第八十七話 テンペスト、ちょっと成長する
テンペストが取り出した簡易キッチンで、サイモン達も含めた18人分を作ってゆく。
簡易キッチンとはいえ、一通りの機能を備えており、流し台に強力なコンロ、オーブンまでついている。
流し台には水の魔晶石を取り付けた蛇口がついているため、水洗いも出来る。
使用した油や水は浄化魔法で取り除ける為、かなり使い勝手の良いものになっているのだ。
「いつの間にこんなものを作っていたんだ?」
「仕事の合間にクラーラに手伝ってもらいながら組み立てました。こういう既存のものを組み合わせてコンパクトに纏めるのはクラーラの得意分野のようです。食器と調理器具も一式流しの下に収納されているので、これ一つで大抵の事をこなすことができます」
「私のところにも一つ欲しい所だな。もし製品化したら買おう」
「これに折りたたみ式のテーブルと椅子をセットにしたものを販売予定です。耐久試験等が終わり次第販売できるはずです」
販売予定、という言葉を聞きつけた周りの人達も、こっそり購入しようと考えているが……テンペストはまだ知らない事だ。
これ自体はエキドナに搭載されているものをヒントにして作ったものなので、頑張ればオルトロスの人員輸送用のものにも積み込めないことはない。
豊富な野菜や肉等は当然のようにハンガー内の冷蔵庫の中に収納されているものだ。
段々と辺りに肉の焼けるいい匂いと、野菜を炒める香ばしい匂いが漂い始める。
一応、外交官の皆はテンペスト達と同じように作りたての料理を出してもらっているが、それでも元々調理を終えたものを保存しておいて温め直したりしたりと、手軽に作れるものに限定されているのだ。
保存食よりも日持ちはしないが数日程度の予定であれば、十分に食べていけるものとなっている。ある意味で簡単なレーションみたいな感じだ。
そんな中で一から材料を切って煮込んで焼いてとやりたい放題しているテンペスト達は、完全に悪目立ちしていたのだった。
「おお……美味い。テンペストと行動してると飯には困らんな」
「戦場でもこういう事が出来る様になるのか……」
「あ、それならフィールドキッチンというのがありますよ。この簡易キッチンを少し大型化して大量に物を作れるようにしたものです。煮る、炊く、炒める、焼くということを一つの空間に纏めてタイヤを付けるだけで出来ますね。今回みたいなものであれば飯炊き部隊がいれば100人規模でも耐えられるものが作れるはずです。オルトロスに牽引させることで運用可能ですから、かなり良さそうですね。テンペストと協力して試作品を一つ作りましょう。使い勝手を見てから売り込みますか」
日本にはやたらと高性能な物があったりするが、それと似たようなものを作ってしまおうというものだ。
やはり食事というものは士気に大きく関わるもので、特に海軍だとそれが顕著だったりする。
食後はゆったりとした時間を過ごし、今度は簡易トイレを設置して使っていた。
「……テンペスト様と行動すると、なんというか……旅というものが辛いものであるという考えが吹き飛びますね」
車内に置いたウォーターサーバーで冷たい水を飲みながらラウリが言う。
使う度に自分の魔力を消費しなければならないものの、微々たるものでそれによって冷えた水が出てくるのだからありがたい話だ。
「っていうか、テンペストはこの旅に備えてどれだけ作ってきたのさ?」
「先程の簡易キッチン、簡易トイレ、簡易シャワー、簡易洗濯機、ウォーターサーバーでしょうか。基本的にはエキドナにある装備を取り外しているようなものです」
「あ、まだシャワーもあるんだ。まあまだ使わなくてもいいか」
「宿に泊まることになった時でも室内に置けるように重さと大きさは考慮しています」
「女性としてはシャワーとトイレは必須です!流石ですテンペスト様!」
メイとニーナが嬉しそうだ。
こうした旅の時は、長時間身体を拭くことも出来ず、トイレはそこらで囲いもなく……ということが多い中でこれは嬉しい事だ。
安宿であっても、トイレなどを室内で済ませることが出来るため、極力外へ出なくて済む。
鍵に関しては魔法錠があるのでどんな安宿であってもセキュリティーは万全である。
オルトロスの座席を収納して、ベッドのユニットを取り付けていく。
丈夫な布一枚で体を支える様になっており、かなりの省スペースでかさばることも殆ど無い。
