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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第三章 束の間の平穏編
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第八十二話 第二回浮遊島探査 

 イラストを見ただけで痛そうな上に、自分がそこに入れてあげなければならないというプレッシャーとちょっとだけ下心を加えてショートしたニールだったが、数分と経たずに現実に戻ってきた。


「ほ、本当に、これ……うわ……痛そう……」

「まあだからこそこの触手に潤滑剤を塗るんですよ、麻酔付きの。効き目はかなり早かったんで大丈夫ですよ。それに必要になるときには大体テンペストは眠っているので身体に何をされても痛みを感じることはありません」

「しかし、感染症などの問題もあるので処置するときには炎症が起きないようにきちんと殺菌をお願いしますね、ニール」

「分かった。……とりあえずやり方は分かったけど……」


 ちらりとテンペストの方を見やるニール。

 当然ながら練習用のモデルなんていう良いものは無い。つまり……ぶっつけ本番だ。


「では見本として私がテンペストにやりますので、よく見ていて下さい」


 何の躊躇もなく下着を下ろすテンペスト、そして……。


「あっ」

「……慣れてください。では、この管と袋が繋がっている所はこの様に取り外しができます。中身を捨てたい時はここを外して袋の中身を出すわけですが、ここがまず雑菌などが付きやすいところです。必ず付け外しの度に清浄魔法を。これが繋がっているのを確認したらこの管の方に清浄魔法をかけてから潤滑剤を塗ります」

「はい……」


 見えている。が、平常心を保つべくサイラスの言葉に集中する。

 潤滑剤を触ってみると確かに触ってすぐに指の感覚が鈍くなっていたので相当効果は早いようだ。

 挿入されているときにもテンペストは特に痛みを感じていないようだったので、少し安心するニールだったが……。色々限界値に達しているので早く終わらせたかった。


「はい、ではニール、お願いします。同じようにするだけですから」

「私も初めてやりましたが本当に感覚がないので大丈夫です。今のうちに練習して下さい」


 そんなことを言われたって、テンペストのは初めて触るわけだしで色々とテンパっていく。

 何とかまともに出来るようになったときには汗だくだった。

 しかしこれでもうテンペストの役に立てると思えば、頑張った甲斐があるというものだ。

 まだちょっと震えている手を必死で抑える。


「お疲れ様でした。ニール、大丈夫です。痛くありませんでしたから」


 聞き様によっては別な意味にも聞こえてしまい、当然そっちを想像してニールは赤くなる。

 頭の中ではわかっているけどこれだけはどうしようもなかった。


「よかった……。でもこれでボクもテンペストの役に立てるんだね」

「では、必要になったときにはお願いします」

「うん。もちろん!テンペストのためならなんでもするから!」

「下の膨らみがなければいいセリフなんですがね……」

「なっ、し、仕方ないじゃないかあぁぁぁぁぁ!!」

「大丈夫です、健全な生理現象です」


 頑張って腰を引いていたのにもかかわらずバラされてしまったニールは暫くベッドを涙で濡らしたという。


 □□□□□□


「うう……ごめんなさい変態でごめんなさい」

「それくらいで嫌ったりしませんから大丈夫です」


 流石に部屋に引きこもってなかなか出てこなくなったニールを心配して声をかけた訳だが、また嫌われたんじゃないかと思って凹んでいた。

 当然気にしていない訳なのだけどもニールにとっては、好きなこの前での致命的な失態だと思っているためダメージが大きいようだ。


「ホント?」

「はい。前にも言っていますが私は皆さんのような恥ずかしいと言った感情を持っていません。いえ、最近は何となく分かるような気もするのですが……まだ、よくわからないのが現状です。それでもニールは頑張ってやり方を学んでくれたわけですから」

