第百六十七話 魔鎧獣
「……生きてるのか……」
真っ暗な中でコンラッドは目を覚ます。死んでいてもおかしくないような衝撃だったような気がするが、生きていられるのはこの無駄に強化された身体のお陰だろうか。
そもそも生きていると言って良いのか?
手探りでハッチを開けて周囲を確認するが、特に何かがいるというわけではないようだった。
「運がいいと言うかなんというか……」
空の上では爆発音やセイカーの魔導エンジンの音が響いているが、茂った木々の内側では葉っぱが邪魔でまともに見えない。
出来ることならあれを無理に相手せずに引いてくれていれば良いのだが……。
「にしたって何なんだありゃ……。生体改造も始めたってことか?地球よりよっぽどこっちのほうが上だな。……通信も出来ねぇし。早くしねぇと艦砲射撃が始まっちまう、えっと……どっちだ?太陽は……」
墜落直前の光景を思い出し、大まかな位置を考える。
太陽と時間で方角を割り出し、穴がある方向へと向かう。
「……何だこれ……」
巨大な陥没穴は見つけた。
そしてその奥にある巨大な横穴……恐らく敵の本拠地となっているダンジョンケイブの入り口も見つけた。
しかしここから先に近づこうにも近づけないでいる。
黒い人型の魔物らしき物がウロウロしているのだ。
それも武装をしている。
形は少々異なっているがライフルと剣を持ち、簡易な鎧も着込んでいた。
そして……更に先程の飛竜と似たような感じの大きな魔物が歩いている。
人よりも大きな狼。真っ先にコンラッドが思ったのはフェンリルだった。北欧神話に出てくる魔狼フェンリル。
あれが実際に居たらこんな感じだろうかと思わざるをえない。
魔導騎兵とくらべても体高がその半分程度という時点でその大きさがよく分かる。
そんなヤバそうなものがやはり鎧を着込んでいるのだ。
装飾などかけらもない、守るためだけに作られた大雑把な物で、それだけでもかなりの重量がありそうだ。
コンラッドの手持ちの武器では何も出来ないだろう。
そこまで強力な魔法を使えるわけではない為、あれを貫通させるとなると相当骨が折れそうだ。
アンデッドと言って良いのかは分からないが、見た目は人であっても人ではない身体を持つコンラッドは幸運なことに気配が殆ど無い。
お陰でこの距離でも気づかれずに済んでいるが本人はまだ気づいていなかったりする。
また空で爆発音とあの飛竜のものなのか咆哮が聞こえた。
「……生き残っててくれよ……!」
あの飛竜は何か嫌な予感がする。黒い飛竜もだったが、あの加速……そして武器を操る能力が普通の飛竜でないことを表しているのだ。
セイカーの音が遠ざかってゆくのを感じる。
追い払ったからだろうか、大きな翼の音が近づいてきてあの鎧を着込んだ竜が降りてきた。
気づかれないように息を潜めて茂みの中に隠れて観察する。
普通の飛竜の様な見た目だが、少しばかり大きく鱗が逆立っている。
地上に降りてからはそれがゆっくりと閉じていくのが見えたが、テンペストから聞いていた飛竜が本気を出した時の状態に似ている。
あの爆発的な加速はそういうことだったのだろうか。
そして武器。
やはり大きな砲であることには間違いない。仕組みとしてはライフルなどと変わらないものだろうが、普通飛竜はこんなものは扱わない。
そもそも飛竜の武器はその口が主なのだ。飛んでいる時には手足を使うことはまず無い。
『整備しておけ。……奴らが攻めてくるぞ、迎撃の用意をしろ』
喋った。……喋った?飛竜が?
吠えるだけしかしないと思っていた飛竜が、人の言葉を話した。
伝説レベルの竜ならば人語を解して話もできると聞いたことがあるが、こいつがそうなのか?
いや、それであればそもそも1匹でこちらの相手をして勝てるほどの力があると聞いているのだ、それはないだろう。
しかし現に今鎧を着込んだ飛竜は喋った。
「……まさか……魔導騎兵みたいなのじゃないだろうな……?」
人型をベースにしたものしか見たことがなかったが、別に作ろうと思えば獣そのものであっても出来るのではないのか?