上の簡易ベッドで寝るには少々コツが居るが、そこはテンペストとニールが上に登ることで何とかした。
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翌朝、かなり軽めの食事を取った後に出発する。
予定では今日中にルーベルの国境付近まで行けるはずだ。国境を抜けられれば宿場町が広がっているということなので魔導車に泊まる必要はなくなる。
「だよね、来るよね」
「ニール、戦闘準備。ラウリは伝令をお願いします。王国軍の隊長へ攻撃はこちらが引き受ける旨を伝えてください」
「分かりました!すぐに行ってきます!」
「あれが……サンドワームなんですか!?」
サンドワームと言う割には荒野に出現したが、この車列の音を聞きつけたのか側面から一直線にこちらへ向かってきているのだった。
まだ距離はあるもののサンドワームがとてつもなく早いのは経験済みだ。
それに気付いて迎え討つ構えに入ったのか車列が止まったため、すぐにラウリが飛び出して前へと走っていく。
ニールはガンナーシートに座ってタレットの安全装置を解除する。
テンペストが外に出る頃にはタレットは既にサンドワームを捉えていた。
テンペストも自分用のレールガン、ペネトレーターを取り出して魔導車の横に伏せる。
しかし……口を大きく開けて砂がその付近を舞い始めた。
「ブレスが来ます!全員車内もしくは魔導車の影に隠れて!」
テンペストの警告と共にサンドワームから砂のブレスが発射される。
距離が遠いためさほどの威力はなく……しかし生身であれば確実に大怪我をしていただろう。
ちなみにオルトロスに関しては全く傷はない。砂で汚れただけだ。
一応、ラウリを確認してみたがちゃんとオルトロスの影に隠れていたようで無事だった。
そうこうしている間にも、サンドワームは接近してくる。
ニールとコリーによるガトリング砲の掃射が始まる。
ヴー、ヴーと1秒間隔くらいで射撃音が響き、その度に凄まじい数の弾丸がサンドワームへと突き刺さる。
ある程度バラけているものの、大半が命中し、表皮がダメージを受けているのが分かる。
ダメージ源であるこちらに頭が向いた瞬間、テンペストがペネトレーターを口内に向けて連射し、あっという間に決着が付いた。
大きさは約20m程だろうか、以前見たものよりも大分小さい物だ。それでもあれだけの弾丸に耐えるのだから、この表皮の丈夫さはかなりのものだろう。
今回はこのままニールに一旦収納してもらって後でゆっくりと素材に切り分けて使わない部分を売り払うつもりだ。
「んー、これでまたタイヤ作れるね!」
「ええ。なかなか手に入らない素材なのでこれはかなり嬉しいですね」
「……テンペスト様達の戦闘は初めて見ますけど……とても凄まじいのですね……」
「あんなに離れていたのにあっという間に倒してしまうなんて!」
冷静に素材が入ったと喜ぶニールとテンペスト。逆にあっけにとられているメイとニーナ。
ラウリは……丁度今戻ってきたようだ。
「なんか、喋った直後に攻撃が始まってそのまますぐに終わってしまいましたね……。確かサンドワームって出会ったら覚悟を決めるレベルだと思ったのですが」
「貫通させる攻撃が苦手というのがわかっていれば、銃弾というものは特にその傾向が強い武器ですので。それに前にはあれよりももっと大きな個体を倒しています。問題ありません」
「でも、前にこの辺通ったはずの馬車は大丈夫だったのかな……?」
「分かりません。大丈夫だったかどうかは国境に行けば聞けるでしょう」
特に攻撃手段を持ち合わせておらず、脚も遅く走行も貧弱な馬車であれに出くわした場合……あのブレスの一撃でほぼ壊滅状態に追い込まれるだろう。
魔導車は作動音は少ないものの、それでもこの台数になると振動がかなり響くことだろう。
それでおびき出されたのかどうかは分からないが、今のところ半々の確率で遭遇しているように思える。
一時は騒然としていたものの、誰ひとりとして怪我人を出さずに討伐が終了したということで、そのまま車列は進み始めた。
結局、ルーベルの国境へと着いたのはもう辺りが真っ暗闇になってからだった。
しかし、宿や食堂は空いていたため何とか全員泊まることが出来たのは有り難い。
「はー……ベッドだぁ。やっぱり多少硬くてもベッドのほうがゆっくり眠れるね」
