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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第一章 精霊テンペスト編
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第十七話 魔術師ギルドに加入しよう

「えっ!?もう書いたの??」

「昨日大図書館から頂いたペン、あれは素晴らしい物です。あれならいくらでも書き上げることが出来そうです。もう手放せません!」

「随分興奮しているね……んー……ぱっと見た感じ問題なさそうだね。ちょっと預かって誤字とか見てみて問題なければ装丁してもらおう。明日にでも魔術師ギルドに行く?」

「是非。あそこには色々と図書館とは違った物が置いてあると聞いております」


 勢いで本を書き上げた次の日、早速ロジャーに自慢気に書いたものを見せつけた。

 流石に本を書き上げるとまでは予想していなかったため、テンペストの望み通りロジャーは驚いてくれ、その顔を見たテンペストも嬉しそうだった。

 ロジャーが見た後は装丁して見栄えを整えてから魔術師ギルドに持ち込むことが決定した。


「へぇ、テンペストもついに魔術師ギルドに入るんですね」

「おはようございますニール。ニールの時はどうやって入ったんですか?」

「私もコリーもその場で魔法を見せて実力を証明したんだ。本を持ち込むのは初めて見るね」


 テンペストもストーンバレットを見せれば入れるかもしれないが、それはワイバーンの武装にも通じるものであるためロジャーは止めている。

 ワイバーンが完成した後で公開する事になるだろう。

 それに、魔力を一瞬で削られる様な物なので今のテンペストにとっては致命的でもある。

 とは言え弾数を限定することでそこは何とか出来るようになっているので、最初の頃とは大分変わってきてもいるが。


「ついにテンペストも魔法使いとして本格的にデビューだな。さぁ朝のトレーニングを始めるぞ」

「あ、待ってください、着替えてきます」


 当然毎日のトレーニングも欠かさない。

 これでもハーヴィン領で獣を狩って練習していた頃よりはかなり体力は付いている。あの時は連れて行ってもらって弓やストーンバレットを使ってほぼ動かずに狩りをしていたので非常に楽だっただけで、こちらに来て本格的な狩りをした時に自分の体力の無さに愕然としてしまったのだ。

 それでもテンペストはめげずに頑張り、少しずつ体力をつけている。


 コリーも一生懸命なテンペストに応えるように、優しく丁寧に教えているのだが……ニールはそれが羨ましくて仕方ないらしくちらちらと窓から見ているのだった。

 それなら一緒にトレーニングすればいいのにとコリーが誘うも、なかなかやる気が起きないらしい。


「ニールも一緒にどうですか?」

「え?ど、どうしようかな……」

「すっきりしますし、気持ちいいですよ!」

「やります!」

「ニールお前……」


 いくらコリーが誘ってもやる気がなかったニールがテンペストの言葉で一瞬で落ちた。

 そして2人揃って立つことが出来ないほどに疲れ果て、その日は筋肉痛でニールは完全にダウンするはめになった。

 テンペストよりも体力はあるとはいえ、鍛えるための運動はやはり堪えるらしい。

 それでも頑張っているテンペストの手前、弱音を吐くわけにも行かず必死で付いていく姿勢はコリーも感心していた。……動機はこの上なく不純なのが惜しい。


 同じ運動量でも獣人のコリーはやはり元から人族よりも体力がある上に毎日の日課になっているためか、息一つ乱れていない。まあコリーは犬系の獣人なので毎日のように散歩と称して近くを走り回ったりもしているのでそれに比べたらただの準備運動レベルだったりする。


 いつものようにロジャーの指導の元でそれぞれの魔法を特訓し、テンペストはまた新しい魔法を創りだそうとしていた。


『イグニッション、マナ循環モード』


 その場に出現したそれは勢い良くバーナーの炎を吹き上げながらその場に留まり続ける。

 ロジャーはその様子を見て何をしているかを理解し、自分の中の常識が破壊されたのを知る。


「テンペスト、これは……」

「はい、私の保有魔力量は皆に比べても少ないため、持続時間が極度に短いことが難点でした。その為このイグニッションでもあまり長くは使っていれません。……なので、発動とその場に現存する維持だけをこちらの魔力を使って行い、現象自体は周りのマナを利用させて省エネルギー化をはかってみたのです。こうして設置する分には問題なく動作させることが出来るようですが……ストーンバレットのように常に創りだして射出するタイプの物はやはり体内魔力を使わなければならないらしく、動作させることが出来ませんでした」

