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第百六十話 進撃開始

「……精霊って何でもありなの?傷を治すのは分かるけど、土地をこんなに……」

「正直、私も驚きました。これは大精霊の力ではないのですね?」

「大精霊だと……街ごとどころか、その周り一帯も今よりも凄い状態にできると思いますよ?海で現れた大精霊も想像以上でしたから……」


 海での事を初めてきちんとした状況と範囲を聞いて、これには勝てる気がしないとテンペストですら思った。

 そもそも、やれることというのが自然を操ることそのものであり、一度発動すればその影響はとても大きなものとなる。


 今、目の前に広がる光景はその力のほんの一部ということだ。

 先程伐採した範囲は全て黒黒としたふかふかの土に覆われ、試しに植えてみた野菜の種は30分ほどで実を付けてみせたのだ。


「……美味しい!いつもの味と全然違う……!」

「マナも多く含んでいるようです。食べているだけで少しずつ魔力が回復しています」

「わあ……精霊の皆さん、頑張ってくれたんですね。では、農業をしていた方等を集めて作物を植えてもらいましょう。後は収穫物を運び出す人と加工する人なども必要ですね」


 頑張ってくれたで済むのだろうかと思いながらも、実際食糧確保に関しては急を要する。

 ある程度道を作りながら戻り、説明をしておいた。

 この土地が枯れるまでは今のような状態が続くが、精霊が助ける価値がないと思った場合にはすぐに枯れるだろうということも含めて脅しておいたので、変な考えを起こすやつは居ないだろう。


 これによって更に信仰を集めてしまったエイダだが、これ以上の精霊術の行使は難しい。

 もうこれで大丈夫だろうと判断すればそれ以上に協力してくれないのだ。

 今、彼らはすでに最低限必要な手助けを受けて自分たちの力で動き出そうとしている。


 ここで、エイダが出来ることはもうあまり無い。

 そしてテンペスト達もここに残る意味も無くなった。

 ここを守るのはあくまでもホーマ帝国だ。テンペスト達の一番の目的は異変を食い止めること。


「……そろそろ、私たちはここを発たねばなりませんね。今までは帝国兵士達の要請によって協力してきましたが、ここまでいけば後は自分達だけでもなんとか出来るかもしれません」

「そうね。早くディノスを止めないと……。きっと、テンピーのしようとすることには精霊たちも力を貸してくれるから、安心してね」

「ってことはついにエフェオデルに攻め込むのかぁ。どんなとこだろうね?」

「こちらを観察する手段があるため、あまり近くを飛ぶことは出来ませんが、高高度からの偵察では国の北側の方に殆どの都市が集中している珍しい形です。今のところ目立った動きはないのですが……あの洞窟のような場所があった場合、地下で何をしているかは分かりません」


 ダンジョンケイブは地中深くまで伸びている事も多く、巨大であればミレスのようにそれを利用して軍事施設を作ることも可能だ。

 これは上空からの視点では見つけることは出来ず、電気などのエネルギーを使っているなどであればその周りの状況や温度上昇によってその予測はできるものの、ここではそんなものは使われていないため分からない。


