第二十六話 試作品
「おう!サイモン殿!居るかぁ!?」
「これは、ゲルト様。ようこそいらっしゃいました、旦那様はロジャー様と一緒におりますのでどうぞこちらに」
「おお、アルベルト殿、久しいな。精霊の嬢ちゃんは元気か?」
「ええ、テンペスト様もゲルト様のことをずっとお待ちしておりました」
「いやぁ、ワイバーンの方もなかなか難しくてな……職人連中全員が頭かかえながら作業してるぜ。まあもう少しでとりあえず飛ぶだけは組み上がるからその時には一旦王都に戻ってもらいてぇな」
ゲルトが到着した。
テンペストも武器を作るためにも必要な人材であり、更に鍛冶魔法の事を教えてもらうためにも必要なのだ。
ゲルト・シュミット。ドワーフという種族の特徴として、背が低く大体人間の子供よりちょっと大きいくらいしか無いが、筋肉が発達しており、大人になると男は髭が生えてくる。
その為ドワーフの男は全員が髭面の屈強な男達となり、その見た目通りに力持ちで好戦的な種族だ。
逆に女性はといえば、筋肉はついているものの男ほどではなく、意外とスタイルは良いがやはり力は強く並の人族の男では到底敵わない。
生まれつき金属に関しての造詣が深く、ほぼ感覚だけでも鍛冶が出来る程度には鍛冶屋に適した種族であり、その力と働き者な性分で自分で鉱脈を掘り出しては何かしら作るということが好きだったりする。
一度武器を持てば、ハンマーや斧がすさまじい速度で振り回され、盾ごと潰すなどの恐るべき破壊力をみせる。その為、いくら一人だけとは言え、ドワーフに喧嘩は売るなと言われるほどだ。
別邸に案内されると、そこにはサイモンとテンペストが打ち合っているのが見えた。
流石にあの時は油断していたものの、今では常に警戒されており純粋に技術で押そうと頑張っているが、テンペストの攻撃は尽く弾かれては軽く小突かれているようだった。
「あれ?親方着いたんだ?ってかまた一人で来たの?」
「おおうロジャー殿。久しぶりってほどでもねぇか。あの魔導エンジンとやらはいい感じだぜ。機体に載っけて出力のテストをしてみたが……性能良すぎてもろもろ吹っ飛びそうだったぞ。あんな爆発的に推力発生するとは思っとらんかったわ!」
「先に言ったでしょうが!まあ、良いけど。それで、垂直離陸とやらは出来そうなの?」
「おう、問題ねぇな。あれの数倍重くても浮かぶぜありゃぁ。今はロープで固定しながらだが、後はテンペストの入ってるあのよく分からん機械を接続してやって、前と同じような感じに可動部分にアクセスできるようにすればいいんだろ?」
「ん、そんな感じでいいと思う。まあそもそもあの線がどういう役割かっていうのがいまいちわからないんだけどね。魔力を使ってないから余計に……。今のテンペストなら多分魔力も使えるから大丈夫だと思うけどさ」
ワイバーンは装甲が一部火竜のものとなり、どことなく竜の面影を見せる有機的な機体へと変貌していた。コクピットも風防をそのまま使おうという話もあったものの、そこが弱いということがわかり、結局は全てを装甲で覆う形となった。
代わりに中にいても外の景色がそのまま見えるように工夫され、シートに座ればほぼ360度を見渡すことが可能となっている。
しかし以前からもそうだったがコクピットの位置が若干高いこともあり、梯子が必要だったため、コクピットが一つのカプセル式となり、機体下部より下にリフトで降りてくるようになっている。
以前は中にみっちりと配線や動力を伝えるための油圧などが仕込まれていたが、それらはほぼ無くなり、要らなくなった部分は軽量化のために消えていった。
その結果、以前よりも接続部は細く頼りなく見える部分も出てきているが、むしろ強度自体は上がっており熱耐性のおかげで以前よりも高速度で飛んだ所で外装が溶けることはなくなった。
更に追加装甲板もあり、本来ならば決してつけることはない装飾までもなされているがきちんと溝は埋められて綺麗な空気の流れを確保している。
両翼も翼竜さながらに折りたたみが出来るようになっており、テンペストが希望した倉庫への格納も楽になるようにされている。
タイヤ部分も魔物素材へと換装され、その動力も魔力となり結果的に自力走行すらも可能となった。
各部の試験も実際に魔法を放ってどう影響するかを調べながらという、普通では考えられないような事を実行しており、たとえ火竜の火球をもろに食らっても問題ないという所まで強化されている。
「いやぁ、テンペストが聞いたら驚くかな?」