「うん……。嫌われてないんだよね?ボク」

「はい。大好きですよ、ニール。この身体を使って鎮めてあげられないのが心苦しいですが」

「だ、駄目だよ!そんなことしたらテンペストが壊れちゃう!大丈夫、我慢するし!だからそっちこそ気に病まないでよ」

「ありがとうございます」


 嫌われてないことが分かって一気に気力が回復したニールだった。

 そして一人こっそりと、この手は今日は洗わない様にしようと心に決めるのだ。


「ところで……その、本当に痛くない?大丈夫だった?」

「異物感はありますが、痛みは殆ど感じませんでした。引き抜いた後に暫く痛むかもしれないと言われましたが」

「そっか。上手く出来てるか不安で……まさかぶっつけ本番でやらされるとは思わなかったよ」

「それにしても魔物というのも便利なものです。自分で動いてある程度位置を調節してくれるので動いてもずれないですし、これなら付けたままで行動できそうですね」


 やたらと長い式典なんかのときには重宝しそうな気がする。

 本当に漏らす人も居るのだ。もちろん貧血で倒れる人も居る。

 特にやはりスリムに見せたいコルセットを付けた夫人方は、元から呼吸自体が怪しいのでよく具合を悪くしては倒れたり離脱したりと忙しい。


 それはともかく。これでようやく長時間の任務にも耐えられるようになった。

 テンペスト用の魔導騎兵を作ってもこれで安心だ。

 後はニールがオルトロスを操り、攻撃しながら逃げ回ることが出来ればいい。

 既にオルトロスの操縦席はニールでも運転できるように改造されており、スイッチひとつで調節される。


「では、私は汗を流してきますね。先に良いですか?」

「いいよ!……大丈夫、覗かないから!」

「もうたっぷりと見たと思うのですが……まあ良いです。あ、娼婦のサービスならば受け付けているので頼むならどうぞ」

「いやいやいやしないから!テンペスト居るところでとかそんなの出来ないから!!」


 何の羞恥プレイだろうか。

 本命の横で致せとかもうどうしろというのか。

 虚しいだけだけども……。確かに手に残る感触は娼婦たちとは違ってとても小さくて柔らかかったな、とまた思い出しては悟られないようにベッドへともぞもぞと入っていくのだった。


 □□□□□□


「博士戻ったか」

「ええ。……夕食前ですが良いんですか?そんなに食べて」

「いや、なんかこう、食いたかったんだ。ちゃんと腹はあけておくさ」


 骨付きの鶏肉を骨ごとボリボリと食べているコリー。

 我慢できなかったらしい。たまに骨を食ったりもしているそうだ。


「……ちなみに、昔から犬が骨を好きな理由が知りたいと思っていたんですが、何故です?」

「俺達獣人でも一部はこうして骨をかじるのが好きなんだが、なんというかしゃぶってると味が滲み出てくるんだよ。多分人族には分からんが。後はなんかこう、歯応えのあるものをずっと噛んでいたいという欲求みたいなものだな。こればかりは止められん」

「なるほど。味が出て噛みごたえが有る……」

「あぁ干し肉なんかとかは結構好きだぞ。人族たちは硬いとか言っているが、俺達からすればまだやわらかい位だ。でもあの噛みごたえはいい」


 なんとなく歯が落ち着かないというか、噛んでいないと気がすまないときなんかに良いようだ。

 ただ塩分が多いため量を食えないと言っている。

 かと言って塩分を減らすとそれはそれで腐りやすくなるのでやりにくい。


 ジャーキーの作り方なら知っているので、とりあえずそれを硬めに焼いて作ってやった。

 若干時間はかかるが水分の調節などは魔法で何とでもなるのが有り難い。

 小一時間ほどでオーク肉のジャーキーが出来上がる。


「おお、いい具合に硬めで良いなこれ。肉の味もするしこれは良い」

「私の歯では折れそうだけどね。かなり硬いけどまぁ……平気そうで何よりだよ。私が居たところには世界一硬い食べ物と言うものもあってほとんど硬い木みたいなものもあったよ。元は魚らしいけど。少しずつ削って食べるんだ。良い風味で結構美味いんだが……元のものを触らせてもらったときにはびっくりしたね」


 鰹節のことだ。ただし作り方は知らないので再現できないだろう。一応、何度も燻してカビを付けてというのを繰り返して極限まで水分をなくしたものだとは聞いている位だ。

 そのときには、へー……と言う感じで聞いていただけだが、出来たらコリーも満足できたかもしれないなと今更ながらに思った。


「とりあえず水分を飛ばして乾燥させるという手順があると、こうやって硬くなると思っていいでしょう。色々と自分で試してみるのも良いかもしれませんね。元から硬い肉とかなら今よりももっと硬く出来そうですね」

