表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第二章 ミレス騒乱編
36/188

第三十五話 博士の抵抗

「コーブルクが奪還されただと!馬鹿な……」

「情報は殆どありませんが、『ランス』を敵が使っていたという話があります。姿を見せずに次々と兵が倒れていき、あっという間に敵が雪崩れ込んで来たという報告を最後に連絡が途絶えました」

「魔鎧兵もある程度渡していたはずだ……タンクとやらも……使う暇すら無かったのか!」

「すでに敵の手にわたってしまったものもあるかと……」

「上になんと報告すればよいのだ……!このままでは……処刑されるかもしれないというのに!」


 ミレス内部にもコーブルクの様子は少しだけ伝わっていた。

 とてつもない大爆発が起きて城壁もろとも城門が吹き飛び、同時に魔鎧兵やタンク等がランスによって吹き飛ばされたという報告。

 ランスはロケット弾のことだが、実際に使われたのはテンペストのミサイルである。

 しかしまだミレスにはワイバーンの事は伝わっていない。


 ハイランドが合流して居ることも知らないまま、コーブルクの残党によってひっくり返されたものとして考えられていた。


「……博士だ。博士を連れて来い。また記憶を引き出すぞ」

「し、しかし……すでに体力が……」

「構わん!新しい武器が必要なのだ!もっと強力な!相手が如何に強大であってもひっくり返せるような強力な武器が!大体本来の性能が発揮できないのはなぜだ!本来なら100kmの射程を誇ると言われているものでも作ってみればたった数km程度しか飛ばん!何が足りない!そこをよく聞き出すのだ!」

「は、仰せのままに……」


 □□□□□□


 また、例の奴等が来た。

 あのおぞましい体験をすることになるのか……終わった後の吐き気がどれだけ辛いか知っているのか?

 どうでもいいのだろうな。そもそも人としての扱いを受けていない時点で分かっている。

 俺は記憶を引き出すためだけに生かされている物だ。


 薄暗い部屋に閉じ込められ、頭に袋を被せられる。


 そして……頭の中に誰かが入ってくる様な、自分を押し出そうとしているようなそんなとてつもなく気持ち悪い感触が襲ってくる。


『情報をよこせ、武器の情報を』


 言葉が通じないのに、頭の中には響いてくる声。最初は何を言っているのかわからなかったが、ここ最近ははっきりと何を言っているのか分かる。

 誰が教えてやるか馬鹿野郎。


『抵抗しても無駄だ、大砲も、ライフルとやらも、もっと性能がいいはずだ。なぜだ』


 諦めろ。馬鹿には分からんことだ。


『ほう、りゅうたいりきがく……とは何だ?』


 糞が……。はっ、知りたいなら教えてやる。俺と同じ気持を味わえ糞野郎!


『これが……そうだというのか!?ぐっ、なんだ、分からん、何を言っている、この記号は何だ!やめろ!』


 ズルリと自分の中から何かが出て行く感じがして、猛烈な吐き気に襲われた。

 俺の後ろのほうでも俺に干渉していた神官が叫んでいる。俺の知識の量はどうだ?ずっとお前が来るのを待っていたんだ。こうして復讐するために。お前は学者じゃない。だから俺のことが理解できない。知識を理解するだけの力がない。それを一気に流し込まれた気分はどうだ?

 訳が分からないだろう?当然だ、その言葉は同じ国の言葉ですら無い。様々な国の言葉で書き換えられた俺の論文だ。ざまあみろ!


「○○!!○○○○!!」

「……くたばれ豚野郎」


 見たままだ。まるまると肥え太った豚のような男。

 腹の中の物を全て吐き出す勢いでゲロを撒き散らしながら怒鳴っているようだ。残念ながら布のせいで見えないが。お前が苦しんでのたうち回る姿を見たかったよ。


 ぶん殴られた。

 勢いで椅子が倒れ、床におもいっきり頭をぶつけた。

 何度も蹴られ、骨が折れる。

 このまま死ねればと思ったのだが、入ってきた別な奴に取り押さえられたようだ。

 残念だ……。


 次に目を覚ました時には、椅子から解放されていた。

 体中の傷は治り、痛みはない。病院のようなところだが衛生状態は悪いとしか言いようが無い。

 見回してみるが誰もいない。

 俺は……なんてこった、裸だ。包帯は巻かれているようだが。


「……ここはどこだ……」


 窓はない。地下か?分からない。

 ……体中何処も縛られていない。しかも固いとはいえベッドに寝るのも久しぶりだ……。このまま暫く寝てしまいたい気もするが、ここから何とかして逃げれないだろうか。

 しかし手足がない。歩けない。詰んでいるな……。いや、短くはなったものの一応まだあることはある。

 肩や股関節から無くなっていたらダメだったが、肘の上や膝の上で切り落とされているから移動できなくはないか……?


