第百八十四話 テンペストとニールの休日
大分風邪が治ってきました。
まだ頭痛いけどまあなんとか更新できそうなのでゆっくりと……。
おまたせして申し訳ないです。
一月が経ち、ハイランドは雪に覆われた。
色々と話し合いが難航し、お互いの世界での予定がなかなか合わなかったりなどで集まれる日が決められなかったわけだが、なんとかその日が来た。
それにあたって急遽、自分たちの世界を表す言葉を作ることになったが……サイラスが言った一言でアトラスとなった。
これから先惑星アトラスがこの星の名前となる。ギリシア神話の世界を支える神の名を貰っただけだが。
ちなみに各国の王達は、テンペストによって強制的に「勉強」させられて一瞬でお互いの言語を理解できるようになった。
理解までは一瞬だが、そこから立ち直るまでには大分時間がかかったわけだが……まあそこはいい。
リリアンの用意した場所は大きな円卓の置かれた出入り口のない部屋。
いつも重要な会議などはここで行っており、連れてきて良いのは従者一人まで。
そして大きく取られた窓には、飛竜が飛び交う数々の空飛ぶ島が見えていた。
ここは飛空艇リンドブルム、その中にある秘密の会議室。
……とは名ばかりの、大抵はカエルレウス側の王達が緩く食事をしながら適当に大事な話を決めていく部屋だったりするが、今日は流石に真面目だ。
「ではカエルレウス、アトラス両世界の交流の第一歩としてこれから首脳会議を行う」
カエルレウスは6人の王、アトラスは3人の王と相手の多さにちょっとばかり気後れ気味のアトラス勢だったものの、話し合いをすすめる内にカエルレウス側はあまり戦いを望まない姿勢であることが分かった。
そこからは大分スムーズに事が進められる事になる。
なにせカエルレウス側としては、なんだかんだでここ数年戦闘が起きたり、それによって国民が減っていたりと相当大変な目にあっておりそれどころじゃないというのも有るが……正直なところ戦いに疲れているというのが一番大きい。
あまりにも大きな戦いが何度も続き、兵が失われ、国民も何も知らないうちに死んでいくなど疲弊している。
そこでアトラス側としては魔導騎士を使った復興の手伝いを提案するなどして、この日の会議は終始いい感じの雰囲気で終了した。
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テンペストとニールはリリアンに転移で連れてきてもらったのは良いが、料理人としてヴァルトルが連れて行かれてしまったので二人で居残りを食らっている。
国王の付き人として行ったのはテンペスト達はあまり知らない人物だったが、かなり高位の位置にいる偉い人らしい。
苦労人と言った感じがする人だったが恐らく当たっているんだろう。
しかし今は二人共暇だ。
なので食事を堪能して部屋へ戻ろうとした時に、オリバーが来て王都内を案内してくれると言ったのに飛びついた。
そして連れてこられたのは……地下だった。
「ここは何?」
「アヴァロンの地下にある遺物です。どれほど昔からあったのかは分かりませんが、今でもしっかりと機能しています」
今回の戦いのとき、ここに国民が立て籠もって避難していたそうだ。
王都の雰囲気とはまるで違って、どちらかと言うとテンペストが作りそうな感じ……いや、滑走路なんかがある意味近いような気がする。
つるりとした感触の壁に奥へ奥へと長く続くとても長い通路。
それも魔導騎士を歩かせてもまだ余裕が有るほどに大きな通路だ。それが縱橫に走り、大部屋に繋がっている。
何に使うのか良く分からない装置などもそこらじゅうに取り付けられており、まだ機能するものもあるという。
「もしかしたら、テンペスト様なら何か分かるのではないかと思いまして」
「そう、ですね。……オリバー、リリアンはここのことをなんと?」
「何らかの軍事施設……それもとても昔に滅びた文明か、そうでなければ転生、転移者、あるいは宇宙からの技術かもと。表向きは昔の国で使われていた研究施設としてありますが」
「……私から見ても、ここは軍事系の施設に思えます。隔壁もあるようですし、なるほどたしかにここならば戦争が起きたところで被害は少ないでしょう」
一定間隔で並んだライン、それが隔壁であるという。
オリバーも分かっていなかったようだが、テンペストが横にあるボックスを操作した所上から分厚い壁が降りてきた。
「……動力は完全に生きていますね。避難所だけにしておくのはもったいないと感じます」
「あの部屋の中なんて博士連れてきたら多分喜ぶんじゃない?」
「これは……研究用の機材のようですね」
「他にもこういうところがあって、その一つで魔物を合成して送り出していたのが、魔王と呼ばれたものでした。壊されているものが多かったのですが、壊れていないものを纏めてここに保管しておいたのです」
物置のようにいろんなものが詰め込まれているけど、それのどれもが何かしらの実験や研究などに使いそうな形をしている。
使い方は分からないが、人を縛り付けておくような形のものもあった。……人体実験とかしてた?
