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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第二章 ミレス騒乱編
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第二十八話 ライフル運用開始

「何?……連合軍が?」

『はい、我々も直接見たわけではないので何ともいえませんが、鎧の巨人と、長射程高威力の大砲により敗走したと。国境付近まで下がって陣形を整えている所です。また、武器や弾薬の調達を頼まれました』

「やはり……危惧していた通りか。分かった、このまま情報を集めてくれ……恐らくまだミレスは何か隠している」

『了解しました。それと、今入った情報だと城壁はすでに修復されたようです』


 サイモンの元へと通信用の魔道具を使って連絡が入る。

 結局、考えていた通りのことが起きてしまった。しかもこちらの用意が殆ど出来ていないのにもかかわらず。

 異変が起きるにしても少々早すぎる。故にまだ違うだろうとは思っていたが……戦力差が大きいようだ。あの二カ国は軍事的には強国として知られている国で、持っている兵器もそれなりに強力なものを数を揃えて所有している。

 真正面からぶつかってまともに勝てるようなものではない……。それを正面から叩き潰したというのであればやはり脅威だ。


 当然ながらこの情報は王都へも届き、エイダとサイモンを含め全員が召集を受けることとなった。


 □□□□□□


「一緒に行動するって決めたらもうこれだよ……展開早すぎるよ」

「つか、全員呼ばれるって事はやっぱり異変関連って事になるのか?」

「まあ……ハーヴィン候の話だと王都はコリーの言う通り異変を疑ってるみたいだね。ここに来てミレスに未知の技術があることが確定したんだ。あのライフルってやつもきちんとしたものはやっぱり威力が違っていたそうだよ」

「その技術ってのは何なんだ?」


 サイモンから説明を直に受けたのはエイダ、ロジャー、テンペストの3人だけだ。

 戦争が始まったということくらいしか分かっていない他の皆に、前線から送られてきた情報を共有する。


「……テンペスト、君は鎧の巨人みたいなのを知っている?」

「創作の中でしか実現したことはありませんが。基本的に遠距離からの攻撃手段が豊富だったため、そういった巨大な人型兵器を作った所で何も出来ずに壊されておしまいでしょう」

「って事は……鎧の巨人に勝てる……ってこと?」

「その鎧が何で出来ているかにもよりますが、ニールの言う通り恐らくワイバーンの武装で破壊は可能です。魔法はあまり効かないとのことですが、そういった物質は何があるのですか?」


 魔法が効きにくい素材はミスリル製品が多い。

 自分が使うときには全てに魔力をまとわせて操ることが出来る一方で、外からの魔力を分散して散らしてしまう特性を持つ。

 また、吸魔石と呼ばれる特殊な石を粉にしてレンガに混ぜ込み建築したりすると、壁がそのまま魔法を吸収してしまうという対魔法防御用の壁を作ることが出来る。


「ではその吸魔石というものを撃ちこんだら魔力で動くものを無力化出来るのでは?」

「……その発想はあったけど、まずそれを魔法によってまとめることが出来ないからね。後とても脆いんだあれは。単体では普通は使わない」

「なるほど。純粋な火薬のみで構成したものであれば出来るでしょう。表面を金属などで覆ってしまえば標的の内部にばらまくことも可能なはずです」

「ああ、なるほど。テンペストの技術を使えば出来るのか。……すごい。テンペストのジャミングってやつをピンポイントながらも出来る様になるね」

「アレは本当に反則だと思うぞ。魔法錠まで無かった事にされたんだぞアレ!」


 もしかして出来るんじゃないのか?ということで、魔法錠に対してジャミングを使わせてみたところ一発で解錠できてしまったのだった。

 解錠というよりも、コリーの言う通りになかった事にされた。

 設置型の物と同じく魔法錠も散らせるようだったのだが、これのせいで余計に公表できなくなってしまった気がする。


「まあ……とりあえずその鎧の巨人に関しては対抗策はすでに持ってるって事だな。後はライフルに関しては……どうだ?俺の作ったので対抗できるか?」

「可能と考えます。ゲルトの作ったライフルは相当な威力を発揮できます。遠距離であれば恐らくこちらに有利である可能性がありますが……」

「何か問題があるのか?」

「狙撃というものは緻密な計算の元で行うものです。弓矢のみを使っていた時とは射程も速度も何もかもが違います」


 標的までの距離、弾の落ち方、風の影響だけでなくライフリングを刻んでいる場合、弾頭の回転によって若干左右にもずれる。更に気温、気圧なども考慮しなければならないし、1000メートル近い長距離での狙撃では更にコリオリ力も考えなければならない。

