第四十一話 知らぬは本人たちばかり
話に聞いていた通り、のこのことやってきた奴隷商人とその護衛達を生け捕りにして、奴隷たちを入れるはずだった檻に突っ込む。
色々と喚いていたが無視だ。
一人がやたら怪力持ちだったらしく檻を破壊しようとしたので腕を折っておく。
犯罪者には人権は存在しないのだ。
商人に売られるところだった彼女らを託し、その礼と死んだ護衛たちの弔い金という形で、ここに居た者達の財産は半分渡してやった。
こんなにもらえないと言っていたため無理やり押し付けた形になったが。
この先の盗賊も潰しているのでまあ、安全だろう。
「あの方々、無事に帰れて良かったです」
「エイダ様、ここに居た時点で無事じゃないんだぜ。恐らく一緒に居た男の家族などは死んでいる。……ここに巣食っているような奴等はそういう奴等なんだ」
「あ……」
「やっていることは俺達も同じだ。だが、牙を向ける相手が違う。ただ、それだけなんだよな。逆の方から見りゃ俺達の方が略奪者なんだ」
「あまり脅さないでよコリー。エイダ様、気にしないで下さい。確かにそうではあるんだけど、やっぱり根底が違うんです。ボク達はここの安全を作り出しました。次からここを通る商人たちが同じ目に合わなくて済むんです。あの人達は残念だったけど、きっと生きていけます。ハイランドは皆優しいですから」
「うん、ありがとうニール。でもコリーの言うことも心に留めておくわね」
そんなところで朝食だ。
正直、惨殺のあった場所でのんびり食事を摂るというのもおかしな話ではあるものの、誰も気にしない。サイラスとしては思うところが無いでもないが……自分のような犠牲者を出しそうな奴等を活かしておくほうが罪だな、と思い直して厚切りのベーコンにがっついた。
「んー……結構な高級品だろうなこの肉!美味い」
「盗賊さまさまってところですねぇ……供養代わりに私達が美味しくいただきましょう」
さっきの話は何だったのだろうか。
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「止まれ。荷物を改めるがいいか?」
「えぇ、もちろんです。ところで、鉄の竜騎士様の魔導車とすれ違いましたよ。途中の賊を壊滅させたと言っていました。いやぁ、助かりました」
「ああ、……だろうな。どうせでかいからって止めて捕まえようとしたら反撃食らったんだろうな……」
「馬鹿だね、あの人達に喧嘩売るとか……」
テンペストたちの新型兵器などの試験風景は、王都の北側にある山の上から見ることが出来る。
それを見ていれば、あれの前には死んでも立ちたくないと思えるのだが、見たことがなければ仕方ないだろう。
一応、見えているのはテンペスト達も知っているが、どうせ下手に真似したところで無理なので堂々と見せている。おかげでカストラ領に攻め込んでみようと思うような命知らずは今のところ居ない。
壁は低いが奥に銃座が取り付けられてあるところに誰が行きたいだろうか。
敵と判断されれば蜂の巣どころか吹き飛んで破片しか残らないというのに。
「途中、穴ぼこだらけで樹が倒れていたところがありましたが……もしかして?」
「間違いないです。彼らです。まあ……そんな感じなのでどちらかと言うと賊の方が可哀想になってきますね。……はい、荷物は問題なし、通っていいぞ」
「あぁ、そうそう、カストラ領ってどっちですか?是非とも寄って行って欲しいと言われているので」
「王都の北側だ。北門に居る衛兵に聞くといい」
「なるほど、では」
律儀に商売しに行った商人は、その独特な街を見てしばし呆然とするのだがそれは別の話。
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数日後……。
「奴隷商人を捕まえている?あの檻の中か?」
「ええ。正確には私共が捕まえたわけではないのですが」
「護衛を担当しているハンターのデレクだ。嘆きの谷にかかっている2つの橋の内、南側が落とされている。この馬車では北側を通れないので迂回してきたのだが、そこに大規模な盗賊集団が居たのだ」
厳ついドワーフのハンターの男が説明していく。
「あ、大体わかりました。砂の色みたいなでかい魔導車ですね?」