「ええ。何とか4人部屋に入れましたし運が良かったとしか。トイレは設置されているようなのでシャワーをそこの端っこに置いておきましょう」
テキパキと邪魔な机や椅子などを動かして片付けていくメイとニーナ。
そうして出来たスペースにシャワーを設置して終了だ。
そう。今現在、ニールはちょっとうらやましい状況にあったりする。
女性だらけの中に1人だけという美味しい状況。しかしテンペストとその使用人達と言う中で変な事など考えられない。
天国のような状況の中で生殺しという、つらい状況でもあった。
シャワーを浴びるためにテンペストが脱ぎ始めると、メイとニーナが大きくシーツを広げて目隠しを作り、出てきた後はニーナが目隠しを、メイがテンペストの身体を拭き髪の毛を優しく乾かしていく。
「ニール様、どうぞ」
「あ、うん。2人はどうするの?」
「ニール様の後に入りますのでご安心を」
簡易シャワー室に入ると、石鹸のいい匂いが漂っていた。
さっきまでテンペストが入っていたのだから当然なのだが。
……ふと、下を見た時に排水口に引っかかっている色素の薄い長い髪の毛を発見した。
一本ゆっくりと引き上げて指に巻きつけておく。
後でお守りとして持ち歩くつもりなのだ。
風習としてはよくあるもので、恋人や近しい異性等から貰った髪の毛もしくは陰毛をお守りとして持ち歩くことで戦争から無事に帰ってこれると言われている。
ニールも一応お守りとして1つアイテムを持っているが、その中には特に何も入れていない。
いつか好きな人が出来たら……と思っていたが、今はテンペストがその好きな人なのでもらっていくことにした。
「ボクの事、護ってねテンペスト。テンペストはボクが護るから」
大切に指に巻きつけて身体を洗う。
「……そう言えば、最近ボクってテンペストと同じ部屋になること多いなぁ?」
皆が気を使ってくれているのかもしれない。
もちろんニールとしてもとても嬉しいことだし、その分皆に認められていることが分かる。
でも1人の男として大好きな子の寝顔を間近に見たり、まだ無防備なところが多いテンペストがそばにいるというだけで色々溜まってきている。
「あ、まずっ、ど、どうしよ……」
あの時の手に残った感触と光景を思い出してしまった。
ふいに臨戦状態へと移行してしまったそれを鎮めるべく……。1人で処理したのだった。
激しい自己嫌悪とともに。
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「どうしたのですか?ニール。なんだか元気が無いようですが」
「い、いや……別にそういうわけじゃ……。なんか疲れちゃって」
「確かにいつものエキドナと違って、狭い車内でしたからね。シートも硬いですから疲れるのも無理はないでしょう。……隣に座ってもいいですか?」
「へ?うん、いいよ!」
ニールが座っているベッドの横に、テンペストが座る。
人の体重がかかって凹んだ為、テンペストの方に身体が吸い寄せられていくのを脚とお腹に力を入れて防いでいた。
「やっぱり、私が原因ですか?ニールの疲れというのは」
「いやいやいや!そんなこと無いよ?」
「でも私と居る時は少し緊張しているように感じます」
緊張はする。嫌われないかとか気にするあまりに、どう行動したらいいか等を無駄に考えていたりする。でも好きだから近くに居たい。
「なんていうか……確かに緊張はしてる、かな?テンペストに嫌われたくない!とか色々考えちゃって」
「別にニールを嫌いになることは無いと思いますが……。別に抱きしめてくれたりしてもいいのですよ?相手をすることはまだ出来ませんが、それでも私はニールの重荷にはなりたくないですし、ニールにだけは全てを見せられます。それに……」
突然、ニールの左肩に体重がかかり、細い腕が首に回された。
テンペストの体温が直接感じられ、吐息も感じられる距離。
「え?て、テンペスト?」
「何故なのかは分かりませんが、ニールを恋人として意識してからこうして密着したいという欲求があります。それに……ニールは皆とは違って何処か落ち着くのです」
少し離れたところから「ついにテンペスト様が!」とか「ニール様も可愛い……」などきゃぁきゃぁと小声で静かに騒いでいるのが聞こえてくる。
その声で侍従の2人も一緒に居るのに気が付き、そっちを見れば2人でこちらをキラキラした目で見ていた。