事実、人型からは大分離れた4脚のギュゲスがある。
何故か乗るとその人ではありえない形であっても、元からそうだったかのように振る舞えるというのだから……例え竜の形であっても対応できるのではないのか?
であれば、あれに乗っているのは誰だ?
「自分だけ特別機、周りに命令するだけの権限、……エフェオデルの兵士で上の立場に選ばれているか……そうでなければディノス本人か。後者だったらわかりやすくていいが」
その時、凄まじい轟音と土煙、そして爆風とともに破壊力を持った礫がコンラッドを襲う。
かなり驚いたわけだが、すぐにその正体に気づいて背筋が寒くなる。
「やべぇ……艦砲射撃が始まったのか!」
予定通りの行動だった。サイラスはコンラッドがここに墜落していることを分かっていてやっているだろう。
優先順位としては正しいし、自分だって文句を言うつもりはない。
そもそも作戦を考えた時にこれは織り込み済みなのだ。墜落などで行方不明となった時、連絡が入らなければ死んだものとして扱われる。
だからといって味方の砲撃では死にたくはない。
『一旦引け!爆撃が収まったら反撃に出れるようにしておけ!魔道士達は入り口を塞げ!』
ぞろぞろと外に出ていた黒い人型の魔物達は洞窟内へと入っていく。
例の竜も一緒に中に戻っていったのを見て、行動を開始した。
見つからないようにゆっくりと、しかし迅速に……。この矛盾したオーダーをなんとかしなければ自分が死ぬ。
すでに逃げ道など無いのだから、敵の中に突っ込んでいくしか無いのだ。
2発目が着弾する。
明らかに近い。
さっきのタイミングで崖から降りていなかったら死んでいたかもしれない。
見れば下の方に口を開けている洞窟への入り口が少しずつ土魔法によって塞がれている。
さっさと降りないと間に合わない。
一か八か、掴んだ木の根を離して落下していくことにした。
身体が何処まで頑丈かにもよるが、次の足場まで一気に飛び降りる事で時間をかせぐ。
「ぐっ……。おお、すげぇ……なんとかなるのか!」
それならば、と入口付近で作業をしている者達の視線に入らないように気をつけながら一気に降りきり、洞窟内部へと侵入する。
「ギキッ!?」
「うぉっ!?」
気づかれずに済んだかと思ったが、振り向いた瞬間ばったりと出会ってしまった。
とっさにナイフで首を切って別な場所へと引きずってゆく。
血の匂いでバレないように土の中へと放り込んで固めておいた。まあ、これくらいならば出来る。
魔力を通じて目の感度を上げれば、暗闇の中を昼間のように見通すことが出来るようになった。
入り口を塞ぎ終わった人型の魔物……見た目的にはゴブリンっぽい感じなので黒ゴブリンとでも言えばいいだろうか。
杖を持っており、まるで兵士のように整列して歩いている。
見たところ身長は150程度、服は着ておらず直接急所を守る程度の鎧を着込んでいる。
また、地響きと爆発音が聞こえる。
パラパラと小石が落ちてくるなど少し不安だ。もう少し奥へと進むことにした。
□□□□□□
「ウォーロック隊、3機が撃墜されたそうです。1番機、5番機、6番機が撃墜。1番機のコンラッドはベイルアウトした後、着地直前までは生存確認されていますがその後は不明。5、6番機はベイルアウト後、正体不明の飛竜によってコクピットを直接破壊されたため生存は絶望的であると」
「嘘でしょ……?」
「コンラッドが?なんで……?あいつが墜ちるとか信じられねぇぞ」
「黒い飛竜を追い詰めて、とどめを刺そうとした時にブレスと同じ物で自爆したということでした。とっさに避けたものの機体後部が消えたためやむなくベイルアウトしたとのことです。……ただ、現在艦砲射撃が実施されています」
「そんな……」
バハムートから戻ってきたテンペストからもたらされた情報は信じ難いことだった。