時期的に考えても彼ら以外に考えられない。
そして、二度も賊に出会う彼らが不幸なのか、出会った賊が不幸なのか……。
恐らく殲滅されたのだろうと予想した。
「ん?ああ。その通りだ。よく分かったな……で、捕まっていた彼女らを開放して連れてきた。保護してやってくれ。後、彼らが盗賊どもが溜め込んでいた物を半分寄越してきた。俺らがもらう分はもうもらったから、残りはその者達に分けてやって欲しい」
「なるほど。荷物にも問題はないな。すまないが引き渡しの兵が来るまで待っていてくれ。ここで報酬も渡していく」
違法奴隷商人とその護衛達、結構な金額になりそうだった。
しかし。
「あーいや、我々がもらうのもなんか違う気がするんですよね。ハンターさんと話し合ったんですが、それも彼女らに。これからの生活には必要でしょう?」
「そうか?なら、檻と彼女らを置いて入っていいぞ」
「ありがとう」
残された女性と子供、そして檻に入れられて喚く犯罪者がそこに残る。
「……あの辺の盗賊団って確か、近々討伐する予定だった奴等だよなぁ?」
「ああ。確認された人数がかなりのものだったからな。……全滅かな」
「文字通り一人も残ってないだろうな。こっちに誰もよこさなかったってことは……」
「報奨金出るだろ?あの盗賊団。カストラ領に直接持って行ってやるか」
今はロジャーが仕切っているが、テンペスト達がそんなことをしているとは思っていない。
いきなり報奨金です、と出されてもおそらく何を言っているかわからないだろう。
「んでこっちだな。えーっと、あなた方は身分証などは無いよね?」
「すみません、全員捨てられたもので、この着ている服以外は何も」
「あの、君たちを助けてくれた人達が、これから困るだろうからってことでお金とかを置いていったんだよ。全員に分配するからそれで着るものなり、食べるものなり、住む所なりを探すといい。家ごと買えるくらいは置いていってるから」
これからどうするか途方に暮れていたのだろう、泣き出す者達が多かった。
普通は何もない状態で出されてしまうため、とりあえず働き口から探さなければならずかなり苦労するものだ。
こうしてお金付きで開放されることは珍しい。
「あのっ!私達を助けてくれた人、どなたなんですか?」
「鉄の竜騎士、聞いたこと無い?」
「いえ……」
「これくらいの、金髪のお嬢ちゃんとか居なかった?」
「居ました!私達が閉じ込められている小屋に来て、外にいる男たちをあっという間に……。後見たことのない大きな巨人が」
サイラス博士も動いていたらしい。
暗い中であれを見たら怖かっただろうに。
「子供の方はテンペスト・ドレイク・カストラ男爵。王都の北門から更に北に行った方に彼女の街がある。研究者たちが集まるところだが、一般人の入植者も募集している……。あ、そこに行ったらどうだろう」
「ああ、それがいいかもしれんな。あそこ今出来たばかりの領地だから、土地が安いんだ。渡すお金で十分家を立てることが出来るぞ。税収もかなり少ないし、働き手はまだまだ募集中。丁度いい、運がいいな君ら」
女性たちも飲食店の他にも色々と働き口があり、研究者のためだけの場所というわけではない。
しかし、研究者と魔術師が多く住む土地となっているため防犯の意味では恐らく最高レベルだろう。
安心して暮らせる場所には違いない。
こうして彼らはそのままテンペストの領地の住人となったのだった。
それに気がつくのはまだまだ先の事だ。
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「おお、森を抜けましたね。こっからは暫く一本道ですか。では……」
一気にアクセルを踏み込み、速度を上げていく。
加速直後は後ろに引っ張られる感覚があったが、しばらくするとそれも無くなり普通に立って歩けるようになった。
「うわぁ……早い!凄い!これどれくらい出てるの?」
「今時速90kmです。これ以上だと路面状況わからないので怖いですね」
「え、じゃぁ今日中にコーブルクに着いちゃうんじゃない?」
「着きますねぇ」
「はっや……」
今日は朝からずっとサイラス博士が運転している。
