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第百六十九話 捜索

「本当によくやった、コリー。機体は点検させているが、テンペストは特に問題ないはずだと言っている。すぐにでも出られるだろうが……心配なのはお前の身体だ」

「いやもう、今日は本気で疲れた……こんなに飛び回ってたことなんて無かったぜ実際。ああ、それとテンペストがディノスが沈んだ場所をマークしている」

「ああ、ルーベルの水虎隊をすでに向かわせているところだ。彼らが回収してくれるだろう、実際死んだか確かめないことには安心できん」


バハムートに戻るとサイモンが出迎えてくれた。

申し送りを終えた後テンペストは一度ニール達の方へと戻り、攻略状況を見に行ってしまったが。


正直なところ今すぐにでも休みたい位だが、そうも言っていられない。

こちらは片付いたが、まだまだ陸上の方は終わっていないのだ。点検と補給が終わり次第、またすぐにでも出なければならないだろう。


また鎧を着た竜型魔鎧兵に関しては、コリーとの会話からディノス本人であろうと結論付けられた。

その為回収した上できちんと本人確認と生死確認をしたいということで、ルーベルの船で水虎と呼ばれている水陸両用の魔導騎兵が向かっているところだ。


サイモンの言う通りにきちんと死んだか確認しないと不安だ。


しかし空中戦をしている間に逃げた艦隊は、同じ時間をかけなければ元の位置まで戻ることは出来ない。

急ぎでとは言え到着までしばらく掛かることだろう。

水面下の海流などがあまり無いところであることを祈るしか無い。


確実にとどめを刺したくても、麻痺が解けたのは沈んだ後だった上、兵装そのものが水中を想定したものではない。

魚雷の一発でも積んでいれば話は変わっていただろうが……。


「本当ならば休ませたいところなんだがな。軽くでいい、飯も食っていけ。あれは乗っているだけで消耗するんだろう?」

「実際足が震えてるよ。旋回する度に自分の体重の数倍の力が加わる。腕をあげるのも一苦労だ。そんな中で周りの状況見ながら繊細な操縦してるからなぁ。飯は……そうだな、食っていくか」


あまり食いすぎると後で酷いことになるのは分かっているので少しだけだが。

汗もたっぷりかいているので水も飲まなければならない。


しかし……しっかりと身体を綺麗にしてエイダに癒してもらったあと、飯を食う前についに体力の限界が来てしまったのだった。


□□□□□□


テンペストが目を覚ますと、激しい砲撃音が響いていた。

すでに洞窟手前まで到着していたようだが、そこで囲まれてしまい必死で応戦している真っ最中だ。


「現在の状況は?」

「テンペスト!?びっくりした……。えーっと、まあ見ての通りなんだけどね……囲まれてるんだ。黒い翼竜とか飛竜が居ないだけ良いけど……もうなりふり構わない攻撃手段でほんとうにもうおかしくなりそう」


黒い人型の魔物だ。

戦っているうちにどんどん学習し、今では遮蔽物の陰に隠れながら少しでも隙を見せようものなら爆弾を抱えて突っ込んでくるのだ。

魔法を放ってくる者も居るが、元から魔力量が少ないのか大した攻撃手段を持っていない。

しかし無視するとジリジリと削られる程度には効果があるので無視もできないのだった。


ニールは魔力が少なくなりそうになっているので魔法を控えているが、弾の方もそろそろきつい状況だ。

ただでさえばら撒くために大量に消費されるガトリング砲の弾は、持ってきている在庫分がそろそろ尽きる。

洞窟に入る前ですでにこの状況で、精神的にもニール達は疲れていた。


「それで……テンペストはどうだったの?あの飛竜型は……って、テンペスト!?」


突然抱きついてきたテンペストに動揺するニール。


「え、ど、どうしたの?なんかあったの?」

「飛竜型の魔鎧兵は撃墜しました。中に乗っていたのは恐らくディノス本人であると思われます。現在撃墜地点を捜索してもらっています。……もう少しこうしていても良いでしょうか?」

「いいけど……。ってあれディノスだったの!?撃墜ってことは……とりあえず異変は去った……?」

「いえ。アディにお告げが来ていません。なのでまだ終わりではないのです。だからなおさら捜索と死亡確認が必要なのです。しかし、とりあえず今すぐに起爆という事態は去ったと思っても良いかと思います」