「良いこと聞いた。自分で作るってことはあまりしねぇからな。手間もかかるし」

「え、何々?なんか面白い話でもしてるの?」

「硬いジャーキーの作り方聞いてただけだ」

「あぁコリーそういうの好きだもんねぇ。いっつも干し肉をお湯で戻さないでそのまま食べてるし。真似したら顎が痛くなったよ」


 丁度買い物から帰ってきたロジャーも部屋に戻ってきた。


 3人集まった所で何をもう一度調べ直すかなどを吟味していく。

 やはり石版自体には特に仕掛けはなかったということで、あの石版を置く台を調べたい。

 実現できればかなり優秀な航行システムとなる上、船につければ迷わずに陸地を目指すことが出来るだろう。

 これを使えば2点間を往復、もしくは複数の場所を周回するような物が作れる。

 鉄道を作るには起伏が激しすぎるこの国であれば重宝する移動手段が出来るのだ。


 上下動だけをするようにすればエレベーターにもなるだろう。

 既に作った物に関してはそのままでも良いだろうが、この山を上から下まで移動するための乗り物として大きなものを一つ作るのも良いかもしれない。


「後はどうやってマナを集めてるかだな。よくよく考えてみると俺達も同じことを出来るように博士から色々教わっているが……あれよりも規模も範囲も広いようだぞ」

「そうなんだよね。テンペストが書き写してくれた物を見た感じ、マナを集めて圧縮して魔力に変換して……貯蔵と動力へ回す仕組みになってるみたいなんだよ」

「どこかに貯蔵用の何かがあるはずですが、それが魔晶石以外であれば……魔槽が安く手に入れられるようになる可能性がありますよ。人工的に魔槽を作れれば容量も自由、大きさももしかしたら小さいものが作れるかもしれません」

「僕が叩いた大金は一体……ってなりそうだけど。大容量で安くなるなら色んな魔術師達に喜ばれるだろうね。魔力を充填する魔道具と共に使えば一々体を休めて魔力の回復を待たなくていいし」

「俺達が休みなく魔法を行使出来るのはテンペストと博士のお陰だからなぁ」


 リジェネレーションは今は何とかニールやロジャー、そしてコリーもある程度使えるようになっている。

 それ以前にそうそう魔法を使いまくることは無いのでそこまで枯渇することもないが。


 それであっても魔槽を必要とする人達は多く、転移系の魔法を扱える者にとっては特に必需品となるだろう。転移の魔法陣はまだ見たことがないので断定は出来ないが、それも詳しく分析していくことで最適化することも出来るかもしれない。


「転移かぁ……僕も使えるわけじゃないからね。それに転移の魔法陣は本として記録に残っている所は無いと思うし、テンペストも知らないだろうなぁ」

「知っていれば既に使っていますからね。やっぱり王立の特別教育施設に行くしか無いわけですか」

「だな。だからこそ転移魔法の使い手は貴重で、金があるものしか成れないんだ。少なくとも収納の魔法を覚えていることが大前提だし、この時点で狭き門だな」


 その希少な魔法持ちが2人も居るこのパーティーは相当だろう。

 しかも一人は兵器を出し入れしているのだから、その有用性は跳ね上がる。


「今回調べた感じでは、あの洞窟の中ってあそこだけだよね?」

「ええそうですね。探索した感じではあれら以外の部屋はあそこにはありませんでした。そもそもあの島が何故作られたか自体が謎ですね」

「……移動のためだけって訳じゃねぇよな?」

「都市としてであればどこかに建造物があるはずですが……ワイバーンで一周した時にも見ませんでしたからね。そもそもあの大きめの平地に建物の跡らしきものが全く無いのも不思議です」

「もともとはもっと大きなものだった……とか?」

「あー……崩落して動力のある部分だけ残ったとかそういう感じか?」


 ありえない話ではないかもしれない。

 なにせ相当前に作られただろう浮遊島だ、主要な建物などがあった場所は崩壊していてもおかしくはないだろう。

 ただ、洞窟の中にわざわざ作る必要が良く分からない。

 しかし洞窟からあの場所へ入る所も不自然だったので本来ならばもっと大きな地下空間だった可能性もある。それがいつの間にか年月を重ねるに連れて崩落していった。もしくは何かしらの攻撃を受けて滅んだ……など。


「滅んだ、というのならなんとなく説明付きそうじゃない?ほら、古い家とかの土台が土の中から見つかることとかはあるし」

「それは自然現象で埋もれたからでしょうが……、あの浮遊島に何かそういった外的要因がありますかねぇ?」

「一応……雨とかは降るんじゃねぇの?それにあそこには魔物やら何やらが住み着いてる。植物系の魔物だとその周りの風景を一変させるものも居るくらいなんだ、意外と不思議はないかも知れねぇぞ」

