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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第五章 英雄ディノス編
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第百三十九話 英雄として5

「敵襲!!」


 あちこちから聞こえる敵襲の怒鳴り声と、けたたましい鐘の音で叩き起こされた。

 急いで東門の方へと行くと既に戦闘が始まっている。


「魔物か!?」

「はっ、翼竜がおよそ20!狂い鳥およそ30!他にも角蝙蝠が確認されています!」

「このまま対応を続けろ!投網はあるか!?」

「準備中です!終わり次第、固まっているところへ発射します!」


 全て空を飛べるもので揃えてきた。

 こちらの火竜は食事の問題もあって一時的に下げた所でタイミングが悪い。

 大きめの翼竜は大分落ちたが、狂い鳥と角蝙蝠は動きが早かったり不規則だったりでなかなか落とせないでいる。


 狂い鳥は翼竜よりも小さめながら、凶暴な鳥で夜行性。どこからともなく突然滑空してきて鋭い爪とくちばしで獲物を切り裂く。

 そうして仕留めた獲物が失血死すると降りてきてゆっくりと食事をして行く。

 的確に急所を狙ってくる上に音がほとんどしないので気をつけていないと危険だ。


 角蝙蝠は頭に角が生えたような蝙蝠で大きさは人が手を広げたほどもある。

 一定範囲内に目眩と吐き気を引き起こす音を鳴らしたり、最悪の場合には目や鼻から血を流して死ぬ。


 どれも矢で射落とすのが難しいし、ライフルであってもまだそこまで慣れていない者達が当てれるわけもない。

 ただホーマ帝国は海で使う投網を空に対して使うことを思いついた。

 大砲に目の細かい投網を仕込んで発射することで、飛んでいる敵を絡めて落とすのが目的だ。

 落ちた空中の敵は槍で突くなりして止めを刺せばいい。


 ここで火竜が居ないのが悔やまれる。

 炎のブレスで一撃だっただろうに、ここまで苦戦することになってしまった。


「投網準備完了!」

「魔法隊!風を操って一箇所に集めろ!」

「まだ、まだだ……よし今だ!あの固まっているところへ撃ち込め!」


 ズン、と腹に響く音と共に投網が発射される。

 絡まること無く綺麗に展開した投網はいい具合にまとまった魔物たちを絡め取って地面に叩き落とした。

 ギャーギャーとわめきながら地面の上で暴れている奴らを凍らせて始末し、空に残っている物も全て射落とすことに成功する。


 死人が数名出てしまったが、怪我自体はすぐに回復できる程度に留まった。

 かなり早めに気づいて対処できていたために被害は少なくて済んだ。

 街の中の被害も特に問題ないレベルで、今回は大勝利と思っていいだろう。


 エフェオデル側には特に誰かがいるような感じではない。


「……こちらの出方を探られたか?」

「しかし応戦しなければこちらがやられます」

「仕方ない。このまま朝まで警戒を続けろ。特にエフェオデル側に人影が見えたらすぐに報告するんだ」


 捕虜として確保した奴らを尋問することである程度口を割らせようとしているが、今のところ何も喋らない。痛みに対して極度に耐性が有るようで、痛みを伴う拷問はあまり役に立たなかった。