流石に慣れているだけあって危なげのない運転だった。コリーは尻が痛いと後ろで眠っている。
座りっぱなしは堪えたらしい。
ニールは博士の横で運転を眺めながら外を流れる風景を見てはしゃいでいた。
ここまで早く動く乗り物というのはこの世界にはまだない。
最初は少し怖そうだったエイダも、今は少しずつ慣れてきたようでものすごい勢いで後ろへと消えていく景色を見ては感心している。
「でも、マギア・ワイバーンはこれよりももっと早いのですよね……」
「時速5200kmまでは確認していますが、まだ余力があるようです。正直あそこまで速度要りませんが……」
「58倍位ですか……この速度の……想像つきません」
「早ければいいというものではないのですよ。旋回するための距離が大きくなりますし。基本的にはその半分以下で事足ります」
旋回半径は結構切実な問題だったりする。
要するに、最高速度に近い状態で曲がろうとしても全然曲がらないのだ。
なので一度最高速度でミスって同じ地点に戻ろうとした時、一旦速度を落としてから戻る必要がある。
そもそもコリーですらGに耐え切れないだろう。
とりあえず博士に運転を任せて後ろでうとうとしていた所……。
博士とコリーの警告で目が覚める。
「テンペスト、あれ見ろ。サンドワームだ」
「レールカノンを……」
「あ、テンペストさん真横に向ってそれやるとこの速度じゃ横転しますよ。ペネトレーターでお願いします」
「そうですね」
サンドワームは巨大なイモムシの様な姿だが、口に該当する部分には無数の歯が生えており、岩ですら砕きつつ地面の下を掘り進む魔物だ。
その強靭な皮膚はゴムのようで、実際このトレーラーなどのタイヤに使用されているほどだ。
つまり……物凄く攻撃が通りにくい。
加えて雷系統の魔法も効きにくい。
「徹甲榴弾を使います」
「おう、ぶちかませ!弱点は頭部と身体の中心部分を通る神経系だ」
ボン、ボンとくぐもった音がして数発の弾丸が発射され、狙い違わず頭部に命中する。
攻撃を通しにくいと言われる表皮を貫かれ、その内部で小爆発が立て続けに起きて苦しみによってばたばたと暴れるサンドワーム。
完全に怒らせてしまったようだ。
「テンペスト、あいつの前にいるのは不味い。さっさと仕留めないと砂のブレスが来るぞ」
「了解、博士は蛇行して下さい」
「道から外れるので揺れますよ、気をつけて!」
避けた途端に高圧の砂がまるでビームのように直線で襲ってきた。
避けてなかったら直撃を食らっていただろう。危なかった……。
「し、死ぬかと思った!今のうちだ!」
「いきます」
マガジンに格納されている弾丸残り5発を全て撃ち終える。
急いで新しいものと交換して、もう一度しつこく着弾させていく。
30mはあるだろうその巨体は、口の部分だけでも人の背よりも大きいくらいで徹甲榴弾を食らっていながらもその皮膚の下で爆発している事から、かなりの貫通耐性があるようだ。
通常であればまともに攻撃は通らないので、爆弾を後ろに投下して食わせるらしい。
また、唯一の攻撃手段であるブレスを吐く瞬間を狙って口の中を攻撃するのもいいだろう。
こっちを向いた隙に口の中に徹甲榴弾を叩き込みついに崩れ落ちた。
死んでいるのを確認してから近づいていき、ニールに格納を頼む。
「魔晶石はどうするの?」
「砂の操作ですよね……今のところ必要ありませんが……サイラス博士は?」
「砂が操作できるのか、ならサンドブラスターとか作れるし、私がもらおう。塗装を剥がすのも楽になるんだよ」
「では確保で。皮などはタイヤの補修にも使えますので少し取っておきましょう。後は売り払います」
「分かった。とりあえず格納終了。この辺で会う魔物としては大物だったね」
岩石砂漠というか、荒野というか……代わり映えのしない場所だが、この辺でよく見かけるのは牛の魔物であるツイステッドホーン。
名前の通り捻れまくった角の牛で、かなり遠くからでもハンターを敵として認識する。
突撃がかなり強いので群れで来られると厄介な相手だった。
他は……まあそこまで脅威となるようなものは少ない。
どちらかと言えば毒蛇系の魔物が厄介か。強さはそこまででもないのだが、音もなく突然噛みつくか毒液を吹きかける。