 とりあえず明日になったら出発し、帝都を経由してエフェオデルとの国境であるクラーテルへと向かう。

 そこからは一気に距離を詰め、目標地点まで一日程度の距離まで近づいたら観察しつつ、目標であるディノスの居場所を探る。


 攻撃には当然、敵の航空戦力と戦い、相手の施設等を破壊するためにテンペスト達が必要なのだが……それだけでなく必ず地上部隊もセットで必要だ。

 空爆などだけでは壊滅させることはなかなか出来ず、その効果を確認する意味でも実際にその場所へ人が行って確かめ、残った敵などを殲滅する必要がある。


 マギア・ワイバーンなどだけで先行できれば楽だが、先程のダンジョンケイブなどになると空からでは対応しきれない。


 また、北側に都市が集中しているということと、北側に港らしきものが見えることから、船は大陸を回ってそちら側の方へと移動する。

 少々無理をすれば向こうに地上部隊が着いた辺りには船も到着できるはずだ。


 洋上からの艦砲射撃でも十分到達できる距離だ。

 届くのはレールカノンのみだが。


「テンペスト、コンラッドからだ。敵の方に動きは見られないそうだ」

「分かりました。サイモン、やはりおかしいです」

「不気味だな。これまでは休ませまいとする勢いで攻撃を仕掛けてきたという話だが……。海の方もおとなしいものだ」

「ええ。動きがなさすぎます。そもそも、魔物の方すら殆ど観測できないというのはどういうことなのでしょうか」


 偵察に出ているコンラッドの部隊からの報告は敵に動きは見られないというものだった。

 ただ、これは人の出入り、馬車や魔導車の動きすら無いということだ。

 全部使い切ったとは思えない。


 こちらがアンデッドの群れを駆逐したことで、作戦を変更したのだろうとは思うが……。

 どこで何をしているのかが全く見えてこない。

 やはりダンジョンケイブを使っている可能性は高い。


「困りました。存在自体見つけるのが難しいダンジョンケイブですが、それを広いあの土地で使われているとなると発見は困難です」

「ならどうすればいい?」

「空からは見つけられません。垂直に口を開けている場所はいくつかありましたが、入り口かどうかは分からないので直接降りて見るしか無いでしょう」

「しかし……それは危険すぎる」


 近くまで行くことは可能だろう。

 テンペストのマギア・ワイバーンは姿を消し、気配も消して近づける。

 しかしその機体自体が大きい為物がぶつかればそこに何かがあるのはバレてしまうのだ。

 それに、中に入らなければならないわけで、もし地上部隊を入れるにしても奥に本隊がいる状態で待ち受けられると言うのは現実的ではない。


「……ここで喋っていても意味は無いな。向こうへ侵攻して襲ってくる奴らを叩くのが早い」

「そうですね。ただ、この動きの見られない期間に何かを用意しているとするならば注意する必要はありますが」

「そんなに早く何かを開発できるものなのか?」


 地球でなら無理だが、この世界でなら可能なこともある。

 エフェオデルを掌握しているであろうディノスが、職人たちを確保していないわけがない。

 もしくは攻撃で壊滅した街で攫って行っているという可能性もある。


「そうだ、明日からの侵攻だがサイラスをこちらに貸して欲しい」

「構いませんが……」

「なにせバハムートを十全に扱えるのは彼だからな」

「そういうことなら。海の掃討はお任せします」

「ああ。……テンペスト、気をつけろよ」


 陸路を行くテンペスト達からサイラスは離れる。

 しかしバハムートの装備と機能を完全に動作させるにはサイラスが必要なのだ。

 だからといってこれから先の道のりに不安などはない。

 どの道、向こうで最終的に合流するのだ。


 □□□□□□


 翌日、早朝。

 先に港を出た艦隊を見送り、テンペスト達も街を出る。

 メールに居た時間を使って、ハイランドではオルトロスで牽引できる兵員輸送用のキャリアを送り込んだ。

 これによって足の遅い剣士や魔術師達も同じ速度で進軍することが出来る。

 ホーマ帝国の魔導車も平地であれば力不足にはならないため、同じものを取り付けて一気に連れていける人数が増えた。


 これも避難してきたハンター達や兵士が合流して志願した者達が増えたからだが、それであればと今までネックになっていたホーマ帝国の遅さを解消するために考えられたものだ。

 当然、簡単な作りになっているためただの箱だ。

 天井はなく、4方を壁で囲っただけの簡単なコンテナに車輪をくっつけただけ……と言うもののため当然座る場所など無い。

 しかしこれで人が立って30人程詰め込めるため、全員連れて行くことができそうだった。


 接近戦となるとやはり剣士や兵士と言った戦力は役に立つため、人では欲しかったのでまあ良かったと思う。

 ついでに、ホーマ帝国の魔導車の出力も上げたため速度が上がった。


 今まではホーマ帝国がエフェオデルに対しての報復としての行動だったが、今日からは違う。

 ハイランドが先頭となり、世界を救うための戦いへと変わった。

 突然言われたお告げの内容と、サイラスが渡航者であるという事実は衝撃的で、ハイランドはともかく他の国に関しては言葉が出なかった程だ。


 上層部の方では把握していた事実だったため、それに関しては上の方から指示と説明があったようで全員がこちらに従うことを約束してくれた。


 ホーマ帝国は……。


「ホーマ帝国軍、司令官ボーマンだ。これより我々帝国軍はハイランド王国軍に付く。ディノスは我々の国だけでなく全てを滅ぼすつもりだというのであれば、我々もそれを阻止したい」