「ククク……ソレが楽しみで仕方ねぇってもんよ。アレをバラしててびっくりしたのはその機体の弱さだからな!あんなもんでよく空なんぞ飛べたもんだ……俺ぁ恐ろしくて出来ねぇな」
「武装に関してはテンペストが色々作りたがってるみたいだから協力してやってよ。なんか面白いの作ろうとしてるからね」
「前にも相談を受けてたな。設計図は書いておくからって事だからまぁもう素材は揃ってんのか?」
「まあ本人から聞きなよ。あ、今丁度終わったみたいだし」
言われて前に向き直れば、サイモンの前にテンペストがへたり込んでいたところだった。
どうやら体力が切れたらしい。
どう見ても子供の動きではなかったが、動きが激しくてその分魔力を使うことになりそのままジリ貧になったようだ。
「あ、親方さん」
「ゲルトか、遅かったのではないか?」
「ん、すまんな、途中でちょっとばかり襲撃にあってな。全員返り討ちにしてやったんだが首が重くてな!ちょっとばかり儲けさせてもらってきたわけだ。そいつらのアジトごと潰してきたから、お宝とかも色々あってなぁ。いやぁ良い金になったぜ?」
ちなみにお宝はその場で鍛冶魔法により溶かされて金や宝石をふんだんに使った宝剣に生まれ変わった。どう見ても貴族が喜びそうなそれを大商人に売りつけてきたということだから相当な金額になっただろう。
他にも数名の女達が居たらしいが、彼女らはそのままハーヴィン領へと連れて来て、奪ってきたお宝の一部を分けてやって解放したという。
「まあここなら安全だろ?働き口も結構あるしな」
「大きくなっている最中の領地だからな……色々やることは沢山あるさ。最悪娼館もあるがね」
「それ以前にお店とか人手不足だーって言ってたよ」
「親方さん、それよりもこれを」
待ちきれずテンペストが折りたたんだ設計図を渡す。
使う素材とその寸法などが事細かに書かれており、それに使うための弾丸なども指定されている。
「こりゃぁ…………なんだ?」
「作れば分かります。簡単にいえば電磁誘導により物体を加速、射出する為の物です」
「すまん、さっぱり分からん。で、素材は?」
「こっちに」
今度はどかどかと購入済みの素材などを背嚢から取り出していく。
それを一通り見た後に大きく頷いて、ゲルトは追加で幾つかの素材を出して集中し始めた。
そこから先はまさに魔法だった。
ゲルトの周りに置かれたインゴットなどがすぅっと伸びていき、それらが次々と部品を形作っていく。
鉄などはあっという間に火が通り、真っ赤になったかと思うと一気に黒くなって硬化する。
それは本来の過程を早送りで見ているようなものだった。
形が決まると同時にそれぞれのパーツが磨き上げられたようにあっという間に鏡面になる。
更に、パーツとパーツの隙間が分からなくなるほどになったかと思うと完全に癒着しているのだ。
そして作業開始からたった30分ほどで一丁の美しいレールガンが出来上がる。
「塗装まで出来るのですか?」
「まあ、これはサービスだ。その鎧と対になるような感じで白くしてみた。どうだ?」
「綺麗です……まさかここまで素晴らしい物になるとは思っても見ませんでした」
「んで、……ほい、これがもう一つのパーツだな。これをどうするって?」
「撃ちだすのです」
そう言ってテンペストは伏せ撃ちの体制を取る。
カシャと弾頭を格納するための板状のパーツが銃身から下がり、そこに1発のオリハルコンよりも柔らかいが高熱に耐えられ、それなりに頑丈な金属であるヘロイタイト製の20mm専用弾を込め、チェンバーの中へと送られた弾頭はピッタリとその中に入り、捻れたレールの間を加速していく。そう、このレールガンは通常では不可能であろうライフリングが刻まれているのだ。
魔晶石に蓄えられた雷撃の魔法が増幅されてオリハルコン製のレールへと伝わり、間違いなく銃口の方向へと弾が加速する。
念のため感電しないようにとその性質のある素材を噛ませてあるとはいえ、その心配はやはり無かったようだ。
ボッと大きくもくぐもった音と共に銃口から僅かに炎が吹き出し、狙いを定めた樹へと一瞬で到達した弾丸は、その樹を貫通して後ろの地面へと突き刺さった。
反動でテンペストの身体も僅かに後ろへと下る。
「……減音もかなり高性能です。音を吸収するという魔物の素材は素晴らしいですね」
その恐ろしい程の貫通力にその場に居た全員が声を出せないでいた。
「第二射、行きます」
次はヘロイタイトで周りをコーティングしているだけの鋼鉄と銅を使った弾頭だ。
ぶつかった瞬間にかなりの衝撃を与えるはずだが……。
