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第百六十五話 決死のダイブ

2千ポイント突破ありがとうございます!

「奴らは何をしようとしているんだ?」

「さあ、たったあれだけで何かが出来るわけではないのはすでに分かっているでしょうに」


 夜の海に20隻の武装した船が出てきている。

 エフェオデルの北側にある小さな港は静まり返っているが、その近くにある浸食洞窟では明かりを抑えながら何かしらの作業が行われていた。


「何やら積み込んで居るようだ」

「あれは……食料でしょうかね?木箱だけどもかなり重そうだ」

「博士、侯爵殿、洞窟の奥……かなり見づらいが魔導車じゃないか?どこから持ってきたんだ?」


 言われてよく見ると、確かに洞窟の最奥に魔導車の先頭部分がちらりと見えている。

 船に乗せてきたのか、あるいはどこからかこの洞窟へと入れる場所があるのか。


「これは報告しておいたほうが良いかもしれないな」


 サイモンがテンペスト達へとその情報を伝える。

 地下道があるかもしれない、という事は伝えられていたもののその規模自体は向こうでも把握しておらず、ただし可能性はあるということだった。

 もしも地下道で色々とつながっているようであれば、知らないうちに回り込むなどされている可能性はあるし、また脱出されてしまっては面倒だ。


「出入り口が何処にあるのかを調べたいところですが、難しいでしょう。こういうものは巧妙に隠してあるに決まっているし……隠蔽の結界を掛けられていたら分かりませんからね」