 寝返りをうつ要領で身体を勢い良く横に向ける。

 手足が軽くて上手く動けないが成功だ。そのまま床に向かってダイブする羽目になったが。


 ビダン!と盛大に硬い床に落ちてしまった。

 痛いが構わず動く。ちくしょう……はやり手足がないのが辛い。動きにくい。


 しかし、部屋の奥に何やら腕や足が置かれているのを見つけた。

 無造作に転がっているが、これは義手か。

 ダメ元で一つに突っ込んでみると……。


「ぐっ、うぅぅぅ……がぁぁ……っ!!!」


 何かが腕の中に入り込んでかき回す。

 いろいろな拷問を受けたがレベルが違う。神経に直接響くような痛みだ。しかし大声を出さないように耐え切ると、腕を見る。

 ……動く。繋がっている。大きさが若干合っていないが動かせる。

 その手を使ってサイズが合いそうな足を見つけて同じように装着する。

 想像を絶する痛みの中、のたうち回りながらも悲鳴を上げずに耐えた。床には大量の血が流れている。

 痛みで吐きそうになりながらも最後の左腕を取り付け……。


「ふ、ふふふ……動く、動くぞ……俺の手が、足が動く!しかも……感覚まであるのか……これであいつらに復讐が出来れば最高だが……この身体ではな……」


 見下ろせばやせ細った骨と皮だけの自分の身体がある。

 手足だけが普通の太さという情けない姿だ。

 歩こうとしても膝から下が重く感じられる。太腿の筋肉が衰えてまともに歩けない。

 だけど……何も出来なかった時とは違って人並みに動くことは出来る。逃げよう。どうやって逃げれば良いのか知らないが逃げよう。


 □□□□□□


 なんというか、案外ザル警備だった。

 というか殆ど人が居ない。

 普通に歩いて出て、適当な部屋に入って服を盗んで着る。

 格好だけなら医者か研究者か……。


 案内表示なんかはあるがなんと書いているかはさっぱりわからない。見たこともない言語で書かれているらしい。やはりここは俺の知っている世界ではない……か。

 こんな義手や義足があるのだから相当に科学が進んでいるのかと思えばそうでもないようだし、良く分からない。


 俄に周りが騒がしくなってきた。大勢の足音も聞こえてくる。これはバレたか……?

 逃げるにしてもどこに行けばいいかわからない。

 かと言ってじっとしているわけにも……。そしてまた適当な部屋に入ると立派な暖炉があるのを見つけた。

 暖炉があるということは煙突がある。

 外に出れる!


 どうせ生きるか死ぬか、それなら少しでも外に出て脱走してやる。


 □□□□□□


「テンピー!探したわよ?」

「アディ?どうしましたか?」

「ほら、あなたとコリーが男爵になったじゃない?そこでハーヴィン候とも話をしたんだけど、王都から少し離れた所に研究専用の街を作らないかって事になったの。研究者達の為の街ね」


 男爵ということで一応自分の領地を持つことが許される。

 そこで新しい技術開発を行うための街を作ろうという話が出た。これは新しい研究施設を作るという話が出た時に、何処に作るのが適当かというので色々と考えた結果、王都の中に置くのは兵器開発という特殊性から考えても適当ではないだろう、という結論が出た。