「いや、さらっと言ってるけど大発見だからねこれ!?」

「そう……なのですか?」


 魔法とは自分の体内に貯めこまれた魔力を使って発現させる物で、通常ならば当然、保有魔力を使うことでそれを維持しなければならない。

 炎をその場に出現させるというものであっても、魔法として扱えるのは自分の中の魔力のみ。そして、その場にとどまらせるにも常に魔力を送り込まなければならない。

 それを自然に存在するマナを強制的に巻き込んで、そこに現象を起こす為の魔力分を肩代わりさせているのだ。

 なので最初に発動させるときの魔力と、現存させるための維持の分だけが必要な魔力となる。

 どんな大きな魔法を使っても、同じことをすれば少ない魔力でも長時間その現象を起こし続けることが可能となる。


「大発見だよ、今までこういうのは出来ないと思われていたんだ。そうか、一部だけを肩代わりさせる事で複雑な操作が必要なくなったのか。でもこれを使うためには先に現象を起こすための……あぁ!そこで創造魔法になるのか。現象を起こすための詠唱の代わりとなる動きをする魔法も重ねてあるのか……本当にテンペスト、君は凄いよ。あぁ、でもこれ発表するわけにも行かないか……これを使えば罠も作れてしまう。それはちょっとまずい……うーん……」


 しかしやり方に寄っては危険なものともなり得るため、これを公開するべきか否かの判断に迷うことになった。

 ロジャーのような者であれば、これを少しアレンジして……広域魔法をセットしておいて誰かがそこを通りかかった瞬間に発動、そして暫くの間維持させるということをやろうと思えば出来てしまう。

 魔法を罠としてセットされた場合、魔力をかなり敏感に感じられるものでもなければその存在には気付くことは出来ない。そうなればつまり……軍隊が出撃した時、通り道にセットしておいて遠隔で発動させると逃げ場がなくなってしまう。


 今までなら魔道具や火薬などを詰め込んだ爆弾を使ってそれが行われてきたものの、更に発見が難しい物になるという危険性をはらんだものをいくら魔術師ギルドとは言え出したくはなかった。


「あぁぁ……大発見なんだけど、これを発表したらテンペストは一躍有名な魔導師にもなれるんだけど……!!」

「私は別に有名になりたいとは思わないのですが……」

「ならばこれは君の中で秘めておいて欲しい。使う時も慎重に。ニール、コリー。君たちも今見たことは見なかった、聞かなかったことに」

「え、ええ。確かにそうですね。テンペストが必要だと感じた時以外には使わないほうがいいと思います」

「ただ……勿体ないな。魔道具とかで解析出来ない様にしちまって結界の維持とかにも使えそうなんだが」

「そうなんだよね……。応用すれば障壁なんかの維持も楽になるし、壊れても即再生する壁なんかも作れそうなんだ。凄く、惜しい技術だよ……」


 役にも立つことは確かなので、これを完全に禁呪扱いするのもロジャーは嫌だった。

 上手く折り合いを付けるようにして何とか世に出してやりたいと考えていた。


 その危険性等を話すと、テンペストは軍事的な物とは如何に自分達の被害を少なく、逆に相手の損害を大きくするかにかかっているのだからそういうものなのでは?と返される。

 そもそもテンペストに積まれている武器はロジャーが考えている魔法などよりも遥かに広域を吹き飛ばすものがあるのだ。


「それに、それが怖いのであれば対抗策を作ればいいのです」

「えっ?あるの?」

「ロジャーが貸してくれた腕輪です。魔法使いの魔力を散らして発動を防ぐ……魔道具に出来るなら当然、魔法として発動できるはずです。……その瞬間自分含めて周りの人も魔法を使えなくなりますが、設置されていた魔法もそれによって消滅します」


 ごく単純で、当たり前の話だった。

 魔力によって作られているものはその魔力を散らされてしまえば発動できない。


「あー……」

「確実に禁呪にされるな、それ……」

「ですねぇ。魔術師ギルド敵に回しますよ」

「しかし永続的な効果は無理です。発動した瞬間、その魔法も一緒に消滅しますので。よって効果はごく一瞬。使い所はかなり限定されますが、相手が何か長い詠唱をしていた場合それをぶつけることでキャンセルさせるという使い方が可能になるでしょう」