「今は放っておくしか無いか。……いや、あそこに強襲をかけて何処につながっているかを探らせるという手があるな」

「あー……とりあえずあいつらを沈めるんなら出るぞ?」

「コンラッド、気持ちはわかるが……今、ここで騒ぎを起こせばすぐにディノスにバレる可能性がある。ギリギリまでいつ攻撃が始まるか等は知らせたくない」


 だが、明け方近くになって状況は変わった。

 ここから離れた場所へと向かい、どこかに行くつもりだろうと思っていた艦隊が突然全速力でこちらに突っ込んできたのだ。

 その為跡をつけていって、ここから離れた場所で一気に沈めるという計画は没になった。


 サイレンが鳴り響き、戦闘配置へとつく。


「敵襲!エフェオデルの船がこちらへまっすぐ突っ込んでくるぞ!」

「撃ち方初め!!沈めろ!!」


 艦橋が忙しくなる。

 セイカー隊も緊急発進を始め、コンラッドも空へと上がった。

 エフェオデルの艦隊の速度は異常だ。恐らくこちら側の船が今から加速したところで追いつかれるだろう。

 それほどの速度を、戦艦という大型の船で出している。


「無茶な!そんな速度に耐えられる設計になっていないでしょうに!」

「あの推進装置を大量につけたかなにかしたのだろう……。まさか捨て身か?」


 だとすれば、船ごとぶつけてくるつもりだろう。

 一番近くにいる船はルーベルとハイランドだ。

 盾を展開して守りを固めるルーベルの艦隊と、その横で迎撃を開始しているハイランド。

 帝国の船も出てきて撃ち始めている。


「エフェオデル艦隊更に増速!」

「主砲、発射準備完了!」

「撃て!!」


 先頭を行くエフェオデルの船に大型レールガンの攻撃が直撃した。

 確実に当たり、恐らく甲板から船底までを貫通しているはずだが減速するつもりはないらしい。

 魔法弾や他の大砲等による集中砲撃を喰らい、甲板が火の海になりながらもその速度は落ちない。


 それどころか恐ろしいサイクルの速さで魔法弾がばら撒かれた。


「エフェオデル艦隊からの攻撃を確認!ルーベルの艦隊に直撃!」

『こちらセイカー隊!どうなってやがる!あいつら攻撃しても速度が落ちねぇ!』

「こちらも分からない!攻撃を続けてくれ!」

『くそ!対空攻撃を確認!!一次離脱する!!』

『セイカー6被弾!飛行に問題なし!』


 見れば猛スピードで突っ込んでくる艦隊は先程のあの法撃を空に向けて撃ち込んでいた。

 それは驚異的な弾幕となり空へと吸い込まれていく。

 着弾すると爆発し、被害は更に増えるようだ。


『大鷲の盾2番艦、盾の破損を確認!持たないぞ!』

「セイカー隊は離脱後体勢を立て直して目標を一つに絞って集中攻撃しろ!何としてでも止めろ!ルーベルの艦は前に出すぎるな!全艦先頭の船に向けて砲撃を集中しろ!!」


 リヴァイアサンとバハムートのレールカノンがまた火を噴く。

 狙いは逸れずに確実に着弾したのを確認する。

 先頭を行く敵艦はついにその激しい攻撃によって海へと消えてゆく。


 しかし、それでもエフェオデルの艦隊は止まらない。

 次々と被弾して外装が吹き飛んでも、甲板が吹き飛んでも。船体に穴が開こうとその速度は緩まない。

 対空と対艦を兼ねた法撃は止まず、ついに撃ち漏らした一隻がルーベルの盾に向かって直撃した。


 直後、大きな水柱が立ち上がり、轟音が響く。

 決死の体当たりを受けたルーベルの大鷲の盾と呼ばれた船は、その爆発を受けて両翼に展開した巨大な盾が吹き飛び、船体にも深刻なダメージが入ったようだ。

 ゆっくりと黒い煙を上げながら傾いてゆく彼らを見ながらも、救いの手を出すことは出来ない。


「エフェオデル艦3隻目轟沈!依然速度変わらず!護衛艦に突っ込みます!」

「セイカー隊!!」

『兵装換装が終わったものから向かわせている!』

『こちらセイカー5。目標を捕らえた。船首を攻撃する!』


 対空攻撃が激しい中、低空で飛行しながらその法撃をかいくぐり、セイカーがレールガンを放つ。

 バルカン砲やランスではあまり効果がないと判断して兵装を交換した物だ。

 その攻撃が次々と船首へと命中し、ついに船首は大きく船底を含めて水圧によって吹き飛んだ。


「速度が落ちました!沈んでいきます!」

「よし!セイカー全機!船首をねらえ!奴ら速度が早すぎて船首が吹き飛べば勝手に沈むぞ!」

『了解』

「全艦、狙いをなるべく船首へ向けろ!間違って味方を落とすなよ!」


 真正面から突っ込んでくる船に向かって、大砲を精密狙撃と言うのは少々難しいが、もう大分近くまで来ている。

 やれるだけやるしか無いのだ。


 サイラスもサーヴァントで出ようとしたが、速度が早すぎる上に味方の弾幕もあるため却下された。


「……それにしても、この魔力をどこから……。何故あれほど撃ち続けられる?」

「テンペストのようにマナを回収しているのではないのか?」

「あれは少し特殊なのですよ。あれだけの消費魔力が大きな物を連続で放てるほど効率がいいわけではないですから」

『こちらセイカー1。コンラッドだ。敵艦の半数が沈んだ。それと……あの法撃だが、魔物が括り付けられている』

「……なんだって?」


 報告によれば船首を破壊された戦艦は次々と速度を失い、またその速度故に一度壊れた穴から一気に海水が流れ込んでそのまま沈んでいった。

 それは良いのだが……法撃の正体が判明したようだ。


「これは……なんだ?複数の魔砲を束ねている?それに括られている檻に入ったこの魔物は……」

「……そうか……。魔物を電池代わりにしているのか!どうかしている!」


 電池、という聞きなれない単語にサイモンや艦長が首を捻るが、何となく文面でその意味を知ったようだ。


 どうやら、エフェオデルは魔力タンクとして魔物を直接兵器に繋いだようだ。

 当然、魔力を吸われ続けて限界が来れば死に至るだろう。

 魔物と言えどもこの扱いはなんとも言えないものだった。


「狙いを付けているのは兵士のようですが、甲板を撃ち抜かれてもあれが無事であればずっと法撃は続くようですから……彼らが担当するのはそれだけのようです」


 次々と自滅への道をたどるエフェオデル艦隊だったが、いくつかはこちらの艦隊に被害をもたらした。

 ルーベルとハイランドの船がそれぞれ1隻ずつ、ホーマ帝国の船が3隻沈んだ。

 爆発の規模は大きく、直撃を受けた船の乗組員の命は絶望的だ。


「くそ……セイカーが近づきにくい。昨日運び込んでいたのはこれだったのか?」

「厄介です。流石に法撃を受けてもう数隻しか残っていないようですが……。あの兵器自体はまだあると思って良いでしょう。もし、あれがあるのであれば……間違いなく隠蔽の結界などに隠されて配置されているはずです」