「協力、感謝する。全軍、進撃開始!」


 この軍の総指揮はテンペストとサイラスが協力し、ハイランドの軍総司令ハモンドが担当する。


 号令と共にそれぞれの魔導車へと兵達が乗り込んでゆく。

 中央にテンペスト達のエキドナ、オルトロス、ケルベロスを配置し、その周りにホーマ帝国、コーブルク、ルーベル、ハイランドの指揮官達。それらを守るように他の車輌と魔導兵、魔導騎兵が囲んでいる。


 徒歩や馬はもう一つもなく、全力でそこへ向かうだけの構成だ。

 空は、指示を聞いて集まってきた飛竜隊が30匹も集まってくれた。

 まだ新兵や実戦投入されていない飛竜もかき集めたようで、正真正銘これが最後の飛竜隊となる。


 土煙を上げてメールの街を出たテンペスト達を、メールの人々が見送る。


 □□□□□□


 エフェオデル北部上空。


『こちらセイカー3、4。敵施設等に動きなし』


 偵察任務に出ているのはコンラッドの部下である2人だ。

 偵察用ポッドを取り付けた3番機と通常装備の4番機。

 毎日3回の偵察をしているものの、あれ以来ずっと沈黙を続けているディノスが不気味で仕方ない。


 メールを出発した艦隊も一旦エフェオデルから離れるように進み、ホーマ帝国を回り込んでエフェオデルの北側へと回り込む様に進んでいる。

 地上の方では同じくメールを出発した部隊が進んでいる最中だろう。


「セイカー4、おい、グエン」

『何だよキア?』


 4番機に乗っているグエン……エルフとドワーフのハーフと言うちょっと変わった人物だ。

 エルフよりも背は低く、ガッチリとした体格。

 髭は生えていないがドワーフよりも背は高い。どちらかと言うと人族にとても近いサイズなのだ。

 しかし、その力は全く異なる。


 キアと呼ばれた男は普通の獣人だ。

 狐人、つまり狐がベースの獣人となり、獣よりの身体と顔だ。

 2人は昔からの友人で仲良くこの部隊へと入ることが出来たくらいには優秀だが、少しばかり無駄口がすぎる傾向にあった。


「敵が作ってるかもっていうアレ、本当だと思うか?」

『大精霊様のお告げだっつーんだろうが。疑いの余地もなく本当だろうよ』

「そうだけどよ……世界が消えてなくなるって……考えられるかよ」

『まあ、考えたくはねぇけどさ。本当だと思うぜ?博士も作れるって言ってるし、渡航者だというならその異変は必ず起きるってこった。極めつけに……あの大渦だ。あれは神子様が大精霊の力を借りたんだろう?』


 大精霊が徒に力を貸すということはまず無く、正当な使い方や危機といった物に介入するという感じだ。例え精霊たちが力を貸してくれたことであっても、大精霊が動くとは限らず……逆に先の大渦のように、何かを守るために顕現してその危険から救ってくれるということもある。


 あの場合は介入しなかった場合には相当数の被害が出て、異変の排除に不都合が出る可能性があるからだろうと結論付けられた。

 これも、適切な時と場所でなければ介入してくれない事もあり、精霊術の使い所が難しいと言うのはそこも含まれている。


「世界が破壊される物……どんなんだろうな?」

『隊長に聞いたことあるぞ。俺達が使ってるランサーをでっかくしたような物だとか。で、その先端に取り付けられているのがそうだとさ』

「なんで隊長がそんなこと知ってるんだよ?」

『博士たちと仲いいし、聞いたんじゃねぇか?隊長も結構謎だよな。人族のくせになんであんな力あるんだ?セイカーの操縦なんかもやたらと上手いし……あの人何処でそんなの覚えたんだよ』

