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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第三章 束の間の平穏編
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第四十話 盗賊団掃討

第二章に入ります。

「あー……寿命が縮まるぞ……」

「初めてトレーラーを運転している割には上手いですよ、コリー」

「あんなにやりにくいなら先に練習くらいさせてくれ!崖下に落ちるかと思ったわ!」


 慣れない大型トレーラーは道幅ギリギリ。カーブもギリギリ数センチ単位で曲がれる程度に設計してあったため、コリーは初心者なのにベテラン並みの技術を要求されていた。

 しかし、その地獄も終わり……ようやく麓の広くて平坦な直線道へと出たのだった。


 サーヴァントの背に括りつけていた、サーヴァント用のトレーラーを更に後部に取り付けて、仰向けに座るような形で固定する。

 布をかけて雨対策をしたら終了だ。


「あ、私は暫くサーヴァントの中で調整をしています。終わったら後部ドアから中に入りますので」

「大丈夫ですか?」

「ええ、どうせ中から通信は可能ですし、それに中もある程度快適に過ごせるように色々装備してあるので」


 魔鎧兵のくせにエアコンを装備しているのだ。

 当然トレーラーの方にも装備してある。暫くは鬱蒼と茂った森の中を切り開いたという、ほぼ直線の道路を進む。

 車高があるので樹の枝が引っかかるが特に問題ない。

 無駄に頑丈になっているので。


 暫く進むと、川が溢れて道路を寸断していた。

 とはいえ、ぬかるみになっているだけで別に渡れないわけではない。

 重量軽減の魔法をかけてからゆっくりと進む。

 魔導モーターはエンジンと違って音がしないためかなり静かだ。制動の時の音と走っている時のロードノイズのほうが大きい。


 お陰で中は快適そのものとなっている。


「短時間で下まで降りてきたのもそうですけど……揺れとかもかなり少ないですね、これ」

「サイラスが設計したサスペンションです、大きめの段差などでは仕方ないですが、基本的にはテーブルの上に紅茶を入れたカップを置いていても問題ない位になるはずです」

「私、移動する時もうこれじゃなきゃ嫌です……ベッドふかふか……」

「個人用の小さなものも作れますよ。アディ専用に一台作りましょうか?」

「テンピーありがとう!……小さいのでいいからね?」


 そろそろ昼の休憩にしようかと思い始めたその時、急にトレーラーが止まった。


「テンペスト、倒木だ……道が塞がってるから通れない」

「仕方ないですね、サーヴァントを出しましょう」

『サイラス博士、サーヴァントは動かせますか?』

『ん?ああすぐにでも。どうしたんだ?』

『倒木です。サーヴァントでどかして欲しい』

『あぁなるほど。休憩にするのかと思ったけど……まった。敵襲。後ろから人相悪いのが来てるよ。その倒木は足止めだね』

『ああ……なるほど……』


 目の粗い布のカバーの間から、サーヴァントの目には後ろから近づいてくる十数人の男たちが視えていた。

 同時に側面と正面からも。完全に囲まれているようだ。


「そこの獣人、聞こえるか?死にたくなかったらその変なもんから降りな。中にはたっぷりといいもん入ってるんだろう?それさえよこせば命は取らねぇ」

「後ろにくっついてる奴、魔鎧兵とか言われてるやつですぜ!」

「それがあればもう怖いもんなしだな!」


 好き勝手言っている。

 そもそも、中に居る人達は全員逃げる気もなければ、何一つ渡すつもりもないのだ。


『私が出よう、なんかもう布止めてるロープ切られちゃったし。腹の上に乗っかってるんだ、むさ苦しいのが』

『了解。私達の行先は他国だから……ここでこいつらを捕まえても引き渡せるかどうか。それであればここで全員殲滅しましょう。あの偉そうなやつだけ残して、アジトなんかがあったら全部貰っていきます』