きっちり対策さえしておけば問題ない。
後は稀に地竜が出現する。
もうこうなると基本的に逃げの一手だ。
「……かなり遠くの方に巨大な亀が居ます」
「ああ、あれは大丈夫だよ。こっちから攻撃しないかぎりはとってもおとなしいし、サンドワームを捕食してくれる砂漠の守護神だ。その代わりに怒らせると地竜よりも厄介かもしれない。あれの背中の甲羅、アダマンタイト製なんだ」
「頭や足を狙えばいいのでは?」
「って思うじゃない?あれの甲羅と同じく骨格もアダマンタイトが混じってるらしくてね、頭にはほぼ攻撃が通らない。足はどうかと思えばあの巨体を支える足だよ?表皮だけで分厚くてまぁ大体の攻撃は弾かれるね。何回か怒らせたハンターがいるんだけど……討伐成功した人達、いるのかなぁ。大抵全滅してるから」
剥がれ落ちた甲羅を拾っただけで金持ち確定な生物である。
当然ながら欲が出た者達はまるまる一匹手に入れれば一生遊んで暮らしても使い切れないほどの金が!と思って突撃するが、怒らせるだけ怒らせて鈍重そうな見た目の割に大きいために一歩一歩の歩幅が長いため逃げ切ることが出来ずに食われる。
そこにあった大量の土や岩とともに。
「……ちょっとお金をかければ行けそうですね」
「オリハルコン製の弾丸ね……あぁうん、いけるなぁ。いけるけど、そんな危険を犯す必要もないっていうか……そもそもあれどうやって持ち帰る?っていうのを考えるとめんどくさい事この上ないよね」
「そうですね。大きすぎて誰も持ち運べませんか」
ちなみに寿命で死んだ奴等もまだ居ない。生まれてからずっと、大きくなり続けているのだ。
そして、たまに甲羅の一部を落としていく。
それだけで満足した方がいいこともあるのだ。
日が傾き始めたところでついにコーブルクへと到着した。
「うーん……早い。魔導車だけならこんな早いのか……」
「ん?着いたか?くぁ……。あー……良く寝た……」
「コリーは寝過ぎじゃないかな……」
「正直やることねぇから寝るしか無い。さってと、サイラス博士、とりあえずゆっくり近づいてくれ、無駄に怖がらせるとすぐに攻撃される可能性あるからな」
見えているのは国境。
そのゲートだ。ここには国境の警備をしている部隊が駐留しているため、何かあるとすぐに囲まれてしまう。ただでさえ見たこともないようなトレーラーが爆走してくるのだから、知らなければ確実に警戒されてしまうだろう。
少し距離をとってコリーが一人で話をつけに行った。
するとすぐに手を降って近寄っていいという合図を出す。
「改めて見ると……でかいな」
「おかげで山道降りるのに苦労したぞ……」
「ハイランドは険しい山道ですからね、確かに大変そうだ。ようこそ、鉄の竜騎士殿。王都を奪還するときに助けてもらった恩は忘れません」
「ミレスなんぞに取られたままじゃな。まあそのミレスも今は廃墟どころか砂に還っちまってるが」
「ハイランドがあそこで兵器のテストをしたとか?我々も負けてはいられませんな!」
「んで、中身は検めなくて良いのか?」
「あっ」
「あんたなぁ……」
一応チェックくらいはしなければ駄目だろうに。
竜騎士と話ができたことで浮かれていたらしい。コリーに指摘されて思い出していた。
そして中を見た警備兵が驚きの声を上げ、周りの兵を呼び……なんだかすっかり見学会になってしまうのだった。
また、サーヴァントの方も相当に人気があった。
なにせ元の形がほぼ無い位に魔改造された上に、スマートでかっこいいのだ。
あっちが太ったおっさん体型ならば、サーヴァントは胸筋の発達した厳つい兵士と言った感じである。
魔力筋により太ももの筋肉も増量してあり、足も早い。
「なんだか凄いですね」
「皆、こういう工夫が凝らされたものというのは好きなんですよ」
「まあ、気持ちはわかります。私も初めてこのトレーラーというものを見た時は感動しましたから……。サーヴァントも確かに以前のものよりもとても強そうですし」
エイダもサーヴァントの変貌ぶりには少し驚いていた。
「強そうというより、本当に強くなっています。筋力を上げているだけでなく、この義肢にも使われているという技術をふんだんに使って元の魔鎧兵では出せなかった膂力と速度を生み出していますから。マギア・ワイバーンに使われているものが原型ですね。おかげで腰回りを少し絞ることが出来て、人が入る部分も胸の部分へと少しずれました」