もう一度くぐもった音が響いてまた同じ樹の根元付近へと着弾する。
先ほどとは違い、大きく樹をえぐり抜き貫通していた。その周りは衝撃の大きさを如実に表しており……やがてその樹は耐え切れずゆっくりと倒れていった。
「……こりゃぁ……たまげたな」
「これ、誰でも使えるんだよね?」
「使えます。魔道具の一種として考えてもらっても差し支え無いかと思います」
ゲルトが試射を終えたレールガンを持ち、その中身の損傷度を見ていくが、これといって大きな問題は無いようだ。冷却の方も魔晶石を使い、強制的に冷ましているのだがその必要もあまりない位だという。
「ちょっと俺もやってみていいか?」
「どうぞ。ここと、ここを当てたい所に合わせて狙いを定め、このトリガーを引くだけです」
見よう見まねで伏せて、狙いを定め……。
ボッという音と共にゲルトの手からレールガンが吹き飛び、右肩を抑えて苦しんでいた。
「グオオオアァァァ……いってぇぇ……」
「うわ……肩外れてる……『彼の者へ癒やしを。在るべき場所へと戻れ』……どう?」
「おう、何とか。っつか何だあの反動!先に言えよ……びっくりしたわ」
「すみません。ドワーフでしたから問題ないかと……」
「いや次からは大丈夫だろうが……心構えってもんがな?」
当然、重い弾頭を飛ばすためにはそれなりの反動もある。
それ自体は傀儡によって強化された力と、固定した関節によって無理矢理封じ込め、足の先を地面へと突き刺すようにして身体を固定していたので何とかなっている。
弓を射つような感覚で軽く考えて放てばそうなるのも仕方ないだろう。
ともかく、比較的安価に作れる弾丸でも相当な威力を出せることが判明したため、基本的にはそれを使うことにする。
ただし、自力ではまだ作り出せないためゲルトにある程度作ってもらうことになったが。
「でもこれは本当にすごい武器だよ!音と衝撃が課題かな?」
「これでも相当音は小さいですよ。吸音材が無ければかなりの音がするでしょう」
「へぇ……所でこれ途中で折れ曲がるようになってるみたいだけど」
ある程度の加速を得るために出来るだけ長くした銃身は、大体テンペストの背と変りない。それにストックがあるため全体としてはテンペストよりも大きい。
その為途中で半分に折れ曲がるようになっており、折れた銃身はそのまま上に乗るような形になる。
大体半分の長さになるとテンペストでも背負っておくことは可能だが、その他にも銃身は短くなるもののそのままでも撃つことは出来る。
「この状態だとサイレンサーが効かないので元の音が出ますが……」
「いや、止めておこう。アレでも結構大きめの音だったからね。って、ハーヴィン候……?」
ロジャーが振り向いた方向には倒れた樹を見つめるサイモンが居た。
どうやらアレはサイモンの記念樹だったらしい。
小さいころに植えた樹が今見るも無残な姿となって倒れているのだ。
「すみません、サイモン……」
「ああ、いや……良いんだ」
「まあ大丈夫だよ、直しておいてあげるから……」
そう言うとロジャーは樹の根元へと行き、何やら詠唱すると倒れたはずの樹が逆回しのように元に戻っていった。
とは言え砕けた破片は元に戻るわけではなく、回復したようだが見た目的には完全に元通りになっている。
「これ、結構疲れるからあまりやりたくないんだよね……植物を操るのって難しいんだよ。ドライアドならやりたい放題だろうけど」
「ドライアドですか?」
「妖精の一種だね。樹を司る妖精で、植物全般を操作する魔法を扱えるんだ。まぁ怒らせないほうが良いねアレを敵に回すってことは自然を敵に回すことと同義だ」
とりあえずサイモンも復活したようなので危機は脱したようだ。
この庭にあるものは基本的に高価なものだったりするので下手に壊さないほうが良いということをテンペストは学んだ。流石に思い出の品をぶち壊すという暴挙を本人の目の前でやってしまったことに対して相当な罪悪感を感じている。
「まあ、元通りになったしいいさ。ただ次からは的にやってくれ……」
「申し訳ありませんでした」
「ただまあ……アレはすごいな。ライフルっていうのもこれくらいの威力になるのかな?」
「いえ、そこまでではありません。見ての通り身体強化などを出来なければ到底扱えるようなものではありませんので」
「ふむ……まあ良い。後で火竜の鱗で試してみようか。貫ければ飛竜にも効果があるということだしね」
続いてライフルの試作に入る。