「……どっちが盗賊だよ……。じゃぁ、サーヴァントが動いてそっちに気を取られたら俺らも出るぞ。エイダ様はそこでゆっくりしててくれ」


 サイラスは早速、ロックを解除してサーヴァントを動けるようにした。

 そしてサーヴァントのハッチを開けようとしている盗賊を2人まとめて握り、思いっきり遠投する。

 数百メートルは飛んだだろう。恐らく身体強化をしていても助かるまい。

 その突然動き出した魔鎧兵に慌てたのは盗賊たちだった。まさか既に乗っているとは思っていなかったのだから当然だろう。


「くそ、距離を取れ!あれの武器は剣だ!ばっ……」

「おぃ!?」

『違うんだなぁ』


 指揮をとっていた奴を仕込みの機銃で仕留める。

 1人を狙ったはずだが近くに居た2人も体の半分を吹き飛ばされて絶命した。


 ヴォォ、と短くも恐ろしげな音が響き渡り、側面に居た半数が赤い霧と化す。

 テンペストによる25mmストーンバレットの掃射だ。

 続いて反対側では身体強化をしたコリーが飛び出してあっという間に一人を仕留めると


『神速の雷よ、紫電の槍となりて我が前に立ちはだかる敵を討て』


 雷の槍が縦横無尽に駆け巡り、盗賊達は逃げる隙も無く貫かれていく。

 一瞬の出来事だった。


『焦熱の星よ、爆轟伴いてその力を開放せよ』


 更にテンペストのブラストが発動する。以前よりも詠唱が短くなり、発動までの時間が短縮されているが威力は逆に上がっていた。


 凄まじい音と衝撃が残りの盗賊たちを散り散りに吹き飛ばす。


「あれ……ボクの出番が……」

「まあ今回は敵も固まってなかったしな。次に期待しとけ」

「ニールの魔法はここで使うと森林火災になります。木のないところでなら存分にどうぞ」

『……テンペストさんのブラストのせいで折れた樹はどうしますかね?』

「……」

「あー……見通し良くなったってことで。適当に積み重ねてくれ、俺が整地する……。休憩所代わりにはなるだろ」


 一人だけその破壊を免れた頭目は動けない。

 動いたら死ぬ。殺されると思った。事実、少しでも動こうものならテンペストによって足を落とされているだろう。


「それで、あなた達のアジトは?人数は?全て教えなさい。嘘偽りが少しでも混じっていたらこの場で即殺します」

「い、いいます!言うから殺さないで!」


 彼らの住処は少し奥まった場所にあった。

 コリーと博士のサーヴァント、ニールで案内されるがままに言ってみると、残党が少し残っていたので殲滅する。

 色々と溜め込んでいたようだが、食料関連と、宝石類、硬貨、武器と大体お馴染みのものが多かった。

 誘拐もしていたようだがすでに出荷済みで今はもう無いとの事だった。

 どこかに奴隷として売られてしまったようだ。

 手を付けていない食料やその他お金になりそうなものはあらかたニールの空間魔法によって略取されていく。

 それを何も出来ず呆然と見守る頭目も、ここで役目を終えた。


「……すっげ、宝石とか結構状態がいいぞ。見ろこの首飾り、全部セブンスライトオパルスだ」

「綺麗に虹色に輝いていますね……。ここまで綺麗な物は見たことがありません」

「ルーベルの海に近い沙漠のあたりでよく取れるみたいですね。あの辺の人達は掘った洞窟の中で暮らしてる人居るみたいですよ?」

「ニールよく知ってるな。実は結構宝石詳しいのか?」

「少しですけどね。現金は結構いろんな硬貨混じってるなぁ……これとかルーベルのだし、こっちはコーブルク。多分これはミレス。……無くなったけど」

「テンペストが完膚なきまでに破壊し尽くしたもんなぁ」

「爆弾の威力測定にはもってこいだったじゃないですか。誰もいない、どこの国のものでもない空白地帯、利用しない手はありません」


 ついでに敵が戻ってきているならついでに死んでくれるかもという打算もあったりする。

 手頃な城壁と、瓦礫と化した城塞などは格好の的だったのだ。

 ダンジョンケイブは惜しいが、そもそもコアが向こうの手にわたっている時点で予想はされていたので仕方ない。むしろ出てきた遺体が少ないほうが気にかかった位だった。

 恐らく地下に逃げ込んだのだろうとは思うが。


 持ち帰った戦利品のチェックを終えて、コーブルクで換金しようと考えている。

 武器は意外といいのがそろっていたので幾つかは自分達用にとっておくことにした。


 昼食をとって、出発する。


 □□□□□□


「うぉっと……」

「また盗賊ですか?」

「いや違う、向こうから馬車だ。少し脇に避けるぞ、道幅が狭くて通れん」


 商人だろう、大きな荷馬車を引き連れている。

 が、こちらのトレーラーには流石に驚いているようだ。


「よう、ハイランドに行くのか?少し行ったところに居た盗賊なら隠れ家もろとも潰しておいたから安全だ」

「ほ、本当か!?いやぁ、護衛代が無駄になったかな?助かるよ!これはコーブルクで最近創りだしたっていうあれか?」

「いや、ハイランド製だ。多分こっちのが性能上だぞ」

「商人でもこれが買えれば、かなり安全になりそうなんですがねぇ。ところでこの紋章は……どこのものでしょう?これほど立派なものを持っているのであれば是非とも商売をしておきたいところですが」