「次に来る時、サイラスという者を連れてきたいのですが良いですか?彼は学者でこういったことには精通しているので」
「恐らく問題ないと思います。後で報告しておきましょう」
「ちなみにこの地下の広さは?全然先が見えないんだけど」
「王都と同じくらいです。色んな所にこの地下への入口が開くようになっていますが……今のところそれは秘密です」
かなり広い。
それだけの地下施設を作ることが出来た誰かが、ここを昔使っていた。
リリアンから聞いた話だと、神竜の暮らしていた時期より前には人類は存在していなかったと言うから、その後に作られたものだろう。
ただ、レベル的には地球のテンペスト達よりも少し下、リリアンよりも上といった所だろう。
かなり高度な知識を持った者たちが作った用に思える。
なぜここを放棄したのかなど、色々と疑問は尽きないものの……こうやって活用できているのならばまあいいといえるのではないだろうか。
結局リリアン含めて王都の者達には完全に理解することができなかったそうだ。
であれば、確かにサイラスという専門家が来るのが良いだろう。
その後は普通に色々と見せてもらって、お土産なども買い込んできた。
王様達の方の会議はまだまだ続く。
暫くの間はこうして観光しながら見て歩くのもいいだろう。
「ふー。何ていうか、凄く綺麗にまとまったところだね、このアヴァロンは。とても良く考えられてるよ」
「恐らく何もない状態から一気に作り上げた国だからでしょう。でなければここまで整えることは難しいです。私達のカストラも無から作り上げていますが……規模が全く違う上に、こちらの方がよく出来ていると言わざるを得ません」
「僕達のとこは立地条件もあまり良くないからなぁ。結構山削ったしね」
「その程度のことはあのリリアンがあっという間に終わらせるでしょう。それだけの力を持っていますから」
「……山、レーザーで貫いたってね。どんな出力してるのさ」
テンペストが使ってるのも相当だけど、そのままトンネルに出来る太さとかどう考えてもおかしい。
眉唾かと思っていたけどやりかねないから困る。
ま、考えていても仕方ない。
「あ、そうだ。明日はリリアンに教えてもらった温泉行かない?折角だから2人で」
「ええ、構いません。その後でおすすめしてもらったマッサージを受けに行きたいです。ニールも一緒にどうですか?」
「んー……そうだなぁ。テンペストって結構やってもらってるけど、どう?」
「疲れた身体を解してもらうのはとても気持ちがいいですよ」
「そっか。なら僕もやってもらおうかな?最近ちょっと色々あって疲れてたし……」
マッサージを受けて戻ってきたテンペストは、凄く肌もきれいになってとてもリラックスしていたのを思い出す。
女の人とかはよく使ってるけど、僕はあまり使ってないんだよね。
あ、コリーが使ってたか。毛並みがきれいになるとか言ってた。
「ニールも肌がきれいに保つことが出来ますよ。身体を解しながらオイルで整えてくれるので」
「いい匂いするしね」
じゃあやってみよう。
なんたってこっちの世界ではまたちょっと違ったのをしてくれるらしいし。
女性に嬉しい脱毛とか言うのもあるらしい。
その他にも身体の垢をきれいに取ってくれたり、身体をほぐすだけじゃなくて色々とプラスになることをしてくれるそうだ。
もちろんそれなりの料金は掛かるけど。
こっちに来る時に換金した現金があるからその辺は問題ない。
流石に何でもかんでも向こう持ちっていうのもわるい気がするし。
それに2人でゆっくりと眺めの良い所でお湯に浸かるっていうのも悪くない。
場所だけはとりあえず聞いているし、そこに入るための鍵は貰っている。
いつでも使いなよ!と言ってくれているので、テンペストのマギア・ワイバーンを使って行けばすぐに着く。
今回はリンドブルムじゃなくてアヴァロンに居るから結構近いというのも良い。
前に連れて行ってもらったところは山の上で絶景を楽しめたけど、今度は海の近くということでそれはそれで凄く気になる。
ハイランドは特に海が近くにない土地だし、やっぱり海を見るのは新鮮なのだ。
近くを通る船とかも無く、穏やかで綺麗な青い海を眼前に望めるとあっては期待しないほうがおかしい。
しかも海の真ん前という立地だからそのまま海に入ることも出来るらしい。
ちょっとした入江になっているので完全なプライベートビーチになっているそうだ。
「最初に海で軽く泳いでから温まるっていうのも良いかもね」
「そうですね。明日は食料を少し持ち込んで、しばらく過ごすことにしましょう。王都に戻るのは夕方でも構いませんから」