 まさに目から鱗という感じだった。

 効果が一瞬であれば危険度は低い。それどころか上手く使うことで有利にもなるし、そこは駆け引きの問題であり、今まで通りのことだ。


「いやー……固定観念って怖いね。それでしか出来ないっていう思い込みのせいで、出来ることも出来なくなっちゃうなんてね。僕もまだまだだなぁ……研究、また始めようかな?」

「そもそも考えたことはあっても、実現出来なかったと思いますけどね。自然界のマナを使って魔道具を動かそうという試み自体はありましたが、確かあれも思ったほどの効果が出なかったために結局廃れていったはずですから」

「まあ、それが今の強制的に魔力としてマナを取り込むっていう事でタイタンワードに指定されて使えるようになったんだけどな。まさか魔法の中に更に魔法を組み込むなんて誰も考えなかっただろうな。それぞれが独立していてそれを一つの魔法として扱う……テンペストすげぇな!」


 すでに魔法の歴史の1頁すら刻めるレベルの発見をした挙句にその対策まで出してしまった。

 当のテンペスト本人からすれば、地雷を設置されたらそれを撤去する技術が出るのは当たり前程度にしか思っていない。


 しかしやはり内容が内容なだけにすぐには発表など出来るわけもないため、時期が来たら……ということで落ち着くことになる。

 ロジャー含め真似ができなかったということも大きい。


 □□□□□□


『我が前に立ちはだかる敵を……』

『ジャミング、範囲10』


「うぇぇっ!?へぶっ!!」

「勝った」

「……強すぎんだろそれ……」


 出来たばかりの魔力撹乱魔法の試験運用をやってみた。

 ニールが弱めの魔法を使って空気の塊を撃ちこもうとする間に使えるかどうかを試していたが、早口で紡がれるテンペストの詠唱はやたらと早く、範囲の指定まで出来るという優れものであることが分かった。


 詠唱が完了した瞬間、テンペストを中心に半径10m程が一時的にマナと魔力が掻き乱され、同時に魔力を練り上げていたニールの魔法も、テンペストが放った撹乱魔法も消え失せ、それに気を取られたニールがストーンバレットの弱体化版を頭に受けて終了した。

 サンドバレット、当たった瞬間に砕け散るため衝撃だけが残る非殺傷魔法である。


 そしてテンペストのドヤ顔が炸裂する。


「いてて……これ、本当に驚異的ですね……」

「ちなみに散らされた時どんな感じなんだ?」

「えーっと……魔法を放つ時集中して魔力が集まるのを感じますよね?それが突然消えちゃうんです。初めていきなりこれをやられたら絶対びっくりしますよ」

「その後すぐに詠唱しても問題なく魔法は発動しました。なので効果自体も一瞬で終わってしまうということです。予想としては数秒ほどは使えなくなっていると思っていたのですが」


 3人がこうして色々試している間に、ロジャーは自分の作っていた魔導エンジンの改良にとりかかっていた。テンペストが証明した方法を使って、常に魔力を流さなくても周りのマナを使い大出力を出し続ける機関の作成だ。更に魔力消費が減り、代わりに出力は維持できる上に調整も容易になる予定となっている。


「ふう、じゃぁ今度はこっちの方だね。この魔道具はただ火を灯すだけだけど、外部の魔力を必要としないで魔晶石に貯めこまれたマナで動く。じゃあ動かすよ」


 見た感じはただのランプだ。

 小さな炎がちろちろと揺れている。

 それにテンペストがジャミング……撹乱魔法をぶつけるが、特に何も起きずそのまま火は灯り続ける。


「……こっちは普通に動くみたいですね。ってことは魔道具には撹乱魔法は効果なしと……」

「人……生物が作り出す魔力の流れや、外部のマナの流れだけを阻害するということでしょう。その物が魔力の結晶である魔晶石はただ貯めこんだ魔力を解き放つだけで、少し別なものなのかもしれません」

「一応、それもある意味発見だろうけどな。同じものだって思われてたはずだからなぁ。なんなんだ、今日だけでどれだけの発見が……!しかも発表できねぇぇぇ!」


 コリーが吠える。実際今ここで検証したものをまとめて発表すればテンペストは色んな所からスカウトが来ること間違い無しだ。

 しかし、その立場は非常に面倒な所だ。ここにいるのもロジャーの庇護の元、魔法の技術を向上させるため、そして情報が漏れないようにするため。だから今はやたら写本の得意な期待の新人という位置づけだ。正直それでも相当危うい。