「それは……しらねぇよ。俺たち誰もまだ勝ったこと無いよな?」


 連戦連敗どころか、全く勝負にならない。

 自分達の知らない技術を使って、攻撃を全てかわされた挙句に突然消えてはいつの間にやら撃墜判定なのだ。

 下から見上げている他のメンバーからは「なんであれ避けなかったんだ?」などと言われたりもするが……自分がやられてみて初めてそれがどういうものだったのかを知るという感じだった。


「でも、ナイトレイ卿は勝つんだよな……」

『機体の差って話もあるけどな。あれを参考にして俺たちでも操縦できるようにランクを落としたのがセイカーだ。そんな化物みたいな機体に乗ってりゃ……なぁ?』

「早すぎて死ぬって意味分からないからな。確かに思いっきりシートに押し付けられるけど……」


 偵察任務とは言え、暫くの間空を飛んでは下を監視する。

 ずっとそれが続けばだんだん暇になってくるのは仕方ない事だろう。


 キアの乗る3番機に取り付けられた偵察用ポッドからの情報は、2人とバハムートに送られているが、特に動きというものは全く無い。

 ホーマ帝国によって……というよりもディノスの活躍によって、壊滅的な被害を食らった大都市は今なお瓦礫の山とそれを取り除きながら必死で生活しようとしている人達が、ただずっと生活を行っているだけだ。