 テンペストであればそれは全てソフトが処理してくれる為問題ないが、人の力だけでやるには計算が複雑すぎるのだ。

 更に言えばそれだけ長距離の狙撃というものが今まで無かった時点で誰もそんなことを理解出来ていない。


「他にも何を持ってるかは分からないそうだから、それだけじゃないと思う。そしてハーヴィン候はミレスにはダンジョンケイブが存在する前提で動くべきだと言っている。僕もそれに賛成だ。ダンジョンケイブを見つければ一攫千金も夢ではないっていうのは前に話したよね?」


 敵も多いがそれ以上に豊富な鉱石類などで一気に潤うのだ。

 それにダンジョンの魔晶石を手に入れれば、ダンジョンを作り出すことが出来る。もしミレスがダンジョンを作り出すことに成功していたら?


「でも、実際はなかなかダンジョンを生成することって出来ないんだよ。時間がかかりすぎるっていうのもあるけど、もう一つは……人柱が必要になるんだ」


 魔晶石を手に入れたとしても、それを使ってダンジョンを生み出す為には犠牲者が必要となる。

 つまりダンジョンという魔物へと魔晶石を介して変化するということであると言われており、自分を犠牲にしてまで普通は出来ない。

 しかも成功するかも分からないものなのだから特にそうだ。


「その人柱が望むダンジョンの姿が顕れるのだから、当然自分と同じ考えの誰かを犠牲にしなければならない。……でも、ミレスならそれをやりかねないんだ。だから長年かけてダンジョンを成長させて食料、そして鉱石等を生み出し続けている可能性がある。そうでもなければあの場から一歩も外に出ずに生き続けた上に、あのような兵器を保有できるとは思えない」


 更に言えば大規模な攻撃があった場合、地下へと逃げることが出来るということ。

 どれだけの規模の広さかは知らないが、ダンジョンケイブは基本的に広大なため国民を収容することは可能だろう。

 入り口は一箇所だけだから塞がれたら外に出れないが、逆に攻めるにしても来る場所が分かっているのであれば対策を取ることも可能だ。

 ダンジョンケイブが生み出されたものであるのであれば、防衛出来るようになっていてもおかしくない。

 これが資源に限りがある筈のミレスが壁の中で生きながらえて、更に戦力を増強してきたからくりではないか……とサイモンは考えている。


「では、それが本当であればミレスは見た目以上に大きい国とか?」

「まあ地下に広大な土地がある上に地上と変わらない様な場所が見つかるようなところだからね。そっちに住んでいる可能性は捨てきれない」

「ゲルト、一刻も早く私のワイバーンを飛べるようにして欲しいです。武装はともかく、偵察は必須です」

「……だな。試験飛行は場所を移すか。まだアレを多くの人の目の前に出したくねぇ。空間魔法使いのやつに頼んで移送してもらうか」

「あ、ボク出来ますよ?大きさはどれくらいですか?」

「結構でけぇぞ。大体長さは25、横幅は翼を畳めば17、高さは6メートルってとこか」

「……ちょっと足りないかな。空間拡張して広げておくよ。今ならもう一段階上げれそうだし」

「っつことは輸送は問題ないな」

「武装は……暫定的に保管している元の武装を使います」


 武装に関しては射程が長く、弾切れが無いレーザー兵器を使う。

 ゆくゆくはこれも魔道具化して更に出力を上げた高性能なものへと変える予定にしている。

 また、テンペスト単体でも使えるように練習中だ。魔法の練度が上がったことによって収束率を上げることが出来るようになり、かなりの高温を再現出来る様になってきたのだ。


「テンペストが空間魔法使えるようになったら……召喚みたいなこと出来るようになりそうだね」

「召喚……ですか?」


 高位の魔法使いの中でも一握りの者しか使うことが出来ない事が多い召喚だが、契約する対象によって難易度は様々だ。

 契約することによって、その対象の力の一部を借りて運用する。そのもの自体を呼び出すわけではなく、その力の一部ということだが……究極的なものであれば竜と契約してブレスを使えるようになった場合、大量の魔力と引き換えに竜の上半身が現れてブレスを吐き出すといった具合だ。

 その為見た目的には本当に呼び出しているようにも見える。


 この場合の召喚みたいなこと、と言うのは機体の一部だけを外に出して、飛ばずにその場で攻撃するという手段のことだ。力技だが似たようなことをする空間魔法使いも居ることは居る。

