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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第五章 英雄ディノス編
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第百四十六話 英雄として10

また少しディノス側が続きます。

「不死隊、整列!」


 ディノスの一言で、砦の前に整然と整列したアンデッドの群れ。

 誰一人として身体の欠損はなく、ゾンビやスケルトンと言った低級なアンデッドではない。

 完全な魔物として、魔力によって自分の身を作り出す上位のアンデッド達だ。

 まさかこれほどまでに戦力が膨らむとは思っておらず、今も少々驚いている所だ。


 端的に言えば、増えた。


「……これら全てがアンデッドであるというのか?」

「何がどう作用したのかは分かりませんが……、とりあえず全員私の命令を聞き入れるようです」

「むう……脅威、だな」

「しかし今は少しでも戦力がほしい所、それを考えれば味方の損耗を避けつつ敵へ切り込んでいける戦力は貴重です」

「分かっている。こちらとしても体制を立て直すどころか、このまま中央を落とす事が現実的になってきたのだ、使えるものは使う。……あの魔物共もアンデッドで良いのだな?」

「……従っているということは、恐らく」


 増えたのは人ではなく魔物。

 通常のオークよりも筋肉質で力も強いレクスオーク。

 1匹1匹は弱いが空を飛び毒で攻撃を加えるメトゥスアピスなど。

 タラスクは更に1匹増えている。

 巨大な蜂であるメトゥスアピスなどは巣をまるまる持ってきたのではないかと思うほどだ。

 面白いことに人間程度ならば楽に持ち上げられるため、空からの奇襲も可能となる。


 航空戦力が増えたのは素直に嬉しい。


 不死隊に続くように帝国兵士達も並び、広いはずの更地も大分手狭になる。

 飛竜達は壁に掴まってこちらを見下ろしている。

 味方でなければ絶望すら感じられる光景だ。


 久しぶりに全員よく休めたため疲れは殆ど取れている。

 皆の士気は高い。


 首都を落とすべく、前進する。

 捕虜となったエフェオデル兵から聞き出して正確な位置などは分かっている。

 大して遠いわけではない為、一度近くまで行ってそこで夜を明かした後に攻めることになるだろう。


「あれを最後まで温存できたのは幸いでした」

「途中、もう使わないと無理かと思ったが……。ディノス、お前の働きによって無事最後までとっておくことが出来た。奴らの覗き見でもまだ一度も使ったことのないものだ、慌てふためく様が目に浮かぶ」

「小さなものでは成功していますが、ここまで大きなものではまだ実験すら出来ていません。どれほどの効果が出るかは未知数ではありますが……悪くはないでしょう」

「後はど真ん中に落とすのみ」


 ここまで幸運が続いている。

 きっとこのままエフェオデルを落とすことが出来るだろう。


「長年、周囲を侵略し、幾つもの国を消してきたエフェオデルだ。クラーテルでの事は許しがたい!だからこそ今ここで叩き潰す!」


 将軍の声に続いて割れんばかりの声と武器を地面に打ち鳴らす音が響き渡る。

 門が開き不死隊が先陣を切る。

 疲れを知らない彼らが目的地へと先行しながら拠点を掃除する。

 ここを占拠したという情報はそろそろ伝わっていてもおかしくはない。

 兵が差し向けられているとすればもう少しで来るだろう。


 そして彼らは自分たちと同じ見た目のアンデッドと戦うことになる。

 アンデッド同士は独自の判別方法があるようで例え同種同士であっても相手を間違えることはない。

 が、相手は敵か味方かすらわからなくなるのだ。

 せめてゾンビやスケルトンなどであれば分かるだろうが、死にたての上に他の生き物を食って肉体を回復した上位のアンデッド群は生きている人間とほぼ見分けはつかない。


 腐り落ちた死体がアンデッドとして蘇るのとは違って、死霊術師によって死んですぐの身体が蘇るということはその時点で生きている時の力と技術を発揮できる為、それが大きな差となる。