「ちょっ、2人が見てるんだけど!?」
「大丈夫です。二人は口が固いですから誰にも言いふらしたりはしません。もしよければ、2人でこうして部屋にいる時はたまに抱きしめてもらえませんか?自分でもよくわからないのですが、最近特に人肌恋しいというものでしょうか……」
「もしかしたら、ですが……テンペスト様はその身体になってから親というものを知らずにいるのですよね?それが原因なのではないでしょうか」
「そっか、テンペストにお母さんとか居ないんだっけ……。子供の頃にこうして抱かれていた事もないから……あ、ごめん」
「いえ、事実ですから」
テンペストの依代となって逝った子は、行きている時には両親に愛されて育っていたはずだ。
赤ちゃんの頃はずっと抱かれていただろうし、小さい頃は色々と手をかけてもらっていた。
しかし、今の身体になってテンペストはどうだっただろうか?と考えれば……確かにサイモンが親代わりとなって暫く面倒を見てくれたりはしたものの、基本的に自分が手を出すわけではなかった。
エイダがその代わりに色々と世話を焼いてやり、抱きしめたりなどというスキンシップも行っていたわけだが……。
「……あ。分かったかも。お母さん代わりのエイダ様が居ないから寂しいんだよ。エイダ様ってテンペストの事よく抱きしめてたりしたよね」
「そうですね。なるほど寂しいと言うのはこういう感じなのですか。でも今は居ませんから……やはりニールにお願いします」
そして身体に密着していた腕とテンペストの胸が離れていく。
少し涼しくなって、寂しい感じがした。
でもテンペストは少しスッキリした顔をして食事に行こうと誘う。
どうやら満足できたようだ。
その顔を見て、ニールも大分気持ちが楽になった。
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翌朝、宿場町を出発して、大体2日をかけて港まで通り抜けていく。
初めてのルーベル国内ではあるのだが、ゆっくりと見ている暇はなかった。
以前は国内といえば国内だが、空か森の中でしか無かったのでもう少しゆっくりしたいところではある。
ちなみに先行した馬車隊は全員無事に通り抜けていたらしく、あのサンドワームの犠牲者は無かったようだ。
最短距離を通るように、領地を経由していくわけだがその間もある程度は休憩を挟みつつ、無理のない様にと計算されているらしい。
お金に関しては換金所である程度交換しておいた。
ルーベル硬貨もあまり変わりはなかったので気にしなくていいレベルだ。
流石に素材を売ろうと思ったら無理だったため、まだサンドワームは解体出来ていない。
出発してしばらくするとテンペストが胸のあたりが苦しいのか、少しもぞもぞとしていたので車に酔ったか変なものを食べたのではとニールが声をかけた。
「大丈夫です。気持ち悪くなったりしているわけでは無いので……」
「でも……なんか辛そうというか」
「……そうですね、ニールには話しておくべきでしょう。最近になってから少し胸が擦れてしまったようで痛いのです」
「えっ。それって……」
単純に性徴期なだけだった。年齢的には確かにそのくらいの時期だろう。
特に目立った変化は分からないものの、だんだんに女性としての身体へと変わっていく段階だ。
そして、それを知ってはいるものの……そのまま伝えてもいいものかどうか判断に迷うニール。
しかし、嫌われないという事を前提に教えることにした。
「多分、今テンペストは段々に大人になっていっているんだよ。その……擦れるのは胸が大きく膨らみ始める前の段階らしいんだけど……」
「なるほど、成長の結果でしたか。どうすればいいのでしょう?」
「あの……テンペスト様、流石にニール様は分かってても伝えにくいと思いますので。次に寄った街で下着を買いに行きましょう」
テンペストは貴族としてよりもハンターとしての格好をしているため、鎧を着用している。
体全体をガードするための作りになっており、女性用のものというよりもリヴェリの男性用の物を改造して付けている状態だ。
最初は気にしなくても良かったが、段々に当たるようになってきたのだろう。
メイにどういう状況なのか、どうすれば良いのかなどを教えてもらって現状を把握できたようだ。