ミレスから鹵獲した物をベースに、構造を近代化し、反動を抑えつつそれなりの威力が出るように調節していく。
12.7mmというNATO弾規格で統一し、ボルトアクションでの単発式を採用した。
少々大きめの弾ではあるが、鎧などが元の世界よりも高性能な為ある程度の威力が必然的に必要になるのだ。
魔物が相手で甲殻に覆われたものなら特にその傾向が強いため、剣や槍などもそれなりに強化していないと文字通り歯が立たない。
「爆破用の魔晶石の量は色々試してみないと分からんな。それにしても似たようなものをミレスも作っていたとは……油断ならねぇな」
「テンペストが言うにはミレス製のはあまり威力が出ないだろうということだ。命中精度も低めとなればこちらが頭一つ抜けるだろうね。……おお、テンペストのものよりも軽いな」
「あっちは重金属結構使ってるからな。それにそれくらい重さがないと銃身跳ねて使いづらいだろうよ……あの反動じゃな。こっちのライフルってのはそこまで弾も重くねぇ。失敗しても銃身はぶっ壊れねぇからやってみてくれ」
サイモンが狙いをつけてトリガーを絞る。
タン!と小気味良い破裂音が響いて狙った場所から僅かに逸れた所に着弾する。
慣れない反動のために狙いが逸れたようだ。
「……悪くない。扱いやすいし弓に比べて番える時間が要らないのは良いな。反動も思ったほどはなかったし強化無しでも使えるか?」
それでも通常は重機関銃用の弾だ。反動は大きい方だろう。
何度か試射を繰り返して最適な分量を出して量産することが決定した。
もちろんハーヴィン領だけで所有するわけにもいかず、王都への申請が必要になってくるが、テンペストのものは完全にオリジナルの専用武器となっているので、これ自体はハンターが使うカスタム武器という形となり特に申請の必要がない。
ライフルに関してはハーヴィン候、ゲルト、テンペストの3名による共同開発として申請することにして、量産されればその売れた分の一部のお金が3人へと回ってくる。
「個人的にはテンペストの武器を量産してみたい気はするけどね……。あ、ゲルト、作り方は分かったね?これ大型化してワイバーンに積もうか」
「おお良いな!音は問題ないが反動がでかくなり過ぎそうだな……その辺は適当にやっておこう」
「え?ワイバーンはもうそこまで出来ているのですか?」
テンペストは初耳だ。
まだ出来ていないとしか伝えられておらず、進捗がどれくらいかはあまり良くわかってはいない。
「7割方って所だ。すでにガワは出来てるし、後はお前さんの大事な部品を入れて魔道具に接続するのと、武装を取り付ければ恐らくもう飛べるぜ。一応、俺らの方で一人乗り込んで魔力で動かしてみた時には辛うじてバランスを取りながら浮かぶことが出来たが……お前さんなら出来るだろう?」
「バランスにも寄るとは思いますが……。それならば一度試運転をしたい所です。コンピューターを載せてもらえれば今すぐにでも入れると思いますが」
「そうだな。中は大分広くなってるし人が入るのも楽になってるが……そもそも狙いを付けるのはどうやってるんだかあれを動かせない俺達にはさっぱりだからな。その辺も聞きに来たってわけだ」
「了解しました。その辺りは詳しく説明します。どのような感じで目標を設定し、照準するかなどは実物を使いながらのほうが分かりやすいかと思いますので向こうに行ってからにしましょう」
コクピットの制御装置ごとコンピューターは外されているので、照準用のHUDなども動作させることが出来る。
実際に見せながら似たような機構を再現してもらう事になるだろう。
使えるセンサー類も全て載せ直す為その調整などもしなければならない。
「それにしても、もうそこまで出来ているとはな。あとどれくらいで完成できそうなんだ?」
「まあ色々分かれば飛ばすだけなら1月要らねぇな。今の時点で自力での飛行は出来るんだ、おっそろしくバランスとりにくいがな……エルフのニーチャンが頑張って制御してたぜ」
操縦桿等は取り付けていないから、全て魔力を通じての制御だ。専用のソフトを使っての制御をしなければ難しい程にバランスをわざと崩しているワイバーンを元にしているのだからさぞかし難しかったことだろう。
当然、浮かぶだけで精一杯で飛ぶと言っても自在に飛んだわけではない。
エンジンのテスト用なので特に問題はないが。
「テンピー、ワイバーンで偵察出来るんだよね?」
「可能です。あれには高性能カメラが取り付けられているので映像としてそれを残しておくことも可能です」
