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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第三章 束の間の平穏編
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第七十九話 結末

 ラトリッジ領へと入ったコリー達は、聞き出したワールスと言う街に到着する。

 そこの山小屋に引き渡し相手がいるはずだ。


「あれか……?」

「特徴は一致する。恐らくあれで合ってるだろう。衛兵と打ち合わせをして来る」


 山小屋は大分遠いが、下手に近づくとバレそうなので一気に片を着けるべく連携を取って踏み込むつもりだ。

 囮役は衛兵の一人に頼む。合言葉などはすでに聞いているから問題ない。

 それっぽい服を着せて、麻袋には体格の近いリヴェリの隊員を入れた。


「薪を持ってきたぞ。早く入れてくれ!」

「何処の薪だ?」

「ちゃんと王都から買ってきたやつだ。寒くなってきてるから買い占めが始まってるんで苦労したぞ」

「分かった、入れ」


 中に入ると男たちが4人。全員ガラの悪い奴らばかりだ。

 狩猟小屋という話だが、あるのはテーブルと酒と食い物だけ。中は薪ストーブが焚かれていて温かい。

 ここはすでにかなり寒くなっており暖房なしでは辛いくらいだった。


「あんたが運び屋だな。荷物を出せ」

「これだ」


 ゴロンと麻袋がテーブルの上に置かれる。

 丁度良く居た金髪のリヴェリは背格好と合わせてぱっと見は似ていた。しかし動きやすさのために髪は短く、服も普通だ。ドレスではない。


「これがそうか?聞いていた話とは違うぞ」

「間違いない。あの場でかっさらってきたんだからな。髪の毛は切り落として、服と一緒に焼いた。あのままじゃ宿に泊まれん。俺の子としてついてきてもらったんだよ、魔力と声を封じれば大人しいもんだ」

「くくっ、なるほどな。スポンサーがいかれてるとは言え貴族の娘だからな、そういった物も用意していたのか。ならここでも騒がれなくて済むな」

「ああそうだな、ハジメテは痛いからな」

「ちげぇねぇ」


 すっかりその気になっているが、まだその貴族が誰かというのが出てこない。

 ついでなので確定してもらいたいのだが。


「とりあえず依頼書出してくれ。引き渡しと受け取りのサインを書き足して置きたい。……後で知らないと言われるのはこっちとしても問題があるんでな」

「あ?んなもん契約にないだろうが。受け渡しは済んだんだ良いだろう」

「……前にそう言われて、後で受け取っていないと文句をつけられたことがあるんだよ、二度とゴメンだ。契約書になら破れまい」

「仕方ねぇ。持って来い」


 手下の一人が地下への隠し扉から入っていき、一枚の羊皮紙を持ってくる。

 そこには確かにE・ラトリッジの名前が入っていた。まさか本当にあるとは思わなかったが最高の証拠だ。


「確かに、本物だな。よし」

「な、なあもう良いだろ、もうずっと女を抱いてねぇんだ、この際ガキでも……」


 と、服に手をかけようとした男の手が宙を舞う。


「えっ?あ、ぎ、ぎゃぁぁぁ!俺の!俺の手が!!」

「全員突入!一人たりとも逃すな!」

「てめぇら誰だ!?」

「くっ、こいつら、衛兵か!何でここに!」

「地下室があるぞ、証拠を集めるんだ!」


 全員を逮捕し、証拠の依頼書を確保した。内容は酷いものだったが。監禁して犯し尽くし、最後はカストラ領の門の近くで晒し者にしろというものだった。

 相当恥をかかされたのが悔しかったらしい。が、残念ながら魔力封じと口封じの首輪までは用意されていなかった。放って置いても目を覚ましたテンペストが魔法を使って拐ったものを吹き飛ばした後、マギア・ワイバーンで帰ってきた可能性が高い。