「そうなんだ。……テンペスト、本当になんかあった?」

「……とても気持ち悪くて、少し怒りを感じていました」


要するにディノスの俺の性奴隷になれ宣言だ。

流石のテンペストもその発言には少なからず嫌悪感を抱いていた。

まあ、マギア・ワイバーンが落とされたところでテンペストはそこに居ないのだが、それであってもあの考え方をしている男に自分が好き勝手にされている事を考えると寒気がする思いだった。


その反動として今、一番大好きなニールと会う事ができたため、そのぬくもりなどが何となく恋しくなったのが突然抱きついた経緯だ。


「うわぁ……博士の拷問でも相当あれな奴だと思ってたけど、そっちの趣味も有るの……?」


はたからみれば自分のことを棚上げした発言にしか思えないが、ニールは子供の見た目から姿が変わらないリヴェリなのだ。

種族的な目から見ればテンペストはすでに大人であり、適齢期に見えている。


「まあでも、もう海に沈んでるんでしょ?そういうことをされる被害者はもう居ないってことだよ。だから安心して……ね?」

「ええ。もう大丈夫です。…………ニールは先程上げた行為はやはり興味はあるのですか?例えばおし……むがっ」


落ち着いてきたのか、ニールの横に座り直したテンペストだったが……少し気になったのかディノスがテンペストにやると宣言した数々の変態プレイをしてみたいのかと聞いてきた。

慌てたニールが攻撃の手を止めてテンペストの口をふさぐ。


「テンペスト……それ以上はダメ。それここで聞くことじゃないよね?っていうか皆も聞き耳立てないで!!」


ニーナとメイはもちろんのこと、ウルもピンと立った耳をこちらに向けていた。

広いとは言え声が聞こえる程度の車内だ、嫌でも会話内容は聞こえてくる。

その内容がニールの好きなプレイスタイルとなれば、全員少し気になるのだった。


『ニール、攻撃を緩めないで下さい。次はここに砲撃を!』

「あっ、あっ、ごめん!今やるよ博士!」


レールカノンの砲撃音と衝撃が車内に響く。

ここはまだ戦場だ。



テンペストも魔法を使って地面から無数の杭を生やして物陰に潜んでいる敵を串刺しにしていく。

隠れる場所が無くなった敵は次々と飛び出してきては機銃の餌食となっていった。


『……大体終わったか……。それにしてもこの黒い魔物共は数が多すぎる!』

「とりあえず、洞窟の入り口は確保完了だね……長かった……。一旦バリケードを作って補給しよう、もう弾が無いよ」

「では倉庫から取り出します。補充して下さい」

『おお、テンペストもこっちに戻ってきていたのか!先程の魔法はそういうことか、助かったぞ』


次々と弾を取り出し、それぞれの車両へと配る。

その間にメイ達は作っておいた軽食を配っていた。何も言わずともよく働いてくれている。


「ギアズ、これは50mm用の散弾です。これから広さに制限のある場所へとはいるということと、敵が数で攻めてくるというのであれば最適な弾となっています。ただし逆に装甲を貫通する性能は殆ど無いので気をつけて下さい」

『ああ、助かる。博士が使っているやつだな』

『テンペスト、同じのを私にも。流石に全て使い切ってしまいました』


全ての装備品を確認し、洞窟の入口を塞いでいた壁を取り払う。

ありがたいことにあれが打ち止めだったのか、それとも奥の方で迎え撃つつもりなのか……特に敵が出てくる気配は無かった。


「では、これより対象物を惑星破壊兵器と呼称し、これの捜索及び破壊を目的として行動を開始します。形状は……サイラス」

『幾つか考えましたが、目標設定が使いにくい為恐らくランスなどのような物にくっつけて飛ばすということは考えにくいです。また、ディノスの性格からすれば自分が負けた時などに道連れにするために使う可能性を考えれば……設置しての自爆型となるでしょう』