 ここでこんなものを発表したら素性を調べようとする輩が一気に増えてしまう。

 そうでなくともワイバーンを見てしまった者たちが必死でその情報を集めているくらいなのだから。


 コリーやニール達でもテンペストのことはよく知らない。精霊であることやワイバーンを駆る者であることは伏せられているのだ。

 しかし、その優秀さの反面、何故か抜けているところも多い愛らしい妹分は2人共守らなければならない対象として認識している為、何か情報を得ようと声をかけた所で絶対に情報を渡さないだろうとロジャーは判断した。

 そしてそれは事実正しい。特にニールは。


 □□□□□□


「精査した結果、確かにこの理論通りに再現できました。テンペスト様の当ギルドへの加入を認めます。身分証の提示をお願いします」


 装丁が終わりその本を持って魔術師ギルドへと行き、予定通り加入に成功した。

 流石にロジャーと一緒だったので、師匠であるロジャーの論文を使って不正に入ろうとしたと思われたのか、別室で内容について細かく突っ込まれたりなどもしたが、当然ながら自分の書いたものなので完璧に返答し、更には目の前で使ってみせたこともあって事実確認は終了したのだった。


「ありがとうございます。……それでは別室の方へとご案内いたします、付いて来て下さい」

「なんで別室……?」

「えーと……」

「テンペスト、ここじゃちょっと話せないってことだよ」


 当然、先ほどの本に関しての話だ。

 役立てれるようにということでギルドへ売るわけなのでその値段交渉ということになる。

 本を売るというよりも技術を売るということになるので、その金額はかなりの高額になるのは間違いない。となれば、人が居る所でそれを話したりすると色々と問題が起きる場合がある。

 一番多いのは「なんであいつのは高くて俺のは安いんだ!」というもの。

 内容の有用さなどでかなり値段は上下するのだが、やはり納得行かない場合も多いようだ。


「早速ですがこの技術の値段交渉に入りたいと思います。とりあえず、こちらで協議した結果の金額は……こちらです」

「ん、まあ妥当かな?受けていいと思うよ、テンペスト」

「流石にロジャー様が居る所でごまかしは出来ませんよ……。それに、この王都の光源を新しいものに変えた時の魔力消費を考えると、魔晶石の消費がかなり減ります」


 冷や汗をかきながら係の人がロジャーに答える。魔術師ギルドでもロジャーは特別な存在だ。下手に嘘をつけば当然何かしらの圧力はかかってくるのだ。


「……あの、これで本当に妥当、なのですか?」

「す、少なかったでしょうか?」

「いえ、逆ですが。3千万とは……」

「あれにはそれだけの価値があると判断したのです。これから節約できる魔晶石とそれにかかる金額、戦略的な価値などを考えれば当然といえます」


 実際、王国で消費される魔晶石とそれを購入するための金額、魔力を補充するための金額などを考えればかなり安い。

 本の値段としてはかなり高いほうだが、価値のある魔道書というのはそれだけの利益をもたらすものだ。あるものは戦略を変え、あるものはテンペストのように技術を変える。


 結局のところ魔術師ギルドへ入る方法としては、このように技術を伝えることで入るということはそれだけ難しいということになる。

 普通に実力を示したほうが早い位だ。

 ただし、ロジャーの弟子ということであれば特に珍しいわけではない。ロジャーのもとには優秀な者たちだけが集う。それであれば悪目立ちすることも無いだろう。


 ちなみにニールも一つ魔導書を売っている。ニールらしく広域魔法の物だ。

 こちらも対軍勢用の攻撃手段として高く評価され、同じくらいに高額で売れている。ニールの本は王国の軍にいる高位の魔法使いに伝えられ、国の防衛に貢献しているのだ。

 地の利があるハイランド王国で、敵の上を取れる状況においてニールの広域魔法は驚異的で、人数が揃うと一帯を焼き払うだけの力を持つ。


 何気に結構な金持ちだ。


 そして、この瞬間テンペストが稼ごうとしていた分のお金が一瞬で溜まったのだった。


 次に、無事魔術師ギルドへと加入出来たということで、早速大図書館でも置いていない専門書を読みに書庫へと入る。

 全ての本に魔法が付与されており、一定距離を離れるとギルドの職員がすっ飛んでくる様になっているそうだ。

 集められている本はギルドに売った魔法技術書などの他にも、コレクターが欲しがりそうな珍しい内容の本まで様々だが、数自体はさほど多くはない。その代わり内容がものすごく濃いものだったり、専門的なものだったりしているのだ。


