第七十三話 気持ちいい初体験
少し固めのベッドに裸になって横になる。
部屋は少し暑いくらいに暖められており、とてもいい匂いが広がっていた。
「では、始めますね。頭の方から順に下へと行きます。テンペスト様の年齢なら、特に必要はないとは思いますが、こうして肌を刺激して行くことで体が温まり、このオイルを全身に刷り込むことで肌を若々しく保つことが出来るのですよ」
「少し、痛いのですが……」
「ええ……少し固い気がします。本をよく読まれる方が特に痛がるところなのですが、読書がお好きですか?」
研究と写本と執務だ。
油断すると少し夜遅くまでやってしまうことがあるため、恐らく目の辺りに疲労が溜まっているのだろう。
しかし最初は少し痛かったがだんだんと心地いい痛みに変わっていく。
頭皮をゆっくりと揉んでもらっているうちにだんだんと眠気が出てきてしまった。
「テンペスト様、うつ伏せになってもらえますか?」
「ふぇ……はい。……寝てましたか」
「はい、とても気持ちよさそうにお休みになられていましたから、とても心苦しかったのですが……」
「いえ、構いません。続けてお願いします。寝ていたらまた起こして下さい。これは確かにとても気持ちのいいものですね……」
「そう言っていただけると嬉しいです」
首から肩、背中、腕、腰と他人に身体を揉んでもらう、という物がこれほど心地の良いものだとは知らなかった。
「やはりとても柔らかくてしなやかですから、あまり強くせずにじっくりとやりましょう」ということでオイルを刷り込みつつ軽いもみほぐしを行っていく。
腰にかけていた布をずらされてそこにもオイルをたらされる。
流石に太もものところはちょっとばかりくすぐったい感じだったが、やはりいつの間にか眠っていた。
結局、身体の向きを変える時に起こされたりしたものの、横を向けたりという時には起こさずに、そのまましてくれていたらしい。
ちょっとだけボーっとした感じで心地よい気だるさを感じる。
立っている間に軽く体を拭いてくれておしまいになった。
……もう少しやってほしいと思ってしまう。
「温泉でゆっくりと体を温めて、寝る時になったらもう一度お越し下さい。頭と髪の毛を綺麗にして、身体にはとても眠りが良くなる香りのクリームを塗りますので」
「楽しみにしています。こんなに休まる時間は初めての気がします」
よくよく考えてみれば、ゆっくりと休んでいる時間が殆どなかったことに気づく。
そしてこの身体もその分だけ鍛えられてもいるけど、その分疲れても居る事にも。
全身がぽかぽかと温まり、このまま眠ってしまいたいくらいだった。
服を着せてもらい外に出ると、エイダが居た。
少し前に終わったらしい。
少しつやつやしているから、多分今の自分もこんな感じなのだろう。
「気持ちよかったわねー……もっとしてもらいたいくらい」
「はい、正直今も少し眠いくらいです」
少し、というかかなり眠い。油断するともう目が閉じてしまいそうだ。
部屋につくともう眠気が一層ひどくなっていく。
「うう……お腹も空いているのですが、もうとても眠いです……」
「じゃあ、簡単に食べられるパンを持ってきて貰って、少し眠るといいんじゃない?」
「ええ、そうします……」
そろそろ昼食を取りたいところなのだが、眠気のほうが酷い。
エイダがパンを持ってきてもらったのでそれを受け取って軽く食べ、そのままフラフラと大きなベッドの部屋へと入っていった。
エイダはそれを見送り、後から運ばれてきた自分の食事を食べる。
食欲が満たされると途端に眠気が襲ってきたので、人のことを言えないなと思いながらもベッドルームへと足を運び……。
その途中、上着を脱ぎ去り、ベッドへとたどり着いて力尽きたテンペストを発見した。
パンツと薄い肌着を着ただけで、ベッドにしなだれかかるように眠っているのは泥酔した娼婦のようだった。
「ちょっ……そんな格好……もう!風邪引いちゃうじゃない……」
とりあえず、ベッドにきちんと寝かせてやる。
軽いテンペストなのでエイダの力でも特になんとも無かった。
かなり動かしたのだが全く起きる気配のないテンペストを見て、相当疲れが溜まっていたのだろうと思う。
「じゃあ……私も少し眠ろうかな……お昼寝なんて本当に久しぶりね」
窓から差し込む日差しはカーテンを挟んでいい感じに明るく、しかし眩しくない程度に落ちている。
釣られるようにエイダもベッドに潜り込んで眠りにつくのだった。