 更に魔物たちの方もテイマーに指揮権を奪われない強力な戦力だ。


 □□□□□□


「不死隊が敵と接触しているようです」

「戦闘は起きていないようだが?」

「上手く合流した体で入りこんだようです」

「何?なぜそんなことが分かる?」

「言葉に表しにくいのですが……自分が作り出したアンデッドの情報がある程度入ってくる、という感じでしょうか。自分で判断して潜り込むことを選択肢たようです。我々はここで野営したほうが良いかと」


 近づきすぎると奴らが考えている作戦が無駄になる可能性がある。

 トップに据えているアンデッドの考えている事は、紛れ込んで少しずつ殺してアンデッド化していくという方法だ。

 バレたらすぐに危険な状態になるにも関わらず、それを実行できるというのはやはり見た目の問題だろう。

 敵からすれば誰が敵で誰が味方かわかるまい。

 長年同じ所で寝食をともにしていたとしても、知らない者はいる。

 自分と知っている者のみが味方であり、その知人がアンデッド化していれば終わりだ。


「だがアンデッド化するとテイマーに察知されるのではないか?」

「テイマーといえど、ずっと監視できるわけではないとの事です。同じテイマーが言うのであれば間違いないでしょう。夜、寝ている個体は問題ないはずです。そろそろ炎竜が使えるようになる頃だということなので、警戒したほうが良いかと」