 事実、ライフルや大砲の実験などというのは近くで出来ないため、わざわざ滑走路のところまで移動しているくらいなのだ。

 そういう意味では滑走路付近に研究所を構えるのが一番いい。

 王都からは適度に離れているし、飛竜はあまり飛んでこない。大きな音を立てても迷惑はかからない。


 しかし、周りが一面岩だらけの場所のため食料の確保に少々困る。それに畑やらを作るとなればそれは村やそういったものになってしまう。

 そこで男爵領の設置ということで、研究者の街を作ろう、ということになったのだった。


「なるほど、あそこなら平坦な岩場が続いているので様々な実験を行うには丁度いいです。ワイバーンも私の近くにおいて置けるのですか?」

「もちろん。というか……ワイバーンとテンピーはセットとして考えられているの。そこは王様もそう言ってるからあれを取り上げられるってことはないわよ。そもそも精霊ということで基本的にテンピーに逆らう人は居ないわよ?」

「それはそれで困るのですが……」


 しかし、専用のガレージや武器の研究所を作れるのはいい。

 食料も畑などは作りにくいが、野菜工場を作ればいい。そういう研究も有用だろう。


 問題は水だが……。


「滑走路の近くに山から流れている川があるの。とっても綺麗な水が年中流れてるからそこは大丈夫よ。街を作るには食料確保が大変そうだけど……」


 ということらしい。街を作るには少々時間はかかるのだが、研究費を使って色々と建てられるそうなので早めにガレージを作りたい。


「どうする?ハーヴィン候に街のつくりを任せる?」

「出来れば。でもとりあえず話をしたいです」

「その為に迎えに来たのよ」


 サイモンのいる部屋に行き話を聞いてみることにした。

 ミレスへの侵攻はまだ暫く時間がかかる。ワイバーン用の兵装を整備する為に少し時間をかけるのと、コーブルク、ルーベルと組んでまたミレスに攻め入るため、コーブルクの復旧を待つということだ。

 王都を奪還されたことでかなりの打撃をミレスは受けているはずで、向こうも暫くは動きがないだろうということもある。


「ああ、来たね。エイダ様から聞いているかと思うけど、テンペストの街を作ろうという動きがある。自分の家とガレージが欲しいって言ってたから丁度いいと思うんだけどどうかな?」

「滑走路付近に作るということですね、街を作るのに必要な知識は無いので助力を願いたいのですが」

「基本は研究街ということで研究者の住む場所に、研究施設、ガレージは必須だろうね。ギルド関連は……おいおい考えていこう。多分魔術師ギルドは必要だろうし、鍛冶関連も必要か。そして街を作る上で必要な公共施設……まあ要するに役所関連だね。許可などを取るときに必要になるからないと不便だ。そして人が住むからには必要になるのが食料関連だ。最初のうちは王都から運搬するしか無いだろう。そして必要な物を売り買いするための施設……とりあえずはこんなところかな?」

「資金源はどうなるのですか?」

「税金が基本だけど、人数が少なそうだからね……。ただ研究施設ということで殆ど仕事と生活がごっちゃになっているし研究費としてある程度は出るはずだ。それを使って割り振るのが領主としての仕事になるだろう」