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「……ん……」
とても暖かく心地の良い日差しに包まれながら眠っていたテンペストだったが、2時間ほど経って自然と起きてきた。
あれほど眠かったと思っていた眠気は綺麗に消えたが、少しまだ身体はだるい。
眠くなくともこのままだらだらとベッドの上で過ごしていたい。
外を見てみるとまだ明るい。
窓から見える滝の裏には影になっていて分かりにくいが、確かに洞窟があった。
滝壺の周りは岩だらけだが、そこから流れていく水は川となり下の池へ一時的に溜められて、また大地の裂け目の中に入り、何処かへ消えていく。
少し角度を変えると水蒸気を吹き出す山が見える。恐らくあそこにも湧いているだろうが、とてつもなく熱いだろう。
ぐーっと伸びをして落ち着くと急にお腹が鳴り出した。そう言えば昼ごはんはまだ小さなパン一個だけだ。無理もない。
そしてエイダが居ないことに気がつくが、さっきまで自分が居た隣の部屋に気配を感じた。
行ってみるとエイダもぐっすりと眠っている。少し迷ったが起こすことにした。
「ん、ん~?あ、テンピー起きたんだ?」
「はい。とても心地の良い眠りだったように感じます。今までの眠りとは違っていつまでもそのまま眠っていたいと思うものでした」
「……ちょっと……その話を聞くと心配になるわね。普段からきちんと睡眠を取らないとだめだよ?今は前と違って体力もついているから良いけど、年齢を考えたら睡眠不足は体に悪いのよ?成長しないよ?」
「成長、ですか。未だ実感がありません」
「そう?小さい頃…………あ」
「ええ、私がこうして人の肉体を得てからまだ2年経っていません。確かに若干ではありますが、最初の頃に仕立てた時の鎧はきつくなったりしていたので直しましたが、それ以外での肉体の成長という実感はまだ感じていません」
一応テンペストも成長しているのだ。
背も数センチほど伸びているが、正確に測っているわけではないので分からない。
魔力量や体力に関しては最初の頃から比べてかなり成長しているのは実感できているが、今のところ体の変化といえば少し大きくなったかな?という程度だ。
「そう?最初の頃からすれば、身長伸びたし……少しふっくらしてきたかな?あ、太ってるとかじゃなくてね?女の子らしくなってきたというか……最初の頃はちょっと痩せてて心配だったもの」
「そうでしたか。……やはり胸は大きい方が良いのでしょうか」
エイダの胸を見ながら言う。自分のものはほとんど無いも同然だ。成長する気配がない。
心持ち尖ってきたかな?くらいだ。
エイダもあまり大きい方ではないものの、見て分かる程度には膨らみがあり自分のものとは比べ物にならない。
「はぁ……。男ってそこばっかり見るのよね。リヴェリの女の子達は大抵皆胸が小さいから……リヴェリからすると胸は小さいほうが美しいっていう話は聞いたことあるけど。人族の男どもにも見習ってもらいたいものね」
「……リヴェリは小さいほうが良いのですか?」
「そう聞いたことがあるけど。リヴェリの男の子から。……いや男の子っていう年じゃないんだけど、見た目がもう子供だしね……つい言っちゃうけど。多分そういう関係だと思うわよ。人族だって子供の頃は男の子と見分けがつかない位だから」
ほんのりと膨らんだ程度が最も美しい、らしい。もちろんぺったんこもいいが、授乳の際に苦労すると言う。
確かに小さな体型で胸だけが大きくなるとバランスがかなり崩れるから、言わんとする事は分かる。
そしてニールはそのリヴェリだ。
「そうだったのですか。では私はこのままで良いですね」
「どういう事?」
「ニールはリヴェリですから。リヴェリが小さな胸を好むというのであれば、むしろ大きくならないほうが私にとっては良いですから」
「いや、それはどう成長するかはわからないんだけど……それよりも、もしかしてテンピーってばついに恋しちゃった?ニールと?ニールでいいの?」
「恋や愛と言うものがよく分かりませんが、ニールのことは私としてもとても好きだと思っています。ずっと一緒に居るのが夫婦であれば、今でも一緒に居ても構わないのですが……そういうのは結婚してからにしようと言われてしまいました」