「確かに……」


 破れかぶれの策ではあったのだろうが……確かにこちらにも被害を出すことに成功した。

 事実、強化された装甲は貫くことが出来たものの、可燃物を積んでいないようで誘爆などはしなかった。

 あの最後の大爆発は魔晶石を使ったものなのだろう。

 あれは特定の魔力の干渉によって反応するものだ。砲弾を食らったところで爆発するものではない。


「敵艦、全て撃沈。セイカー隊帰還します」

「よくやった。直ちに撃沈された艦の乗組員の救出を行う。その他のものは被害箇所の報告!」


 コンラッドが帰還して報告に来た。

 一通り艦長に報告を終えてこちらへやってくる。


「……博士。ランスの効果が低かった。こちらの技術で対爆性能が高い素材はあるのか?」

「ありますね。マギア・ワイバーンに使われているオリハルコンなどがいい例です。あれはほとんどの攻撃を通さない優れた素材ですから。他にもありますが……」


 ランスは要するにミサイルだ。爆発によるエネルギーと飛散する物体が直接の被害をもたらす。

 今回、木製の部分はまだしも、外装に追加された装甲にはあまり効果がなかったという。

 確かに何度攻撃を受けてもそのまま突っ込んできていた。


「今回の船は……強化された部分は最低限そこが残っていればいいというものだったのかもしれません。それを超えて破壊されない限りは動き続けられるような……。こちらの攻撃方法を見越しての対策を取られたというところでしょう」

「なんて対応力だよ……。地球じゃ金がいくらあっても足りねぇな」

「資源をそれだけ自由に作れるということです。予想以上に厄介です。……ただし……ランスにはまだ使いみちはありますよ。洞窟へ爆発力を調整して放ちます」

「……なるほど。任せる、ぶち込むのは任せな」


 辺りはすでに朝日が昇り、青く澄んだ空が見えている。

 作戦決行の時間が近い。


 □□□□□□


「海の方で戦闘がありました。被害が出たようです」

「まじかよ……あの艦隊が被害?」

「補強した船を使ってラムアタックを仕掛けてきたとの事です。接触後、大爆発を起こしてルーベルの盾をもぎ、沈めたと。ハイランドの船も被害にあったようです。救助できるだけはやったようですが大半が死亡した、と」

『……向こうには気づかれていると思って良いな』

「はい。間違いなく。更に、対空装備として魔物を魔力タンクとした連射式の魔導砲が備わっているということでした。これも恐らく周りに仕込まれていると見ていいでしょう。セイカーやマギア・ワイバーンならともかく、飛竜隊は回避は困難と見ていいでしょう」


 予定通りに攻撃は開始できるが、合わせて洞窟内へ侵入してそこから通じている地下通路のからも攻め込むという。

 こちらからは出入り口が分からないこともあるため、唯一の入り口であるそこからの侵入に期待するしか無い。


 バハムートからの情報を周知し、警戒させる。

 特に飛竜は速度が無い分対空法撃の餌食になりやすいだろう。話を聞く限りでは弾速は早く威力も高いということだ。着弾後小爆発を伴うというのも実に面倒くさい。


「追尾してきたり空中で炸裂しないだけマシです。爆撃範囲を広げて対空装備を潰した後に飛竜によるブレスと魔導騎兵を投下してもらいましょう。それに合わせて一気に食い破るしかありません」

