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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第四章 カウース大陸編
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第九十三話 ホワイトフェザー

 テンペストから渡された報告書を渋い顔をして見ているのはサイモンだ。

 報告内容は宵闇の森でまた前兆が見られたこと。これに対処するために今回は歩兵ではなく、オルトロスとコットスを使うことが書かれてあった。

 これはいい。


 問題は次の報告書だ。

 友人の几帳面な文字で状況を細かく箇条書きで書き出してある。

 纏めてしまえば……。


 また前兆が現れたので、現時点の戦力で敵を排除、闇を払う事ができれば最善とし、作戦を開始。

 順調に行っていたが森の最深部、中心付近のエリアから突然魔獣型の魔物が増えて苦戦し始め、1匹の巨大な魔獣が現れてからは戦局が逆転した。

 部隊は損害を受けたものの人的被害は無し。

 本命を発見した可能性があるので指示を乞う。

 また、私兵だけでは戦力が不足している可能性があるため王都やカストラ領へ援軍を頼むことも考慮している……と言うことだった。


「コットスが……やられただと?」

「あれはそう簡単に破壊出来るようなものでは無いですよ。その魔獣、かなり強いようですね」

「報告ではオルトロスの装甲もかなりの被害を受けているそうだ。対応しきれないためカストラ領へ運んでもらって修理に出すといっている。……修理代が掛かるな……」


 物が高かっただけに頭が痛い。

 コットスも1機は自分たちで修理できる範囲を超えているのだ。

 サイラスは流石にあまり金を取るつもりではないので最小限で抑えるつもりでは居るが。身内価格だ。


「安くしておきますよ、ハーヴィン候。後、王都のコットスやオルトロスは出さないほうがいいですよ。あの機体にはフリアーシステムが搭載されていません。ハーヴィン領が宵闇の森を管理しているから特別に付けたものですから」

「そうなのか?標準装備だと思っていたが……」

「値段的には同じものをもう1台買うくらいになります。早速役に立ったみたいで良かった……しかしちょっと不味いですね。コットスがやられるほどとなると、兵装を見直しておかないとまたやられてしまいそうです」


 様々な状況に対応できるように、汎用性の高い装備になっている。

 その為重武装にしたり、逆に軽装備にするなどしてその場にあった兵装に交換できるようにしてある。

 今回は速度を犠牲にしてでも、防御に回したほうがいいと思われた。


「ならばやはりカストラに協力してもらうしか無いか……テンペスト、いいか?」

「問題ありません。ただし動かせる台数は限られていますが。幸い戦闘用のオルトロス2台と、重武装のオルトロスが1台。更に私専用の魔導騎兵が1機、私のハンガーに格納されています。そして土木現場で作業中のブリアレオスを2機、試作品のギュゲス1機を追加で出せるでしょう」

「……作業中……って、一般人を連れて行くつもりか?」

「乗っているのはドワーフです。暗い所で作業することが多いため、特別仕様でフリアーシステムが搭載されていますし、移動速度は遅いとはいえ歩兵の移動速度に比べたら早いので。さらに言えば私たちにはキャリアがあります」

「こうして聞いてみると……本当に目をつけられてもおかしくない戦力を保有しているんだな……」


 サイモンが少し呆れているが、研究目的ということでその汎用性を証明するための実地試験とでも適当に言っておけばなんとかなるだろう。

 あの森の魔物に勝てなければ、ハイランドに配備するには心許ないというものだ。

 より完璧な仕上がりにするために、データを取りつつ検証するとでもすればいいだろう。


「乗員はどうするんだ?テンペストのって確か人入れないんじゃないのか?」

「私が乗るので問題ありません。ブリアレオスには作業中のドワーフがそのまま乗り込みます。ギュゲスはテストパイロットが搭乗しますが、基本遠距離からの支援砲撃や広範囲に渡る監視が主な任務です。オルトロスの武装はこちらの研究者が動かしますので、運転手のみサイモンの方から出してもらえればと思います」