夕日を眺めながらビーチでテンペストと2人っきりで過ごすというのも最高だろうなぁ。
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翌日、国王達がまた顔を付き合わせて話し合いを行っている中、僕達はリリアンのプライベートビーチへと向かった。
空へ飛び上がり、みるみるうちに小さくなていくアヴァロンを見送り、反対に徐々に近づいてくる海岸線。
空からだとよく分かるがとても綺麗な海だ。
青く澄んだ海に白い砂浜が映える。そこから少し外れて崖に囲まれた入江を目指す。
『言われていた通り、発着場が見えます。あそこですね』
「うわぁ……凄い、これ最高の場所じゃないか……周りから見えないわけだよ」
『海までは細長く続く入江となり、陸側は少し高い崖、その中に砂浜が広がっているわけですね。確かにここならば王族などが遊びに来ていても問題なさそうです』
「上からだと丸見えになりそうだけどね」
『いえ、そうでもないかと思われます。あの崖の上はかなり厳重に警備されているようです。無人での迎撃システムらしきものの監視を受けているのを感知しました』
「え、それ大丈夫なの?」
『……問題ありません、進入許可を得られたようです。預かっていたキーがなければ恐らく入る前に攻撃を受けるのでしょう』
「こわっ」
怖いけど、まあそれくらいやっても仕方ないとはおもう。
暗殺の危険性がある以上はまあ……。
岩肌を削り、綺麗に整備された場所にマギア・ワイバーンを着陸させて降りていく。丁度良く日陰が出来ていて温かい日差しが直接肌に刺さるのを防いでくれるのがいい。
これならば変に日焼けしなくてよさそうだ。
今、ハイランドは冬だけど……こっちはそもそもこんな感じの気候が長いらしい。
ちょっとしたリゾート気分で楽しもう。
「えっと……入り口ってこれかな?」
「この鍵を挿し込むだけで良いはずですが、特に扉も見当たらないようですね」
「あ、これかな?ここに差し込んで……」
箱の形をしたキーをくぼみに差し込んだら、突然岩肌が内側に向かって動き出し、そのまま上に昇っていって格納された。
想像以上のギミックになっててちょっとびっくりした……。
かなり広範囲の壁が取り払われ、広い開口が現れると中に明かりが灯り、独特の影のない明るい空間が広がる。
物体の表面が全て光っているかのようなこの不思議な照明は、照明器具が何処にもなくて本当に影がなくなってしまうからちょっと違和感があるんだけども、普段は全く見れない影になるような物の中とかでもきれいに見えたりするから面白い。
例えば口を開けても口の中が明るく照らされている様な感じなのだ。面白い。
やるには妖精の力が必要らしいから僕達には無理そうだけど。
照明器具が必要ないからその分部屋がスッキリして良いんだけどね。
そんな中にあったのは自然の岩肌を活かした岩風呂だ。
結構大きな風呂になみなみと張られたお湯が床を濡らしている。
どこから湧き出ているのか、大量のお湯が出ているらしい。
「これは……凄い雰囲気出てるねぇ」
「脱衣場は向こうのようです。行きましょう、ニール」
後ろを振り向けば青い空と海が広がっている。
それを眺めながら入れるっていうのは……これは確かに良いかも。
脱衣場には簡易の洗い場もあったりして洗濯も出来るようだ。
まあ今回は別にそこまでしなくてもいいけど。
ちょっとした滞在くらいはできそうだ。
「どうしましたか?ニール。早く行きましょう」
「あ、うん。……早いね……」
すでにテンペストは服を脱いで待っていた。
そんなに楽しみにしてたのかと思いつつ、自分もさっさと用意する。
軽く体を洗った後にゆっくりと湯に浸かると、ちょうどいい感じにぬるめでいつまでも入っていられそうな感じだった。
「やばい、すんごい気持ちいい……」
「聞こえてくるのは波の音だけ。静かでいいところです」
「テンペストと入ってるうちに、僕も温泉とかお風呂が好きになっちゃったけど……分かる気がするよ」
それまで僕はあまり気にしたことはなかった。
最低限身体を綺麗に保っていればいいだろ、位の気持ちだったんだけど……テンペストと暮らし始めてちょっと認識が変わったのだ。
身だしなみを整えるっていうのが大事なのが分かるようになってきた。
これは貴族の仲間入りを果たした時に特に感じたけど、見た目の印象はものすごく大事だったのだ。
よく観察していれば確かに、身なりが整っていない人は基本的にルーズな感じの人が多く、信用ができなさそうな感じだったりもした。