 こうして、王都の北にある無人地帯にひっそりと一つの街が出来上がることとなった。

 ロジャー達からの意見で魔術師の養成学校も作ることになり、様々な意見を取り入れていくうちにかなりいい街になりそうだった。


 とりあえずということで現在の研究室とガレージをそっくりそのまま滑走路横に引っ越す事が決定し、早速魔術師達によって工事が始まっていくのだった。


「うーん、まさかテンペストが一つの街を持つことになるとはね!」

「予想外でしたが、なかなかいい街に仕上がったと思います。意外と移住する人も多かったのはびっくりしましたが」

「騒音とかもあるんだけどね……まあそれを承知で来ているんだから良いのかな」


 二ヶ月後、あっという間に出来上がった街を目にしてロジャーとテンペストが話をしている。

 研究者はこぞってここへ移転し、最新の研究に打ち込めると大喜びだ。

 魔術師も多く、好き勝手に魔法をぶっ放してテストすることが出来る場所ができたと喜んでいる。

 広い岩の棚が続いているこの場所では、街と反対側の方に向ってなら特に制限なく実験を行えるようにしているのだ。

 一応、大規模な広域魔法等を使う場合には申請が必要だが。


 テンペストたちの研究であるワイバーンに関しては機密性が高いため少し離れた場所で隔離されている。警備も厳重で近づこうものなら即座に捕縛される事になる。

 しかし、ワイバーンの姿は外からも見ることが出来るため、その見物に近くまで来るものは後を絶たない。

 この頃にはもうマギア・ワイバーンの存在は周知され、戦力としてハイランドの秘密兵器ということで認知されていた。


 この研究街への補給も独特だ。魔導車が使われ、大分離れているにもかかわらず短時間で王都と往復することが出来るため食料に困ることがない。

 一応、自給自足のために施設を作り、建物の中で作物を育てる野菜工場は運営が始まっている。

 土魔法や自然魔法が得意な者達が味がよく、繁殖力の高い植物を作り出す研究を行なっているのだ。


「それにしても大きい街だよね意外と」

「はい。家も大きくて少々落ち着きませんが」

「貴族になったんだから少しはね?あれでもまだ小さい方なんだから慣れなよ」

「まあ、そうですね。マギア・ワイバーンの兵装も整ってきましたし、テストの結果も良好です」

「……そろそろ、飛竜の繁殖期だ。ハイランドではこの時期特に飛竜の被害が多くなる」


 餌を求めて街に降りてくる飛竜がたまにいる。

 そういったものから守ってきたのだが、それでも今までは無傷では済まなかった。

 でも今は違う。

 新しいライフルは固い鱗を貫き、新しい大砲も信じられない程の威力が出る。

 そしてワイバーンの存在。


「でも、これからはテンペストが居る。この街がある。武器がある。飛竜に抗う力が有る。一緒にこの街を……この国を守っていこう」

「私がお役に立てるのならば。そうですね、今は特にやることが無くなっています。写本やハンターとしての活動を再開したいと思うのですが」

「そうだね……テンペストはもうハンターとしてもやっていける。ニールとコリーも同行させよう。マギア・ワイバーンに入ってる時でも魔法は放てるって事だから、これまで通り魔法の鍛錬をして行けばきっと役にも立つよ。僕は開発で忙しくなるけど、テンペスト達は何もない日は好きにしていい。たまにミレスの動向を探るくらいだろうしね」


 あれからも日を開けてミレスの偵察を行なっている。

 やはりコーブルクの陥落が堪えているらしく、目立った動きは無い。

 戦力の何割かを完全に失ったようなものなのだから仕方ないだろう。逆に、向こうの思惑通りに事が進んでいればとても厄介なことになっていたのは間違いない。


 とりあえず、これから3日ほどは特に何も仕事が入っていない。

 王都に出て周りの情報などを集めようと、そう思いたち……同じく暇そうだったコリーを連れて王都へと向った。


 □□□□□□


「いいな、魔導車……すげぇ便利だ」

「馬車より早く疲れ知らず。何なら後ろに寝ることだって出来ます。長時間の移動なら有用でしょう」

「テンペストの所にはこういうの沢山走ってたんだろ?」

「ええ。……もう少し乗り心地はいいはずですが」

「一応これでもサスペンション付きで他のよりも乗り心地は改善されてるんだぞ?っつーかこの道が悪い。滑走路なんて滑らかに走れるのによぉ……」


 滑走路は小石一つ落ちていないし、とても平坦に保たれている。

 これはワイバーンを運用するときにテンペストが指示したせいであるけど、道の方はただ均しただけの舗装された道ではない。結果、凸凹とした路面のせいでサスペンションがショックを吸収しきれずに下から突き上げるような揺れを感じている。


「そういえば飛竜の繁殖期に入ると聞きました。詳しくは聞いてなかったのですが繁殖期に入るとどうなるんですか?」

「ああ、テンペストは初めてか。基本はあまり変わらんさ。ただ、人が住んでいる所に降りてきて食事して帰っていく奴がたまに出てくる可能性が高まるって事くらいだ。もちろん、こっちも黙って見てるわけではないが……。向こうに見える高い山があるだろ?特に飛竜が多いのはあのへんだ。次に……向こう側のなだらかな山。基本的に飛竜はでかい獲物を狩るんだが、めんどくさがりがこっちに来るんだよ。んで、討伐対象となる」