「ちょっとまて、テンペストが乗るってどうやって?」

「一度、この船に私の魔導騎兵を呼びます」


 □□□□□□


 夜になり、誰も外に出ていない甲板にテンペスト達はやってきた。

 船内では流石に大きな物は出せない。


「それで……呼び出してどうするの?」

「基本的にはマギア・ワイバーンと同じ様に扱えるはずです。一度移って自身を登録すればいつでもそちらに意識を持っていけるはずですので」

『ん?おお!そうか、そういうことか。儂と同じように移動するつもりだな?』

「正解です。既にマギア・ワイバーンでは何度も出来ていることなので理論上は可能です。当然ながら同じく移動できるギアズにも付いて来てもらいたいところですが」

『役に立てるのならついて行こう』

「……反則だろお前ら……」


 生きている人は入れないが、意識を移した物であれば収納用のゲートを通れる。

 一度登録しておけば距離に関係なく、テンペストは意識のみをそちらに移すことが出来るのだから特に難しいことはないのだ。

 これは今のところテンペストやギアズにしか実行不可能な移動方法となる。


 そして、甲板に遠距離戦専用にカスタマイズされた、テンペスト専用機ホワイトフェザーが姿を表した。

 反射を極力抑えたマットなダークグレーの機体に、右側頭部の一本の羽を模した意匠が白く目立っている。

 サーヴァントやコットスのスマートなイメージとは異なり、前面の装甲が厚く作られたそれはより重厚な物となっていた。


「今までの魔導騎兵とは全く違うな……」

「機動性はサーヴァントに劣りますが、前方からの攻撃には強く、静音性に優れるように作られています。……砲撃すれば嫌でも場所は割れるのですが」

「一応サイレンサーを装備してるけど、それでも相当音が大きいからね。口径が大きすぎるんですよ」

「それ作ったのは博士だよね?」


 ニールのツッコミに顔を背けるサイラス。かなり珍しい組み合わせだ。


 そんなやり取りを横目に見ながら、跪いているホワイトフェザーの足元へと寄っていき手を触れるテンペスト。

 目を閉じて集中を始めると、遠隔操作での起動が完了する。


「ホワイトフェザーとの接続を確認しました。これより設定を開始します。ニール、私の身体を頼みます」

「あ、うん。わかっ……ってうわぁ!?」


 立ったままいきなり意識を失ったテンペストの身体を慌てて支える。

 ぐったりと力の入らないテンペストの身体を、お姫様抱っこしながらニールがホワイトフェザーの足元から遠ざかると同時に、ホワイトフェザーが起動開始した。


『……これが魔導騎兵の視点ですか。少し慣れるのに時間がかかりそうです。また、各部の神経接続を改良します』

「……テンペストが直接操るとそこまでカスタマイズできるのか……。私達では出来ないから羨ましいですねぇ」


 サイラス達が作る時、神経網は素材が動くに任せている。

 最終的に人が接続した時に、その動きに合わせて成長していくのだが……それをテンペストは強制的にやっているようだ。

 腕や足の動きの具合を確かめている。


 片膝を立てて姿勢を落とし、狙撃体勢に移行する。

 恐らく視覚情報のズレを修正しているのだろう。その他もろもろの修正を終えた後、元の跪いた体制に戻して関節をロックする。


『最適化を終了しました。向こうで一度一通りの武装を試して誤差修正を行ってから出撃します』

「えっと……今すぐに出発するの?」

『いいえ、明日の朝になるでしょう。先に私とギアズが援護に回ることを伝えて置かなければなりませんし、サイモンの領地へも連絡をして置かなければならないでしょう』

「ああそうしてもらえると助かるよ。私も指示を纏めて出しておく。王都への援軍要請は却下、カストラ領から援軍を回すと伝えておく」


 そして調整を終えたテンペストがニールの腕の中へと戻ってきた。


「……すみません、ニール。重かったでしょう」

「いや全然。っていうか、本当にちゃんと食べてるの?ものすごく軽く感じるけど」

「食べてますし、成長しているはずですが……どうなのでしょう?」

「まあ、確かにテンペストは少し成長が遅い感じはするけど、年齢としてはギリギリ範囲には入っていると思いますよ。どちらかと言うとニールにも力が付いてきたんでしょう」

「そうなんだ……。あ、ごめん、下ろすね」


 両足で地面に降り立つテンペストだったが、少し違和感が有るようで落ち着かなそうだ。

 どうやら大人と同じようなバランスで作られているホワイトフェザーと、子供の体格の今の自分のバランスでは差異があるようで、そこが少し気になるらしい。


「特に大きな誤差ではないのですが、そのうち慣れるでしょう。それよりもニール、私の身体を長時間預かってもらうことになると思いますので、そのための準備と説明を行います」


