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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第三章 束の間の平穏編
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第五十七話 禁薬

 朝食を取って宿を後にする。

 村を出る時には村人たちも集まってきて口々に礼を言ってきた。

 これで安心して作業が出来ると。そしてとびきりの作物が出来たらカストラ領にも持っていきたいとも。

 もちろん、新鮮なものが来るのは嬉しいので了承する。


「いい村でしたねぇ」

「これからも頑張ってもらいたいものです。かなり大きな村になっているようですし、魔物やその他の被害が心配です」

「あそこはハーヴィン領の中にある。ハーヴィン候が管理している村だから話をしてみたら良いんじゃないか?」

「そうします」


 既に領内だったらしい。

 よくよく考えてみれば領の範囲がよく分かっていない。


『コリー、領地とはどれほどの範囲があるのですか?』

「爵位によるぞ。俺たち男爵は基本的には他の領地にさらに区分けされた領地をもらうのが普通だ。その点、テンペストはちょっと特殊だが一応その考えとしてはあっているとも言える。ハイランドの中に王都があり、その王都が管理する土地の中からあの地を貰ったわけだからな」


 範囲としては結構広かったりする。

 というのもそもそも人の手が入っていない山々ばかりなのでそう簡単に手を広げられないというのが一つ。そして、ワイバーンやその他兵器の実験のために広い土地が必要であることが一つ。

 地図にしてみれば空白地帯にぽつんとあるのがカストラ領だ。

 標高も他の土地などと比べても高い為、植物はまばらだ。農耕には向かない土地だがそこは野菜工場を建てているので室内で育てている。


 年中温室なので季節は関係なく栽培できるのが強みだ。

 最初は自分達用に実験的に育てていたのだが、サイラスが改良した結果普通に使えるレベルになったのでそのまま工場にまでなったのだった。


「王家から土地を分けてもらっているようなものだな。普通は侯爵だ。ハーヴィン候の領地もかなり広いぞ。領地の中には当然子爵以下の他の貴族も居る。それぞれがそれぞれの区画を管理して居るが、集落や村などはその庇護下にない。自分達で身を守るしか無いが武装は禁じられているから兵を持つことは出来ないな。というか、私兵を持つことが許されるのは侯爵からだから普通は無理だ」

『……私は武力を持っていますが』

「テンペストが精霊で、この国の運命も左右するような存在として認められているんだぞ?そうでなくとも精霊はこの国では崇められる存在だ。そんなテンペストを蔑ろにすることは出来ないし、かと言っていきなり子供を養父であるハーヴィン候と同格にも出来ない。苦し紛れに男爵の地位ではあるものの国のための研究の為特例として所持を許す……ってとこだろ。ハンターでもあるからその武器を使って実験も可能だ。というか、今の状態であれば存在自体が兵器だろ」


 実際、実験などで得られた情報はある程度国に流している。

 使用許可などもきちんと国から得ているのだ。

 確かに研究してその結果生まれたものを試験するために所持と仕様の許可を、というところだろう。

 特に何も思わずに手続きをしていたが、本来はそこまでの戦力を持った場合下手をすれば反逆の恐れがあるとして手入れが入るそうだ。


 サイモンも戦力として私兵を持っているものの、王国の兵士達よりも数を減らし、武装自体もランクを落としているそうだ。

 ハンターは?といえば一人一人が下手をすれば通常の兵士よりも強いときもある。しかしそこはギルドで管理することによってどこで誰が何をしているのかを全て監視しているという。

 身分証にはそういう機能があるそうだ。

 だからこそ、常に身につけていなければならず、ハンターでありながら身分証を付けずに居ると問答無用で捕まる。


「まあ、そろそろ実用段階になっているのもあるから、そういうのはよほど危険なものでなければ量産して納品しておけばいいだろう。どうせ国としては数年掛かると思っているみたいだから早くてびっくりすると思うぞ」