モニタに外観図を表示する。

幾つかの大きさが有るが、これは相手の技術レベルによって作れる大きさがだいたい決まるだろうという予測だそうだ。

サイラスが作れるレベルであれば、荷物などを入れる箱に収まる程度だ。

しかし、大きいものであれば一つの部屋を占有するレベルとなる。


『今まで出てきた新型魔鎧兵を見る限り、決して技術レベルは低くありません。途中、魔導車も出てきましたが私達の使っているものと遜色ないレベルにまで近づいてきていると思っていいでしょう。装甲レベルはまだまだでしたが……。よって、この大きさになるかと思われます』


表示されているのは一人で動かすことはできそうにない大きさだが、魔導車に積んで移動することは出来る大きさだ。


『作動形式は当然魔力式となっています。今は近くにディノスが居ないことが救いですね。まさか本人もあれに乗って負けるとは思っていなかったのかもしれません。これで死亡と同時に作動するタイプだったら、すでに消滅しているわけですし』

「……その可能性を考えていませんでしたね、迂闊でした」


今更ながらにその可能性を指摘され、テンペストがうなだれる。

あの時取り得る最適な行動を取ったつもりだったが、持ち主が死んだ時に発動する魔道具が無いわけではない。

それがあの兵器と繋がっている可能性を入れていなかったのは、以前の自分からは少し想像がつかなかった。


「ま、まあ……無事だったし?良いんじゃない?で、どこに有ると思う?」

『調べるしかありませんね。作動すれば嫌でも魔力が集中するので分かりますが』

「……ちなみに作動した後、実際に起動するまでどれくらい?」

『速くて5分程度。遅くても20分もあれば。最初からマナを集めて溜め込んでおくか、周りから不足分もかき集めるかの違いですよ』


長いようで、短い。

起動した場合、その場所がわかっても遠かったらおしまいだ。


「それともう一つ。コンラッドの救出も同時に行います。こちらは現在地が分かりました、大分深い所に居ますが無事のようです。通信機を持っていないのか、故障したのかは分かりませんが応答がありませんが……彼は元々軍人です。サバイバル訓練は受けているので問題ないでしょう」

『では、行こうではないか。ぐずぐずしていても良いことはあるまい。何としてでも見つけるぞ』

「それは賛成だね。あ、テンペストはどうするの?」

「私は……今のところマギア・ワイバーンが必要な状況ではないですし、何よりもコリーを少し休ませておきたいと思います。彼の肉体的、精神的な負担は相当なものですから」


いくらエイダに癒やしてもらったとしても、完全に疲れが無くなるわけではない。

本人はそう思っていても、精神的な疲れは当然癒やされるものではないし、肉体的にも元と同じくらいに元気になっているわけではない。

ある意味ドーピングに近いものがあるのだ。

最終的にそれは反動となって返ってくる。エイダの精霊術の場合はその反動が少ないだけ良いだろうが、それでもコリーに強いた負担は想像を絶する物だ。

力と体力に自信のある獣人であったとしても、身体がそれ以上の負担を拒否しているのだ。

当然、セイカーの2人も同じだ。


本当に必要になるときまで、とりあえず休ませておきたい。


「ですから、私はここに残ってホワイトフェザーで参戦します」

「……テンペストの負担は?」


ニールが言う。

テンペストは意識を移して戦っている。

その為肉体的な疲労などは無いものの、やはり常に眠っている状態というのもあまり身体には良くない。

実際、戻ってきた時には起き上がろうとしてふらついたり、疲れやすくなっていたりとニールが見ていて少し不安になるのだ。

そもそも、肉体に魂が宿っていない状態で今の位長時間動いていたことは未だかつて無い。

もしかしたらそのうち戻ってこれなくなるんじゃないのかと気が気ではない、というのがニールの本音だった。


「魔導騎兵に乗ってる皆もだけど、特にテンペストは今日はずっと肉体から離れて行動してるんだよ。しかも魔導騎士と違ってテンペストは完全に肉体を置いて遠く離れて動いている。今までここまで長時間抜けていることは無いんだ。……肉体的な疲労は無くても、精神的な疲労はきっとある。テンペストも休んでいて欲しい」

『うむ。そうだな、テンペスト、お主にはまだ肉体があるのだ。無くしてから後悔しても遅いぞ。実際長期間死霊術によって抜け出していた者が、戻ってくるべき肉体を失って彷徨う羽目になるという話はそこら中にあるのだ』