 □□□□□□


 それぞれの部屋に戻って、明日の準備を行う。

 こちらへ残るニール、コリー、サイラス、サイモンは特にすることはないが、サイモンに関しては文書での指示をする必要がある。


「一応、食事を摂るために何度かこちらに戻ってくるつもりでは居ますが、その間戦闘などが長引いた場合戻ってこれない可能性もあります。なので申し訳ありませんがカテーテルの準備を。また、排泄物の処理もお願いすることになってしまいます」

「大丈夫、まかせてよ。綺麗にしておいてあげるから」

「はい、ありがとうございます。これはニールにしか任せられませんからよろしくお願いします」


 どれくらいの期間になるかはわからないものの、1日は戻ってこれない可能性が高い。

 なので食事の時間だけは確保しつつ、人の身体が弱らないようにしておかなければならない。

 ニールに食べさせてもらうということも考えたのだが、意識のない身体がまともに食事を取れるわけもなく、危険が大きいということでサイラスに却下された。


 排便に関しては汚れてもいい布を使ったおむつを履かせることで対処し、汚れたらそのまま焼却して捨てる。


「あ、夜などにも戻ってこなかった場合はメイ達を呼んで、風呂に入れてもらって下さい」

「ああそうだね。身体を綺麗にしておかなきゃ。……よしと、これくらいかな?」

「終わりだと思います。他何か気がついたことがあればお願いします」

「うん。明日はご飯食べてから行くんだよね?」

「そのつもりです」


 食事をしてから行ったほうが良いだろう。

 その際、ギアズに先行して行ってもらうという手もある。

 先に行ってもらって、その場で指示を出してもらっておけばスムーズに事が進むだろう。


「……ふふっ、明日は見放題、ですよ?」

「ちょっ……!からかわないでよ……。まあ、確かなんだけどもさ、だからっていやらしい目でテンペストをみるわけじゃないから!」

「冗談です。が、ニールには特別に見るだけなら好きにしてくれてもかまわないのですよ?」

「そういうことをしなくてもテンペストはボクのものだから……良いんだよ。もう、テンペストもそういう冗談言うようになったんだね?」

「何故でしょうか、こうするのが自然……ええ、自然だと思ったのです」


 からかう事を覚えた。覚えてしまった。

 ニールにとってはいい迷惑ではあるが、正直なところ少し嬉しい気持ちもある。

 ただ……テンペストが向こうに行っている間、目に焼き付けると言うことだけは多分我慢できないと思うからと、心のなかで謝るニールだった。


 でもそれはもちろん、カテーテル挿入時と拭き取る時以外に変なことをするわけじゃない。


 それにどんどん人としての感情を覚えていくにつれて笑顔が増えてきたのだ。

 しかも二人きりの時に。

 これはニールとしてはとても嬉しいことだった。自分と居るときだけは無防備なテンペストの笑顔を見れる。他の人が居る時には結構ビシっとした表情しか見れないから、最初のうちは少し戸惑ったものの、それが自分に向けられたものだとなれば嬉しくなって当然だ。

