はじまり
天気は快晴
季節は冬が終わり春がやってくる
私、篠宮 唯織26歳独身
社会人として旅行関係の会社に勤めている
一応この会社に入社して6年目
本当は事務作業の方が好きだけど色々あって窓口業務の毎日だ
しかし、嫌といいながらも仕事だからと思い…ここまで来てしまった
いいのか、悪いのか…という所だが
そんな事を思いながらテレビで天気予報を見て朝食のシリアルを食べ準備をし出社
時期的に異動の話もあり自分に回ってこないかと期待したが…そうはいかなかった
内心残念な気持ちが大きいけれどしょうがない…また今年度もこの部署で頑張るしかない
現実に戻り会社の入り口に向かいエレベーターに乗り込む
唯織はそこでふと思い出した
そういえば自分が昨日休みだった間に新しく異動してきた人がいたっけなと
後で挨拶を済ませなければと考えながら更衣室に向かい制服に着替えた
毎朝自分の部署の事務室に挨拶をしてから窓口業務に就く
事務希望の唯織だがここの部署の事務室はピリピリしていて大嫌いなので勘弁だった
「おはようございます」
「「「おはよう」」」
何人かの営業さんたちは返してくれるのが決まり
勿論、気付いてるのに返さない人もいるけど面倒なので追及しない
「おい、篠宮」
そんなこと思ってたら営業さんに声をかけられた
「昨日異動してきたの下の窓口に居るから挨拶しとけよー」
「え?営業さんじゃないんですね」
「まあ…兼務みたいなもんだな」
「へえー…わかりました挨拶しときますね」
「頼んだわ」
基本男性は外回りの所謂世間でいうセールスマン的な仕事をし
女性が窓口でお客様を迎え入れ、接客をするというのがスタイルだ
でも…新しい人は兼務という事は、果たして男なのか?女なのか?
そう考えながらドアを開けると目の前に長身のすらっとしたスーツの人がいた
目の前にいたもので唯織が少し驚いているとその人は振り返り唯織を見て
「貴女は…今日此方に勤務の方ですか?」
「は、はい!篠宮 唯織と申します!」
「初めまして、逢坂 遼と言います、昨日から此方に異動してきました」
「こちらこそどうぞよろしくお願いします逢坂さん」
しかし…まあ
今目の前にいる逢坂さんという男性なのだが
身長も高いし切れ長の目に細マッチョ体系なのがスーツの上からでもわかる
クールな印象が伝わってくるがとても整った顔立ちの人だと思った
確かにこの人なら窓口に居たら目当てで来る人間違いなく現れると確信した
「あの…逢坂さんは元々どこ所属してたんですか?」
「私は本社の広報・デザイン部に…「え!?いいなぁ…」
思わず気持ちが口に出てしまった唯織
何を隠そう唯織は元からデザイン分野に長けておりずっと異動出来ないかと思っている
そんな時に自分の行きたい所に勤務していた人が来たとなると羨望の眼差しを向けるしかない
「篠宮さんは、デザイン部に行きたいんですか?」
「はい!此処に入る前は広告会社の契約社員だったんです」
「そうなんですか!ならソフトも使えるんですね」
「はい、だからこの会社のデザイン部に行きたくて…」
「今度私でよければ経験したことならお話しできますから気軽に言ってください」
「あ…ありがとうございます!」
憧れの部署にいたイケメンと少し仲良くなれた事を嬉しく思う唯織
もう休憩時間に聞きたいことが沢山ありすぎてウキウキしてしまう
だが…それを見ていて勿論面白くない人も陰にはい訳で
「なんなの…可愛い子ぶっちゃって」
そう呟いたのは唯織の後輩に当たるはずの山田 佐奈子
23歳で勤務年数4年目になるイケメンキラー
典型的な陰で動いて表ではケロッとしているタイプの女なのだが…この事実を唯織は知らない
いや、知らないというよりは”後輩なんだからそんなはずはなくいい子だろう”という無意識に頭の中で本当の佐奈子を知らないふりをしているのかもしれないのだが…
どちらにせよ佐奈子は2人の様子を見て”面白くない”と感じたのは間違いない
自分の方が可愛くて皆にちやほやされて生きてきたと勝手に思っているので唯織は佐奈子にとって非常に面白くなくて……利用しやすい人物だった
「絶対に…あんたになんか渡してやらない」