 まさにテンペストにとっては宝の山のようなもので、ロジャーから借りたマナ散らしの腕輪をつけながら記憶していく。

 流石に内容自体は理解しても、それを使えるかどうかというのはまた別問題で、魔力量が少なすぎたり制御が難しいのでまだテンペストには扱えないものが殆どだった。それでも、色々なヒント自体は得られる。


「予定より早く私の作りたいものが実現しそうです!」

「嬉しそうだね。お金は足りる?」

「多分大丈夫だと思います。今回もらった分だけでほぼ十分ではないかと」

「ちなみに……何を作るつもりなのかな?」

「武器です。私の詠唱はそれなりに早いらしいですが、やはり実戦では出来なかったのです……。だから私の世界にある武器で比較的簡単に作れるものを作ろうとしています」


 唯一の武器は弓。しかしストーンバレットしか通用しないような敵に弓は全く役に立たない。

 もっと強い弓もあるらしいけど……それは自分の筋力では引くことすら出来ない。自分の鍛えても細いままの腕を見てぐぬぬといった顔をしている。


 であれば作ればいい。武器を。

 簡単に持ち運べて強力な物を!


「完成すればきっと……。うん、がんばろう」

「まあ……もし必要なら親方連れてくるよ?金属の加工ならあの人が王都で一番だから」

「そういえばその親方という人はなんという名前なのですか?」

「言ってなかったっけか。ゲルト・シュミット。鍛冶屋でハンターのおじいちゃんだよ」


 ゲルトはこの王都で一番と呼ばれる鍛冶の腕を持つ。

 加工の難しいオリハルコンやアダマンタイトなどを精密に加工することが出来る腕を持っていて、金属加工の魔法の使い手。

 彼の工房にはすでに炉は無く、全てを魔法を使って行っているという。

 精錬から完成までを材料があればどこでも出来るため、移動工房などと呼ばれていた。


「それは……寸法なども完璧に仕上げられるということですか……?様々な金属をまとめて加工もできる……?」

「やろうと思えば多分出来るよ親方なら。鉄と金、そしてミスリルを使った剣をその場で創りだしたことがあるから、複数の金属が混じっていても問題ないはず」

「なる……ほど……。自分でやるよりもいいのかもしれませんね。依頼料などはどれくらいかかるのでしょうか」

「そりゃぁ……交渉次第だけど、テンペストだから格安でやってくれるでしょ。材料とかは用意するんでしょ?」

「はい。……しかしハンターとして魔物の素材も確保したい所ですので、すぐには作れませんね。先に加工できるところだけでも作ってもらえればと思います」


 どのみち強くならねばならない。

 武器を作っても、地力がなければ結局は体力が切れて逃げきれない。

 魔法は覚えた。魔力の使い方も覚えた。後は行使できるようになるだけ。

 この世界独特のワードを使って魔法使いとして魔物を狩れるように。

 山を駆けまわり、エイダやサイモンに付いて行く為に。


「ロジャー、ハンターとして活躍できるように……強くなるにはどうしたら良いでしょう?」

「んー……今はとにかく体力がないからね、そこをなんとかしなきゃ。コリーに鍛えてもらってるみたいだけど……そうだね、魔法使いとして自分の身体を強化するタイタンワードで体力も強化するのが近道かな。ただこれ、普通の身体強化と違って魔力を纏って操るのに近いんだ」

「……魔力を纏う……ですか」


 身体強化は筋力を底上げするもの。でもこれは筋力はそのままに、魔力を鎧のように纏うイメージでそれを自由自在に動かす事で足りない筋力と体力を補うというものだ。


「パワードスーツ……みたいな物ですか。似たようなものを知っているので使えるかもしれません!」

「どういうのかは知らないけど、実物を知っているのならイメージはしやすいよね。とりあえずヒントはそんな所。これを使って縦横無尽に駆けまわった魔法使いも居るんだよ!魔法使いなのに接近戦が得意でねー、基本的に魔法は全部自分と武器に使ってたみたい」


 対応策があるのであれば……。やってみるしか無い。

 出来たら魔力も節約できたら尚いい。


「やってみます。じゃないとエイダやサイモンと一緒に歩けないと思いますから」


7月が息してない!

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