 あの首輪は見せかけだけの玩具だ。


 その他にもこの地下室には色々な犯罪行為の証拠があり、エリーが使い物にならなくなった時にはこれらを使って脅迫するつもりだったようだ。

 お陰で罪状が追加されることとなった。殆どは違法な取引で、無理やり土地を奪ったりするなど悪どい事をやっていた。

 今まで証拠が不十分だったということでお咎めなしになっていたエリーも、もうこれは言い逃れが出来ない。

 父親であるラトリッジ伯爵も多額の賠償金を負担しなければならないだろう。


「……あっという間に終わったな」

「王都の衛兵は結構優秀だからな。君たちとは比べられないが、一般兵士としてみると練度は高いし、こうやって囮をするくらいの事はよくやっている」

「まあそれは分かるが……とりあえず帰るか。この街に長居したくはない。なんかこう……陰気臭い場所だ」


 コリーの言う通りこの渓谷の街ワールスは日照時間が少ないため土地の大半がずっと暗い場所だ。

 あまりいい気分がする場所ではなかった。

 住人もこちらを伺うような目で見ているのでなおさら気味が悪い。


 こうしてあっさりと終わってしまったが、証拠と協力者達も一網打尽に出来たので問題ない。

 生かして連れてこれたのも良かった。

 両手首が無くなった者も居るがまあそれは仕方ないし、どうせ最終的には死ぬしかないのだからこれも問題ない。


 □□□□□□


 これを受けて投獄されていたラトリッジ伯爵、そしてエリー・ラトリッジ、そして命令を出した使用人サミュエルは取り調べが再開された。


「ラトリッジ卿、今回の事件に関して、何か言うことはあるか?」

「……本当に、娘の、エリーが企てたことなのか……?」

「それに関しては確定している。他にも余罪が数多くある。証拠が出なかったから今までは無罪となっていたが、それも精査する必要が出てきた」

「なんと……言うことを……!」


 ラトリッジ伯爵は娘のしたことを殆ど知らなかった。

 色々と悪い噂があるが、それは全てやっかみから来ているのだとばかり思っていた。エリーに問い質した時も、そんなことはしたことない、潔白だと言われ信じていた。

 しかし今、それが全て本当にやっていたことであることが明るみに出てしまった。


「特に今回やったことは計画的だ。カストラ卿が出席すると言ったときから下準備を始めていたようだ。最終的に恥をかかせて鼻をあかせれば、それで満足していたかもしれないが……現実には逆に自分が恥をかいた。その時にはこの計画を実行することになっていたようだ。……これが証拠の文章だ」

「……エリー……!」


 無実を信じていた父親として、信じていた一人娘は自分を裏切っていた。自分どころか領民も、誰もかも。そこに書かれている事がエリーの書いたものだとは信じがたかったが、確かに筆跡はいつも見ている物だ。特徴のある癖がそれを物語っている。


「今回の事件はカストラ卿を狙ったものだった……が。ラトリッジ卿もあの場に居たように、貴族が集まり、また王族や公爵家があの場に居た。巻き添えとはいえ攻撃したとみなされるのは分かっているな?」

「はっ……」

「エリーはもう助けられん。王族たちへの攻撃、そして子供や女性の拉致は重罪だ。まして最後には陵辱の指示とそれを晒し者にしろという指示もある。これは司法の権力を持たない領主の娘には行使することが許されていない、これも重罪だ。他にも過去に無罪となったものに関しても証拠が出てきた以上精査しそれも加えられる。見た限りでは姦淫、略取、踏み倒し等などがあるが……やはり重罪となるものも多い」


 あまりの酷さに頭が真っ白になっていく。

 今まで信用していたものが全て崩れ去っていく。そして、庇って放免された時の被害者の悔しそうな顔を思い出す。


「……証拠がないからと、全てをなかった事にしてきた私の責任だ……。だが、どうか娘は……娘だけは」

「無理だ。例えラトリッジ卿が罪を被ったとしても、それで補いきれる様な物ではないのだ」

「では、私は……」

「領地と財産は全て没収、すでに手入れが入っている。財産から賠償金を支払うことになるが、全く足りないだろう。爵位も剥奪され、事実上ラトリッジ領は交代する。代わりの者が収まるまではこちらで用意した代官が運営することになる」


 着の身着のままで放り出されると言うことだ。が、その前に暫くの間牢へと入ることになる。


 父親が素直に娘の罪を受け入れ、贖罪をする、と誓を立てている時間、別な場所ではエリーへの尋問も行われていた。

 しかしこちらは父親とは違い、酷い有様だ。


「証人と証拠は揃っている。もう言い逃れは出来ない、諦めろ」

「ふざけないで!何であんなちんちくりんをけなしただけでそこまで言われなきゃならないの!こっちだって被害者よ!あの煙でのどが痛いんだから!」


 手枷を嵌められて椅子に座らせられているエリー。

 まだまだ元気でさっきから突っかかってきていた。耳が痛くなるような声をずっと聞いている担当はうんざりしていたわけだが。

 いくら言っても認めようとしないので証拠を提示する。


「あの場において男爵であるカストラ卿への暴言は、周りのものからの証言を得ている。まあこれはそれほどの罪ではない。だがこっちは別だ。お前の関与がはっきりと文章で残っている」