要するに……自分はそうでなくとも周りから見ればそういう人たちと同じ扱いとなってしまうわけで……。流石にそれはよろしくない。
そこから僕は流石に気をつけるようになり……身近な女性であるテンペストに色々とアドバイスを貰ったりもしていた。
こうみえてテンペストは羞恥心とかはまだイマイチと言う感じだけども、自分が舐められないようにというところはしっかりしていたりする。
そのへんは多分結構教育されたんだろうなと思う。
何よりも清潔にしてると結構女の人の印象は良くなるんだよね。
種族柄髭とかは生えないけど、放置していれば産毛とかが出てくる程度で普通の人達に比べたら全然手入れは楽な方だ。
それでめんどくさがっていたら怒られてしまいそうだし。
それに……テンペストと2人で抱き合ったりするようになってからは、特に体臭とかにも気をつけるようになったし……。
特にここ最近は余計に気を使っている。
なにせテンペストとついに結ばれたのだ。結婚もだけど、身体的な意味で。
僕を喜ばせたいと言うことで色々と勉強してくれたり、一生懸命に尽くしてくれるのが本当に嬉しいんだけど、その分僕もテンペストが汚いと思わないようにって常に清潔にすることを心がけているのだ。
なにせ直で口をつけたり舐めたりとかするからね!
自分がテンペストにしてあげる時は気にならないんだけど。
……あ、まずい。
「ニール、そろそろ海に……あっ。……先に、しますか?」
「い、いや。大丈夫!海いこう!」
静まれ…………よし。
もう大丈夫。
風呂を上がってテンペストはそのまま砂浜へと進んでいく。
って、ちょっと待って。
「え、っちょっ、そのまま行くの!?」
「?ここには私達以外、誰も居ませんよ?それに……そもそも水着など持ってきていないです」
「あ、そっか……水着持ってきてなかったな……え、でも裸で海ってのは」
「いいではないですか。リリアン達も大抵は裸だと言っていましたから。空の下で裸になって泳ぐととても気持ちが良いんだと言っていましたよ」
「いやぁ……あの人の言うことは……」
インキュバスだよ?淫魔だよ?裸が普通みたいな感じの人だよ?
あんまりこだわらないんじゃないかなぁ……。
でも確かに誰もいないし、自分たちだけだったらある意味で風呂の延長みたいな感じで楽しめる?
一歩外に出てみれば、とてつもない開放感だ。
なにせ何も身につけてない。
隠してもいない。
吹き抜ける風と太陽の光が直接肌を焼く。
「……あり、かな?」
何よりも可愛いテンペストを太陽の陽の下で直接見れるっていうのもなかなかだ。
この光景を独り占めできるなら……たまにはいいかもしれない。
海に入ってみれば、適度に冷たい海水がいつもよりも感じられるし、波も殆ど無いから泳ぎやすい。
口に入るとしょっぱいし目に入ると痛いからそこは慣れないけど……。
「ふう……こういうのもなかなか良いものですね」
「そうだねー。正直ちょっとこの開放感は癖になりそう」
「ええ。それに……」
テンペストが近づいてきて抱きつく。
ピッタリと肌が密着した事でお互いの体温が感じられ、テンペストの柔らかさを意識してしまう。
と、テンペストの顔が目の前に来て……柔らかいものが唇に触れる。
「……こういうことをしても、誰にも見られませんよ?」
「テンペスト……。なんか、凄い積極的じゃない?」
「私にあの喜びを教えたのはニールですよ?それに、ずっとニールのことを待たせてしまいましたから」
確かに待ったけど……。
元々もっと待たなきゃならなかったはずなのに、一気に飛ばしてしまったんだから文句なんてあるわけがない。
こうして僕のことを気遣ってくれるのもとても嬉しい。
あの時からテンペストは、結構な頻度で求めてきてくれるのだ。
してあげたくても出来なかった事をすることが出来て嬉しいということもあるらしいけど……一度その気持ちよさを知ってしまったというのが大きいようだ。
まあ……痛くてもうやりたくないとか言われるよりは嬉しいけど。
そこはリリアン達に感謝だな。
あの薬のおかげで僕のものもすんなりと受け入れた上に、気持ちのいいことだと感じてくれたのだ。
「ニールももう準備できているじゃないですか」
「これは……不可抗力というもので」
「当たり前のことです。私でそうなってくれたのなら、嬉しいことじゃないですか?」
「まあ……確かに」
「ニール、来てください」
「あ、ちょっと待って!」
手を引っ張って砂浜の方へと進んでいくと、そのまま腰を下ろして僕のことを引き寄せる。
……ここまで来たらもう、僕だって我慢できるわけないよね。