「そんな魔物が居るんですか。なるほど……ならば一応考慮して置きますか。あのへんを少し掘り起こしてみるかどうかして下に何か埋まっているかを調べたいところですね。地震でも起こしますか」

「地震か……そういや最近全然無かったから忘れてたな」


 隆起によって出来上がったこのハイランドでは、大きめの地震が起きることはあったそうだ。

 テンペストやサイラスがこちらに来てからは起きていないため、あまり考えていなかったが家などが頑丈に作られていて、道などもかなり念入りに補強されているのはそれが理由だったのだ。

 過去には近くの火山の噴火などもあったそうで、その時には灰をかぶって酷いことになったとか。

 近かったため火山弾や噴石等が落ちてきて強化していない建物はことごとくが穴だらけになり、木で出来た家は燃えたと言う。


「まあそれも俺が生まれる前の話だがな」

「僕は知ってるね。あれは酷かった。暫く作物育たないんじゃないかってね……結果的に国中の魔術師をピンからキリまで集めて半年かけて農耕できる様に回復させたんだよ。間に合わなくて村が消えた所も何箇所もあったけどね。僕が行った所も何箇所かは噴石と灰に埋もれてもう誰も助からなかったよ」

「そんなことがあったのですか。今はその対策とかは……?」

「もちろんしてるよ。だからこその結界だよ、外敵から守るだけじゃなくて噴火を観測したり地震が起きたときには直ちに物理的な防御の結界が追加で張られる。……まあそれも王都と余裕のある領地だけだね。ハーヴィン候のところはあるよ」


 なら何故火竜の襲撃を防げなかったのかと言えば、単純にそう簡単に発動させる訳にも行かないものだからだ。

 大量の魔力を必要として、維持にも相当な労力が必要となる。

 だからこそ本当に危険が迫っている時にしか使えない。ハーヴィン候のところであれば噴火の噴石などが飛来してきたそのときにでもなければ展開しないだろう、と言うことだった。


「どっちかというと……毒の気体の方が怖いね。目に見えないし。風向きによっては危険なんだ……けどこれも今は結界で防げるよ」

「硫化水素やら何やらでしょうね、あれは濃度があると危険だ。……しかし地震ですか、私苦手なんですよねあれ……めったに地震なんて無いところにしかいなかったんで、一度大きな地震に遭遇したときには腰が抜けて立てなくなりましたよ」

「ハイランドにはそんなやつはいねぇから笑われるぞ?」


 地震が起きたら家に入る、というのを徹底されているそうだ。

 こちらに来てから一年が経っているというのに、そういう事はすっぽりと抜け落ちている。一度きちんと歴史を見直してみようとサイラスは考える。

 しかし地震が怖いのはもうどうしようもない。


「動くはずのないと思っている物が突然動くんですから怖いんですよ……こればかりは慣れるしか無いでしょうね」

「まぁそうだろうな」

「一応、テンペストの作ったこの街もきちんと……というかむしろ過剰なくらいに頑丈になってるからね。多分噴石当たっても穴開かないと思うよ。落ち着いて部屋にいれば問題ないね」

「……あぁそれは安心ですね、確かに」


 オーバースペックで物を作るクセのあるテンペストのことだからまあ確かに問題ないだろう。

 構造等も応力などを考慮して見えない所で相当補強しているようだし、と自身を納得させる。

 火山がある上に地形的にも地震の可能性は感じていたものの、今まで無かったことでこっちでは地理的な要素などはやはり当てはまらないのだろうと何処かで安心していた自分を殴りたかった。

 全然安全じゃない。


 やっぱり浮遊島に住むのが一番いいのではないのだろうかと本気で考えるのだった。


 □□□□□□


「では、今日の調査は石版が置いてある場所の台座を調べること、そして最初の部屋にあるマナを引き込む装置の解析結果を考えるとどこかにマナを蓄える何かがあるはず……それを探します」