全6機中、4機も撃墜されているのだ。残ったのは2番機のラルフと4番機のグエンのみ。
無敵かと思われていたセイカーだったが、あの黒いブレスを相手にするには荷が重すぎた。
コンラッドは脱出後しばらくは何処にいるのかはテンペストには大体わかったのだが、途中でロストしている。
その後、突然鎧を着た飛竜が現れたという。
鎧の飛竜は速く、全力であれば振り切れるものの戦闘行動中であれば小回りの効く向こうのほうが有利だったそうだ。
更に鎧の他にも大砲をライフルのように扱うなど、飛竜としては不自然な点が多い。
「主な攻撃手段は手に持った大砲、そして幾つかのブレスだそうです。飛竜が複数の属性のブレスを放つことはありますか?」
「いや……僕は聞いたことがないよ。コリーは?」
「ねぇな。本当にそれ飛竜だったのか?」
逃げながらの画像だが、それを見せる。
「……なんで飛竜が鎧着てるんだ?それに大砲だ?妙に人間臭い飛竜だな……」
「ねえテンペスト、魔導騎兵って飛竜の形に作れるのかな?」
「出来なくはないと思います。サイラスも可能だろうとは言っていました。その代わり大量の素材が必要になるため、そんなものを一つ作るくらいならばサーヴァント量産したほうがいいとも」
「確かにそうかも知れねぇな。……ところでコンラッドの反応が消えたのってどのへんだ?」
そう言われてテンペストが指差したのは……。
隠蔽の結界が消えて顕となった場所。つまり洞窟だった。
「それ、敵に捕まったとかじゃねぇか?」
「どうだろ。自分から入ったとか?」
「現在のところは不明です。ただ、艦砲射撃から逃れるために自分で洞窟へと避難したという可能性はあります。……もちろん、敵に捕らえられている可能性は否定できません」
「あいつがそうそうくたばるわけがねぇ。中で合流できるだろ……。それよりも、そろそろ艦砲射撃が終わる頃合いじゃないか?」
確かに、時間的にはいい頃合いだろう。
空爆と艦砲射撃によって継続してダメージを与えたところへ、地上部隊が行く。
完全な制圧のために必要なことだ。
「全軍前進!」
号令が掛かる。
飛竜達が魔導騎兵をぶら下げて先行し、テンペストとコリーはそれの護衛をする。
マギア・ワイバーンが離陸し、それに続いて飛竜達が飛び上がる。
空には黒い翼竜や飛竜の姿は見えず、前方から飛んでくる艦砲射撃の最後の一撃が今着弾した。
着弾と同時にドーム状の衝撃波が一瞬見え、空を飛ぶこちら側にまでその音が伝わってくる。
「飛竜隊、高度を下げて魔導騎兵の投下準備を」
『分かった!飛竜隊、高度下げ!投下準備!』
まばらに始まった対空砲火も、発射点を即座に割り出したテンペストによってランスの餌食となる。
「テンペスト、洞窟が塞がれているようだ」
『確認しました。……いえ、内部から解除されました。大きな狼型の魔物が多数出てきます』
「何だありゃ……あの黒いのは……人か?」
『魔物のようです。それと同時にかすかですがコンラッドの気配を感じました。やはり洞窟内で間違いないようです。現在はロスト』
「へえ、なら好都合だ。どのみち中に突っ込むしかねぇんだ、ついでに助けてやろうぜ……ってうぉぉ!?」
『対空砲火を確認、狼型の魔物からです。口に魔導砲を仕込んでいる……?』
「そんな魔物が居るかっ!」
つっこみを入れながらもコリーは機体を傾けて攻撃をやり過ごす。
脅威としてはかなり高い部類と判断して、ショートランスを叩き込んだが……予想以上に素早い動きであっさりと躱されてしまった。
しかし、近くで観察できた為その正体にテンペストは気がつく。
『例の飛竜と同じと思われます。鎧と大砲、魔物と違って知能があります』
「さっきのやつなんか知能的なことやってたか?」
『偏差射撃をするような魔物が居ますか?』