 それだけでも幸せな気分になれるのだ。


 もう恒例となった、ベッドに2人が入り込む。

 二人の距離はどんどん縮まっていくのだった。


 □□□□□□


「では、行ってきます」

「うん。行ってらっしゃい」


 そう言ってテンペストはベッドの上で意識を失い、ニールが寒くないようにとベッドカバーをかけてやる。


「行ったか。……それにしても……こんな移動方法があるとはな……」

「テンペスト、この収納の魔法だけで十分って言ってたけど本当だったね」

「いや、ほんとこれ反則だろ。同時に二箇所に存在しているようなもんじゃねぇか」

「まあ、移動先は身体があるところと、テンペストのハンガーの中と言う制限がありますけどね」


 制限はあるが、向こうに行けばワイバーンで飛べるので実質何処にでも行き放題ではあるのだが。

 反則と言えば先にハイランドへ向かったギアズだろう。

 アンデッドは生物とみなされていないらしく、普通に行き来することが可能だったわけだ。


 そして今回の宵闇の森における作戦でも、アンデッドという事で相手の手の内を知っていることになる。

 加えて言えば優秀な魔法使いでもあるギアズは、まだまだ自分のやれることに気づいていない事が多い。実戦を経験させることである程度は刺激になるだろう。


 □□□□□□


 一瞬の意識の暗転の後、気がつくとハンガー内にいることに気がついた。

 関節のロックとアンカーを解除して立ち上がる。

 意識がホワイトフェザーと同調すると共に暗かった視界が補正されて明るくなっていく。

 これは光への感度を上げて行くものなので、宵闇の森では使えないが薄暗いところでも昼間と同じように活動できる便利な機能だった。


 ゆっくりと歩いてハンガーを内側から操作する。

 ギアズが出られるようにと、追加で操作パネルを取り付けてあったのだが、人の手よりも大きい指で器用にそれを押すとハンガーのシャッターが開き出す。


『待っておったぞ。もう既に話は通っている。キャリアにはブリアレオスとギュゲスが載っているから、ホワイトフェザーはキャリアの後ろに着けたトレーラーに乗ってくれだそうだ』