『キア!見ろ!マークした所だ!』

「なんだよいきなり……。ん?あれは何だ?『こちらセイカー3。森の中から一台の魔導車らしきものが現れた。指示を請う』」

『こちらバハムート。セイカー3及び4へ、敵に悟られないように可能な限り上空から情報を集めろ。交戦は禁じる』


 大都市の北東方面。道もないところから一台の魔導車が姿を表した。

 長いその姿はテンペストのエキドナを彷彿とさせる。


 キアとグエンはその車両の情報を収集していく。

 超望遠によって大きく拡大されたその姿は空気の層によってゆらゆらと歪んでいるが、大体の形は分かる。


「奴が出てきた場所は分かるか?グエン」

『分からん。森の中から出てきたように見えるが……あの図体でどうやって通ってきた?道など見えないぞ』

「拡大しても見えない。木々が茂っていてあの間をすり抜けるのは……」

『おい。森の奥から何か飛び立ったぞ』

「あれは……飛竜か?」


 飛竜も突然出てきたようにみえる。

 黒く、帝国の飛竜よりも若干大きめの飛竜は、どんどん加速して上昇を始めた。

 高度差は大きく、まだバレるような距離ではないとは言え近づいてきているのはあまり良くはないだろう。


「移動する。グエン、飛竜から離れるぞ」

『了解だ』


 速度を上げて飛竜が上がってきたコースから外れていく。

 十分にデータは取り終えただろう、このままバレないうちに……。


『おい、キア!あの飛竜おかしいぞ!こっちに方向を変えた!』

「何!?……まずい……!こっちを見ている!バレているぞ!『こちらセイカー3,4、飛竜がこちらを捕捉している!全力で離脱する!』」

『ブレスだ!ブレスが来るぞ!散開しろ!!キア!』

「クソっ!」


 左右に別れた瞬間、翼をかすめるように黒く線のようなブレスが飛竜から放たれた。

 先程まで2機が居た場所を飲み込むかのように黒い光が真っ直ぐに通っている。

 機体の損傷を示す警告音が鳴り響く中、スロットルを開けて加速しながら回避行動を取り始める2人。


「尾翼をやられた!上手く動かない!!」

『キア!そのまま真っすぐ飛べ!射程から逃れるんだ!ちっと動かしにくくなっただけで落ちやしねぇ!』

「わかってる!だがレビテーションを使うと速度が落ちる、高度は落ちるが仕方ない、このまま突っ切るぞ!」


 ぐんぐん速度を上げていく2機にしつこくブレスの黒い線が迫る。

 飛竜が少し頭を動かせば、そのブレは遠くに行くに連れてどんどん広がる。

 そうそう当たるものではない……が。


「まずい!ブレス…………」


 キアが必死で機体を安定させながら離脱している真横にその黒いブレスが並ぶ。

 ギリギリで躱せたことに安堵していたが……次の瞬間、そのブレスは自分に向かって横にズレてきた。

 コクピットいっぱいに広がる黒い光、それがキアの見た最期の光景となった。


『キア!おい!3号機!!返事しろ!キア!!』


 少し離れた場所でキアの乗っていたセイカー3号機が機体後部の僅かな部分を残して消えた。

 爆発したとかではない、そこにあったものが一瞬でえぐられたように消えたのだ。

 何度呼びかけても親友の声は返ってこない。


 やがて、諦めたのか飛竜のブレスは放たれなくなり……グエンは一人、生還した。


 □□□□□□


「セイカー3が消えた!」

「ブレスにやられたようだ」

「偵察用ポッドはどうなった?データは取ってあるか?」

「セイカー4、応答しろ。セイカー4!聞こえているのか!」

『キアが……キアが……!消えちまった!!』


 艦橋に乗組員の叫び声とグエンの悲痛な叫びが響く。



「……セイカー3。キア・ネヴィル、撃墜されました。脱出は出来なかったようです」

「そうか……。残念だ」


 キアの戦死が確認された。

 脱出する間もなく黒い光の奔流に呑み込まれ、消失した。

 遺体も出ることはないだろう。


 必死にグエンを落ち着かせて帰還させようとしているオペレーターや、情報収集をしていた者達の声とは対称的に幹部達の方は落ち着いている。

 こういう時に一緒になって騒いだところで意味はない。冷たいと思われるのだが、戦場で死者が出るのは当然のことだ。

 あのブレスがある以上、こういう可能性もあった。


「セイカー3が墜ちた事で貴重な偵察用ポッドが失われてしまった。残りは1つしか無い」

「こればかりはどうしようも……。アレを作るのにかなり時間がかかりますし、今から作らせても間に合わないでしょう。まずはこちらで把握している分を分析したい」

「バハムートへデータを転送しているのでこちらでも向こうが集めたものは持ってる。この仕組がなければ貴重なデータが全て失われていた所だ……感謝するよ、博士」

「いえ……本当であれば、あのブレスに対抗できる何かを見つけられればよかったのですが……。力及ばず申し訳ない」

「博士が謝ることではない。あれは不可避だったのだ」


 彼、キアが最期に残してくれたのは、今サイラス達の目の前に出ているデータだ。

 2人は軽口を叩きながらも任務はしっかりと遂行するタイプだ。データもしっかりとしたものが入っている。


「これは報告にあった魔導車だな。サイラス、どう見る?」

「そうですね……。トラックのようですが何を運んでいるのやら。現時点ではそれ以上のことは分かりません。ただ、以前とは違いホーマ帝国が保有している魔導車よりも性能は増していると考えていいでしょう」


 荷台は大きく、トレーラーとなっており、僅かに見えるタイヤも後部に4輪と重量物を積み込むための作りになっているようにみえる。

 トレーラーの前部、つまり引っ張って歩く部分をトラクターというがその部分を作り、この形に仕上げたということは確実にサイラスの知識が流用されている。


「また、今までと違って我々のように迷彩塗装をしています……。このトレーラーが森から出るところが見たいのですが」

「ああ、少し待て……この辺だな」

「拡大して……なるほど、やはり報告どおりに突然出現したように見えますね。突然というか、空間がつながっていないような印象を受けますが」


 トラクター部分が頭を出す瞬間、明らかに森の中から出てきているのに森の方にはそのトレーラー部分が見えておらず、下の草地が見えているのだ。


「……これは……場所を見つけることが出来たかもしれませんね」

「森に見えている所は何かしらの結界などによって守られている……ということか」

「そんなところでしょう。空から見ても見つけられなかったわけだ。電波も、温度もごまかしているとは、相当ですね……あの黒い飛竜も出てきた瞬間は空から突然出現したように見えます。恐らくはドーム状の結界が張られているのでしょう。完璧な偽装結界です」


 つまりは……今まで見つけることのできなかった敵の本拠地、その場所が分かった可能性があるということだ。

 あの中がどうなっているかは想像もつかない。

 しかし、敵は……ディノスは間違いなくそこにいることだろう。



最終決戦へ。

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