が同期で大学一緒っていってたから間違いないわよ」

「うわ、ますます素敵に見えてきたわ」

「顔もよし、頭もよし、仕事もできる…」

「今28歳でしょ?」

「だから私達と同じくらいだから狙い目って話よね」


皆やっぱり逢坂さんの事気になってるんだなと思っているとコピー終了の音が鳴り

書類をトントンと合わせてデスクに持っていく

さっき話していた先輩たちは世間でいうお局というポジションの人々だ


自分たちの住みよい職場を作るべく必死なわけであって

この職場は9割が女性と言っていい割合の部署

接客業という事もあってなのか職場環境は正直…そんなに良くはないと思う

退職する人が多く私の部署は他の支社、本社も含めて離職率ナンバーワンだとと…そうじゃないとか


女の人は噂話が大好きだ

悪口は格好のつまみとなる訳であるが大きな特徴がある

過去にいた人の悪口が特に多い

理由は明快であるが、今いる人の悪口をいうと何があるかわからないというのが真実

いない人は聞こえさえしなければ皆で楽しく盛り上がれる

それに参加しないと今度は自分が”標的”になるので頷いて合わせるのが暗黙のルール


そうやって、この会社で過ごしてきた

もう感覚は麻痺したように慣れてしまっている自分も毒されていると思う

従わないと敵になってしまうのが恐いという恐怖が先に来るのだ


「篠宮さん」


呼ばれて振り向くと後輩の山田がいた

唯織の中では歳も近いし信頼している人物の一人だ


「聞きました?逢坂さんの歓迎会の話」

「いや、来てないな…私昨日居なかったからさ」


そういうと山田は飲み会の案内の紙を差し出してくれた

会費はいつもの通り…ざらっと眺めると参加に丸をつけて返した


「篠宮さん参加ですね!じゃあ幹事さんに持っていきますから」

「ありがとう宜しくね」


そしてすぐにデスクに置かれた書類に目を通し束ねてホチキスで留める

先輩にやられる前にやらないと何を言われるかわからないという理由なのだが

閑散期もあって店が暇なもので雑務に勤しんでいると後ろに人の気配を感じ後ろを振り向くと


「あ、逢坂さん?」

「お疲れ様篠宮さん、その山積みになっているのは?」

「全体会議に使う資料と溜まっていた書類をファイリングしているんです」

「俺も手伝うよ」

「え!?いや、逢坂さんにそんな真似は…」

「おいおい、俺はそんなにお偉いさんじゃないんだぞ?手伝うのは自由じゃないか」

「で、でも…」


戸惑っていると隣の椅子に座り資料をまとめ始めてくれた

来たばかりなのにどのファイルに何が入っているのか知っていたかのようにファイリングしている


「凄いですね…昔からいたみたいに」

「ん?ああ、朝確認してたからね」

「さっき私と会った時ですか?」

「そうそう、早く覚えないと聞かれたときに判らないと恥ずかしいだろ」

「かっこいいですね」


思わずかっこいいですねといってしまった

容姿とかじゃなくて、意識がかっこいいと純粋に思った


「ありがとう…なんか、さらっと言われると照れるもんだな」

「すみません…私思ったことすぐ口に出しちゃうんです」

「いいことだと思うけどな」

「よかったそう言ってもらえて」


そんな話をしながらやっていたらあっという間にもうすぐで終わるところまできた

しかし途中で窓口にお客様が来た音がしたので向かう


「あ、そのままでいいですからね!」


唯織が一言だけ告げると窓口に走っていった

その様子を見ながらフロントのパーテーションを一枚挟んだスタッフエリアを見ると

まるで何事もないように先輩達が雑談をし続けている


そしていざ篠宮の接客が終わると窓口に出るのが遅いだのと指導している様子が見えた

上司が様子を見に来たら仕事しているふり…といってもそれなりに上の社員には怒らない

かと思えば篠宮へのあたりが強い様にも感じた逢坂は戻ってきた篠宮に言った


「篠宮、仕事…楽しいか?」

「え!?いや…楽しくはないですかね、でもたまに遣り甲斐は感じる時はあります」

「そっか…篠宮この後休憩だろ?」

「はい」

「俺と少し付き合ってくれないか」

「は、はいっ!」


いきなりの逢坂からの提案に驚きつつも嬉しいと思った篠宮

二人でホワイトボートに自分たちの名前の下に”休憩”と書いてランチに出かけた





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