 他のが手に入るならそちらからも聞いてみたい。


 報告だけを聞いていた捕虜への尋問だったが、明日顔を出してみることにしよう。


 □□□□□□


「ディノス様!何もこんなところまで来なくともお呼びいただければ……」


 へこへこと頭を下げながら来たのは、血だらけの服をまとった拷問官だ。

 なんとなく在りし日の自分を思い出して嫌な気分になるが、血を見て少し興奮しているのも確かだった。


「いや、見ておきたかったのだ。何をされてもうめき声一つ上げなかった……と言っていたな?」

「はい……こんなのは初めてでして」


 薄暗い独房の中、天井から手枷に繋がれた捕虜が吊り下げられている。

 裸のそいつは見るに堪えない姿となっているが……これでもまだ何も言っていないらしい。

 よくそこまで耐えるものだ。


「ただ、数日前から少しずつ様子がおかしくなって来ていまして……」


 話を聞いてみると、時折痙攣したように震えだす時があるらしい。

 その時には脂汗を流して苦しみに耐えているような表情をしていたらしいが、いずれのときも拷問中ではなかったので放置していたようだ。


「……ただ、我慢しているだけか?」

「我慢しているだけなら分かるんでさ。長年苦痛を与え続けていると何が平気で、何が駄目かちょっとした目線の動きだけで感じることが出来ますもんで」


 痛みは感じていないらしい。

 だが、その目の動揺から少なからず自分の身体が削がれていく事に対する不安感や恐怖と言った物は僅かながらにあるようだ。

 だからこそ目には全く手をかけていない。

 ゆっくりと傷つけられていく身体を見せつけるために。


「……所で気になるのだが、薬を使っている可能性はあるか?」

「考えましたがね、ここまで薬を絶ってもまだ元に戻らないってことは無いかと。それに痛みを消して恐怖もあまり感じさせないなんて薬は聞いたこともないんで……」


 戦いの時に興奮させて戦意を向上させる物はある。しかしそれで恐怖は抑えられても痛みは抑えられない。

 それもここまで長期間続くものなど今のところ聞いたことが無い。

 ディノスもそれは同じで、どちらかと言うと苦痛を倍増させる薬の方に詳しい。

 拷問を喜々としてやってきたのだから、苦しみを与える方法ならばよく知っているのだ。

 回復や苦痛を和らげるものなどは、すぐには殺さないため位にしか使わない。


「効くかどうか分からんが、解毒薬でも飲ませてみるといい。薬だとすれば少しは効果が薄くなるやもしれん」

「へえ……なるほど。やってみまさぁ」


 次の日にの朝に報告が上がっていた。

 目論見は当たっていたようで、飲ませてから数時間後突然苦しみ始め暴れだした。

 今まで痛めつけてきたものが一気に襲ってきたために、何かを聞くどころではなく覚醒と昏睡を繰り返していたために麻酔薬を使って痛みを軽減させ、話ができるようにしてから色々と聞きだしたらしい。


 結果、恐れを知らない勇猛さや、痛みを感じず筋力を増すという状態はやはり薬によって行われているようだ。


「エフェオデルの連中は食事の時に一緒にそれを摂っていると……そんなに摂り続けていたら耐性ができるのではないのか?」

「詳しいことは分かりませんが、あれを見る限り耐性は付かないのでしょう。そのせいもあってエフェオデルでは幼いころから同年代同士での喧嘩で死人が出ているようです。生き残った強いものたちだけが戦いに出ることが出来ると」


 戦士として男は生まれ、大人になるまでに死ねばそれは戦士としてふさわしくなかった為。

 喧嘩はそのまま殺し合いとなり、両方が生きて終わることはまず無いという。

 そして魔物を狩ったり、戦争へ出るということはとても誇り高い事で、戦地で死ぬことはエフェオデルの男たちでは最高の死に様となる。


「あの捨て身の攻撃などはそういうことか。捕らえた奴らは逃げるつもりだったがそれはどうなんだ……。誇り高いとは言えないと思うがな」

「戻って詳しい情報を持ち帰って死ぬつもりだったようです」

「なるほど、後続にそれを伝えるために不名誉な死を受け入れるつもりだったということか。魔物に関しては聞き出せたか?」

「詳しくはわからないそうですが、魔物はテイマーと呼ばれている女たちが操っているようです。テイマーはどういうわけか魔物たちを自分の配下として従えて、その魔物と同調することが出来ると」

「……やはり偵察させることができたか……。わかった、他にも何かわかったことはまとめて報告しておいてくれ」


 それにしてもよくもまあべらべらと吐いてくれたものだ。

 今までとはえらい違いだ。


「今まで傷を負っても痛みを殆ど感じず、恐怖も知らなかったせいでしょう。拷問の痛みは普通ならば死ぬ手前まで痛めつけていますので、それが初めての痛みだとすれば……」


 少し想像してたしかにそれは辛いだろうと思う。

 今まで痛みなど知らなかった奴は小さな切り傷ですら泣き叫ぶものだ。それが皮膚を切り裂かれ、削がれているのだ。子を成すことすら出来なくなっていた程の状態で正気に戻ったら発狂するだろう。