「それにね。テンペストは自分が居なくなっている間の自分の身体、知らないでしょ?」


崩れるように倒れるテンペストを抱えて、ベッドへと移した後。

ニールは必ずテンペストの脈を確認する。

眠っている時のテンペストは体温も低く、鼓動もとても遅くなっているのだ。


「わかる?テンペストの心臓がね、だんだん遅くなっていくんだよ。もしかしたらこのまま止まっちゃうんじゃないかってすごく不安になる。息だってどんどん浅くなってさ。顔を近づけてもわからないくらいになるんだ。その間は何をされても何の反応もない。身体を拭いてあげても、カテーテルを入れても……本当に人形みたいに無反応なんだ。食事を取れない時なんかは、飲み込んでくれないから管を通して胃に直接栄養のあるやつを送り込んでる。でも、それを見ているとまるで死にゆく人を見ているようで……とても怖いんだ」


なんの反応を返すこと無く、ただただ口から入れて、排泄だけをする状態。

これが生きている人の姿なのか、それが分からなくなってくる。

もちろん触れれば体温が低くなっているとは言えほんのりと暖かく、集中すれば鼓動も感じられるけれど……テンペストが帰ってくるまではいつも不安だった。

とても大事な存在だからこそ、失いたくないという気持ちも強い。


「……分かりました。ではこのまま私はサポートに努めます。大丈夫ですニール、索敵と指示位であればいつものことなので疲れることはありません」

「ありがと、テンペスト」


ニーナやメイ達の方をみても、ニールの言っていることに賛成のようだ。

少し泣きそうな顔になっている2人と、ニールの意見を聞いてテンペストも考えを変えた。

知らず知らずにニールに負担を強いていた事が分かったのもあるが、テンペストとしても実際に戻ってくる度に身体がとても怠いなどの症状は実際にあったため不安になった。

今までであればきっと、きちんとした理由も付けて判断していたことだろうが……やはり感情というものが判断に大きく関わってきていると感じる。


今の感情は……ニールを、大切な人を悲しませたくないという罪悪感と、そこまで想ってもらってとても嬉しいというものも働いているのだろうと考えた。

しかしある意味で思考としてはノイズとも言えるそれらを知覚し、それによって判断も左右されるようになってきたことに関して煩わしいとは思わなかった。

むしろ喜ばしいこととして受け止めている。


「大丈夫です。私は……そう、私はあなたを愛しています。とても言葉では説明しにくいのですがきっとこの思いはそういうことだと思います。私はあなたと共に歩み続けたいと思っています。だから安心して下さい。私は必ず戻ってきますから」

「約束だよ?本当に。でも今はそのままここにいて欲しい」

「ええ、それも約束します」


気遣ってくれているのだから、無下にすることも出来ないということもあるが……実際今の状況であればテンペストが出ずともなんとかなりそうではあった。

であれば、言われた通りにホワイトフェザーに移ったりせずとも問題ないだろう。


「……それでは。お待たせしました。捜索を開始しましょう。サーヴァントを先頭にして入ります。サイラスは索敵をしながら部屋などを探して下さい。あったら兵士たちと私達が見に行きます」

『了解。少し先行しておきますよ』


エキドナに乗り込み、全員が準備できたのを確認して洞窟内へと侵入する。

真っ暗なはずの洞窟をオルトロスやケルベロスのライトが明るく照らす。


「反響定位の結果、この先は更に広がっているものと思われます。一部音波が返ってきません」

「これより広がる洞窟なんて……見たこと無いね。ここも整備してるのか平坦になってるから良かったよ。徒歩で行かなきゃ無いかと思ってた」

「飛竜が出入りできるだけでなく、魔導車が出て行ける道があった時点で想定はしていましたが、ここまで広いとは思っていませんでした。一応、感知で索敵はしますが……道中あったように気配を絶たれていると見逃す可能性もあります。気をつけて下さい」