「映像を記録か。アルベルト、オクロを持ってきてくれ。代わりになるかもしれん」
オクロとは映像を記録するための水晶球と、映像を投影するための水晶板がセットになったものだ。
水晶球で見た物を水晶板で見ることが出来、これは現在のワイバーンのコクピットにも使われている。
その映像は別な魔晶石に記録しておくことが出来るため、偵察に行く者達に持たせると非常に役に立つのだが、その一方で高額ということもありなかなか貸し出すわけにも行かないものだ。
アルベルトの持ってきたオクロは握りこぶしよりも大きめの水晶球で、それを通じてみた景色は水晶板へと映しだされる。
球面だから歪みがあるのかとおもいきや、そういうわけでもなくきちんとその辺は処理されているらしい。
解像度自体も見たままを写しているので肉眼と変わらない。
「……これは……ワイバーンのものよりも高性能かもしれません。これに私のピット等を組み合わせることで暗闇でも見れるものが作り出せるのではないでしょうか。ズームは出来ますか?」
「ズーム……とはなんだろうか?」
「この写っている一部を拡大していく……様なものです」
「これは出来ねぇなぁ……千里眼ってのはあるがちょっと違うしな」
ゲルトの言う千里眼は術者の意識をその場に飛ばすようなもので、遠見という意味ではどちらかと言えばハンターの弓使いが使えるイーグルアイの方が近い。
レンズを使ったズームというものはコチラの方ではもっと便利な魔法があるため発展しなかったようだ。
それに関しても一通り説明すると、ロジャーが出来そうだということだったので任せることにした。
と言ってもレンズを使うのではなく、文字通りその部分を拡大する方向でだ。
一応、元の光学機器も合わせて使うことで色々と使えるだろう。
超音波や赤外線などに関してはやはり説明が難しく、ロジャーもピットを習得することは出来なかったので諦めることになった。
ここはイメージの問題になってくるので、きちんとした理論などを本にして渡したほうが良いかもしれない。
ゲルトもゲストハウスへと案内し、ロジャーとゲルト、そしてテンペストとサイモンでいろいろと話し合うことになりテンペスト達は一度王都へと戻ることとなったが、それまでの間はハーヴィン領で暫く羽根を伸ばすことになる。
ワイバーンに関しても人が多い王都よりも、少ないハーヴィン領の方が色々都合がいいということで飛行が出来るようになり次第こちらへとまた移動することになる。
武装は元々のミサイルや爆弾などはまだ凍結状態になっているので、いつでも使用可能であるためこちらで作った兵器とともに使い、無くなり次第切り替える方針となった。
そして、先に取り寄せていたワイバーン用のバルカン砲に使われている弾薬をゲルトにみてもらうことになる。
「……ちっせぇ割に結構中身複雑だな……。複数の金属と火薬が詰まってるのか。ロジャー、この火薬の種類とか分かるか?」
「えぇ……それは錬金術士の領分ですよ?少なくとも僕達が普通に大砲とかで使ってる奴より洗練されている感じがするね。火薬ですら成形してあるし」
「形状によってもある程度火薬の燃焼速度を調節できます。それぞれの弾薬で最適な燃焼速度などが緻密に計算された物です。また、弾頭に仕込まれたものは射出した後ターゲットへ着弾後内部で爆発し、そのまま暫く燃え続ける様になっています」
「おっかねぇ弾だな!どうだ?ロジャーお前似たようなの作れそうか?」
「貫通だけなら楽なんだけどねぇ……魔晶石が高くついちゃうね」
魔晶石は天然で見つかるもの以外は基本魔物から取れるもの。
必然的に危険が伴い、火属性であれば大抵は討伐するにも危険性が高いものが大半であるとなれば高額なのは仕方ない。
比較的簡単に作れる火薬と魔晶石を組み合わせたほうが安くなる可能性が高かった。
ともかく、これで武装に関しても一歩ずつ前進となり、着々と実用化へ向けて進んでいる。
この技術を元にして新しく色々と作る事も決定しており、それに関する使用料等はテンペストへ入っていく事も決定していた。
異変を特定し、その発生を止めた後はそれらがハイランドの新しい技術として広がっていくこととなるだろう。
ついにレールガン完成。
割とあっさり出来上がった!
ちなみに普通レールガンは滑腔砲の一種なんで溝は無いですが、ファンタジーってことで割りと無茶な設定ねじ込んでみました。
本物だと砲弾でかいから安定翼とかつけてるんだけど、テンペスト持ってるのはそこまで大きい弾じゃないのでライフリングで回転させたいなぁと。