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第百七十一話 代償 

『……!ハーヴィン卿!!』


 一瞬、まばゆい光に目がくらんだ直後、ハイランドのコットスがサイモンと腕を振り下ろす飛竜型魔鎧兵の間に身体を滑り込ませる。

 コットスの背中に飛竜型の腕が当たり、逸れた腕は甲板を叩きつけた。


 甲板に穴が空くのではないかと思うような攻撃だったのだが、実際にはそうはならず……飛竜型の腕が転がった。

 それを見て逆に驚いたのはコットスの魔導騎士だった。


 機体の下で前のめりに倒れているサイモンをかばいつつ、後ろを振り返ると……飛竜型が自分に向かって伸し掛かるように倒れてくるところだった。

 先程よりも強く重い衝撃を受けたが、なんとかサイモンのことを手に載せ、ゆっくりと飛竜型の下から這い出てくる。


『……なっ……』


 サイモンのことを怪我をさせないように下ろした先に居た人々が驚愕の目でこちらを見ていた。

 いや、目の焦点は自分ではない。その後ろ側であると気づいた彼は振り向く。

 そこには、右の脇腹から左の肩口に掛けてを逆袈裟に切り裂かれ、上半身と下半身が完全に切り落とされた飛竜型の姿があった。


「う……」

「ハーヴィン候!ご無事で……」


 サイモンが目を覚ます。

 口々に周りで気遣いの言葉が掛けられているようだが、そんな事はどうでも良かった。

 右手に持っていた先祖代々から伝わる宝剣は粉々に砕け散り、持ち手を残すだけとなっている。

 ……代償は大きかったが……結果はサイモンの目線の先にある。


 自分の持っている全魔力も投入して振り抜いた宝剣の一撃は、炎竜の時よりも遥かに強い光を発し、あの強固な鱗をも物ともせず全てを切断してみせた。

 実のところ射程が短いためにどこまで接近できるかが気がかりだったわけだが、思いの外ディノスが挑発に乗りやすくて助かった。

 ただ、振り抜いた直後はもう自分も立ち続けてはいられないだろうと思っていたので、死ぬことも覚悟はしていたのだが……これは魔導騎士のお陰で回避できたらしい。


 生きてその結果を見ることが出来て何よりだ。


 震える足を無理矢理に押さえつけながら、両断された飛竜型へ近づく。

 立っていた下半身も力を失い倒れ込み、中からこれまた半分になったディノスが大量の血と共に流れ出てきた。


 腰から下を切断した形となったディノスの顔は蒼白で、内臓は全てこぼれ落ちているような状態ながらも未だに生きていた。


「あ、……あ……うぅ……」

「まだ生きているのか」


 焦点の合わない目でこちらを見ている。

 仮に助けようとした所で内蔵を全て失ったディノスに生き残る道はない。

 頭をあげ、ぺたぺたと自分の腹を触り、そこから下が無いことを悟ったのだろう。その表情が絶望に染まった。


「たす……けて……」

「無理だな。もう、お前は終わりだ」

「俺の……からだが……足が……なにも………………」


 あれだけの事をしてきた奴の口からこの様な言葉が出るとは思っていなかったが、結局は過大な力を持ってしまっただけの人間だったのだろう。

 特に覚悟もなく、その力で全てを収めようとし、自分が傷つくことだけは避ける。

 他人は徹底的に痛めつけることは厭わない。


 だが、正しく使えばこういうことにはならなかっただろう。

 ホーマ帝国で英雄と言われていたときのように、人のために使っていたならばまだ。


 息も出来なくなってきたのか苦しそうにして、手が震えている。

 やがて全ての力が抜けてディノスは息絶えた。


「ようやく終わったか……お告げが来ないわけだ……まさかあの状態でまだ生きていたとは」

「ハーヴィン候。後は我々が……」

「ああ、頼んだ。甲板はなるべく綺麗にしておけ。……死んだ兵達はなるべく回収してやりたいが……」


 難しいだろう。

 甲板で潰されたりした者たちはまだいい。