 一応、研究結果を書いた書類等は出しているし、既に幾つかの研究結果は提出して貴族の間で使われているものも多い。

 しかし武器となるとまだ試作品だったりしたので進んでいなかった。

 とりあえず火薬式の単発ライフルと手回し式のガトリングを納品予定だ。


『そうですね。火薬式の銃火器に関しては大分安定しています。高威力の魔導ライフル等は使う人を選ぶところがあるので特別に訓練が必要ですね』

「……その訓練するやつ、どうするんだ?向こうには居ないからこっちでやらなきゃならんのか?」

『ならば訓練場も建てなければなりませんか。やることが多いですね、せっかく狩った竜で増える資金もそれで溶けそうです』


 扱える人が居ないならそれを教えなければならない。

 研修に出してもらってこちらで教えていくというのが良いだろう。ちょっとした収入にもなる。


 下を見れば快調に高機動魔導車が飛ばしている。

 村からサイモンの居る所までは山道はなく平地なのでかなりの速度を出しているようだ。

 時々バウンドしてるがニールは大丈夫だろうか。


『前方に横転した馬車を発見。マーク』

「サイラス、そっから400m程で馬車がコケてる。勢い余ってぶつかるなよ」

『ええ『ほら!気をつけろって言ってる!スピード落とそう!?』かりました。ニールちょっとうるさいですよ?』

「やっぱり駄目だったみたいだなニール」

『さほど酷い運転ではないのですが。むしろ博士があれだけの運転技術を持っているのが驚きでした』


 何の事はない、ただの勘だったりする。

 それなりに器用なので車くらいなら普通に運転できる。他に同じような車もなく危険が少ないから飛ばしているだけだ。

 そんなことをしているものだからあっという間に馬車の元へと到着した。


『周囲に敵影はありません。このまま上空待機します』

「了解だ。まあ、サイラスに任せときゃ大丈夫だろ」


 □□□□□□


「……あれですか」

「博士、本当にもうあのスピード慣れないからやめて……」

「しかし、あまり遅すぎるとコリーのストレスが溜まりますよ?あっちのほうが圧倒的に速度が出るんですから、この魔導車に合わせるのは大変なんです」

「そうなの?」

「ちょっと出力あげただけでこれ以上に速度が出る機体を、ものすごく繊細な操作で合わせてくれてるんですからあまり文句は言わないほうが良いですよ?」

「うぐ……向こうも大変なのか……なら仕方ないか……って、あ、馬車?」


 恐怖のあまり騒ぎまくっていたせいで全く気づいていなかったらしい。

 車体がトレーラーよりも低い分速度を体感しやすくて怖いようだが、この程度ならなれてもらわないと困る。

 これからも出せる時には目一杯速度を出して慣らしてやろうと決意するサイラスだった。


 魔導車を降りて馬車に近づく。

 馬は死んでいるようだ。人の気配はなく、よく見ればそこらに血の跡があった。


「うえ……襲われたんだこれ……」

「不運でしたね。矢が刺さっているということは人に襲われましたか……私は馬車の中を検分してきます」


 横転した馬車の中は入っていた荷物がバラバラに散らばり、酷い状態になっていた。

 その中に一人の男が首をかき切られて事切れていた。

 この馬車の主だったのだろう。


「商人ですかね?身分証は…………見当たりませんか」


 衣服を全てひっくり返してみても全く身分証が見当たらない。

 男は商人の格好をしているものの、身体の筋肉の付き方からして鍛えている。そうそうあっさりと負けそうにない気がするが……。


「護衛の死体がありませんね。遺体は彼1人だけ……単独で商人が行動することは基本あまり無いと思うんですけどね」

「外はもう見る所ないよ、博士。……何してるの、博士もしかしてそういう趣味……?」


 違う。流石にそっちのケは無い。

 というか別に見たくて見たわけじゃない。


「いえ、死体を調べて何があったのかを調べてました。致命傷の首の一撃以外全く傷がありません。しかも抵抗すること無く亡くなっているようです」

「へぇ…………おっきい……」

「ええ、結構体格もよくて大男までは行かなくとも屈強な人間であることは間違いないでしょう。商人の格好をしていましたが、どこにも身分証がありません今から積荷を調べてみます」