『了解しました。ではギアズも重装備のオルトロスに乗って下さい。運転は職員が行います』


 運転手の交代は宵闇の森に到着してからだ。


 早速弾薬などを装備してオルトロスが先行する。

 その後を追うようにキャリアが動き出す。


 テンペストのホワイトフェザーが現在乗っているのは、サーヴァントが使っていたトレーラーだ。

 どんどん遠ざかっていく自分の街を見ながら最終確認を行っていく。


『レーダー……異常なし。後方警戒レーダー……異常なし。各部関節ロック、異常なし……。後は火器管制ですか』


 右手にレールカノンを出現させて、取り付けられている照準装置と視界を同期させる。

 それまでのホワイトフェザーの視界内にレールカノンを通して見る景色が追加された。


『後は実際に撃ってみて誤差を確認するだけですね。研究所で調節できなかったのが悔やまれます』


 そのまま一旦眠ることにした。

 魔導騎兵のままで眠る、と言うのは少し変な感じだったが、全てのセンサー類をオフにして活動レベルを低くした状態だ。

 感覚的には睡眠に近い状態となった。


 しばらくして、到着したのを感じ取り覚醒させていく。

 各部のロックを解除して起き上がれば、そこはもう宵闇の森の入り口付近となっていた。


「お待ちしておりました。子爵様がお待ちです」

『了解しました。どちらに?』

「おお、来たか。そちらがカストラ男爵だな?新技術によって洋上から操っていると聞いている。噂に名高いあなたが来てくれるとは思わなかった」

『評価試験としては最適な状況だと思いましたので。では、運転手をお借りします』


 職員と入れ替わりでサイモンの私兵が乗り込む。

 砲手は替えが居ないのでそのままだ。


「ではこれより現場の全権をこちらのカストラ男爵へ移譲する。以後彼女の指示に従うように」


 幾つかの質問と報告を聞き、現状を把握する。

 今のところこの入口付近には魔物の気配はないそうだ。

 テンペスト達以外には私兵側のコットス2機が同行する。装甲に残る深い爪痕らしきものが痛々しいが、中身には傷を負っていないため動くことには問題がない。


『腕が鳴るぜぇ……』

『おう、早く戦わせてくれ!』


 意気込んでいるのは本来なら重機枠のブリアレオスの2人だ。

 ドワーフがパワードスーツを着込んでいる位の見た目なので2m程度と小さいながらも、そのパワーはコットスにも引けを取らない。

 また、採掘用のピック等も当たれば致命傷となりえる強力な武器となる。


『あ、の……本当に俺で大丈夫なんですかね?』

『ギュゲスは後方での監視任務と支援砲撃です。私と共に動くので問題ありません』

『わ、分かりました!この機体あまり装甲は厚くないので本当にお願いしますー!』


 ギュゲスは軽さを考えて作った機体だ。

 頑張れば天井にも張り付ける程だが、その結果として装甲は犠牲になっている。

 かと言って積載量が小さいわけではなく、安定性がある分重いものを積んでも移動力は落ちない。


『よしこちらも大体分かったぞ。いつでも行けるぞ。フフフ……戦闘は久しぶりだ、腕が鳴るわ』

『ではコットス隊、案内を』

『了解しました。こちらです』


 全員の準備が整い、宵闇の森へと侵入する。

 言われていた通りに道の周りには特に魔物の気配はなく、所々に戦いがあったであろう痕が残っているだけだ。

 道幅も広くなっており進むのに問題はない。


『テンペスト様、西に3つの反応があります。距離は……4000m程です』

『こちらに近づいてくるなら報告を。それくらい離れているならば特に問題ないでしょう』

『そんなに遠くの状況がわかるのか?』

『魔物を含め人や獣など、マナに触れているものを感知するレーダーです。私が使っているものと同等のものでギュゲスは出力が高い分更に遠くのものでも発見できます』


 それにしてもそれだけ広範囲に索敵範囲を広げているにも関わらず、殆ど魔物が現れない。

 ちまちまとしたスケルトン等が来ているくらいだ。

 しばらくして中央部へと近づいていくと……。


『何か、おかしいです。さっきまで殆ど敵が居なかったのに、中心部付近には大量に固まっているようです』

『前回の攻撃があったので警戒しているのかもしれません。守りを固めているとなると厄介です……。ギュゲス、モニタしている映像を回して下さい』

『了解しました!』


 ホワイトフェザーのレーダーに上書きされた広範囲の索敵結果、その前方には真っ赤な光点が無数に固まっていた。数は100を超え、反応の強さから見てスケルトンなどの雑魚ではない。

 ある程度以上の魔物が集結しているのは明白だ。


 距離は同じく4000m。

 射程範囲内だ。


『ギュゲスは迫撃砲を準備、コットスは周りの木を切り倒して上空を空けて下さい。私とギアズはレールガンの出力を抑えて迫撃砲の代わりとします』

『準備、完了しました』

『レールガン、+71度、方位275、出力32%で固定。真上から攻撃します』

『えー……と、よしセットしたぞ!』

『各5発、攻撃開始』


 シュボンと気が抜ける音がして迫撃砲が飛ぶ。

 その後を追うようにレールガンのズシンと来る力強い砲撃音が響き渡った。


 少し時間を置いてもう一発。さらにもう一発。

 すると敵の密集しているところへと上手く着弾したらしい、レーダー上の光点がごっそりと減っていく。


『おおお!効果があったようだぞ!どうだ、儂もなかなかやるだろう!』

『この程度の弾道計算なら問題ありません。数値を間違えなければ当然の結果です』

『敵勢力更に減少、かなり慌てているようですがやはりこれ以上の砲撃はあまり意味が無いかもしれません』

『ここまで削れれば問題ありません。前進します』


 この戦いの様子を見ていた私兵達は、むちゃくちゃぶりに言葉を失う。

 レーダーの映像は自分たちにまで回ってきていた。

 つまりギュゲスは自分の見ている物を味方全体と共有できるということだ。見てから攻撃ではなく、目視範囲外からの攻撃。

 その有用性は見ていれば分かる。


『あれだけの敵が……こんなにあっさりと?』

『巨獣もこれで死んでくれてれば良いんだがなぁ』


 近接戦闘に特化している装備しか持っていないコットスは、一方的に打ちのめされるという恐怖を知っている。

 手も足も出ずに巨獣の動きに翻弄され、まるで猫がじゃれつくかのようにいたぶられたのだ。

 そんな敵が今、逆にもっとひどい状況の中に居る。


『お、おい、俺達の獲物も残しておいてくれよ!?』


 こう叫ぶのは当然ドワーフだ。無駄に戦闘を楽しみにしていただけに、突然一気に数を減らされて不安になっているらしい。

 とことん敵に回すとめんどくさい連中なだけはあった。


『心配しなくともまだ敵は残っています。……では、ここからは私とギュゲスは側面に回り込んで迂回しつつ、少し高くなっているあそこの丘の上へと向かいます。ここで一旦休憩を挟んでからギアズはこのまま皆と一緒に制圧しながら進んで下さい。気づかれない程度の距離で待機した後、私達が配置についたら行動開始します』


 既に昼だ。一旦休憩しなければ生身の者たちの疲労は積もる。

 このままここで警戒しつつ休憩に入った。


ホワイトフェザーはアメリカ軍の名スナイパーから。


ついにテンペストの機体がお披露目です。

重武装タイプのオルトロスは、普通のものに比べて一回り大きく、発射の反動に耐えるために足を広げて固定できます。装弾数は少なめだけどギアズの四次元ポケットから出てきたり

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