 痛みを抑えなければそのまま死んでいたかもしれない。


「ゾッとするな……。しかし向こうの手の内は分かった」


 大手柄だ。

 テイマーが魔物を複数操れるということが分かり、それのどれかに同調できるということだから魔物が襲ってきた時にはこちらの様子も全て見られているということだ。

 基本的にテイマーは国の中央から動くことはないようなので攻め込まない限りは倒せないだろう。

 かなり厄介な存在だ。

 魔物は沢山補充が効く上に、迫ってくる兵は恐れ知らず。

 何かのきっかけで一気にこちら側の士気が崩壊する可能性は高い。


 だからこそ、近づかせる訳にはいかない。

 飛竜は確実に必要だ。


 □□□□□□


「もう出来たのか……」

「皆、ディノス様の為にとよく頑張っているようです」

「有り難いものだな」


 魔鎧兵の倉庫へ案内され、そこにあったものは3体の完成した魔鎧兵だ。

 最低限の装備では有るが、確実に守らなければならないところはきちんと守られており、関節の動きは阻害しない。


「ふむ……少々心もとないが、腹は守られているな。この状態で開けるのか?」

「大丈夫です。守りは最低限ですが、攻撃用に手足の部分にはプレートを付けてあるということです。武器は……あちらのメイスとなります」

「……後で少し動かしてみるか。大砲の方はどうだ?」

「試してみた所、普通の大砲でも手持ちで扱うことは出来るようでした。確かに一人で大砲を扱えるというのは便利です。今、急ぎでライフルを参考に改良をしている所です」


 装弾の仕方変更して一発一発中折式で詰め込み、発火は魔晶石を使って行う。

 太い指でも扱えるように工夫しているそうだ。


「完成が楽しみだ。……少し動かしてみてもいいか?」

「はい。問題ないそうです」


 乗り込んで見ると確かに腹部の扉に干渉しないように上手く作られている。

 しかし弱点であるつなぎ目のところは確実にカバーされており、素材もそれなりのものとなっていた。

 流石に魔法金属製ではなかったのであまり防御に期待は持てないが、それでもかなり丈夫であることには変わりないだろう。


 武器の方は指定はあまりしていなかったが、基本的に振り回すメイスにしてあるのはいいことだろう。

 切るよりも叩き潰すほうがパワーを活かせる。

 背中側の装甲は飾り程度なので、後ろに回られないように気をつけなければならないだろう。

 ヘルムも視界を遮らない様になっている為、矢の攻撃には注意が必要だ。


「いいと思う。7機揃うのはいつになりそうだ?」

「後4日程度とのことでした。大砲も含めれば6日は欲しいと」

「問題ない。このまま続けるといい……それと、これに乗る人員は決まったのか?」

「鎧のない状態で希望者を乗せて試し、厳選しておきました。6名揃っております」


 扱う事に関しては男女は関係なく、種族も問わないことから希望者は多かったが……性格やその人自身の技量などから厳選していき、最終的に6名が選び出された。

 残る1枠は当然ディノスだ。


 6人を呼び出して早速模擬戦をしてみる。

 型通りの簡単なもので打ち合ってみてどの程度違和感があるのかなどを試していくためだ。

 やはり、分かってはいたが関節の自由度がかなり低いため、人の身体で出来るように作られた剣術などはかなり制限されることが分かる。


 意外にも関節技などが有効で、肩の関節が後ろ側に全く回らないことから腕を掴んでしまえば後はどうにでもなるのだった。

 1人格闘戦が上手いという人物が選ばれていたのでやらせてみた所、連戦連勝となる。


『感触はどうだ?』

『試験の時に思いましたが……関節が固すぎてまともな技としての格闘は無理です。しかし、同じ魔鎧兵同士であれば相手の攻撃さえ躱せればほぼ無力化出来ると感じました』

『やはり関節の動かしにくさは改善しなければならんな』


 そして、人のサイズに近い小さな者を相手にすると、その身長差のためにかなりやりにくくなった。

 一気に囲まれると不味いだろう。

 思いっきり蹴散らせばなんとかなりそうでは有るが、やはりここでも関節の硬さのせいで足を使って薙ぎ払うなどの行動ができない。

 必然的に踏みつけとなる。


 その時、倉庫の隅でほうきを持って掃除をしていた街の人を見て少しばかり思うところがあったが……。

 流石にそれは見た目的にも酷いと思い直すのだった。


 魔鎧兵を降りて改めて6人に感想を聞くが、確かに動き難さは感じていたという。

 ともかく今は改良をしているような暇はない為、今の状態で慣れておくしかない。


「しばらくしたら大砲も完成する。兵は遠いところからの者達がまだ到着していないが、揃い次第将軍から発表があるだろう。それまでになるべく何度も乗って動きを確かめておいたほうがいい」