対空砲火は明らかにマギア・ワイバーンの進路上を先読みして撃ってきていた。
おおよその速さと距離、弾速を計算に入れないと出来ない事なのだ。
であれば、あれは魔物ではない。
『鎧の飛竜と、この鎧の魔物はどちらも魔導騎兵と同じ物と推測されます。見た目は魔物ですが中身は人であり、その脅威度は計り知れません』
「マギア・ワイバーンより魔動騎兵全機に通達、洞窟内から新たに出てきた鎧を着込んだ狼型の魔物、そしてセイカーが遭遇した鎧を着た飛竜、どちらも魔導騎兵と同じ……いや、ミレス流に言えば魔鎧兵そのものだ。見た目通りの性能のほか、人としての知能がある。舐めて掛かるな」
投下された魔導騎兵達は道を切り開きながらこの洞窟の場所へと迫っている。
体勢を整えて今度は銃撃しようと思ったが、すでに森の中へと消えていった後だった。
後方からは魔導車が土煙を上げてこちらへ向かってきている。
「テンペスト、どうする?」
『出来る限り魔導騎兵を援護します。広範囲のブレスを使える飛竜はこの洞窟の入口の掃除を』
「了解。こちらマギア・ワイバーン。魔導騎兵隊、狼が向かった。これより出来る限り上空から援護を行う。そして飛竜隊は洞窟の入り口を確保せよ」
『ギュゲスが接敵したようです。……これは……』
「なんだこれ……今まで何処にいやがった!?」
突然現れた無数の反応。
恐らくは人か、あの黒い人型の魔物であると思われるそれは、魔導騎兵達が進んでいる正面を塞ぐように並んでいる。
更に狼型の魔鎧が足止めをするかのように魔鎧兵隊に襲いかかった。
『報告にあった狼型だ!でかいぞ!』
『攻撃開始!撃て!撃て!』
『前方に反応多数ありとの報告!待ち伏せです!』
『狼とは1機で当たるな!必ず3機以上で当たれ!』
地上では鬱蒼と茂った木々の下で魔鎧獣と魔導騎兵が死闘を繰り広げている。
流石にサイラスに鍛えられただけあってそう簡単にはやられはしなかったが、一撃離脱を基本として間合いに入ると同時に攻撃して、すぐに手の届かない場所へと離れるという非常にやりにくい相手となった。
それでも。
後ろに飛んで着地した瞬間、魔鎧獣の足が吹き飛んだ。
『命中、機動力は削いだぞ』
『よくやった!口の砲撃に気をつけながら仕留めろ!』
後ろ足を失い、まともに動けなくなった魔鎧獣にコットスの巨大な剣が振り下ろされた。
必死で逃げようとするが足が滑ってひっくり返る。
その隙を見逃してもらえるわけもなく……胴体を真っ二つに切り裂かれたのだった。
『なるほど、確かにこれは魔導騎兵と同じか……』
『狼を仕留めた。全機、着地の瞬間の脚をねらえ。後ろ足を削れば移動できなくなる。また、こいつは魔導騎兵と同じく操縦するものが居る。場所は胸部、そこが急所だ』
『ただ……こいつは人ではない、ですね』
『ゴブリンに似ているが黒いな。あの黒い魔物の一種なのかもしれん』
狼型の魔鎧兵。
それが確実なものへとなった瞬間だった。
周囲を警戒しつつ、次の行動へと移る。
『よし、次だ。前方の待ち伏せを排除するぞ』
『了解』
しかしギュゲスが一つの機影を見つけた。
ホーマ帝国の魔導騎兵のようだが、先程から問いかけても全く応答がない。
『待って下さい。2時の方向に魔導騎兵。応答がありません』
『帝国の……じゃない!アレは敵だ!!』
気づくと同時にこちらに向かって砲を構える魔鎧兵。
ご丁寧にもホーマ帝国の魔導騎兵とよく似たカラーリングにしてある。
偽物すらも出てきたこの状況は非常に厄介だった。
『狼型1機出現!その他歩兵多数接近!』
『くそ……っ!多すぎる!誰か近くに居ないか!!応援を!』
『駄目です!どこも同じ状況に陥っているようです!』
『狼型更に1機!』
狼型の口内にある大砲は威力が桁違いだ。
魔鎧兵の手持ちのものよりも高性能のようで、弾速も威力もまったくの別物と見ていい。