 物が揃った状態であれば、一々専用の物を置かなくとも一機ワイバーンがあるだけで様々な攻撃等を行えるということになる。しかも契約は必要なく必要な魔力量も召喚に比べたら微々たるものだ。


「その方法を先に知っていれば、固定砲台を設置して攻撃する手段が使えたのでは……」

「知ってても、テンペストが空間魔法を使えるのはまだ鞄位なものだからね。もっと頑張ってニールみたいに部屋一つ……いや、ワイバーンを格納するんだからちょっとした屋敷程度の広さは欲しいよね。……まあそれは帰りにやることにしても、明日すぐに出発だよ。まあ今回はハーヴィン候とエイダ様もついてくるから凄く楽だよ」


 ……主に馬車が。

 その乗り心地の良さを知っているテンペストからすれば、旅では一番嬉しい事ではあった。

 ついでに言えば食事も美味しい。

 流石侯爵だけあってそれなりの物が出てくるのだから嬉しい限りだ。


「それも急だがまぁ仕方ない、ニールとりあえず食いもんとか適当に詰め込んで来てくれ」

「分かった」

「それと親方、あのライフルとりあえずでいいから俺達の分作れるか?出来たら弾も多めに頼みたい。ハーヴィン候の兵士も行くんだったらとりあえず持たせといたほうが良いんじゃねぇか?」

「おう、買い出し頼んでいいか?とりあえず手持ちので作るからよ」


 全員分は無理だろうが、とりあえずあればあったで魔物に対する備えにもなる。

 ゲルトに作れるだけを頼んで、ニールとコニーは買い出しへと向かう。


 □□□□□□


「アディ、顔色悪い?」

「え?ああ……うん。そうかも。なんか戦争になったって言うのに関してお告げ聞き逃したと思うし……。ルーベルとコーブルクの軍が一旦撤退したって言うじゃない。多分、ハイランドも参加することになると思うの」


 少なからず、戦争という状況とミレスの得体のしれない力に関して不安になっているようだ。

 攻めにくい地形と宵闇の森のおかげで、殆ど戦争というものが無かったハイランドのためか、街中もあまり実感がわかないといった雰囲気はあった。

 それを直接知れる場所にいるエイダは戦争を経験していない世代だった。実感は沸かないものの、それでも脅威だけは感じるのでやはり怖いのだろう。


「そう。ではやはり早く王都へ行ってワイバーンを完成させなければなりませんね」

「テンピー、結構落ち着いてるよね?」

「お忘れですか?私は戦争のために生まれた存在です。私の存在意義であると言っても過言ではありません」

「ご、ごめんなさい!私そんなつもりじゃ……!」


 10歳の少女の見た目ではあるものの、中身は戦闘支援AIだった物だ。戦闘行動となれば的確な判断が求められる場所に居た。

 特にテンペストは生まれた時から戦闘に身を置いていたのだ。

 敵を倒すことに関して何ら感慨はないのは今も同じ。……変わったのは味方に対する感情が出来たことだろう。


「別に気にしなくても……。それに私自身がワイバーンへと行っている間、身体をお願いすることになるかと思います」

「あ、うん、あの時と同じように……ね?ワイバーンに乗るっていうことはしないの?」

「この身体では加速や旋回によるGに耐えられません。……耐Gスーツを作るのを忘れていました」


 テンペストは今の身体では保たないと判断し、最初から意識だけを移すことを決定していた。

 しかし搭乗者が乗ることを意識していなかったため、そちらに関する装備品を作るのをすっかり忘れていたのだった。


 とはいえ、もし乗るというのであれば失神しない程度に調節してやればいい。

 暫くはそれで通すしか無いだろう。どの道人が乗れるように調節している暇は無いはずだ。


「……そうですね、サイモンなら乗せても問題ないかもしれません、制御は全て私がやりますし。その場で見れる人は欲しいですから」

「その、私は……?」

「制御が安定した時にでも、で良ければ。ただしお見せしたほどの速度は出せません。搭乗者に掛かる負担が大きくなりますので……」

「おお、二人共先に来てたか。ロジャーはどうしたんだ?」

「失礼、遅れました。……間に合いましたかね?」


 サイモンとロジャーがほぼ同時に部屋に入ってきた。

 4人で集まったのは当然ながら王都への旅に関してと、これからについて。


「まず、王様の方から私達は召喚を受けているのは伝わっていると思う。その原因もロジャーに伝えた通りだ」

「……ミレスとの戦争ですね」

「ああ。たった今また情報が入ってね。また包囲しようとしたようだが接近すらさせてもらえなくなったようだ。かなり苛烈な攻撃で被害も出ているようだ。壁の上に設置された大砲をスケッチしたものがこれだ……テンペスト、どうだ?」