「そういえば……あれに入っている間はどうなっているんですか?」
「言葉ではちょっと言い表せないのですが……恐らく、テンペストさんと同じような感じなのでしょう、中にはいってサーヴァントを起動すると同時に意識がサーヴァントその物とリンクするのです。アレを操っているときはまさしく、自分自身がサーヴァントとなって動いています」
その御蔭で通常のゴーレムなどでは出来ないような動きが可能だ。
ただし、サーヴァントが受けた傷はそのまま自分にもフィードバックされる。
これも魔の森で経験済みだ。
肩から千切れた腕や、そこら中に刻まれた傷は全て中に居るサイラスへと襲いかかっていたのだ。
そしてその経験があるからこそ、弱点も知っている。
それが打撃だ。いくら周りを金属に囲まれていると言っても、その中には空気があって人が入っている。
外装を思いっきり叩けばその衝撃は中に居る人間に直接伝わるのだ。
魔鎧兵のフィードバックとともに。
その為、腹を思いっきり殴られる辛さを感じた次の瞬間、本体である人体のほうがその時に生じた空気の波によって圧力を受けて最悪死ぬ。
もっと上手く行けば中の人ごと潰すことも可能だ。
効率的に魔鎧兵を仕留めるにはこれが一番良かった。
もっと楽なのはライフルなどでの狙い撃ちだろう。
「……ということは、魔鎧兵に乗っている人は……まさしく巨人として動いているということなんですか!面白いですね!」
「ええ。だから今の私のような姿でも問題なく動かせます。……もう少し筋肉は付けたいんですけどねぇ。私これでも結構鍛えていたんですよ?」
「えぇと……こればかりは魔法ではどうにも……。ゆっくりとたくさん食べて血肉をつけるしか無いですね。むしろ、よく生きて居ましたね……。こんなことをするなんてとても許せません」
「怒ってくれるだけでも十分ですよ。なんというか、最低限……生きるか死ぬか位の所を見極めるのがとても上手かったんだと思いますよ。それを知るまでにどれだけの人間を殺してきたのか分かるというものです。うん、あそこは滅びて良かったのでしょう。正直、国民もみんなどこか虚ろでしたし、まともな買い物をしているような人を見たことなかったです。気弱な女性はすぐに物陰に連れて行かれていましたし。国中が病んでました」
「なんかもう、聞いているだけで頭が痛くなりそうです。ただ、そんな人達がまだどこかに居るかもしれないっていうのは怖いですね」
「だから、私達が直接こうして他の国を見て歩くというのも重要なのだと思いますよ?」
特にミレスの内部を見てきたサイラス博士であれば、誰がミレスの人間かというのは分かるだろう。
目つきがすでに違うのだ。
貧民街の者達よりも欲望を持っていて、表情がなく濁った目をした住人。
そこに住人が居るということは、逃げてきた奴等が居るかもしれないということ。
とりあえず、無事にゲートは通過した。
このまま道なりに進んでいけばコーブルク王国の王都へと繋がる。
進むに従って沙漠だった景色は緑が増え平原になり、木々が増えていく。沙漠から緑の大地へ……写真では確かにそうなってはいるが、実際にその移り変わりを見ると少し感動するものがある。
王都までは暫くかかるので。途中に存在する宿場街で宿泊となる。
「目立ってますねぇ……」
「そりゃぁ、町の3分の1を占有する長さの乗り物で乗り付けるとか普通無いだろうしな」
「入り口の人には広場に停めてくれればいい、と言われましたが」
「その広場が狭いんだよなぁ。仕方ない、サーヴァントの分がちょうど出るからサーヴァントだけは横に置いておきましょう」
その日、コーブルク国境付近の宿場街は初めて見る巨大な乗り物と、魔鎧兵の出現に一時騒然となったのだった。
無理もない、まだ魔導車自体が少ないだけでなく、ここまで大きなものを持っているのは今のところハイランドしかなく、その中でもこの特殊な人達のみなのだから。
いつの間にか女性の住人が増えました。
全員美人、美少女、美少年のフルセットです。
厳選されてたから仕方ないね!