「飛竜隊は少し離れた所で待機させている。……目的地はすぐそこだ、野営とするが何があってもおかしくはない。気を引き締めさせろ」


 徐々に暗くなる空。

 明かりをほとんど灯さずに月明かりのみで行動する。

 食べ物も今日は保存食で火を使わない。

 徹底して匂いと音と明かりを出さずに過ごすのだ。


「敵襲!」


 夜間に上空を飛ぶ影を見張りが捕らえた。

 全員が武器を引き寄せ、警戒態勢へとはいるが攻撃はまだしない。

 大きめの飛竜の影、炎竜だ。

 その他見たことのない飛竜型の何か。


「全員動くな。ここにいることを気取られぬようにしろ」


 ささやき声でそれらが伝えられていく。

 まだここまで来ているとは悟られないため、無駄な被害を出さないため。

 今はじっと待つ。


 夜明け前に発ち、夜明けとともに攻撃を開始するためにもここはまだ我慢しなければならない。

 砦を奪った後、テイマーはホーマ帝国軍を見失っている可能性が高い。

 自分たちでもまさかあそこまで早く砦を落とし、占拠できるなどと思っていなかった。それも2つもだ。

 砦にテイマーが居たのだから、そこからの連絡待ちだったのだろう。

 事実、あの後全く攻撃が来ない。


 今も上空を飛んで行ったのみでこちらを発見した様子がない。

 つまり……。


「やはり、こちらを見失っています」

「ついに奴らの監視から外れることが出来たか。ここに来てこれは幸運というものだ、これで敵に気づかれずに攻撃ができる……。不死隊はどうだ?」

「8割ほどを既に吸収したようです。想像以上に速い」

「……恐ろしいな、アンデッド……強力な個体が居れば街が滅ぶ……間違いではないな」


 あくまでも入り込めば、だが。

 自然発生的に出てきたアンデッドならここまでは出来ない。やれるようになるまでかなりの年月が必要だ。

 だからこそ、死霊術師は忌み嫌われる。

 たった一人で国を相手にする戦力を手に入れることが可能なのだから。

 ホーマ帝国でも許可された時にしかその力を使うことは出来ず、無断で力を行使した場合有無を言わさず死が訪れる。


 今はその時だ。

 この国を潰すために使う。


「それにしてもどうやって気づかれずに……」

「強制的に眠らせて、そのまま殺しているようですね。数が多いからこそ出来る事です」


 人の意識を混濁させたり、眠らせたりという力を持っている。

 生きていた頃にはなかったはずの能力だが、周囲にいる者を無差別に眠らせていく事が可能だ。

 ただし、敵対するなど警戒されていない事が大前提だが。

 ある程度気を引き締める程度でも弾かれてしまうほどに弱い効果だ。しかし……仲間が増えて心強く思っているので彼らには心を許している位だ。覿面に効果があっただろう。

 夜に実行するのも見張り以外が眠りにつくためであり、それぞれのテントへ紛れ込んだ彼らが眠りについた者達を更に醒めない眠りへと誘う。

 ……様子がおかしいと思った時にはもう遅い。


 交代すると言って仮眠しに戻ってきたものは取り押さえられて心臓を貫かれる。

 一言も発することも出来ずに次々と死に、そして敵側として蘇ってゆくのだ。

 こちらにとっては嬉しいが、向こうにとっては悪夢そのものとなる。


「……制圧が完了しました」

「そのまま待機させておけ。上から見ても異変がないと思わせるのだ」

「は。……では、彼らは我々とは別行動させますか?」

「聞こう」


 都へと戻るように指示されたことにする。

 伝令が来て、相手の消息がわからなくなった事で一度都へと戻り、迎え討つ準備をしろと言われたと。


「元々エフェオデル兵です。生きている人のフリをするのは簡単なことです」

「しかしそんなこと簡単に信用すると思うか?」

「元々作戦に入っていなかった撤退令など、信じるわけがありません。……しかし自軍が戻ってきてしまったことは事実。となれば誰かがそうする手引をしたものと考えるでしょう」


 自分たちの軍であることは確実なのだ、だからこそそう仕向けるものが居たと考える。

 そしてそれは自分たちの敵であることを疑うことはないはずだ。

 自分たちを一箇所に集めてどうするつもりなのか、多少なりとも混乱することだろう。


「良いだろう、認めよう。内部に入り込ませて情報を掴ませろ」

「ええ。同時に仕込みをしていければと。話を聞いていれば相当広い都ということだったので」


 防衛にも適したように作ってある場所だ、そうそう大きく破壊することなどは難しい。

 そこにアンデッドの集団が紛れ込んでいれば話は変わる。

 誰にも気づかれずに行動できる潜入者の存在は大きい。

 見た目には分からない破壊行為を行わせ、何かが起きた時の耐久力をなくす。

 障害物を設置してスムーズな出兵を行えないようにする。

 人が集まる場所に爆発物を仕掛けるなどなど。


 色々と使いようはある。


 □□□□□□


「どういう事だ……?」

「長……?」

「使役獣が何頭かやられている。いつの間に……」

「黒い魔物が、ですか?」


 使役していたはずの黒い魔物の反応が幾つか消えている。

 帝国軍迎撃のために出した魔物混成軍も同じだ。

 炎竜とともに出した飛竜型は相手の影を見つけることは出来ず、突如として帝国軍は監視下から消えてしまった。


「……前線の砦へ人を送れ!飛竜型を貸してやる。今すぐだ!」

「はっ!」


 第3砦と呼んでいるその場所に帝国軍が攻めてきたことは知っている。

 そしてテイマーからの報告で確かに戦闘があったということも。

 しかし、撃退に成功したという報告の後、第2砦から向かった兵達による奇襲が掛けられそれによって多大な被害をもたらしたということを伝えた後は特に動きがない。


 暫くして、息を切らせて伝令が入ってくる。


「第3砦、もぬけの殻です!!」

「何があったのだ!?詳しく報告しろ!」

「は!……飛竜によって上空から確認した所、砲撃の跡が残った第3砦が見え、火の光が一つも見えなかったことに不信感を覚えて降りた所……誰も、居なかったということです」