「へー。それ、完全に恋ね。まさか相手がニールになるとは思ってなかったけど。コリーとかロジャーの方が可能性ありそうだったのに……。あと、男女が一緒に居るのは良いんだけど、テンピーは無防備すぎるからね?今日寝るときだって……っていうかまだその格好のままだったのね。いつもそれで寝てるの?」
眠る時にあまり体を締め付けたくないため、上に着る肌着は軽く、肌触りの良いものを使っている。気に入ったものがなかなか無く、リヴェリの物を見ていた時にちょうど合うものがあったので買ってきたのだが……。
「大人の女性が夜に男性を誘う時に着る」という大人の肌着だったのだ。
確かに軽くて綺麗だし、物もしっかりしているのだが……大人しめではあるもののやはり何処か扇情的なのは否めない。
購入してからは寝る時には寝間着代わりにこれを着て寝ている。
普段の服の下には着ていないのがまだ救いだったのかもしれない。
こんなものが見えていたら確実に誤解されるだろう。
「……そういうものだったのですか、これは。気に入っているのですが……」
「まあ……下の方は普通だからちょっとチグハグな感じではあるんだけどね?だからそんな格好でニールと寝る事になったら、どうしたって意識しちゃうじゃない」
服装的には思いっきり誘われているけど、お預けで、ずっと一緒に居る間はニールにとっては幸せであり、とても辛い時間になるかもしれない。
「ですから、その為にも娼館での発散はいいと言っているのですが……」
「あのね?ニールはあなたとしたいの。でもほら、歳が歳だし色んな意味で良くないの。好きな子を想いながら他人を抱くなんて凄く酷よ?それと、愛する人の肌を他の人に見せたくないって思うのが普通だから、ニールのためにも少しは恥じらいを覚えたほうが良いわね」
「それもニールに言われました。あまり他の人に見せて欲しくないと。もちろん同性同士ならあまり気にしなくてもいいけれど、最悪でもこのパーティ以外の人の前では絶対に止めて欲しいと。なのでなるべく気をつけています」
「そうね、それが良いわね。まあ……パーティ内でも普通はしないんだけど……博士はある程度医療知識ある良識のある方ですから問題ないし、コリーもテンピーのことは妹とかそう言う風に思っているみたいだから大丈夫ね。ロジャーもリヴェリだからあまり見せつけるのはかわいそうだから止めなさいね?」
現在独身のロジャーだが、人族と付き合った経験がある。当然死別となったわけだが流石にそれが辛すぎたようだ。その後また結婚もしているのだが、研究や弟子の指導ばかりしているため破局。
なので実際のところはロジャーももう達観しているところがある。
とりあえず、成長に関してはこれくらいにして、さっきから鳴っているテンペストの腹の方をどうにかすることにした。
エイダも軽めに食べたので少しだけお腹が空いている。お茶などを楽しむくらいなら良いだろう。
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「あぁ……気持ちいいな。まさかここに来れるとは思わなかったぜ。師匠様様だな」
「なんだかあまり褒められた感じがしないねコリー?でも良いでしょここ。いつもは一人でこっそりきてるんだけどね」
「最高。この温泉とか最初はすげぇ臭いきつくて辛かったが、慣れてきたらなんかいい匂いに感じてきたぞ」
獣人のコリーは鼻が利くため少々この温泉の匂いは辛かったようだ。
しかし湯に浸かりながら風呂場の担当に肩をほぐしてもらっているうちにだんだんと慣れてきたのだった。
コリーにはもう一つの泉質のほうが鼻的には良いかもしれない。
「んー、でも僕の一番好きな所はテンペスト達の方になっちゃったからね。おあずけだ。凄く綺麗なんだよ」
「何にせよゆったり出来ればそれで良いな。博士とニールは何やってるかね」
「ここに来る前に散歩しに行ったみたいだよ。地形見てみるとか何とか」
「休めよ……誰のために来てると思ってんだ博士は」
「もうホント癖になっているというか、好きなんだろうね。やってる最中はなんだかんだ楽しそうだし。ま、奥さん待たせないようにしなきゃだめだよって言ってからはきちんと時間には帰ってるみたいだけど」
経験から来る忠告だ。
あれから意識が戻り、色々と生活などは出来るようになっているものの、言葉が話せなくなっているようだ。エイダが一度戻せるか試そうかと言ったが、自分で克服しないうちは怖いだけだから止めてやってくれと止められた。
文字は今教えている所で、教育をまともに受けていない彼女は字を書くことが出来ない為、実は名前もわからない。
