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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第五章 英雄ディノス編
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第百三十三話 英雄として3

ちょっとだけ時が遡ってホーマ帝国、ディノス達のお話です。

時は少し戻ってホーマ帝国、クラーテル。

蛮族国家として名高いエフェオデルからの襲撃を受け、占拠されてしまったクラーテルへホーマ帝国軍が進軍する。


先の魔物の集団を壊滅させ、その後ろに続いていたエフェオデルの軍勢を滅ぼした。

その後、一度補給をした後にクラーテル奪還へと目的を変更し、現在向かっているところだった。

後方の帝都でも毒の混じった水を飲んで市民を含め相当な人数が治癒師の元へと運び込まれているという。

安全な飲水を失い、別なところから水を引っ張ってきているものの……全員に行き渡るものではない。

特に進軍中のディノス達に関しては途中の湖などで休憩を取りつつ、消費を気にしながらとなることで進軍速度は落ちていた。

それでも既にクラーテルまで後一歩のところまで来ており、開けた土地柄これ以上近づけば気づかれてしまうためにそこに足止めを余儀なくされていた。


「偵察隊が戻りました、将軍」

「クラーテルの様子はどうだ?」

「領主と多数の貴族が門の前で串刺しとなって晒されておりました……。女や子供の姿もあり、恐怖によって支配を進めたようです」

「なんということを……!敵の状況は分かるか?」

「街を囲う壁の上に見張りが立っておりましたが、数は少なく全てを見通しているわけではないようです。竜騎兵による上空からの偵察では、街中に人気はほとんど無く……中央の砦へとかなりの人数が詰め込まれているようです」


飛竜からの偵察は、上空という遮る物のない状態で見ることが出来る分、正確な事がわかるが……距離が離れるためにどうしても細かい情報までは付いてこない。

それでも望遠鏡を使って少しは観察できるのだ。

結果分かったことは、相当数の虐殺があったであろう血塗れの石畳と、即席の断頭台。

抵抗力を奪うために衣服を剥ぎ取られ裸にされた男女が、エフェオデル兵士によって働かされている光景。


人を人として扱わないその光景はホーマ帝国軍を怒らせるには十分過ぎる内容だった。


「……分かった。では、今から軍を3つに分ける。ディノス隊はそのまま魔物を蹴散らしたときのように奇襲とその装備による制圧を担当しろ。後から合流した私の部隊を分けてアグル隊を編成する。私の部隊が正面から陽動として注意を引きつける、それに合わせて伝えておいた抜け道から中へと入り込み中の状況を知らせろ。その情報をディノスに伝えてやれば上手いことやってくれるだろう」

「おまかせを。もともと私が居た街です、壁の厚さなどは把握できているので問題ありません。扉は一瞬で抜けられます」

「ディノス殿の部隊は機動力と攻撃力が高い、我らが敵のいる場所を指定するのでそこへ攻撃をしてもらいたい」

「アグル殿は潜入が得意とか。頼らせていただきます」


敵地へと潜入し、破壊工作を仕掛けたりなどが得意なアグル。

自分達の部下も連れてきているが、大半は将軍の部下となるためいつものような繊細な行動は出来ないだろうが、それでもある程度の人数を敵地の後ろに配備できるというメリットは大きい。


急ぎ部隊を編成し直し、それぞれに指示を与えていく。

決行は今日の深夜寝静まった所で開始される。


□□□□□□


2重構造になっている街の壁。この中空の場所は有事の際の脱出路などとして活用されるはずだった。

しかし魔物の襲撃によって扉が破壊され、あっという間に中央部まで食い破られてしまった結果、それを使うこと無く壊滅していったクラーテル。


今、その数ある内の脱出路の幾つかへ隊を分けたアグルの部隊が入っていった。

壁の上にいる兵士は既に叫び声をあげる事無く、ロープ付きの矢で頭を射られて壁の外へと引きずり降ろされていた。


アグル隊の反対側、魔物によって被害を受けた門の1つへディノス隊が待機している。

距離は離れているが、魔導車と魔導三輪による機動力は騎兵隊にも勝る。

倒したエフェオデル兵の頑丈な盾を前面に配置して、攻撃を受けてもなんとかなるようにしてあるが、これが騎兵隊であれば重い盾は足かせにしかならない。

パワーのある魔導車だからこそ可能な事だ。これも以前自分の国で作られていたものであれば役に立たなかっただろうが、今は違う。

ホーマ帝国の技術力とサイラスの知識によって性能は格段に底上げされているのだ。


見張りから見えないように木の陰に隠れ、大砲を上に向けて待機する。

合図と目標指示が出たらそこへ向けて打ち込むのだ。


暫くして発光信号が夜の闇に輝く。


「街中はほぼ無人、人質、領主の砦周辺。敵拠点、距離700、我を狙え。爆発の後、攻撃」

「なるほど、考えたものだ。我々がここにいることが分かっていれば直線を結べば距離を伝えるだけで大まかな場所がわかる……。領主の土地とは言えあの中に全ての住民を入れることは難しいだろう、大半が殺されているなどしている可能性は高いか」