 しかし海中に落ちてしまった者たちは無理だ。

 海中を動ける水虎隊も全てあの飛竜型によって潰されてしまった。


 後ろを振り返ると、エイダが格納庫から顔を覗かせていた。

 こちらへ来たくてもその惨状に尻込みをしているのだろう。

 近くに居た兵に肩を借りて戻ろうとしたその時、ディノスの胸のあたりで何かが弾けた。


「何だ?」

「……石です!これは……双子石……?」

「双子石だと?ではディノスが誰かに自分の死を伝えるように持っていたということか?」


 双子石は必ず2つが固まって見つかる特殊な物だ。

 片方で何かがあれば、もう片方で全く同じ現象が起きる不思議な石で、連絡のやり取りとして使われていた事が有る。

 今は出土自体が少なくなり、石を傷つけたり砕かなければならない為あまり使われなくなったものだ。


「分かりません。ただ、誰にせよ……これで異変は終わったのですよね?」

「そのはずだが」


 しかし、何か嫌な感じがした。

 ディノスの後を継ぐ者が居るのか……?


 格納庫まで行くとエイダがサイモンに抱きついてくる。

 一人であの前に立ち、倒す瞬間を艦橋から見ていたそうだ。


「サイモン様!良かった!!」


 口調がいつも以上に砕けている。

 いつも少し取り繕うような感じの喋り方だったのだが、今は完全に素が出ているようだ。

 しばらく離れなかったが、サイモンの服で涙を拭ってから深呼吸をして改めて無事を喜んでくれた。


「本当に心配しました……死ぬ気なんじゃないかと……!あなたはテンピーの養父なのですよ?あの子が幸せになるまで生きなきゃ駄目です」

「ああ、確かにそうだな。……少々辛いかもしれないが、この戦いで死んでいった彼らの魂を送ってやってくれないだろうか」

「分かりました」


 あまり凄惨な現場を見ないようにしながらではあるが、エイダが死者を送る儀式を始める。

 ぽつぽつと光り輝くものが辺りから立ち上り、そしてゆっくりと消えていった。

 これでアンデッドになること無くマナへと還ってゆくことが出来ただろう。


「さて。テンペスト達にこれを報告してやろう。戦いは終わった」

「……ええ……ですけど……」

「どうした?まだ何かあるのか?」

「いえ、まだ……お告げが来ないのです」

「……やはり、ディノスを倒しただけでは駄目だったのか?ということは爆弾はすでに完成しているか、テンペストに伝えておこう」


 □□□□□□


 テンペスト達は突然奥から大量に現れた黒い魔物達の対処をしていた。


「さっきの魔力の爆発みたいなのはこいつらのせいなのかな?」

「分かりません。しかし……なんとかしなければ奥へ行けないです」


 サーヴァントも巨大なトロルを相手に奮闘しているが、流石に数が多い。

 ハンターや兵士も小さな魔物相手に無双しているものの数に押され気味になっている。

 生身の人が外に出ているためレールカノンは使えず、洞窟内ということでニールの得意な炎は封印だ。


「ああもう!あまり得意じゃないけど……!」


 周りの岩を利用して棘を大量に生やす。

 大きめの魔物は身動きが取れなくなり、その隙にサーヴァントに討ち取られていった。


「また来たよ!」

「ちょっと待ってください。今サイモンから連絡が……」


 そこにサイモンからディノスを討ち取った事を告げる連絡が入った。

 更に双子石と呼ばれるもので誰かに自分の死を連絡していたということも。

 討ち取られた時間は少し前、大体マナが急激に動き出したときと同じくらいだった。


「全員に通達。ディノスはサイモンによって討ち取られました。確実に死亡を確認したということです」

『ほう!いい知らせだ!ではこれで異変は……』

「いえ。アディ……エイダの話しによればまだ大精霊による宣言はされていません。また、ディノスが死亡の際、双子石とよばれるもので誰かに自分の死を伝えたということでした」