「な、なによこれ!私が書いたんじゃないに決まってるでしょう!」

「違うと?」


 筆跡の一致、今まで行ってきた犯罪の実行指令書と、過去の無罪となった犯罪の記録の一致。

 敵意を隠す布の入手経路はすでに金の流れから掴まれていた。

 すでに売り主は自白し、確かにラトリッジ伯爵令嬢の指示で売ったものだという証言を得ている。

 こちらは売った以外に特に何をしたわけでもないので、協力者ということで無罪となった。


「なんであいつが無罪で私が有罪なのよ!」

「ほう、面識があるのだな?」

「な、ないわ!」


 しかし他にも不審点が多く、色々突っついていると嘘に嘘を重ね、そのほころびが見えてくる。

 最後にこのほころびを解けば……。

 もう、自分が犯人であると自白したようなものとなった。


「以上だ」

「ま、まって……死にたくない!」

「王族への攻撃、拉致、強姦指示、私刑指示、全てが重罪だ。どれか一つでも死罪となる。無理だな」

「ではせめて一太刀で……」

「名誉ある死は与えられない」

「そ、んな……嫌、いやぁぁぁ!!助けて!!」


 冷たく言い放たれ、先程までのふてぶてしい態度は消え、泣き喚いて懇願し始めるが……。

 すでに成人して認められている者がこうした罪を重ねた時点で救いはない。

 斬首等は死刑でも名誉ある死と呼ばれ、身分の高い者などが対象となったが……あまりにも内容がひどい場合には当然ながらその権利は与えられない。


 あまりにも被害を受けたものが多すぎた。そしてやってはいけないことをやってしまった。

 知らなかったと喚いているが、それはもう問題ではない。やってしまったことが問題なのだから。


 結局、テンペストにしようと思っていたことがそのまま自分の刑罰となった。

 服を剥ぎ取られ、ラトリッジ領のよく見える所で晒された後、絞首刑とされる。


 □□□□□□


「……ここまで大事になるのですね」

「テンペストはあまり実感が無いだろうけど……こういうものだよ。厳しいように感じるだろうけど法律でそう定められていることには従わなければならないんだ。今回はこうして証拠なんかも揃っているし、言い逃れすら出来ない」

「分かっててもなんかね……ボクとしてもまだ成人したての女の子があれっていうのは……目を背けたくなっちゃうし」

「だが、もしもずっと眠らされたままだったらテンペストが犯された上にアレをやられたんだぞ。その時お前はどう考えるんだ?同じ目に遭えばいいと思うんじゃないのか?」

「う……。まあ、そうだね」


 コリーに言われてニールもそれは認めざるをえない。

 そんなことをして辱められたなら、それをした者達も同じようにしたいと思うだろう。

 色々あるが法律はそういった積み重ねで出来上がっている。


「個人的には被害がほぼなかったのでどうでも良かったのですが……。仕方がありません、それよりもこの賠償金は多すぎると思うのですが?」

「それもまあ、取っとけ。国が適切だと思う金額を寄越したんだ。テンペスト以外にもいくらかは過去の被害者たちにも支払われてるはずだ。まあ、その後の運営に支障がない程度にだが」

「ではこれも領地拡張用の資金としておきましょう」


 次の領主が正式に決まるまで代官が立てられ、暫くの間領地経営を行う。

 領民たちもこの決定自体には好意的だった。一応父親のラトリッジ伯爵はそれなりに経営能力は会ったので不満は少なかったのだが、その娘の悪行を無かったことにして放置していたことに関しては許せなかった。