「え、ああ、うん。何をすればいい?」


 ニールのおっきいは股間を見て言ったものだったが、サイラスは体格と勘違いしてくれたようだ。

 サイラスはとりあえず荷物を全て運び出してこの馬車を空にしていった。


『博士、何かあったのか?荷物全部出して……』

「ええ、中に居たこの馬車の主らしき人物は身分証を持っておらず、商人にしては体格が良すぎます。まるで兵士だ。それなのにその死体についている傷は首への一撃のみ。護衛の死体もなし。今運び出して確信しましたが、箱の数に対して中身の散らばり方が不自然に少ないです。……怪しいですね?」

『……なるほど。その箱と積み荷、そして死体全てを確保する必要があるな。サイラス、ニール、すまんが少し待っていてくれ。先に街に行って事情を説明してからまた戻ってくる。ここから馬車で……まあ数時間程度だ、比較的近い所で良かった』

「了解です。私達は魔導車の中で待機していますね」


 街の方へ機首を向けてあっという間に加速して見えなくなるマギア・ワイバーン。

 この世界の技術と、地球の技術が融合してメチャクチャな戦闘機が出来上がってしまった。

 アレをもう一機作れと言われても中身の無いものしか作れまい。なんとか魔法陣と魔術式を組み合わせてニューロコンピュータ並の処理ができる物を作らなければならないのだが……。中身はテンペストのコピーとなるだろう。


 それもまだ全然目処が立っていない。


「結局はテンペストありき、なんですよね。難しいものです」

「何が?」

「いや、こっちのことです。それよりも検分をもう少しやったら魔導車に引っ込んでいましょう……いや、数は少ないしこの箱を持っていきますか。中で検分しましょう」


 後部座席の間に箱を入れて中を見ていく。

 何が入っていたのかを調べるつもりだ。とは言え科学捜査が出来るわけでもないので、とりあえずの予測にしかならない。ちょっとした痕跡があれば助かるのだが。


「んー……何もないですね。ってか何この粉……小麦粉かな?」


 下に緩衝材として敷かれた藁を取っていたニールの手には、白っぽい粉が付いていた。


「どれどれ……いや、透き通って見えますね。白く見えますが。塩でしょうか。食料品をいくつか積んでいたようなので可能性が高いと思いますが、調べてみないと分かりませんね。とりあえず手を洗って下さい」

「そだね」


 毒かも知れないし、下手に触ってしまったら危ないものだったらまずい。

 成分の分析などは研究室に行かなければ分からないし、ここには試験用の薬もない。

 その後も二重底になっていないかなどをいろいろ調べてみたが結局分からなかった。


「……とりあえず、あの男は何かを運んでいて、殺されて奪われた。何だったかは知りませんが……」

「1人で死んでいたって事は護衛の人に裏切られたとか?」

「可能性はありますね。何よりも護衛の死体がないのが気になりますから。外に散らばっていた血も恐らく馬の物でしょう。結構暴れたっぽい感じがありましたから」


 裏切られたとすれば、彼以外の死体がないのも納得がいく。

 しかし、それであれば逃げる時はどうしたのだろうか。


「仲間が居て待ち伏せしてたとか……?」

「最初からグルだったというわけですか。しかしそれなら普通の商人でもいいはずですが……彼はどう見ても商人ではないですね。使い捨てにするならその辺の馬鹿な商人を見つけたほうがいいはずです」