「全て出来上がるまでは今の3機を交代で使って感触を確かめていきたいと思います」

「そうしておけ。基本的に魔鎧兵は大型の魔物を相手にすることになるだろう。生身の奴らの盾になれれば生存率は上がる」


 軍の生存率を上げないと、いざエフェオデルの本隊と戦う時に既に消耗しているということにもなりかねない。

 その為の盾として脅威を叩かなければならない。


 □□□□□□


 ……ついにこの時が来た。

 今回のエフェオデル侵攻に向けて全ての兵が揃った。

 大分時間はかかったものの、十分な食糧と武器、装備が整っている。

 このクラーテルを防衛するために必要な人数を置いていき、エフェオデルの地へと足を踏み入れることになる。


 歩兵が多いため当然ながら距離はあまり稼げないものの、今回は飛竜も30匹ほど連れてきているため広範囲の索敵と敵の殲滅が出来ることだろう。

 当然完成した魔鎧兵も、普通に走るだけでもかなりの速度が出るため危険度が高い魔物が出た時には出し惜しみせずに使うことになる。

 ちなみに魔鎧兵は私を含めて10機まで増えた。


 ベースとなったグランの一体は解体されて研究が進められているだろう。

 戻ってきた後に構造がわかれば更に高性能なものも作れるに違いない。

 魔鎧兵の存在を知らなかった者たちは魔物が襲ってきたとパニックになっていたが、味方であることがわかると目に見えて士気が上がっていたのを思い出す。


 身長が自分達の倍以上有る厳つい体型の魔鎧兵だ、全ての魔物を打ち倒す最高の戦力であると思っただろう。


 魔鎧兵に乗り込んで出てみれば、クラーテルの東門前の広場に収まりきらない程の兵たちが整然と整列してる。

 全員が揃った所で将軍から話が始まった。

 よくぞあれ程の声を出せるものだ。


 今回の戦争をする理由。ホーマ帝国内に魔物を侵入させてクラーテルを乗っ取り虐殺を繰り返した。

 更に毒を使い帝都の人間までもが苦しめられた。

 相手は得体の知れないエフェオデルの兵士と魔物、しかし退けるのが精一杯だった昔とは違いディノスがやってきて有用なものを次々と開発していった。


 そして魔導車と魔鎧兵を作り上げた。


 だからこそ、今こそ攻めるときなのだ。

 二度と抵抗する気など起きぬように叩き潰し、思い知らせてやるのだ。


 そういう内容のことをしばらく大声で怒鳴り続け、手を上げて合図を送るとエフェオデルへ向けて折りたたみ式の橋が渡される。


「我に続け!」


 その声に雄叫びを返す帝国兵。

 先陣を切る将軍の魔導車に続き、兵たちが動き始める。


 ディノス達魔鎧兵は伸びきるであろう隊列を守るため、一定間隔で最後尾までを護衛する。

 特に大事なのは兵站だ。食糧他様々な物品を抱えている部隊が壊滅すれば、そこで餓死が決定する可能性がある。


 何としてでも守らなければならない。

 自然とメイスを握る手に力が入る。


 見た目の割に丈夫な橋を渡りきり、ついにエフェオデルの大地に足を踏み入れた。

 上空では飛竜と竜騎士により索敵が開始され、弱めの魔物は飛竜の姿を見た瞬間から居なくなっている。


 その飛竜の内二匹が加速して前へと姿を消す。このまま前進、高度を上げて偵察に入るためだ。

 こちらの歩みは遅いものの、集まっているのはある程度以上の戦力を持った兵士達だ。

 今回の侵攻には技量の低いものは入れなかったそうだが、それもエフェオデルの兵に関しての報告が届いていたからだろう。

 襲撃のあったときからはかなり時間が経っているが、そのかわりこちらの準備も整っている。