「双子石?また古い手段を使ったね……でも何のために?」

『……ディノスに私がとどめを刺せなかったのは残念ですが……。双子石の片割れを持つものは人ではありません』


 サイラスの声に緊張がある。

 焦りを感じている。


「はい。ディノスが討ち取られた時、大体同じ時間にマナの動きを感じました。そして……懸念の一つにディノスが死亡した際に世界を道連れにする可能性がある、と話をしましたが……」

「まさか……」

『そのまさか、でしょう。恐らく発動しています。このマナの動きはその為で……吸い終わった後この世界は消えます』


 すでに5分は経過している。

 最短時間は過ぎたが、この後いつ爆発してもおかしくないだろう。

 マナの動きはここからさらに奥。まだまだ先は長いが……未だひしめいている魔物達が邪魔だ。


「ニール。このままでは消滅を免れません」

「ど、どうしよう!?なんとか突破する??」

「いくら魔導車であっても、この魔物の量では囲まれて破壊される可能性が非常に高いです」


 時間的な猶予がどれほどあるかもわからない。

 テンペストはこの世界に来る前の事を思い出す。

 コンラッドと共に空を駆け、結局間に合わずに飲み込まれた瞬間。


 この世界に来てテンペストにはとても大事なものがたくさんできた。

 特に大事なのは今目の前でおろおろしているニールだ。

 色々な事を彼から学び、ついには愛情という感情まで手に入れるに至ったのだ。

 ニーナやメイ、ウル、ギアズ達だってそうだ。

 今ここに居ないコリーやサイモン、そして初めての友達であるエイダ。


 皆大切なものでかけがえのない存在だった。


 だから……。


 洞窟内に突然マギア・ワイバーンが出現する。

 レビテーションで浮かび上がり、同時に魔導エンジンに火が入り甲高い音が洞窟中に響き渡る。


「え?……テンペスト?」

「心配してくれてありがとうございます。しかし……今はこれが最善であると考えます」

「一人で行くの!?コリーは……」

「……コリーはこちらに来ることが出来ません。しかし、一人奥に居るのを忘れていませんか?」

「……コンラッド!」


 コンラッドは奥にいる事は確定していた。

 しかも、こちらへと向かっているような反応が僅かにある。

 それであれば向かう途中でピックアップし、操縦の方を任せてしまえばいい。


「では、行ってきます。ニール、私の身体を頼みますね」

「……絶対戻ってきてよ?爆弾なんて壊しちゃって!」

「もちろんです」


 ニールにテンペストが抱きついてそのまま力が抜けていく。

 今はテンペストとこのマギア・ワイバーンに賭けるしか無い。


『全員退避を。洞窟から出て魔物達が外へ出るのを防いで下さい』

『了解。後退するよ、全員乗り込んで下さい。私が援護します』

『……暫くの間は動かせるので、ホワイトフェザーを置いていきます』


 ホワイトフェザーが新たに出現し、50mmと25mmの弾丸を叩き込み始める。

 遠隔で操作している為あまり細かいことは出来ないが、後退しながら援護することくらいならばテンペストには可能だ。


 全員が車内に入ったのを確認し、エンジンを吹かす。

 高温の排気が近くに居た魔物を焼き、マギア・ワイバーンは加速する。

 広い洞窟のお陰で引っかかること無くすすめるのが幸いだった。


 下にはひしめき合う魔物達の姿があり、背の高いトロルは混紡を振り上げワイバーンを落とそうと躍起になっている。

 もう一つの視点では後から後から溢れ出す魔物達を引きつけながら、ホワイトフェザーとサーヴァントが敵を吹き飛ばしていた。


 思うように速度を出せず、なんとか進むが時間だけが過ぎていく。

 いつ発動するかなど分からない状況では一秒が惜しい。


 その時、気配が近づきようやくコンラッドを見つけることが出来た。

 向こうも手を振って居たが回りにいる魔物が邪魔なのでブラストによって吹き飛ばす。