「人の体というものはなんとも面倒なものですね……」
「ボク達はテンペストくらいの見た目で止まっちゃうからね。これはこれでリヴェリ以外からからかわれたりとかして大変だよ。でももうボクの背を超えてるもんね。抜かれちゃった」
「そういえば……。服や鎧がきつくなったりする度に調節はしていましたが、しっかり身長も伸びていたのですね。自分ではいまいち気付きませんでした」
「まあ……何にせよ病気とかじゃなくてよかった……びっくりしたよ」
「驚かせてすみませんでした」
宣言通りメイはテンペストを連れて服屋へと向かい、旅の間に使う分を買って戻ってきたのだった。
その他は特に何事もなく進み……。
ついに港街に到着した。
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「えっ……なにこれ……船?なの?」
港へと進むと大きな船がその姿を表した。
ルーベルとコーブルクの技術者もこのサイズのものを作るのは初めてということで、かなり難儀したようだが……それでも今までで最も大きく変わった形のものとなった。
全長約200m、幅は50m程度。ヘリ空母にギガヨットのような居住性をもたせた仕様となっており、少し狭いながらも1~4人の部屋が備わっている。大きな倉庫は後部ハッチを開けるとアクセスできるようになり、そこに魔導車や馬車、馬などを積んでいくのだ。
当然ながらヘリポートのような場所はマギア・ワイバーンの発着用で取り付けてある。
武装も備えており、エキドナに積まれているレールカノン、そしてガトリング砲が搭載されている。
大抵の装備であれば抜けるだろう。
ウォータージェット推進で自動航行も可能となり、フィンスタビライザーを取り付けてあるためある程度横揺れは軽減されるはずだ。
広い食堂と、休憩場所を備えては居るが一度に全員は無理なため、上の人から順番にということになるだろう。
なお食材に関してはテンペストの考案した方法を取ることにより、いつでも船上から地上の倉庫へとアクセス可能ということで、廃棄物等は地上に送り返し、補給を常に受けつつ航海ができる。
「これはまた……大きいな」
『儂もこれほど大きなものは初めてだ……よくもまぁ造ったものだな』
「職人たちにはかなり無理をさせたと思います。なにせ専用のドックを作るところから始めましたからね。でも、そのお陰で防御能力、戦闘能力、積載能力に宿泊施設という無茶な要求が通ったわけですし。正直、テンペストが収納に関する技術を公開してくれなかったら危なかったかもしれませんね」
テンペストの位大きなハンガーを作り、そこから出入りさせるということまでは出来ないものの、ある程度の大きさであれば運び込めるだけの事はできるようにしてある。
それぞれを関連付けて扉を締めておくと空間が繋がる様になるように調節した純粋な魔晶石を、船上、地上にそれぞれ設置して繋げることで、魔力を流し込むだけで担当の人達が荷物のやり取りを出来るようになった。
ちなみに、この技術の情報料として3つの国からお金が入って来たため、とんでもない金額になってしまった。
処理しきれないので毎月一定額を支払うようにしておいたがそれでも多い。
ありがたく領地を広げるために使いまくることにしたのだった。
「お陰で懐が温かいです」
「研究が捗りますから嬉しいことです。人材も確保しやすくなったし……何より今月からは学園が始まる訳だから……貴族クラスからは学費も入りますしね」
「なんかもうテンペストと博士がいればお金に困らない気がしてきた……」
「まあ、自動航行用の装置の心臓部を取り付けに行かなければならないんですけどね。テンペスト、取り付けた後に接続をお願いするよ」
「分かりました。ギアズも一緒に来て下さい。死霊術が使えるということでしたので、もしかしたらそれに関する応用が効くかもしれません」
『承知した』
テンペストとギアズは艦橋へ向かい、他の者達は割り当てられた部屋へと向かう。
使用人は専用の部屋が割り当てられており、各部屋に割り当てられたベルで呼び出せるようになっている。
自動航行装置を取り付けて、全員が揃ったら出港だ。
女性用のブラって結構昔からあるんですねぇ……。
調べててびっくりした。
ついに第二次性徴期真っ只中という不安定な状態になってしまったテンペスト。
今はまだ良いけど……