でも少しずつ進展はしているという。
「あぁ、妻帯者は大変だな……。俺はまだ娼婦でいいや、面倒がなくていい」
色々と家の騒動とかも見てしまっているコリーは結婚というものにどうにも向き合えないでいた。
面倒くさい事が起きるなら、最初からしない方がいい。
やりたいときは発散すればいい。
たまに娼婦に入れ込んで全財産をつぎ込むやつも居るが、バカの所業だと思う。
あくまでも仕事でやっているのに、勘違いするのは何故なのか……。
「あの……もしお望みならばお呼びしますが?」
「ん?娼婦をか?」
「はい。少しお時間はかかりますが、好みをおっしゃって頂ければ……」
「……こういうところだからそういうの禁止だと思っていたが……意外だな」
「まあ、確かにそうなんだけどさ。色々とスッキリするために来るところだからね……。奥さんと全然なのに娼館行くとうるさいとか、そういう時はこっちでたっぷり発散してく人、多いみたいだよ」
「はい。情報に関しては全て漏らさぬよう注意を払っておりますし、秘密の部屋も用意してございます。奥方に咎められることもないでしょう」
「すげぇな……」
多少歪んだ性癖を持っている者達も多い貴族の上、下手に従業員に手を出されても困るため、こうして高級娼館と連携して居るのだ。
もちろん、従業員にはおさわり禁止、そういうサービスもやらせない。無理やりやらせようとした場合には即座に取り押さえられることになる。
王国認定を受けているところはそれくらいの裁量権はあるのだ。もちろん王国側も、自分たちが認めた場所での犯罪行為に対しては厳しめだ。
「ま、今はいいか。洗ってくれ」
「畏まりました。毛並みが綺麗になるようにこちらも使いますが、香りはどれがよろしいですか?」
「んー……あ、これがいいな。何か落ち着く」
「んじゃ僕もお願いしようかな」
「はい、ではこちらへどうぞ」
垢こすりみたいなものだが、ついでに軽いマッサージなどもしてくれる。
ちなみにやっているのは女性だが男の裸なんて見ても全く動じない。もう見慣れすぎているのだ。
身体の隅々から垢を落とし、足の裏を丁寧にケアしていく。
特に獣人のコリーは体毛があるため終わった後は乾かしてもらっていた。
「あはははは!コリー凄いじゃないか!さらっさらだよ、さらっさら!」
「笑うなよ!いやでも、すげぇさっぱりしたぞ。何か全体的に軽くなった気分だ」
「まあ、毛並みも整えてもらってたしね。ボサボサだったんだから丁度良かったんじゃない?」
「まあな。ここまでやってもらえるとは思わなかったが。こりゃ何度も来たくなるわけだ……飯も美味いし酒も美味い!夕飯まで少し寝るかな」
「いいねー。少し飲みながら日当たりいい所でちょっと寝ようか」
ちなみに夕食に呼ばれるまで爆睡した。
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「いやぁいい景色だねこれは」
「いいですけど……危ないですよここ。あるのも普通の火山岩とかだし……」
「まあ、そうなんだけどもね。この辺からだと結構見晴らしがいいから……。やっぱりどこもかしこも高山だらけだね……。海は向こう側であってる?」
「え?そうだけど、見えないですよ?」
「いや良いんだ。山岳地帯の景色、一応海側の方は平地が広がっているわけだよね。ここよりも標高低いし、海には降りられないくらい高い崖だっていうけども……やっぱり不便すぎて使わないんだよね?」
「そりゃまぁ……道すら出来てないですから。結構遠いし、この山を上ってまた下ってというのを3回位繰り返さなきゃ無くて、結局向こう側に住む人はいなくなっちゃったって聞きます」
遠い上に低いところでも4~5000mレベルの山を登ったり降りたりは流石に無理だ。
広い土地はあるものの、山に囲まれてしまっているので道がない。何も物資を手に入れる手段がないのだ。
ほそぼそと定住した者達も居るが、自力での開墾は難しく早々に上に戻ってきている。
「それで、開墾したらそこの土地もらえるよね?」
「出来ますけど……まさか博士やる気ですか!?」
「平民でも出来るけども、多分私もその内爵位はもらえるような手応えだったんでね。もしなれたらそっちに領地を貰おうかと思っているんだ。ほら、自分の名前付けられるしね?」
密かに自分の名前をつけた領地を狙っていたサイラス。ライナー領とか付けて全部に自分の名前を冠した物を残してみたい。