「カストラ領だ。最近出来たばかりだから知らないかもしれないが……」

「最近出来たばかりのハイランドの領地、ということはもしかして鉄の竜騎士絡みのですかな?」

「そうだよ、ま、色々と物資があるなら寄ってってくれ。いいのがあれば買ってくれるかもよ」

「是非とも、おお、そういえばこのまま先に行くと橋がありますが、北側の方に行くといいでしょう。南側の橋は最近誰かに落とされたようでして」

「マジかよ……だが北側はこの車に耐えられんぞ」

「では迂回を。南側の橋を更に迂回するように南を回ると道があります。少々魔物が出て危険な道ですが……多分大丈夫でしょう」

「分かった、情報感謝する」

「いえいえ、あの危険な連中を掃除してくれた上に、商売先を教えていただきましたからね、では」


 ルーベルの方から来た商人だったようだ。

 商会のマークの横にルーベルの国旗がついていた。

 見た感じ色々鉱石類を積んでいたようだから、領地に行くように案内しておいた。恐らく必要だろう。

 ルーベルは有名な軍隊の強い国だけでなく、鍛冶の国とも言われるほどに鉱石類が豊富な土地で、それにともなって鍛冶屋が軒を連ねている。


 王都はそうでもないが、他の地域に行くとそれが顕著になるという。


「……だってよ、テンペスト、地図の方はどうだ?」

「以前の偵察時には橋は落ちていませんでした。つい最近落とされたというのは本当かもしれません。どちら側にかは分かりませんが敵がいるということでしょう。北側は確かに橋が細く魔鎧兵でも危険です。迂回のルートも確かに存在しますので、そちらを迂回したほうがいいでしょう。ただし、橋を落とした者達が待ち構えている可能性は否定できません」

「ん、同感だ。よし、遠回りになるが仕方ない、谷を迂回しよう」


 ここから暫く行くと、言われている通り谷がある。

 北側の橋は古く、南側の橋は新しい。大きく、頑丈なためこの魔導車でも耐えられるはずだったのだが……アレを落としたということは相当だろう。

 完全に大物狙いでそうしている可能性がある。

 それなりに武装している商人を襲うつもりでいるだろうから恐らく重武装だろう。


 ……といっても、谷の終端の方は閉じていて普通に道が通じているので問題ないといえば問題ない。

 近づいてきたらまた囲まれないようにするだけだ。

 居ると分かっているなら奇襲は出来ないのだ。


 森を抜けて谷へ出た。

 話の通り南側の橋が落とされている。かなり長い橋だから作りなおすのは大変だろう、と思ったのだが……土魔法使いが十人くらい居ればこれくらいの規模なら1日で架かるらしい。