「うーーーーーん……?じゃあ、なんだろ?」


 結局結論は出ないままだ。

 証拠をなくそうとするなら燃やすだろうし……。


「ん、この音は……テンペストさん達が戻ってきましたね」

「やっぱり早いね……ほとんど時間経ってないじゃない」

「音速を超えてますからね。あの程度で悲鳴をあげているようでは乗るのは無理です」

「前みたいにゆっくり飛んでくれないなら絶対乗りません」


 まあ、ニールならそう言うと思っていたが。

 コリーから連絡が入り、今ハーヴィン領の警備兵がこちらに来るということだった。到着まで約3時間。ワイバーンも降ろして休憩することにした。


 外に出ようと後部ハッチを開こうとした時に、ちょっと嗅ぎ覚えのある臭いがしてきた。


「あれ、この匂い……」

「ん、また漏らしたんですかニール?」

「違うよ!?ボクじゃ……あっ」

「あー……」


 ニールでもサイラスでもなければこの場にいるのはたった1人だ。

 そして、テンペストが目を覚ます。


「サイラス博士、状況を…………。……やってしまいましたか」

「テンペストさんはそちらでとりあえず綺麗にしておいて下さい、こっちは私がやっておきます」

「すみませんサイラス博士。先にきちんと用を足しておいたのですが」

「こればかりは仕方ないでしょう。長時間離れる場合を想定してカテーテルでも作っておきましょうか?」

「それがいいのかもしれません。任せます」


 まあ、魔法で綺麗には出来るのであまり問題はない。

 しかし女性ということもあってこういう事はなるべく回避してやったほうがいいだろうとサイラスは考える。

 尿道カテーテルを使って排尿できれば気にすることはなくなるだろう。

 問題はどうやって作るか……だが。


「お待たせしました。出ましょう」


 全員でとりあえずもう一度周りを見てみる。


「……なんでこいつ裸なんだ?」

「あ、傷とか色々見てました。まあ伝えた通りです」

「なるほど……。とりあえず俺達以外では5人分の臭いがするな。後、薬の匂いだ」

「薬……あの粉かな?」

「あるならちょっと見せてくれ」


 箱をコリーに見せる。そしてすぐに顔を背けていた。


「あー、これは……何と言ったらいいか……禁薬の類だ。これを摂取するとだんだんに自分で思考することが出来なくなっていって、最後には人の言うことに素直に従うだけの生ける屍が出来上がる。ってやつだったはずだ。この臭い、前に俺のとこの領地でも嗅いだことがある。あの時は、商人が知らないうちに運び屋をやらされていた事件だった。下っ端は捕まったが大本は捕まえられていない。まだ居たってことかね?」

「なるほど、……ところで触っただけなら大丈夫ですよね?」


 触って皮膚から吸収されるようなものだったらニールが危険だ。


「ああ、口から入らなきゃあんま意味ねぇぞ。手を洗っときゃ問題ないはずだ」

「……良かった……」


 ホッとした様子でニールが息を吐く。

 とりあえずなんとなく見えてきた。


 街に向かう方向に馬車が向いているから恐らく持っていこうとした途中で襲われた。

 商人の格好をしていた男は元から運び屋で、ある程度の荒事には慣れていたという可能性がある。

 しかし護衛に雇った奴等が運び屋と知った上で契約を結び、その薬だけを奪おうとし……結果、成功したのだろう。


 待ち伏せにあい、気を取られた瞬間にでも首を切られたのかもしれない。

 どの道悪党の可能性が高いか。

 一応、やたらと体を鍛えているマッチョな商人の可能性も無くはないが。

 身分証が消えている事からこの男の素性を隠そうとしている気がする。その割には後始末が雑すぎるが。これだけ残っていれば痕跡を辿れる可能性は高いと言うのに。


「奪った奴等はその薬をどうしようとしているのか気になるね。っていうか、街に運ばれる途中だったって言うなら、買う人が居たってことだよね……?」

「む……そういうことになるか。この手の薬は恐ろしく高い。ある程度金を持っている者でなければ買えないはずだ。となれば貴族か大商人。もしこれがあの街で広がったら……と考えると怖いな」


 井戸水や保管されている酒の樽に混ぜられると、完全に溶けて風味も変わらないため分かりにくいという。

 知らず知らずのうちに考えることを放棄した廃人の誕生だ。


「既に入っている分がある可能性もありますね。そのことを含めてサイモンに進言しておきましょう」

「周辺で最近ぼーっとしていることが増えた者が居ないか等も調べてもらったほうがいいだろう。完全に廃人になってしまえば取り戻せないが、軽い内は暫く治療することで復帰できるらしいからな。まさかテンペストの故郷でこの臭いを嗅ぐことになるとは思ってなかったぞ……なんとか根絶できればいいんだが」