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……すっごいだるい。
なんかイチャイチャしてたら凄くノッてきちゃって、結構凄いことまでやってしまった感じがする。
身体も砂とか色んなので凄いことになってしまった。
海で綺麗に洗い流してからお風呂で温まり、体を洗う。
「……なんか、凄かったね」
「いつもと違う環境だからでしょうか、とても興奮したのだと思います。ニールもとても激しかったですし」
まあ、正直すんごい興奮した。
ちょっとまたやりたいなとか思ってしまったくらいには。
身体を綺麗に洗った後、ちょっと疲れを癒やして食事をとる。
これも調子に乗ってもう裸のままでやってたけど、いつものことを裸でやるだけでやたらと違った感じがして面白かった。
これはちょっとはまりそうだ。
とりあえず服を着て王都へ戻ると、リリアンの店に行ってマッサージをしてもらうことにした。
おすすめされたコースをそれぞれ体験することにしてテンペストと別れた。
部屋に入ると、僕と同じ……ここだとアンファンっていう種族の子が居た。
男の子だけどちょっと露出の多めの服を着て、なんというか踊り子みたいな感じだ。
「ニール様ですね、お待ちしておりました。今日は全身もみほぐしと垢すり、そして機能強化のコースですね?」
「あ、うん。そう聞いてるけど」
「では服を全部脱いで、この台の上にうつ伏せになって下さい」
「え、全部?」
「はい。全身コースですから……」
まあ、仕方ないか。
なんか今日は妙に裸になる日だなぁとか思いながらも、台に寝そべり、まずは体を洗って垢を落とすという垢すりが始まった。
ちょっとザラザラしたもので体中を擦られていくのは、最初こそ痛みを感じたけど段々気持ちよくなってきた。やった後は本当に肌が綺麗になっていて洗った後の泡を見たら確かに結構取れていてびっくりしたのだった。
意外と洗えてなかったんだな。
次にオイルマッサージということで、もみほぐしながらオイルを身体になじませていく。
これは確かにテンペストがはまるのも分かるかな、と思うような感じだ。
いい香りのするオイルを刷り込みながら、体中をもみほぐされていくと……段々と気持ちよくなってきて眠ってしまった。
次に目が覚めた時には仰向けにされて施術を受けている最中だった。
完全に眠っていたらしい。
が、何か違和感が……?
「んぇ?あ?え、ちょっと何して……んぁっ……!?」
「え?男性機能を高める為のマッサージですよ。そのまま眠っていてもらって構いませんので」
「いや、え、機能強化ってそういう……!」
色んな意味でちょっとヤバイ。
まさか機能強化とか言うのがそっちの意味だったなんて……。
なんかもうされるがままになってるけど、やたら気持ちいいやらにぎにぎと刺激を加えられて生殺し状態になるやらで色々と……。
「こうすることでさらに持続性が……」
説明とか頭に入らないし!
□□□□□□
「ニール?どうしたんですか?」
「……いや、色々と、凄かったよ」
「?……そうですか。私の方もとても良かったです。美肌効果のあるオイルで全身を揉んでもらいました。ニールの方はどんな感じでしたか?」
「いや……うん。機能強化ってのが……」
要するに、夜の機能の方を強化する為のものだった。
より大きくたくましく、長く続けられる様にとかなんとか。
何度か絞られてしまったわけだけど、確かに効果は実感できた気がする。
ああいうのは結構眉唾のものが多いはずなんだけど……そこはリリアンの力なんだろう。
あまり自信がない人とかは良いかもしれない。
僕としては特に気にしていたわけじゃないから別に良かったんだけど……たくさん出るという効果のせいか微妙に股間が熱い。
しばらくすると収まって、次から量が増えますよ!とか言われたけど。
「なるほど……大変でしたね。でも次が楽しみになってきました」
「ああ、そう言ってもらえると嬉しいよ……」
何よりも、男相手にいかされてしまったというその事実のほうが僕的には辛かった。
……でも次を楽しみにしてくれてるから……いいか。
ずっと効果が続くならリリアンには感謝しなければならないかもしれない。
なんだかどっと疲れた気がする。
身体は軽いんだけど精神的に。
明日は話し合いの最終日だ。
どんな結果になるか……多分、いい方向でやってくれると信じているけど、お互いに得をする様な感じで付き合っていければいいと思う。
リリアンの店の効果は吹かしではなく本当に効果があるのだ。