 コクピットを下げ、コンラッドの近くまで降りていった。


『乗って下さい。爆弾が発動しました』

「なに!?」


 すぐにコクピットを格納して進む。


「……よし、準備は出来たぞ。場所は分かるのか?」

『現在もどんどんマナの流れが早くなっています。その終着点と思われる場所はここから更に奥です。コントロールを渡します』

「なら多分だが心当たりがある。安心しろ、洞窟の中はずっとこんな感じだ。……さて、飛ばすぞ」


 スロットルを開けて更に加速する。

 移動中にこの奥にあったものをコンラッドは説明した。

 異世界の様な場所につながっていること、そこに人工的な建物があること、そしてそこを黒くて大きな飛竜が守っていること。

 黒い飛竜はあの時の黒いブレスのものとは別のものだろうと思われ、大きさもこちらに居るほうが遥かに大きい。


『……別な世界に繋がる場所は、私にも覚えがあります』

「そっちは人がいていいところだったんだってな?俺が見たのは地獄みてぇなとこだ。全然違う。今思えば黒い魔物は全部悪魔って言えばしっくり来る感じだぜ……」

『その黒い飛竜が魔物を生み出しているというのであれば、洞窟を塞いでしまったほうが良さそうですね』

「あー、今回も間に合わないとかは勘弁してほしいが、最悪の場合を考えたらそうだな。下を見る限りひでぇ状況だ」


 魔物の数はまだ増え続けている。

 ブラストを使ってある程度は薙ぎ払っているもののキリがない。


「よし、ここを曲がれば……っんなぁ!?」

『……あれがそうなのですか?先程まで気配すら感じられませんでしたが……』

「ああ、そうだぜ……」


 洞窟の奥、コンラッドが見た異世界との境目に向かって、巨大な黒い飛竜が歩いてきていた。

 まるでディノスが操っていた飛竜型の魔鎧兵を大きく黒くしたような姿で、その威圧感は今までの比ではなかった。


『……ここを崩落させます。あれをこちら側に出してはいけません』

「ああ、同感だ。ここは通さない。……だが爆弾はあいつの奥のほうなのか?」

『はい。このまま突っ込んで爆弾を目指しつつ、あの飛竜の気を引きます。現在地をマーク』


 あれは向こう側に閉じ込めなければならない。

 こちら側に出してはならない。

 ディノスに力を貸していた存在は、ディノスなどよりももっと上の存在だ。

 あれだけの技術力を短期間で成し遂げた裏にはこれの協力があったからに違いない。

 ……そして、その技術は恐らくこの飛竜が受け継いでいる。


「こちらマギア・ワイバーン。バハムート、コンラッドだ。拾ってもらって生きているが……今テンペストが指定した場所を攻撃しろ。博士の最強の武器がそれに積んであるだろ?真上から叩き込んでここを崩落させてくれ。俺達はマギア・ワイバーンを犠牲にして戻るつもりだ。できるだけ早く頼む」


 横でコリーが色々文句を言っていたが、とりあえずスルーした。

 洞窟の奥で黒い飛竜が立ち止まる。


「テンペスト、爆弾何処にある?」

『敵の後方約300m程の位置です。そこに魔力の流れる中心があります』

「魔力の流れを消せば止めることが可能か?」

『……可能です。しかしその場合コンラッドは……』


 コンラッドは仮初めの肉体に魂を移した状態でほぼアンデッドと同じだ。

 アンデッドに対して効果的なジャミングは範囲を指定することも出来ないし、今回の場合は最大出力でやらなければ成功するかわからない。

 当然直近でそれを受けるコンラッドは今度こそ確実に死ぬ。


「元から死人だ。ちょっとばかしエクストラステージを生きてる感じだぞ?すでに俺の願いも叶ってるしな……まさかこうやってお前と一緒に楽しく会話ができるとは思ってなかったし、そして何よりも今度こそ世界を救えるって思ったらそれと引き替えにするくらいなんでもねぇよ。お前は全力でジャミングをぶっ放す事に集中してくれ。……あいつも魔力の塊だ、もしかしたら一緒に倒せる可能性もある」