「加えて、土中に何かが埋まっていないかを調べる予定です、これは野外での調査となり……少々音が出るので周りの注意を引くと思います。護衛の皆さんは頑張ってください」

「……まあ、翼竜程度なら何とか出来るだろうが、あまり数が多いとどうにもならないかもしれんぞ?」

「私がサーヴァントに乗っておきますし、ニールもオルトロスで応戦します。戦闘が始まった場合にはオルトロスに研究者のお二人は逃げて下さい」


 テンペストはロジャーと共に地震波を計測して地中の音の伝わり方を聴く。

 エコーロケーションと似たような感じで地面の下の柔らかいところと硬いところとで、波の伝わり方が変わる。それを観測するのだ。

 本来は多数のセンサーを使って観測するが、これをテンペストがその代わりとなり、広範囲の波の動きを監視する。


「では、出発します」


 ワイバーンに乗り込み、吹雪の中を飛んでいく。

 全く影響を受けないわけではないが、テンペストによる誘導は正確だ。

 時折煽られそうになるものの特に問題はない。


「……酷い吹雪だな。大丈夫なのか?浮遊島は」

『天候に左右されない何かはあるはずです。それよりもこの吹雪に紛れて……大きさから判断しておそらく翼竜が3体接近してきます』

「今更翼竜とか、もうあまり脅威には感じなくなってきたな……」


 人員輸送ポッドに入っているみんなに警告を出し、交戦に入る。


「まっすぐこっちに向かってくるようだ。エンゲージ」

『ガンの射程に入ります。警告、目標加速。ブレイク』

「うおぉ?!」


 急旋回で躱す。

 すれ違いざまに発砲したガトリング砲の弾は正面の1体に命中したようだが致命傷とはならなかったようだ。


 一方、突然の動き方と、翼竜との交戦という事態になった人員輸送ポッドの面々は青白い顔をして、シートベルトをギュッと握って居た。


「今すれ違ったの何?!」

「翼竜……っぽいけど……あーびっくりしたぁ……」

「その割には落ち着いているじゃないですか!なんですか今の揺れは!」

「あの翼竜が攻撃を仕掛けてきて反撃するって言ったじゃないですか。そのまま直進するとぶつかるから避けたんでしょう」


 クレアとトーマスは軽いパニックに陥っている。

 急旋回による激しい動きと、身体を押し付けられるようなその加速等は何の訓練も知識もない人には衝撃的なものだっただろう。


「ちらっとしか見えなかったけど、あの体色からすると翼竜でもちょっと厄介なやつだね。ネブラワイバーン、濃霧を生み出して視界を閉ざすワイバーンなんだ。雪の中でもこんなに飛び回れるのか……」

「霧だけ?それであれば問題ないでしょう」


 実際、霧程度ならフリアーの暗視で無効化出来るのだ、特に問題はない。

 だからこそこの猛吹雪の中でも視界を確保している。


「ま、確かに」

「テンペストはニールに任せておくとして……動きは早いみたいなので少し掛かるかもしれないですね」

「だ、大丈夫。テンペストはボクがなんとかするから!」

「頼んだよニール。期待に答えてあげなよ?」


 しかし……。


『濃霧発生。有りえません』

「さっきの奴らの仕業だろう?」

『この風のなかで散らずにこちらをずっと包み込んでいるのです。ついでに言えば、フリアーが効きません。完全に視界を潰されました』

「何!?」


 目視による補足は無理。魔法的な要素も絡んでいるのか熱探知すら効かなくなった。

 同じようにマナを感じ取り居場所を測定する方法も使えない。


『いえ、待って下さい。搭載している赤外線カメラやレーダーは機能しています。物理的な手法は通じるようです。視界は限られますが映像化します』


 前方と後方の一部が表示される。

 レーダーによる探知で空を飛んでいるものを仮想的に表示して更にサポートすると……。


「……いいぜ、テンペスト。上出来だ。魔法的な探査が効かなくなったならミサイルは無理だな。レールガンは使えるのか?」

『使えます。レーザーは恐らくほぼ無効化されるでしょう』

「それで良い。狙い撃つぞ。補正頼んだ」

『了解しました』


 そう言うとワイバーンはその場で動きを止め、後方から迫る2体と前方から来る1体を同時に観測する。

 接近警報が鳴り響くコクピットの中でそのタイミングを図る。


「終わりだ」


 そう言って、コリーはマギア・ワイバーンを機首を上に向けた状態で失速させ、落ちていった。



ニール「柔らかかった……綺麗だし触ったら壊れそうで恐れ多い感じがして凄く……可愛かった……」

サイラス「何をぶつぶつと。ほら、手を洗って来なさい」

ニール「そんなもったいない!!」


暫くの間頭から離れないニールでしたとさ

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