「意味が分からん、戦闘があったならば死体があるはずだがそれすら無いということか?」

「そのようです。その場から消えたかのように何も」


 第2~4砦に関しては帝国軍を防ぐために防衛とその応援を命じていたが、接触したはずの第3砦のみが消えている。

 生きている者が誰も居ないのではなく、全員が逃げ出したかのように人が居ない。


「報告、第2砦も誰も居ません!」


 おかしい。

 何かがおかしい。

 魔物も人も全部消えている。


「失礼します!」

「今度は何だ!?」

「第2、第3砦、そして迎撃に出た攻撃隊がここに……」


 先程、帝国軍迎撃に出ていた者達と、もぬけの殻と言っていたはずの砦の兵が全員この都まで来ているというのだ。

 帝国軍と戦っている間に伝令が来て、砦を捨て後退し、都の防御へ回れという命令が下された為に従ったという。

 途中で合流した迎撃隊にも同じ命令が下っており、よくわからないながらも別働隊の存在が明らかになったのかと思ったという。


 しかし、都の方ではそのような命令を下しているわけではなく、双方の言い分に齟齬が出てしまったため少し門で混乱しているようだ。

 今から送り返すにしても、確かに見失ってしまった帝国軍を迎え討つためには戦力が厚い方が良いこともあり、一旦内部へ入れて仕事を割り振っていくことにしたのだった。


「長、敵の一部が我々の鎧を奪って工作している可能性があります」

「偽の伝令に惑わされたか。……使えない奴らだ……もう良い。敵は見失い偽の情報に惑わされ、味方同士で混乱している場合か?」


 この連中が使いものにならないのであれば、自分が指揮を執ればいい。


「黒の軍勢を出す。少しでも逃げ腰になればすぐさま後ろから食われると思え」


 黒い魔物たちのことだ。

 人型から動物型、そして飛竜型まで様々な魔物が存在し、それら全てが何かしらに特化した存在だ。

 全て合わせて400程度の少ないものだが、厄介な能力を持つことには変わりない。


「プラウラーを出す。まずは奴らが何処にひそんでいるのか探し出し、その後炎竜で焼き払え」

「は、はっ!!」


 プラウラーは斥候役に最適だ。

 気配の察知能力に長けており、目的の者を見つけるのに適している。

 見た目は大きめの蝙蝠と言った形で夜目が利き、察知能力と共にかなり厄介な存在だ。

 攻撃力は怪音波による鼓膜と脳の破壊で一度に複数を相手にすることが出来る範囲攻撃なので注意が必要だ。

 無論、敵味方の区別はない。


 ひそんでいると思われる方角へ向かって20のプラウラーが放たれ、都の前には黒く巨大な地竜のような魔物が闇に潜んでいた。

 全身が鎧のようなこの魔物は、見た目のとおりに攻撃が通りにくい。

 50mを超す巨体は動いているだけでも脅威だが、これに更にブレスが加わる。

 防衛としては最適な魔物だろう。


 砦の周りの潜むことができそうな場所にはゴブリン型の魔物たちが多数潜んでいる。

 こちらは見た目通りだが、魔法による攻撃が得意で逃げ足が速い。

 その代わりに近づかれてしまうとやたらと弱いが、近づくまでに強力な魔法を雨のように喰らうことになるだろう。


 都も分厚い壁と多数の人員による防御態勢が整いいつでも迎え撃てる状態へと移行していく。

 ここまであまり使ってこなかった飛竜達もまた、都の防衛のために空を舞っている。


 ここで帝国兵を討つ。

 絶望を味わい、泣き叫びながら死んでゆくのをここで眺めるのだ。


 □□□□□□


「無事、侵入したようです」

「ここまで上手く行くとはな!これはもう勝ったも同然だろう!」


 顔を見合わせてにやりと笑う。

 少しばかり怪しまれたらどうしようかと思っていたが、そんな事は全く無くこちらの思い通りに事が進んでいく。

 幸運はまだまだ続いている。


「斥候より報告。都方面から魔物が解き放たれたようです」

「数と種類は?」

「どちらも不明です。見た目は蝙蝠ですが見たことがない黒い魔物です」

「向こうの斥候代わりだろう、見つからぬよう細心の注意を払え」


 動き出したようだ。

 飛竜と合わせて索敵範囲と密度を増やしているということだろう。


 1日攻撃を遅らせたのは間違いだったか?