『……分かりました。5秒で発動可能です』

「よし。行くぞ!」


 手持ちのランスを発射し、マギア・ワイバーンは加速する。

 あっという間に巨大な飛竜は炎に包まれ、その股の下をくぐり抜けて魔力の渦の中心に向かって進んでゆく。

 少しでもこの巨大な飛竜の気を引くためにやったことだが、上手く行ったようだ。

 後ろは見ていないが、とてつもないプレッシャーが後ろから襲いかかる。


 ぞろぞろと黒い魔物達が周りから洞窟へ向かって歩いて行くのが見えるが、とりあえずそれは全て無視して例の建物を目指す。

 そして、建物すれすれで上空へと到達した。


「やれ!テンペスト!」

『ジャミング発動』


 フルパワーで発動したジャミングはマギア・ワイバーンを中心として、周りのマナを吹き飛ばすほどの威力を見せた。

 マナを見ることが出来るものが遠くから見ていたら、その部分からかなりの広範囲に掛けてマナが消え、魔力を使って身体を維持する魔物達が次々と倒れてゆくのが視えただろう。

 酸素を必要とする生き物が、いきなり酸素の無い状態に置かれたのと同じようなものだ。


 マナを回収し、間もなくその機能を発揮しようとしていた爆弾も、魔道具としての回路内の魔力を消され強制的に発動前の状態に戻される。

 目論見は成功し、爆弾の無効化に成功したが……その代償として魔力によってこの世に繋ぎ止められていたコンラッドは発動と共に意識を失い、もう二度と戻ってくることは叶わなくなった。


 操縦するものも、制御するものも失ったマギア・ワイバーンは機能を停止し、速度はそのままに高度を落として灰色の大地に落ちた。


 □□□□□□


 テンペストが突入する少し前、ニール達は次から次へと増えてゆく魔物達を相手に奮闘しながら撤退していた。

 すでに出口まであと少しというところだがそこからなかなか撤退できずに居る。

 そこにバハムートから通信が入った。


『こちらバハムート。テンペスト、サイラス、聞こえるか?』

『聞こえていますよ!ただあまり余計なことを考えている暇がない!手短に頼みます!』

『了解した。コンラッドとテンペストの要請により洞窟を埋める。大至急脱出を』

「埋める!?埋めるってどういう事!?テンペスト達はどうするの!!」

『コンラッドは倉庫へ送ることが出来るし、テンペストはマギア・ワイバーンを捨てて戻ってこれると言っている。それよりも洞窟の奥でとんでもないものが居たらしく、それをこちらに出さないためにそう決めたようだ』


 そうして送られてきた映像には、ディノスの乗っていた物よりも遥かに大きく、凶悪そうな姿をした飛竜が映る。

 最後にテンペストが残した物だった。

 その足元には黒い魔物達が大量にひしめき合い、洞窟ごと潰さない限りは次から次へとそれらも出てくることは容易に想像がつく。


『く……仕方ありません……。こちらも残弾がもう残り僅かです。全力で逃げて……テンペスト?』


 先程まで迫りくる敵をなぎ倒していたホワイトフェザーの動きが止まる。


『テンペストです。全員撤退を。ホワイトフェザーの残存魔力を使って壁を作ります。この数に対しては数分しか持ちこたえられませんがその間に洞窟内から脱出して下さい。出口を固めてできるだけ遠くへ離れておくことを推奨します』


 ホワイトフェザーからテンペストが警告を発する。


「テンペスト!本当に大丈夫なんだよね!?」

『問題ありません。……心配をかけてすみません、ニール。私は必ず帰ります、待っていて下さい』


 そう言ってホワイトフェザーと、他の皆との間に土魔法による壁を作りホワイトフェザーは沈黙する。

 破壊される機体の音と、壁を登ろうとする魔物の声を背中にニール達は脱出を急いだ。


 そして……洞窟を出て穴を塞ぎ、地上へと上がってきたニール達が見たのは……森の上空に浮かぶ巨大な影。バハムートの飛行形態だった。

今度こそさようならコンラッド

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