「……特には……。形状からすれば通常のカノン砲と思われます。短めですが。後装式で弾がどのようなものかはわかりませんが、私が居た所であればこの規模では大体8~9000m程の射程があるはずです」

「そんなに!?」


 ロジャーが驚くのも無理は無いかもしれない。

 とは言え滑腔砲が主流のこちらではそもそも飛距離をあまり伸ばすことが出来ない。

 ライフリングを刻み、弾の種類や火薬なども計算され尽くしたものは60km近くの射程を持つテンペストの世界ではそれでも相当短い射程と言わざるを得ない。


「流石にそこまでではないようだ。精々通常のものよりも数百m多く飛べばいいところだろう。何が違うのかは分からないが、テンペストの所は相当こういった技術が発展しているようだなぁ」

「魔法というものがありませんでしたから、恐らくその辺の影響もあるのでしょう。代わりに火薬を使った物の発展は凄まじく、敵の発見から追跡、そして排除までを全て自動でやれるものなどはどこの軍でも当然のごとく持っていました」

「ワイバーンを見た後だと納得するしか無いな……」


 火薬に関する技術レベルは、魔法が発展していたため魔法使いのほうが威力も使い勝手もいい。火薬は資源を使い、更に扱いが面倒ということもあって敬遠されがちなものだった。

 魔晶石を使う案もあったが今度は高くつきすぎるのだ。


 ノーコストで長距離でも撃ちまくれる魔法というものは、この世界では重宝する。

 しかしそれ故に、火薬や科学技術を使った力を知らない。

 自然に作り出せるものがそのまま魔法となる。当然見たこともないものは殆ど再現できないのだ。

 そこに勝機があるのだが、ミレスはそれを手にしている。


 気付けるのは今のところテンペストとともに暮らしてきた皆しか居ないだろう。

 そして、火薬式の利点は他にもある。

 それは魔力を使わないということ。つまり誰でも使える。技術は必要なもののばら撒くだけなら誰でも出来るのだ。

 魔力を使わないということは魔力の発動を感知する探知魔法には引っかからないという点も特徴だ。

 弓矢にも言えることだがライフルはその射程を大きく上回る。

 唯一の欠点は音だが、これもあっさりと解決しているため特に問題にならない。


 今のところテンペストがもたらした技術のほうが上ということは間違いない。


「これ以上力をつけられる前に何とかしたいところだな」


 戦争が始まった以上、もう下手に時間を与えて準備を整えられるのも困る。

 もし本当にダンジョンケイブが存在するのであれば、悠長に構えている間にどんどん武器と弾薬を補充されてしまう。消耗戦はこちらに不利なのだ。


 □□□□□□


 王都へ向けて出発して3日。

 久しぶりに嵐が直撃した。強風と大雨によって足止めを余儀なくされているのだが……。


「濃霧が酷いですね、これでは動くのも危険です」

「流石になぁ……雨風酷い上に数メートル先すら見えないとなればここで泊まるしか無いだろう。護衛達もいるし見張りは任せてこちらは寝よう」

「そうも行きません。残念ながら魔物が接近中です、距離約40m。種類までは分かりませんが大きめです」

「……便利だな、ピットとかいう魔法」

「僕も何とか習得したいところなんだけどねぇ。熱も目に見えない光を出しているとか理解出来ないからね……とりあえず実戦だ。ライフルを!」


 出かけるまでにゲルトは護衛含めて全部で15挺全てを作り出していた。テンペストはペネトレーターがあるのでその他の全員に配分した形だ。

 昨日は試し打ちの為に全員がテンペストの元で練習済みだ。

 反動がキツイため基本的には伏せ撃ち若しくは何かしらに固定した状態で撃つことを条件としている。

 身体強化が出来る人は立ったままでも反動に耐えられる事が分かったので、そちらはそちらで練習済みだ。

 当たるかはともかくとして、撃ち方だけは様になったという感じだ。


「距離20mまで接近」

「全員ライフル構え!確実に当たる所まで引き付けるぞ!照準はテンペストが示す光を狙え!」


 可視光のレーザーだ。レーザーサイトとして的にレーザー光を当てて照準するためのものだが、相手に狙っていることがバレやすいので基本的には普通可視光ではない赤外線レーザー等を使うのが普通……だが、それだと暗視装置などがない為見えないので赤く光るレーザー光を照射している。