 何処かで軌道修正が出来ればこういうことにはならなかっただろう。


 □□□□□□


 テンペスト誘拐事件から2週間ほど。

 ハイランドはついに吹雪の真っ只中に入った。


 結界のある街や王都以外では前が見えないほどの吹雪で道が完全に隠されてしまっている。

 この状態で外に出ればもう自分の居場所を見失い、そのまま遭難する危険性が増す。

 が、それはテンペスト達にはあまり関係のないことだった。


「これくらい降っていれば問題ありませんね。視界はほぼゼロ。フリアーのテストを開始します」

「オルトロス、フリアー起動。うおっ……すげぇ……」

「予想はしていましたが、問題ありませんね。空と地面の境目が分かって凹凸がはっきりしていればなんとかなるでしょう」


 これ幸いとばかりに赤外線オクロの性能チェックをしていた。

 吹雪ばかりは季節にならないと見れないので丁度良い。肉眼ではほとんど何も見えていないにも関わらず、窓には横殴りの雪だけが綺麗に消えているようにみえる。

 熱源だけを赤く光らせるようにすれば、そこに何かが居るということも丸わかりだ。


「ニール、タレット起動、操作を」

「こっちも問題なし!本当にはっきり見えるね。何よりも外に出なくて良くなったのが凄く嬉しい」

「雪に間に合って良かったです。これなら実用も問題無さそうですね、タレットの動きを確認して下さい」


 ついにニールの座る機銃席が室内になった。

 スティックを動かしてタレットを操作する仕組みで外に出なくても良くなったのは大きい。

 ぐるぐるとスティックを巡らせ、動ける範囲を確認していく。


「問題ないよ。そっちにはボクが見ているのは見えてる?」

「見えています。では、そのまま100メートル前方にある的を狙って下さい」


 ズームしてレティクルを合わせる。

 風向きや風速は横にデータとして出ているのでそれを拾って照準はある程度自動で補正される。

 これらの仕組みは超小型魔法陣の出現によって実用化の域まで引き上げられたものだ。

 レーザー刻印が実用化され、それによって焼き付けられた魔法陣と魔術式は組み合わせることによってある程度の処理能力を持ったコンピューターとでも言うべきものへと変わった。

 まだスーパーコンピューター並とまではいかないまでも、こうして機能を限定したものの演算などにはすでに使えるようになっている。


 照準を合わせてトリガーを引くと、やや遅れて屋根の上で発砲音が聞こえ、高温の弾は光弾となって的に突き刺さる。


「当たった!すっごい曲がるね……」

「かなり風が強いですから。でも何とかなりそうで何よりです。これならあの風竜に会っても問題ないでしょう」

「その時は最初からもう何とかしたいけどね……怒る前に」

「ワイバーンにレールガンが搭載されましたから、一気にケリを付けられるようになっているはずです。以前のようにニールを危険に晒したいとは思いません。とりあえずこの位でいいでしょう、コリー、一旦ハンガーまで戻して下さい」

「了解」


 ハンガーまで戻ってきたテンペスト達は車外に出ると、真っ白になった車体を見て少しびっくりした。

 少しの間しか出ていなかったと思ったが、それでもあの中に居るとこうなるらしい。

 地上にある整備用の第一ハンガーでは高級車仕様のオルトロスも整備中だ。

 社交界には間に合わなかったものの、これでこれからは王都への呼び出しでもそれなりの格好で行けるというものだ。


 ちなみに王室用のエキドナは分割払いでお金が支払われた。それでも毎月暫くは一定の収入があると考えると有り難い。

 この冬の間は国外からの商人も、国中を巡っている商人もほぼ来ない。

 それまで蓄えていたものでやりくりするしかないのだ。


 が、これからはこのオルトロスの民生品を使うことでそれも可能となるかもしれない。

 ただし、フリアーは装備しないためやはり難しいか。であれば一定間隔で目印を立てたほうがいいだろうか?熱を発する様にしておけば勝手に雪が溶けて見えやすくなるか……などと考えていたが簡単でいい案があまり浮かばない上に、そもそもオルトロスがかなり増えないと難しそうだ。