了解の信号を送り、正門で将軍たちの陽動を待つ。


「既に見張りはほぼ入れ替わっているようです。遠目では誰が誰だか分からないでしょうしまだ気づかれそうにないですね」

「流石はアグル殿か。手際が良い……」


敵に回すと面倒なタイプだろう。

力任せに突っ込んでくるやつのほうが何倍もマシというものだ。

気づかれずに背後を取られ、じわじわと情報をバラされて最終的に四方を固められた状態で攻撃を受けるのだ。

逃げ道もなく。


正門側で大きな爆発が起こりにわかに騒がしくなってきた。


「大砲隊、射撃用意!撃ったらすぐに門へ砲撃して突っ込むぞ!」

「撃て!」


一発の砲弾を撃ったかのようにピッタリと砲撃の音が合っているが、実際に撃ち込まれているのは10数発。榴弾であるそれは着弾と同時に周囲の建物ごと爆破し炎の海を生み出した。

直後に発光信号によって目標命中の合図が返ってくる。


「突入!」


再装填中の大砲隊に変わり、魔導砲隊が即席の門をぶち破り……その中へと魔導車と魔導三輪が次々に突入していく。

見張りが壊滅しているので上からの攻撃は皆無で、丁度正面の門へと集まろうとしていたエフェオデル兵達の真横へと出た。


「そのままブチかませえぇェェェ!!」


止まれないのならば、その耐久性を使って突っ込めば良い。

魔導車……と言っても戦闘用に改造されたそれは魔導戦車と言えるだけの装甲を持っている。

当然重装歩兵であっても、突然現れたものに対して対処することもできずに吹き飛ばされ、轢き殺されていった。


身軽な魔導三輪は魔法とライフルによる射撃で少しずつ兵力を削っていきつつ、脇道へと入り姿を消す。


「大砲隊反転!目測で撃て!」


突然の襲撃に慌てているエフェオデル兵だったが、すぐに体制を立て直して向きを変えた魔導車へと大盾を構えながら走ってくる。

しかし……。

大気を震わせる轟音とともにそれらは一瞬で消し飛ぶ。

そもそもが人に向けるようなものではないのだ。幾ら頑丈な鎧に身を包み、頑丈な盾で身を守っていようがそんなものはお構いなしにすべてを吹き飛ばす。


その背後から今度は魔導三輪部隊が魔法を浴びせかけて行く。

地味だが泥沼を足元に作られ、自身の装備の重さで勝手にズブズブと沈んでゆく。

魔法が出来るものはそれでも対抗して抜け出そうとするも、そういった者達はライフルによる狙撃で沈んでいった。


彼らの大砲を使う暇もなく、数十名の兵たちはそのまま地面へと吸い込まれていく。


「装備が仇となりましたな」

「頑丈には頑丈だが重い。もし、それを利用するとすればどうするか……それを考えた時これを思いついた。深くすれば勝手に息ができなくなるまで沈んでゆく」

「ディノス様は色々と思いつかれますな……。足止めでしか無かったこの魔法を攻撃に転用するとは」


今回はうまく行ったが、対策がないわけではない。

出来た瞬間に凍らされたりすれば意味が無いのだ。エフェオデルの戦い方を見て魔法を活用している様子があまりなかった為に出来た戦法だった。


アグル隊は既に中央へと進んでおり、将軍の部隊は正面突破を果たし、次々とエフェオデル軍を蹴散らしていた。

当然ながら一番火力が集中したために無傷とはならず、命を落としたものたちも居る。

ディノス隊にも投げやりの攻撃を受けて数名負傷したものたちが居る。


「よし、手当が必要なもの達は後方へと下がり治療を受けろ。無事なものたちはこのまま中央へ進軍する。アグル隊からの報告はまだか!」

「こちらに!砦の壁内部で動き有り。多数の人質を取り立て籠もっているもよう!数が多すぎて攻撃ができません!」


ディノスも恐らくそうしただろう。

敵の攻撃を防ぐための肉盾、それも自分達の国民、守るために……救うために来た者達が彼らを傷つける訳がないのだ。


「門が開いたぞ……!」

「……なんだ、あれは……」

「卑怯者め……!」


白く荘厳な門が開き、中から荷馬車が現れる。

その馬車にはぐるりと裸の女性と子供達がくくりつけられており、攻撃しようものなら彼らに当たってしまう様になっていた。


流石にこの状態で攻撃をすることも出来ず、アグル隊も手をこまねいている。

ディノスとしてももろともにという選択肢は使えない。

報告によれば幌の中にも人質が居るようで、中だけを狙えばいいというものでもないようだ。


馬車は2台しか無く、向かう先はエフェオデルへ続く道。

ここから脱出しようとしているのは明らかだが、逃がす訳にはいかない。

砦の方で飛竜隊による制圧が始まったようで、激しい爆発音が響いている。

向こうもまだ敵は残っているということか。


「少数のみで撤退するつもりか……」