「他に何を隠しているやら……」


 現状では分からないことが多いが、それでも準備期間はそれほど多くはなかったはずだ。

 今分かっている範囲の事を頭に入れて行動するしか無い。


 □□□□□□


『コンラッドだ。こちらは準備よし。予定していた洞窟への侵入も完了した』

「了解しました。タイミングを合わせて爆撃を開始します」

「よし、カウントダウン。……作戦開始だ!」


 今日はもう姿を隠す等という事はしない。

 セイカーの速度に合わせて、ポッドに入っている爆弾を全て投下する。

 1回目の投下は敵の反撃を無視して行い、その後はリヴァイアサンとバハムートによる艦砲射撃と爆撃を交互に行う。


「ラルフ、行くぞ」

『いつでも。キアの仇を取ってやります』


 スロットルを開けて加速する。

 高高度へ向けて一気に駆け上がり、そこからは爆撃コースへ。


『爆撃ポッド、開放。投下10秒前。5秒前、4、3、2、1、投下』

「投下開始。……コンラッド達も来たようだ」

『投下開始だ!くらいやがれ!よう、コリー、ラルフ。先にバハムートで待っててくれ』

「ああ。……投下終了。こちらマギア・ワイバーン、バハムートにて補給を受ける」

『同じくセイカー。ラルフ。バハムートへ向かう』


 地上に爆炎が見え始める。

 それとほぼ同時に黒い飛竜と翼竜が飛び立ち、地上から一斉に対空砲火が向かってきた。


『奴らが来たぞ!散開しろ!固まっているとやられるぞ!全速力で帰艦しろ!』

『くっ……黒いブレスだ!!避けろ避けろ!!』

『真っ直ぐ飛ぶな!食われるぞ!』


 爆撃を受けた地上は狙い通りに木々は吹き飛び、地形にも少なからず影響が出ていた。

 最初は激しかった下からの対空砲火も、その何割かを減らしたが全てをなんとか出来たわけではない。

 今はあちらこちらから浴びせかけられる黒いブレスに翻弄されているセイカー隊には、未だ脅威そのものとして残っていた。


「おい、コンラッド達がやべぇぞ」

『しかし作戦では……』

「分かっているが……あのままじゃ危険だろ!」


 作戦通りに動こうとするテンペストだったが、確かにかなり逃げ場が無くなってきている様子であることに気がつく。

 以前ならばなんとしてでも命令遂行を最優先にしていたのだが、こちらに来てからは上からの指示で動くというよりは現場の状況に合わせて対応するという事も多く、何よりも仲間はかけがえの無いものであり、失われた時にどのように感じているのかを体験してしまった。


 そして彼らが生き残る事を優先して考えた場合、テンペストとコリーがその場を乱すという事が成功率の高さから考えても最適だろうと答えを導いた。


『……分かりました。しかしこちらも武装はあまりありません。ロングランスの使用を提言します』

「……たった4発だが……いや、何匹でも削れるか狙いがそれるだけでもいい。頼む」

『了解。ロングランスを選択』

「ラルフ!先に行ってろ!すぐに追いつく!」

『はっ!……え、なんですって?無茶です!!』


 コリーがラルフに向かって命令すると同時に反転して黒いブレスと、青白い魔法弾が飛び交う激戦の空域へと向かって加速を始めた。


『ロングランス、射程に入りました。目標を選択。……ロック』

「このまま飛び込んで少しでも削るぞ!」

『ロングランス命中。巻き込みに成功しました、翼竜7匹撃破』

「よし!」


 前方で爆炎が見える。

 遠距離から自分めがけて攻撃されるとは思っていなかっただろう。

 数匹まとめて落とせるようにと、テンペストは比較的近距離で纏まっている集団に向けて発射したのだ。

 獲物の近くまで来たら自爆するという命令を受けたロングランスは忠実にその命令を守り、ターゲットの近くに居た翼竜達は爆風と小さな破片をもろに浴びてあえなく落ちていった。


 しかしその攻撃によってテンペスト達が向かっていることはバレてしまった。


『ランスをデコイにします』

「おい!?攻撃しないのか!?」


 無誘導で真っ直ぐに飛んでゆくランス。

 それに群がるように幾筋もの黒いブレスが放たれてゆく。

 敵として認識したのだ。それがただの兵器である事には気づかない。

 それ故に囮として使える。


「……なるほど」

『射線上にいるのは3匹、ブレスを放ち終わった直後なので安全です。機銃で落として下さい。私はその周辺の敵にフェイズドアレイレーザーで出来るだけ落とします』

「そう来なくちゃな!話がわかるぜテンペスト!」


 更に機速を上げて敵を撃ち落として安心している翼竜達へと突っ込む。

 見えた時にはすでに遅い。

 自分達の何倍もの速さで突っ込んでくるマギア・ワイバーンに対応できるはずもなく、またそこから放たれる小さな弾丸はその身体を次々と抉っていき……、そのすぐ近くをマギア・ワイバーンが通過した瞬間に強烈な衝撃波を食らって粉々に吹き飛んでいった。