「ちなみに……これが拡散してしまった場合、というか最悪の場合どうなるの?」


 思考力を奪って自分の意のままに操れる傀儡となるが、持っている知識や技術はそのままだ。

 つまり兵士であれば自分の兵として手足のように使えるし、そうでなくとも禁忌を何の疑問も持たせること無く犯させることが出来る。

 何の疑問もなく、命令されるがままに自分の家族であろうが子供であろうが殺せる殺人鬼が複数誕生し、統制の取れた兵士が負傷を気にせずに突っ込んでくる。

 国自体を大混乱に陥れる上に、全てを現地調達できるため数人だけでも実行可能となってしまう恐ろしい薬だ。


 所持していることが分かれば当然、処刑は免れない。

 この薬のことは貴一部の族の間でしか情報共有されておらず、平民は恐らく知らないだろう。

 コリーのところは鼻が利く獣人族のため、こうした薬の摘発のために教えられており、その流れでコリーもある程度の知識はあった。

 どのような効果があるのかや、どういった臭い、見た目なのか、味はどういうものか。幾つかの禁薬に関しては見つけるために必要な情報だけは揃っている。

 制作方法は全く知らされていないが。


「これがまた出回り始めているのか、既に流れているのか。それは分からんが……ハーヴィン候は敵もそれなりにいるからな」

「サイモンが狙われている?」

「分からん。ただ、混乱を起こそうとでもしなければこの薬は使わないだろう。テンペストが誕生して活躍をしていく中、ハーヴィン候はそれなりに力をつけてきた。大分上の方に食い込んできているそうだぞ?街の規模は小さいものの、領地内の評判は高く、この国の中ではドラゴンスレイヤーを名乗れる少ない人物の一人で、その養女は更に強大な力を持っている。それが今や王国から保護されている状態となってるわけだ。その流れで養父である彼も国から直々に名を受けてエイダ様と共に異変の調査を行っている。今の時点で一番優遇されている貴族なんだよ、テンペストも、ハーヴィン候も」


 そういう事もあって優遇されているのが気に食わない者達も少なくはない。

 テンペスト自身が居るカストラ領は研究のための土地となっているので警備が厳重だ。更にサイラスによって様々な防衛線が張り巡らされて侵入することは難しい。

 浄水場や上下水道など様々な物が実装されているため毒を流すのも容易ではないのだ。


 その点、サイモンの土地はそこまでではない。

 人の手による検査などは厳しいが掻い潜れ無くはないのだ。摘発を逃れた物はいくらでもある。


「でも、街に入る前に取られちゃったんですよね?そいつらはどうするつもりなんだろう」

「さあなぁ……まあ売れれば高く売れるし、そういう伝手がある奴等だったらどこかに流すんだろ。そこまではもうなんとも言えんな。俺たちも警戒しておこう、どこで混ぜられるか分かったもんじゃない……どうせ使うやつは全員犯罪者だ。誘拐事件やらに気を配ったほうがいいかもしれんな」

「なんで誘拐?」

「……自らの意志で付き従う奴隷、ですね」

「当たりだ、博士。要するにそういう方向にも使われる。嫌がる者を無理やり奴隷化するのは違法だ。だが、自らが望んでその立場に甘んずるだけなら特に罰則はない。自分で考えず、言われるがままに行動するだけの奴がどれだけ都合のいい奴隷になるか、分かるだろ?」

「凄く……怖いね。知らず知らずにそうなったら……って考えると。何を命令されてもやるんでしょ?」

「やる。……お前だったら確実に男娼だな」

「ひぃっ!?」


 とりあえずは薬が出回っていること自体が問題なので、そういう可能性があるということを頭に入れておいて警戒する事にした。

 微量ながらもサンプルは取れているのでサイラスのチームに任せて解析してもらい、検出用の試薬などを作ってもらうことにする。


「レーダーに反応あり。5台」

「ワイバーンとずっと繋がってたのか?多分、呼んだ連中だろ」


 やがて街の方向から紋章を付けた馬車がやってくる。

 警備兵の紋章だ。

 到着した彼らに後を引き継ぎ、コリーとサイラスが来るまでに分かったことなどを説明してから、テンペスト達は街へと向かう。



コリー「何とも言えない嫌な臭いする」

ニール「……全然匂いとかわからないんだけど……」

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