「もし、飛竜討伐の依頼があったら受けませんか?」

「いやまぁ……テンペストのペネトレーターと、俺のライフルがあればたいていの飛竜は狩れると思うけどよ……狩った後のことを考えないとな。でかすぎるんだよ」

「なるほど……」


 飛竜は総じて身体が大きい。全長10m程は子供程度の大きさだ。大きなものは全長50mを超える。

 当然ブレスも強力なもので生身の身体で受けられるようなものではない。

 狩ったとしても持ち帰るために解体するのはいいが、時間はかかるしそもそも全部持ち帰れないだろう。


 だがそうした時のために運び屋と呼ばれる空間魔法持ちが居るのだ。


「飛竜を仕留めた時に空間魔法でニールみたいに収納できる奴が居れば持って返ってこれる。報酬はそれなりに高いがそれでもお釣りが来るからな」

「ではその人を雇いましょう」

「……まあ……デモンストレーションとしてはいいかもしれねぇな。だが、飛竜の前に翼竜を狩らないか?あっちも繁殖期に入って数が増える時期だ。脅威度は低いがそれでも結構危険な部類に入るし、どっちかといえば生活に直結した脅威といえば翼竜のほうが大きい」


 飛竜はその巨体故に餌も大きい物を求める。

 だけど翼竜の方は身体が小さい分人間サイズで丁度いいのだ。よって、放牧している家畜や人間等が襲われやすくなる。

 今頃の時期で一番多いのはこの翼竜から家畜を守る護衛だったりする。


「ではそうしましょう。……翼竜の肉は美味いと言う話ですし」

「覚えてたか。そういう事だ。沢山狩って食いまくろうぜ」

「良いですね、俄然やる気が出てきます!」


 相変わらず食べることになるとやる気が出るテンペストだった。


 二人が王都についたのは夜になる頃で、あと少し遅れていたら門が閉まってしまうところだった。

 まだ数の少ない魔導車は王都の人間でも相当珍しいらしく、通りを通る度に皆の視線が突き刺さる。

 そして車体の側面に描かれた雷雲から落ちる稲妻を咥えるワイバーンの紋章を見て誰の物かを知る。


 テンペスト・ドレイク。

 突然ワイバーンと共に現れ、ハーヴィン候の養子となった少女。しかしその見た目とは裏腹に天才的な魔法の才能と、未知の知識を持って居る彼女は宵闇の森のアンデッド討伐で初めてその力を見せた。


 その後暫くは活動していなかったが、その間は驚異的な正確さで写本を描く小さな写本師として名を挙げていた。


 そして……ミレスによってコーブルクの王都が占領された折、その王都奪還の要として様々な功績を残して勲章を授与され、男爵の地位を得た。


 これほどまでに目立ったことを短期間に行なったテンペストが目立たないわけがなく、特に最後の勲章授与と男爵になったことで国民に周知された事が大きいが。

 彼女をよく表したその紋章は、あまりそういったものに興味のなかった者も知るほどに有名となる。


「……視線が……」

「まあ、一気に有名になっちまったからなぁ。この魔導車もまだそんな普及してないし、個人所有してるのはテンペストと俺くらいなもんだからな。とりあえず……高級宿行くぞ。あまり皆が集まるところに行って囲まれたくねぇだろ?」

「そうですね。暫くは紋章を外して活動しましょう」

「それがいいかもしれねぇなぁ。ほい、到着っと」


 敷地内には客以外は入ってこれない様に警備員が配置された高級宿は、客のプライバシーなどもしっかり守るセキュリティー的にも安心できる場所だ。

 有名になってしまった二人がゆっくりするためにはここが一番楽だろう。


 そして一部屋取ってさっさと休むことにしたのだった。



サイラス博士の義肢は、転がっているものから適当に手足の方向が合うのだけを選んだので、えらいちぐはぐになってます。

左手はサイズが小さく、右手は大体ちょうどいいくらい。

左足と右足はセットだったので大きさは同じだけど切断位置が違っているため太ももの長さが少し長く見えます。


身体はやせ細り血の滲んだ包帯が巻かれているだけで局部も丸出し。顔もこけて骸骨のよう。

義肢のちぐはぐさに加えてそれなので、控えめに言ってモンスターにしか見えません。

多分夜にあったら失神する。


あ、風邪ですが長引いてます。

家族にうつってまた戻ってくるという悪循環。だんだん強くなってるっぽくて咳が酷い……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