 右前方で火弾を発射する飛竜が見えた。

 脅威度の高い魔物が居たのだろう、そのまま降下して強靭なその両足で哀れな獲物を持ち去ってゆく。

 飛竜達の食糧はこうして魔物を狩ることで得る。

 ただでさえ大食らいの飛竜達だ、とてもではないが持って歩ける量ではない。

 腹を減らさない程度にこうして食料代わりにすることも認めているのだ。


 あまり腹を減らせてしまうと、最悪自分達が餌になるのである意味必死だったりするが。


 そうして行軍2日目の明け方に偵察に向かっていた飛竜からワイバーン一匹を発見したという報告が入る。

 その場で普通の飛竜のふりをして食わせたが、単独行動しているということは恐らく敵の偵察だろう。

 後方までは見られていないはずなので恐らく魔鎧兵のことはまだ知るまい。


 隊列の先頭から後方に向かって伝令の馬が駆ける。


『魔鎧兵隊、魔物の襲撃に警戒しろ!』


 偵察が来たということは、また魔物の襲撃が迫っている可能性がる。

 出発するまでに何度か襲撃を受けたが、大抵はその偵察が行われた後に行われていたのだ。

 魔鎧兵がそれぞれ武装を解除して守っている隊列から少し離れる。


 歩いているところは草原だが、近くには森も有る。

 上空からの視線は通らない。

 警戒をしている時に上空に1羽の鳥が飛んでいるのに気がついた。

 それはありきたりな猛禽で、よくこうして円を描いて飛んでいるのだが……。


 そう言えばこの鳥は隊列から付かず離れずでずっと付いてきていなかったか?

 嫌な予感がした。

 魔物を操れるというのであれば、魔獣は当然として普通の獣なども範囲に入っていてもおかしくはないだろう。なぜそんなことに気が付かなかったのか。


 じっと観察していると、何か不自然なバタつきがあったあと、すーっと別な方向へと飛び去っていった。


『伝令!全軍に通達!敵のテイマーは獣も操れるぞ!隊列を見られた!』


 了解の合図を出して伝令から伝令へと伝えそれぞれが全てに声を届けていく。

 当然将軍にも伝わり、突発的な戦闘に備えるようにという伝令が伝わってきた。


 こちらの様子を探っていたのであれば、この隊列の人数とそれぞれの配置、飛竜と魔鎧兵の数がばれているはずだ。


 そうこうしている内に森が広がっている左前方の飛竜が敵襲の合図を出す。

 すぐに飛竜達が高度を下げて横並びに炎のブレスを森へと叩き込み、火災を誘発させた。


 身体に火を付けたままで隊列に向かって突っ込んでくる多数の魔物達。

 それは異様な光景ではあったが、覚悟していなかったわけではない。

 かなりの数を飛竜達が焼き払ったものの、それでも取りこぼしは出てくるのだ。


 遠距離攻撃のできる魔法隊と弓兵隊、ライフル隊が即座に展開して掃討を開始し、近くに居た魔鎧兵もそれに参加する。

 魔導車の機動力を生かして敵を攻撃しつつ一箇所に集まった所で、また飛竜の攻撃を受けて魔物たちが消し炭になっていった。


 しかしまだまだ森の中からは大量の魔物たちが溢れてくる。

 そして、グランシミア……森の巨人と呼ばれている、大きなものでは体高4mを超える巨大猿の群れが現れた。

今まであまり強く感じたことのなかった他の人を守るための戦い。

いつも他人に戦わせてきたモンク司祭が、自分では感じていないが人を率いて英雄として戦いに向かうということを当然のものとして捉え始めました。

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