『テンペストか!助かった!』

『数は少し減らしました。こちらに意識が集中している間にセイカー隊は脱出を』

『恩に着る』


 追い回されてばかりだったセイカー隊だが、コンラッドは流石にその最中でも何匹かすでに落としていたようだ。

 しかしそれでも四方八方から触れてはならないブレスが飛んで来ることには変わりなく、脱出の機会を失っていたが……テンペストがその状況を打ち破った。

 唐突に優位だった自分達の仲間が消え、突如としてその場に現れた黒い敵。


 脅威度が高い物へと狙いを定めて、意識は完全にマギア・ワイバーンへと向けられている。

 その隙にコンラッド達は機速を上げて全力でこの空域から離脱していった。

 ショートランスを置き土産にして。


 マギア・ワイバーンに気を取られていた黒い飛竜は、背後から迫るショートランスに気がつく。

 身体を撚るようにしてそれを躱したが一つは範囲内に入り爆発した。

 叩きつけられる空気の壁と、小さく、しかしとてつもない破壊力を秘めた礫が鱗のないその身体をずたずたに引き裂いていく。


 だくだくと大量の血が流れ、黒い飛竜……ペタオサオラは怒り狂い、生意気にもまたこちらへと向かってくるその細い何かをブレスで薙いだ。

 全てを消し去り、遠ざかってゆく白い何かを忌々しげに睨みつける。


 そこに途中から乱入し、仲間を次々と殺していったもう一つの黒い物がけたたましい音を立てて飛んでゆく。

 また突然の空気の壁によって軽く飛ばされたものの、すぐに体勢を整えて大きな翼竜のようなそれへと狙いを定めた。


『警告。ブレスの範囲内です。緊急回避のため私がコントロールします』

「何!?……っぐ……おおぉぉぉ……」


 後方でこちらを狙ってブレスを放とうとしている黒い飛竜にテンペストが気がついた。

 コリーの判断では間に合わないとして、少々無理矢理な機動で飛竜のブレスの範囲から逃れようとする。

 操縦席ではコリーが突然のGの変化によって苦しんでいるが、正直な所テンペストも回避だけで精一杯だ。


 なにせ狙ってくる黒いブレスは飛竜の広い範囲の物だけではなく、周りからの翼竜による物もあるのだ。

 この空域にたった一機となったマギア・ワイバーンに魔法弾も集中し始めている。


 黒いブレスがすぐ真横を横切ってゆく。

 飛竜からの太いブレスが翼を掠め、避けそこなった代償に爆撃ポッドが半壊した。


『爆撃ポッド被弾。パージします』


 中身が空となっている爆撃ポッドだが、装備の換えに余裕があるわけではない現状で失うのは痛い。

 しかしお陰で身軽になった。


「て、テンペスト……すまん、俺が戻ると言ったばかりに」

『喋ると舌を噛みます。……それに、確かにこの状況では彼らに取っては難しいと言わざるを得ません』

「少なくとも、あいつらは無事に逃げられた様だな……。だがこのままじゃ俺たちもいずれブレスにやられてしまう」

『やられるつもりは毛頭ありません。コントロールを戻します。……ユーハブコントロール』


 握った操縦桿に抵抗を感じ、機体の制御が自分に戻ったことを感じる。

 テンペストによって表示されたブレスの予測に従って、その合間を縫って少しずつ空域を離脱しようと試みるが、ブレスを避ければ下から打ち上げられている魔法弾が直撃してしまいそうになり、慌てて回避すればまた元の場所の方向へと戻されてしまうのだ。


「テンペスト!何かプランでもあるのか!?」

『少々お待ちを。……対空砲の場所を確認しました。これより脱出を開始します、表示したコースに沿って全速力で飛んで下さい』


 そう言ってテンペストが示したコースは……下へと伸びている。


「全速力でこれを!?引き上げが間に合わないだろ!」

『間に合わせます。その代わり急激な加速度の変化により負傷の可能性はありますが……申し訳ありませんが、耐えて下さい』

「くそ……。やってやるよ!信じるぞテンペスト!」

『私もコリーを信じます。とにかく操縦と回避に専念して下さい』

「了解だ。開始する!」


 急激なロールからの引き起こしを行い、真っ逆さまに地面へ向けてマギア・ワイバーンは加速を始めた。



戦闘シーンむずい……

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