 素直に凄いと思う。


「んで、こっちに行くわけだな……あぁまた森の中に入るかやっぱり」

「写真でもそうなっています。谷を渡る直前あたりから道がひらけますが、恐らくその前に襲撃があると考えていいでしょう。ただ……このまま行くと到着は夕方です」

「んー……これについてるライトも相当優秀だけどやっぱし見通し効かないのはちょっとなぁ……」

「あ、夜ですか?ここのスイッチをオンにすると、赤外線映像が窓に投影されますよ」

「博士あんたいつの間にそんなもんつけてたんだよ」

「便利ですよ?テンペストさんのピットと同じ視界を体験できます」


 もちろん後部の窓にも全てついている。

 色々と実験的なものを取り付けているらしい。


「……だが流石に俺1人で1日中運転は辛すぎるんだがな?」

「ですよね。明日は私が代わります。運転出来そうなのは私とコリーさん位ですし……」


 テンペストも出来るがニール同様足が届かない。

 エイダは論外だ。


 それはさておき、どの道泊まるにしてもどこに敵がいるかもしれないところで、トレーラーに篭っているとはいえただ寝るのも気持ち悪い。

 結局危なそうな所に着いたらそのまま壊滅させてから、若しくは手出ししないのであれば突破してから休むことにした。


「ん……暗くなってきたなぁ。やっぱり森の中は暗くなるのが早い」

「じゃぁ、スイッチを」

「おお……これは凄いな、見やすい。ライトつけると相当遠くの方まで見通せるな。これは便利だ」

「へぇ……ピットの視界ってこんな感じだったんだ!便利だ……」

「ああ、今このように体験したわけですから、どのように見えるかを知った今なら皆もピットを会得できるかもしれません」

「なるほど!頑張ってみるよ」


 快調に道を進んでいく。

 時速に直せば40キロ程度ではあるが、道が悪く狭い森の中でこの速度が保てるというのは馬車では無理だ。また、ここまで暗くなったら普通は動かない。


 が、進行方向でひときわ明るい光が見える。


「何だあれ?」

「コリーさん。ライト消してスイッチをオフに。あれだけ明るいと多分……あぁやっぱり燃えてますね」

「戦闘があったってことかな。テンペスト、上に出て望遠鏡で観測してくれないか?」

「もうしてます。燃えているのは……組んだ木ですね。バリケードのように横に並べてあるものに火を放ったようです。その奥の方では戦闘が。二台の大きな荷馬車が立ち往生しています」

「あー、襲われたか。博士スマンが先行してくれ。敵と味方の識別を頼む、テンペストはそのまま上でレールカノンの操作を」

「了解、同期します」

『……では、行ってきます。テンペストさんは私のつけたマーカーを頼りに識別を』


 魔鎧兵とは思えない速さで走っていくサーヴァント。

 さすがの魔力筋である。森の中を走るだけなら向こうのほうが普通に早い。


「二回も盗賊に襲われるなんて、外は危険が多いのですね」

「いや……ボク達の移動速度が早過ぎるんだよ。普通なら3日くらいかけてくるよここまで」

「あ、そうなんですか?私外に出ることなかったのでよく分かりませんでした。流石はテンピーってことですかね?」

「後サイラス博士ですね。本当にあの人の有用性が分からない国で良かった。あのまま敵になってたらボクら全滅しててもおかしくないよ」

「確かに……そうですね。彼は不幸でしたが、私達としては幸運でしたね」


 ミレスが本気で博士を利用できていたら……多分周辺の国全てが滅んでいたかもしれない。

 頭の悪い独裁政権で本当に良かったとしか思えなかった。


 □□□□□□


 サイラスは昔夢見たロボットに搭乗するという夢が叶ってかなり楽しんでいる。

 しかも自分が好きにカスタム出来るのだから楽しくて仕方ない。

 流石にあの拷問期間はひどすぎるとは思うが、これのご褒美を得るための物だと思えば……。


「いや無いな。あれはない。あぁ思い出すだけで苛々する……大体何で私があんな目に……」


 感謝なんてするわけがなかった。

 技術と知識を持っていたという理由で、家族をも利用され、我が子の指を落とされてまで従った結果が自爆。

 そしてこっちに来てみればまた拷問を受けた挙句に手足を……。どう考えても不利益のほうが大きい。


 でも今は?

 やっとで自分の居場所が出来たのだ。こっちに来てまた愛しい人も出来た。

 向こうの家族は恐らく死んでいるだろう、それに戻れるとは思えない。

 どうせ一度は死んだ身なのだから、もうこの際楽しむことにする。そうでなければ今までの自分の不幸が精算できない。


「まあ、彼らは絶対に許しませんがね。特にあの豚神官……っと、到着」

『テンペストさん、現場に着きました。今から敵味方の識別を送ります。そちらから見て右側の方、マークしましたが全部敵です。味方は正面の少数。マーク。後は……敵ですね、マーク。見える範囲ではこの位ですが味方が危険です、このまま突入するので左右に分かれている敵の掃討を頼みます』