向こうの世界ではまともな名を残すことができなかったのだから、それくらい良いだろう。
「そうですけど……。海に降りられませんよ?どこも断崖絶壁っていうか、抉れてるから足場も作れないんですから」
「行けるところを掘ってエレベーターでも設置すればいいだけです。そして飛行場。言いたいことはわかりますよね?」
「……飛行機を物資の輸送に使う?でもそんな荷物つかないですよ?ワイバーンは出来るけど……それに使うのはちょっと……」
「輸送機、という専用の物を使うんですよ。既に機体の設計には入っているので、出来るようになったらまた色々と実験と設計を繰り返して完全に自分たちの手で作ったものを飛ばすつもりなんですよね。そしたら、もう基本的なことは出来る様になるわけですから」
単葉機……ジャンボジェットなどでもよく見る形の物を作る。
貨物専用とすることで一気に大量のものを運べる物が作れればいいが、滑走路の大きさが決まっているのでそこは少し気をつけなければならないだろう。
多分、横に広げることになる。出来れば長距離を滑空するくらい安定しているのを作っておきたい所だ。
武装を積んでおけば、とりあえず飛竜に絡まれてもなんとかなるだろう。
どの道まずは小型のものからだ。
速度に慣れたら音速機の練習もさせていきたい。……が、まだまだ時間がかかるだろう。
とりあえずは機体制御装置の開発が先だ。
「うーん。楽しみだ。ついでに海の方もドックを作って高速艇の開発でもしようか……折角エコーロケーションできるし潜水艦も面白そうだが。そもそも船は専門外だ、強度計算するだけに留めるか……いや、意外とこの世界の素材だと関係ないかもしれないな」
「博士ー……とりあえず戻りませんか……。ボクもそろそろ温泉に入りたいんですけど」
「ん、そうだね行こうかニール」
こちらに来てから自分の欲望には意外と忠実に生きている。
どうせなら思いっきり楽しんでおこう。
風呂について服を脱ごうとしたところ、服を脱がされていき、少々面食らったものの……これがサービスだと言われると従うしか無かった。
若干恥ずかしさはあるものの、もう割り切るしか無い。
それぞれたっぷりと楽しんだ後、全員が揃って夕食となった。
「サイラス、疲れの方はどうですか?」
「一気に吹き飛んだ気がするね。後でマッサージ行ってくるつもりだよ。……つくづく、皆に気を使わせてしまってすまない……」
「ホントだよ?まあテンペストもなんだけどさ。2人が倒れたらどうなるか、分かってる?」
怒られてしまったが、至極当然のことなので言い返せない。
研究が確実にストップするし、まだ教えてないことなんて幾らでもある。
「……考えが至りませんでした。すみませんロジャー」
「確かに、考えていなかった。もう少し気をつけるよ。毎日研究所に通わずに週に一度は休む事にする」
「その間絶対仕事はしないこと。だらだら寝ててもいいから、とにかく体を休ませて欲しい。副所長として言わせてもらうよ?今はまだ2人に頼りっきりの状態なんだ。僕も勉強はしているけど、正直追いつくまでにどれほどの時間がかかるか分からない。ニールも頑張ってるけど同じだ。他の研究者もね……。まだ別な目標もあるんだから、ここで倒れてるわけには行かないでしょ?」
「そうね。私たちには研究も大事だけど、もっと最優先でやらなければならないこともあるんだから。ま、この話はこれでおしまい!食べましょ?」
どうなるかわからない事を考えていても、行き詰まっている時は何をしてもダメだ。
そういうときこそ根を詰めるのではなく休憩が必要。
今はその束の間の休息を楽しむ事にする。
お腹が膨れた後は、それぞれまた好きな所で存分に脱力した後に少し早めにベッドに入るのだった。
モーニングスターさんとこのタグって落ちたし外しちゃって良いのかな……?
このまま継続でなろうコンの方にもエントリーしてるけど。
さてさてテンペストが初めてのオイルマッサージを体験。
残念ながらエッチな方ではありませんが、体中を優しく揉まれて熟睡してしまいました。
疲れが溜まっていたんでしょう。
この日、描写はないですがエイダと一緒にあの晶石の風呂に入って星空に浮かぶ様な感覚を楽しみました。ついでに言えばそこの泉質は美人の湯とされるものなのでおはだつるつるです。
さらにコリーの毛並みがさらっさらになりました。毛艶がよくなり、光り輝くふわふわもふもふです。