 濃霧なのでまっすぐに標的に向かって伸びるそれが、キラキラと光りながら道標となっていた。


「距離10m」

「撃ち方用意!……撃て!」


 一斉にライフルを掃射する音が響き渡り、同時に魔物の悲鳴が聞こえてくる。

 数発外れたようだが殆どが命中し、着弾箇所は大きく抉れて大量の血が流れ出していた。

 一撃で致命傷となるものが無かった分苦しみが増してしまったようだったので、テンペストが正確に頭を撃ち抜いて絶命させる。


 近寄ってみると霧の中から現れたのは、体中に大穴を開け頭が吹き飛んでいるマンティコアだった。

 ライオンのような身体にサソリの様な尾。吹き飛んでしまったが顔は人に似ているという。

 マンイーターの一種で、こうして音を立てずに近寄ることも得意だが、異常なまでの速さで翻弄してくる事もあり危険な魔物だったようだ。


「こんな街道の近くに出るようなやつじゃないんだがな……」

「毛皮はどうしようもないね。鬣と尾を回収しよう。間違って尾の先についてる棘に刺さらないようにね。解毒する前に死ぬから」

「しっかし……エゲツねぇ威力だなこれ!結構固いほうだぞマンティコアって……」

「まあ、確かにゲルトの言うとおりだね。これ、本来なら護衛が持ってる通常の武器だと歯が立たなかったかも……完全に魔法任せになってしまって全滅してた可能性あるよね」


 ロジャーが言う言葉に嘘はない。

 かなり危険な魔物でこの視界が効かない状態では恐らく、一人ずつ消されていっただろうということだった。

 また、宝剣を持っているサイモンや魔法の刃を出せるコリーなら対処法はあったかもしれないが、それ以外だとメイン武器を出す前にやられていた可能性が高い。


「なぜ護衛の方々は強力な武器を身に着けていないのですか?」

「ああ……一応全員それぞれが自分で買った物を持っているんだ。当然それなりに強力なやつをね、でもそれを見せびらかして歩いてると一々盗賊が狙ってくるからね。そのリスクを減らしたいというのと、普通ならここまで強力な魔物は出てこないんだよ、こういう道沿いっていうのは」


 定期的に人が通るため餌場になっているのではないかと思ったけど、実際の所たまに魔物を狩って安全確保をしているためむしろ近寄らなくなっている。

 それに統一された物を着用しているとどこの人たちかというのがひと目で分かるという事もある。

 かと言っていい装備はお金の問題もあるためあまり使えないので、そこそこの装備となるのだった。


 しかし今回、こうしてある程度の魔物をも穴だらけに出来る程の武器を手にした今、自分たちの攻撃の結果を目の当たりにして護衛として付いて来た者達はより一層ライフルを使いこなせるようになりたいと願うことになった。

 音は後ほど作られるサイレンサーを装備することで対処できるし、矢よりも強力且つ正確なライフルという装備は遠距離からの攻撃と、確実に相手を仕留められるほどの大きな力を持っている。

 何よりも、エイダの様な女性であっても訓練を受けさえすれば撃てるというのが大きい。


「なかなか好評のようだぞ、これ」

「性能的には1000m超えて狙撃できるはずです。それらの計算などを簡略化するための道具などは無いのですか?」

「計算ねぇ……足したり引いたり程度ならいいけど、テンペストが使っているような良くわからない記号を使ったものなんて無いよ。せめてもっとわかりやすくならないかな?」

「了解しました。四則演算で表現するようにすればいいのですね?」

「頼んだよ……後はなんとかして道具作れるように頑張るから」


 しかしロジャーはまだ知らない。

 その計算が激しくめんどくさいものであって、まともにやろうとしたら洒落にならないものであることを。

 そして更に言えば計算は計算。実際にどうなるかに関しては腕次第である。


 とりあえずは通常の弓の射程外である100m程度での狙撃を経験してもらおう。

遅くなりました。


そして昨日から風邪ひきました。

喉めっちゃ痛いです……。

一日中寝てばかりみたいな状態になってますがとりあえず更新再開ということで。

まだ少しムラがあると思うのでゆっくりとお楽しみください……

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ドローン兵器は出てくるかな
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