『了解、砲撃開始します』


 賊に襲われている馬車の護衛はよく戦っているが、多勢に無勢ですでに危険な状況だ。

 テンペストの放った砲弾が着弾すると同時に、サイラスも動く。

 飛び出していって馬車を守るように着地して、キャニスター弾を発射する。

 これは戦車砲などに使われる「対人」兵装だ。要するに……大きなショットガンである。

 一瞬で固まっていた敵がミンチになる。

 続いて砲撃の着弾音、更にまたキャニスター弾。


『突然失礼、賊に襲われているのを見かけたので助太刀します、味方ですよ』

「え、は……?味方?」

「助かったのか?」

『とりあえず馬車の中に入って伏せていて下さい、死にたくなければね』


 馬車を中心に逃げ惑う敵に向ってキャニスター弾を叩き込む。

 腕に装着された小さなシールドの下に隠されたそれから白煙が上がり、目視範囲内には敵は見当たらない。


『終わりました、出てきても大丈夫です』

「あ、あの、あんたは……一体……」

『気にしないでください、すぐに仲間が来ますので……他に敵は?』

「待ってくれ、……えっと、向こう側に逃げていく気配があります。5人」

『なるほど』


 探知が使えるハンターだろう、すぐに敵の位置を伝えてくれた。


 そこにトレーラーが到着する。バリケードを蹴散らして道を開けてやるとそこに止まり、エイダとニールがピクシーワードで回復させていく。

 コリーを護衛にして3人を置いていき、テンペストとサイラスは賊が逃げた方向へと向った。

 テンペストはサーヴァントの肩に乗っている。


「右に4度。そのまま直進、そこに反応があります」

『便利ですねぇ、探知魔法ですか。後で解析して取り付けますかね。熱源反応あり、……結構人数居ますかねこれ』

「サイラス、このまま行って降伏勧告を。私は反対側から回ります」

『了解』


 その時、ちょっとした集落では大騒ぎになっていた。

 当然だろう、大物を捕らえたと思ったら突然出てきた動きの早い鉄のゴーレムの様な何かに、一瞬で仲間たちが血しぶきにされてしまったのだから。


「そんなよく分からん物があるわけ無いだろう!ゴーレムはもっと動きがとろくさいんだぞ?」

「いやだから俺ら全員見て……」

「あ、あれ!来た!!こっち来やがったあぁぁぁ!!」


 身長5メートルほどの大きなシルエットが闇に顕れる。

 その恐怖は如何程のものだろうか。


『賊の集落か?このままおとなしく投降しろ。さもなければ殲滅する』

「お、親父!あれマジだ!ミンチにされちまう!」

「頼む、助けて!」

『後ろの小屋は何だ?』

『サイラス、小屋の中に女性と子供が。話を聞きます、少し時間を稼いで下さい』

「あぁ?そんなことどうでもいいだろ。てか中に人が入ってるのか?こっちは20居るんだぞ、勝てると思ってるのか?」

「マジでやめろよ親父ぃ!!降伏!降伏しましょう!!??」


 惨劇を見てきた5人は必死だが、見ていない他の賊はやる気まんまんだ。

 どうしてこう、察しが悪いのか……。


『向こうで壊滅させたところに居た「戦利品」のようです、明日の朝ここに奴隷商人が来て売り飛ばされるところだったみたいですね。ここの小屋の中にいる人だけ、気をつけて下さい。後は死んでもらいます』

『……ふむ。どうやら時間切れだ』

「お前ら、ころs……」


 キャニスター弾が放たれ、半数が弾ける。

 後ろから出てきたテンペストによって一人ずつストーンバレットによって貫かれ、辺りは血と臓物の匂いで溢れかえったのだった。


『……何でこう、血なまぐさいことに……』

「率先して血しぶきに変えていたのは博士では?死体を焼いたらここにトレーラーと馬車を持ってきましょう。明日の朝近づいてきた奴隷商人を捕まえて、土産代わりにあの商人に引き渡してやればいいです」

『あぁ、弔い金代わりにはなるかな?ここに溜め込んでいた奴も半分渡そうか?』

「そうですね、向こうで拾ったのを合わせればかなりのものですから、それくらいは」


 周りが綺麗になったところで、小屋に閉じ込められていた女性たちと子どもたちは解放された。

 全員ひとまとめでとりあえず今夜のところは面倒を見る。

 容姿がいい者達しか居なかったことから、どこぞの違法娼館辺りに行く予定だったのだろうとはコリーの談だ。

 少年も混じっているがそれはそれである。


後で殺さないとは言っていない。


お馴染みの蹂躙ですね。救出された男の子は……まぁそういうことです。

穴があれば良いのだ。

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