狼型1機を相手にしても3機でなんとか相手をしている状況だったことに加え、今は魔鎧兵も1機と、歩兵が多数。
それぞれがライフルと思われる武器を使って胸部を狙ってくる。
少しでも隙を見せれば即座に自分の本当の身体が貫かれて死ぬことになる。
胸部を盾で守りながらゆっくりと後退していく。
それに合わせて相手は前進し、狼型は今にも飛びかかって来そうだった。
『マズい!撃ち続けながら後退しろ!狼型を近づけるな!誰か居ないのか!!』
『呼んだか?近接支援攻撃を開始する。少し離れていろ』
その声が聞こえた直後、前方に居た魔鎧兵と歩兵が消し飛び、狼型は逃げようとしたもののガトリング砲の餌食となった。
命の危険さえ感じた状況が一瞬でひっくり返る。
『……マギア・ワイバーンか?……助かった、礼を言う』
『運が良かったんだ、ここは攻撃が通りやすかったからな。そのまま前進しろ飛竜を少しこちらに回す』
しばらくして飛竜が森ごとブレスで焼き始める。
炎の中、魔導騎兵達はエフェオデルの魔鎧獣と魔鎧兵を相手に奮闘するも、じわじわと被害が出始めていた。
□□□□□□
「テンペスト、到着したよ!」
『分かりました。コリー、しばらく私は戻ります、地上と連携して魔導騎兵を守って下さい』
『了解だ。行って来い』
エキドナの中で眠っていたテンペストが目を覚ます。
手早くニールがカテーテルを外して服を着せていった。
「……変な感じとかしない?」
「問題ありません。……少し、身体が痛いですが」
「良かった。で、どうだったの?」
「報告の通り新しい魔鎧兵が出てきました。狼型と飛竜型です。現在森のなかで交戦中ですが、通常の魔鎧兵がホーマ帝国に似たものを使っているため仲間だと思って油断したところをやられているようです」
「うわ……面倒なことになってるね……こっちは入っていけそう?」
「穴へ通じる道はあります。それ以外にも爆撃と艦砲射撃によって木が吹き飛んでいるところから入っていけます。地面の状況が悪いので気を付ける必要はありますが、歩兵の展開が可能となります」
「じゃあ、このまま進んでいいね」
そのまま前進を続けてついに森の境目まで到達した。
ここからは列をなして入っていくことになるが……。
「……どっから出てきたんだろ……さっきまで気配すらなかったのに」
「攻撃をしなければ、姿も気配も感じられない能力を持った魔物が居たのですから、同じようなものかもしれません」
次々と森のなかに敵の反応が現れる。
相当な数が潜んでいたが、爆撃跡などには希薄だ。最初からずっと、ここにいたことになるのだろう。
恐怖というものを感じないのだろうか。
爆撃を受けて、人間だったら耐えきれずに逃げたとしてもおかしくない状況で。
こちらからもトラックに詰められて飽きが来ていた兵士達が、ようやく自分達が戦える獲物が出てきたとあって勇んで居る。
「テンペスト、僕たちは先に行けってさ」
「どういうことですか?」
「コーブルク、ルーベル、ホーマ帝国からハイランドに対してそういう要請があったって。異変を食い止められるのは僕たちだけ……そういうことみたいだよ。今ここでこいつらが出てきたのは足止めだろうって判断したみたい。であれば、時間稼ぎをされないようにこのまま突っ切ることが出来る僕たちが行くべきだって」
「……分かりました。ではコリーと私はまた上空から援護を。ウルはこのまま皆を乗せてエキドナをお願いします。ギアズはオルトロスを2~3台見繕ってケルベロスで付いてきて下さい」
『承知した。……出来れば魔導騎兵が1機欲しいが』
「問題ありません。……ニール、あなたが指揮を取って下さい」
「分かった。頑張るよ」
テンペスト達は独自で動き始める。
ディノスを見つけ、あの兵器を葬り去るために。
攻め込めそうで攻め込めない。