「流石に雪がひどいな。アレだから動けるようなものの……そう言えば博士はどうした?」

「今サーヴァントでテスト中です。雪も積もっているのでどれだけ足を取られずにいられるか、後は温度によって影響はないかを調べるそうです」

「なるほどな。とりあえず装備は問題なしか。……後はワイバーンか……」


 むしろ一番の本題だ。

 ワイバーンの制御試験を実行する。滑走路のシャッターを開けてワイバーンが飛び立つと、すぐに横風に煽られた。


「げ、結構きっついぞこれ」

『ライトプレーンでは墜落しますね。私達以外は飛ばないほうが身のためでしょう』

「後は博士がアレの仕組みを早く解いてくれるのを待つしかないか……」

『近日中に行う予定です。こちらから迎えに行くのでそのためにもこうして慣らしをしているわけですから』

「まあ、分かるが。お、視界がクリアになったな」


 フリアーを起動したためだ。

 全く見えなかった物が完全に見える。

 奥の方で激しく動いているのはサーヴァントだろう。


 風竜のときに比べれば、特に問題なく飛べるレベルだった。

 谷間付近の乱気流だけは少し気をつけなければならないが、それ以外は特に問題ない。

 後はテンペストの制御次第となる。徐々に高度を上げて雲の上に出ると、青空が広がっていた。

 この光景は少なからずコリーに衝撃を与えたようだ。


「マジかよ、あんだけ雪降ってても上はこんなに晴れてるのか!?」

『嵐の時にも見ていたかと思いますが、雨や雪等は雲の下にしかありません。その上はいつもどおりこの様に晴れているのです』

「ってことはあの浮遊島をこの辺りまで上げておけば、天気に左右されないで済むってことか?」

『そうなります。人が住めるかどうかは分かりませんが、あの植生を見る限りでは不可能では無さそうな気がします』

「……敵が飛竜しか居なくなるな……」


 テンペストがこちらに来るまでは大空の覇者として存在していた飛竜。今はその地位を追われつつあった。人の作り出した兵器によって。


『レーダーに反応あり。大きさから見て飛竜です』

「街が近いな。あの吹雪の中であんなもんに狙われたら不味い。下に街がない所に誘導して叩くぞ」


 噂をすればと言うものだ。

 すぐに戦闘モードへと切り替えて全ての火器のロックを外す。

 鼻先をかすめるように飛んでやればいい感じに食いついてきた。


「よーしよーし付いてこーい」

『目標は火竜と判明。口腔内に熱源感知。ブレスが来ます』

「オーバーシュートさせる。今!」


 機体を引き起こしつつエアブレーキを展開すると一気に機速と高度が落ちた。

 火竜が全力で飛ぶギリギリの速度で飛んでいたマギア・ワイバーンが突如目の前から消えたように感じただろう。

 そして次の瞬間、火竜が感じたのは飛膜の破れる感覚と相手の唸り声。

 獲物が後方下に居ることに気がついた火竜は高度を下げていくマギア・ワイバーンに狙いを定めて急降下を始めた。


 それが罠だとも知らずに。


 雲の中へと突っ込んでいく獲物。自分を傷つけたそれを火竜が許すはずもなく、どこまでも執拗に追っていく。自分もそれに合わせて雲へと入り……次の瞬間には目の前に地面があった。

 慌てて引き起こすも自分が追うために上げたスピードは落ちること無く、慣性に従って火竜は地上へと激突した。


「うわ、着地しやがった」


 雲に入った瞬間に移動し、火竜が落ちてくるポイントに狙いをつけて待っていたワイバーンだったが、落ちて首の骨でも折って死んでくれればよかったのに、火竜は両手足を使ってその衝撃を吸収し、ダメージはあったものの着地に成功していた。


『レールガンの使用を提案します。一撃で決めて下さい』

「よし、武装変更、レールガン。発射」

『着弾確認。火竜の生命活動は停止しました』

「強すぎんだろこれ……」


 素材狙いのためあまり破壊したくなかったので、頭の真後ろの首を狙ったわけだが、当たった瞬間にその場所は弾けてそのまま頭は落下した。

 ガトリング砲の何倍も威力があるそれを目の当たりにして少しびっくりしたコリーだった。


『丁度私の屋敷の近くです。着陸して回収しましょう』

「丁度、って言うかそこに誘導してただろ。ちょっとずれてたらテンペストの屋敷が潰れてたぞ?」

『ありえません。確実に誘導を行ったので』

「……そか。じゃぁとりあえず試験飛行は終了、ついでにレールガンのテストも完了っと」


 今日の夕飯は飛竜のステーキだ。



自分でフラグを立てていくスタイルのエリーさんはやっぱりこうなりました。


所でなんか500ポイント突破してました!

ありがとうございます!伸び悩んでいたところなので余計に……!

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