 いや、そんなことはないはずだ。守りが固くなったのは仕方ない。

 ただ見たこともない魔物がいるというのは気になる。

 どういうタイプのものなのか……。

 偵察に適した能力を持っているとすればなんだろうか。


 などと考えていると、突然地響きとともに激しい爆発音が響き渡った。


「何事だ!?」

「敵襲です!炎竜他飛竜が多数!」

「居場所がバレた!?くそ、先の戦闘を思い出せ!魔法隊に通達、風によってブレスを逸らせ!まともにやりあっても無駄だ!」

「飛竜隊は準備でき次第上げろ!」

「魔鎧兵隊は飛竜隊と組んで反撃を!」


 急ぎ魔鎧兵へと向かい、起動する。

 意識が薄れて瞬きするとそこはもう既に視点が高い位置にある。

 幸い木に邪魔されてブレスも見当違いの場所を攻撃していたりしている。

 例の蝙蝠は目に頼らずともこちらを感知できるのか?


 魔鎧兵隊全員が集まった所で飛竜隊がいる場所まで移動し、それぞれが1機に付き飛竜1匹でペアになり空へと飛び上がる。

 飛竜への負担はあるものの、そこまで時間をかけるわけではない。


『魔鎧兵隊、大砲用意。飛竜隊の火弾に合わせて直接叩き込め』

「飛竜隊、絶対に魔鎧兵に攻撃を当てるな!死ぬ気で躱せ!目標は敵飛竜!」

『蝙蝠の方を先に落とせ!目を奪うのが先だ!』

「聞いたか!?最優先目標は蝙蝠だ!上がれ!上がれ!」


 次々と舞い上がり加速しながら上昇していく。

 敵の飛竜を超えて上昇し……。

 一斉に降下しながら火球と大砲が火を吹いた。


 流石の炎竜も突然背中に感じる衝撃と、次々と自分の翼を突き破って行く弾丸によって墜落し、派手な土煙を上げて暴れまわる。

 地上ではそれを見た兵士達が雄叫びを上げて群がってゆく。

 なにせ炎竜だ。これを倒せば戦況が変わる。そして素材が手に入れば……いや、アンデッドと化した炎竜が居ればこちらが優位に立てるはずだという思惑もあるが。


 魔鎧兵を掴んでいない火竜達は次々と蝙蝠を落としてゆく。

 怪音波も流石に飛竜には効果はなく、一瞬影響を受けるもののその次の瞬間には巨大な顎によって噛み砕かれていた。

 その前には蝙蝠の攻撃によって地上の兵士達に被害が出ていたものの、最小限に食い止められたと言っていい。


「もう一度炎竜に叩き込む!その後ディノス隊を地上におろせ!他は黒い飛竜を!」


 また空高くへと上昇して加速を付けて落下する。

 地上の味方はそれを見ると即座に散って攻撃に巻き込まれないようにしており、それを確認しながら射撃のタイミングを待つ。


『撃て』「放て!」


 ほぼ同じタイミングで発射されたそれらは通常よりも速度があり、それによって上乗せされたエネルギーはついに炎竜の背中の竜鱗を破壊することに成功する。

 初めての痛みに激昂する炎竜だったが、上から下から攻撃を受け続け、徐々に氷魔法によって弱っていった。


 自慢のブレスも吐き出す前に口を攻撃されてタイミングを失い、トドメとばかりにディノス隊が駆けつけてメイスで強力な一撃を食らわせていく。

 小さなとるに足らないはずの人間たちによって、その剣技と魔力の相乗効果は足元の肉を絶ち、複数人数での強力な魔法によって苦手な冷気が身体を包み込んだ。


 炎竜が生きて見た最後の光景は、大きな鎧を着た何かが自分に向かってメイスを振り上げているものだった。


 □□□□□□


『こいつら速いぞ!』

「囲め!絶対に逃がすな!」


 一方まだ空にいる者達は黒い見たことのない飛竜に手間取っていた。

 数は少ないものの、瞬間的な加速とでたらめな機動によってなかなか捉えることができずにいる。


 1匹が前方に加速し、突然その場で後ろを向いたかと思うと……。

 闇よりも暗いレーザーのようなブレスが1匹の飛竜とそれにぶら下がっていた魔鎧兵を飲み込んだ。


ディノス達の活躍ももう少しで終わります。

戦いの果に何があるのか……。そこを書き終わったらまたテンペスト達の活躍が見れることでしょう

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