ガラス越しに見る景色は明るく周りが見えているが、実際に外に出ればライトで照らしている部分しかまともに見えない。

すでに入ってきた入り口は見えなくなり、どんどん洞窟の内部は広くなっていた。

天井などはもう、サーヴァントが縦に3~4機積み重なってもまだ余裕がありそうなくらいだ。


『どうやら部屋がありそうです。見てきてもらえますか?』

「う……結構多いね……」


壁際に並んだアーチ状の穴。

その奥にはやはり空間があり何かを出し入れしたような跡が地面に付いていた。

が、その数が多い。

流石にすべてを調べるのは骨が折れそうだったが……やるしか無いだろう。


降りて手前から順番に調べることにした。


「これ……奥どこまで続いてると思う?」

「かなり深いです。ただ……ここは部屋ではなく、坑道のようですね。隠し場所としてはありえないでしょう」

「同感だね。一応全部覗いてみて同じだったらやめよう。あまり意味なさそうだし……。あ、あれちっさい魔導車……かな?」


周りを覆うものは何一つ無い、ハンドルと操作用のペダル、そしてトロッコを括り付けたかのような荷台。

ここから出たものを運搬していたものだろう。

近づいてみてみたが特に何も入っていなかった。

特に収穫もなく戻ると、テンペストの目がサーヴァントの後ろに近寄る何かを見つけた。


「サイラス、後ろです!」

『え?なっ……!いつの間に!』


次の瞬間火花と重いものがぶつかる音が洞窟内に響いた。

流石に全員が気付いてライトを向けると、そこに居たのは……巨大なゴーレムらしきものだった。

見た目は岩の塊が動いているようにしか見えないが、ただ腕を振り回しただけでもその質量は馬鹿にならない。

それは先程の一撃でサーヴァントのシールドがひしゃげて吹き飛んでいったことでも分かる。


テンペスト達が居る場所の壁にシールドが突き刺さった。


「……何あれ……」

「ゴーレムの一種かと。車まで退避します、その後少し距離を取ってレールカノンを」

『こんなでかいゴーレムは初めて見たぞ。あの石は何だ……?』

「ギアズ、そんな事はとりあえず良いから早く!」


更に破裂音と一瞬の閃光が辺りを照らす。

サーヴァントのパイルバンカーが当たったらしい。


『なんて硬さだ全く!ニール、レールカノンの弾を質量弾に交換して撃って下さい、生半可なものだと跳弾しそうだ』

「そんなに?!分かった。……全員車内に入った?」

「確認しました。問題ありません」

「博士、カウントダウン!3、2、1、発射!」


至近距離でのレールカノンの一撃だ。

音速の数倍というとてつもない速度は、閉鎖した空間では危険すぎるがやむを得ない。

通常の弾よりも大きめで重い質量弾は着弾時にハンマーをぶつけるように強烈な打撃と、内部に仕込まれた芯によって貫通効果を発揮する。

高速徹甲弾をわざと重くしたようなものだ。


狙い通り流石の巨体でも僅かによろけ、内部にダメージが入ったようだ。

胸部に蜘蛛の巣のように罅が走っている。


『もう一度です!』


同じ場所を狙った二撃目。

今度こそ完全に砕け散った硬い装甲は無くなり、その内部にある組織がずたずたに引き裂かれていた。


『これで終わりです』


そこをめがけてもう一度抉りこむようにパイルバンカーを胸の中心へと向けて2度、放つ。

上手く魔晶石を砕いたようでゴーレムはそのままゆっくりと倒れていった。


外に出て少し観察してみたが、破片一個でもやたらと重く、黒光りした見た目は黒曜石のようなガラス質な感じのする石だ。


「こんなの見たこと無いよ。これで色々作られていたらもっと面倒だったかもね……」

「加工ができなかったのかもしれません」

『ここから出てきたようだぞ。……厳重に閉じ込められていたようだが……これはわざと開けてあるようだ』

『……なるほど、私達が入ってくる事がわかったから、閉じ込めていたこいつを解き放った……というところですかね。奴らもこれには手を焼いたようです。……逆を言えば、これを倒せる武器を彼らは持っていない。これは朗報ですね』


その時。

周囲のマナが急激に動き出したのを感じたのだった。

次回は海の方の出来事です

本当ならそっちもこの話に入る予定だったんだけど……。まあいいや。

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