「ならば、あの中にいるのは立場が上の者だろう。捕らえれば情報を吐かせることが出来るぞ」

「は、しかし……どうされますか?攻撃ができず女子供が殺されてしまうのを黙ってみているわけにも……」

「ふむ……飛竜隊から2匹こちらに寄越してくれ、前後を固める。アグル隊は急ぎこの地点で待ち伏せさせ、我々は横を固める。大砲は使わずライフルか弓を使え」


作戦を伝え、それぞれへと伝令に走ってもらう。

それまでは時間稼ぎでディノス達がこいつらの歩みを遅くする。

前後を魔導車で固め、脇は魔導三輪が狙っている。中から外はほとんど見えていないようで、時折人質の間で幌がめくられているくらいだ。


「止まれ!逃げ場はないぞ、投降しろ!」


呼びかけには答えない。ゆっくりと馬車を進め、それに合わせて魔導車を後退させる。

こちらを攻撃できないと思ったのか何も言わずに馬車を進めようとする彼らに対し、ディノス達は投降を呼びかける事だけで対処していた。


もう少しで橋を抜けてホーマ帝国を脱出出来るという所で、飛竜隊が前後を塞ぐ。

入れ替わるようにしてディノスの大砲隊はその後方へと付き、砲身を向けた。

この状況に人質たちも運命を悟ったのか悲鳴を上げて拘束をとこうと必死だ。


「このままここを通す訳にはいかない。それでも尚進もうとするならば……攻撃する」


飛竜の口に炎がチロチロと見え始める。

エフェオデル兵も馬車を止めてどうするか決めあぐねているようだ。

が、返答があった。


「出来るのか?自分達の民を殺してまで?逃げることが出来たらこいつらは解放してやろう。それでどく気はないかね?」

「貴様らの拘束が最優先だ。逃げることなど許さん」

「無理だなでなければこうしてここまで来たりはしないはずだ。ちがうか?……それ以上こちらに近寄るな!それ以上動いたら人質を殺す!」


周りから近寄ろうとした歩兵達を見つけたのか、エフェオデル兵が叫ぶ。

やはり説得している間に近寄ることは出来ないようだ。

……しかし。


その馬車の下、荷馬車の床下の地面の下から兵士が出てくる。

アグル隊だ。

事前に作戦を伝えた時の通り、この地面の下へと潜っていてもらい、荷馬車の下をくり抜いて中に居る兵を落とすつもりだったのだ。

安全を考えて中に居る兵は中央部分にいるのは確定だろう。その周りを人質で固めていれば、どこからか攻撃が来た時にまず人質が死ぬ。

攻撃できるのは上か下かしかないが、上は幌の為乗ればすぐにバレるのだ。


そこで下だ。

床板をごっそりと引剥して中に居る者達全員を落とす。

兵士が入ってた穴の中へと落下するのでダメージは有るが、エフェオデル兵の意表を突くにはそれしか無いだろう。

説得しながら少しずつ挑発し、向こうがイライラし始めた所で合図を送る。


馬車の下に居るアグルが手振りで合図を出し、兵士たちは一斉に魔法を唱えた。

射程は短く、狭い範囲のみを高温で焼き切る……地球で言えばガストーチの様なものだ。

それが四角い形に一気に吹き出し床板が落ちる。


「なっ!?」

「ぐあっ!」


数名の裸の人質とともに鎧を着込んだエフェオデル兵が落下し、穴の底で起き上がれずにジタバタしている所を鎧の隙間を狙って槍が突き出された。

手足を封じられ、魔法封じの首輪をはめられた後、馬車で脱出しようと試みていた5人のエフェオデルの隊長や指揮官クラスの人間は生きたまま捕らえることに成功し……同時にほぼ無傷でくくりつけられていたり、馬車の中で盾として押し込められていた人質は解放された。


□□□□□□


「将軍、砦を奪還しました。死傷者は出ましたが、大半を救出することに成功し、今回攻めてきた敵の頭を捕まえることにも成功しました」

「こちらの被害は想定よりも少ない。これだけの人数差でよくやってくれた。周囲を警戒しつつ交代で休憩を取れ。エフェオデルに通じる道は封鎖しろ」

「救出した者達はどうしますか?救い出せたとはいえほとんどが市民で貴族階級はほとんど殺されているようです。慰み者となって傷ついているものたちも多く、建物も魔物の被害などにあって殆どが破壊されております。……それと、不衛生な状態が続いた結果、病気が流行り初めの兆候を見せているようで、あまり時間もありません」


街全体を虱潰しに見回りをしていると、隠れていたエフェオデル兵も多く居て、その大半は生きて捕まえることが出来た。

現在近くの建物の中で拷問中だ。


一時的とはいえ魔物もこの街をうろついていた上に、死体を放置したりこれ見よがしに飾っていた結果、本来ならば発生しなかったはずの病気なども出てきている。

そうでなくともほぼ全員が衣服を剥ぎ取られ、身体を覆い隠すものも無く押し込められていた為に体調を崩しているものも多い。

また強姦被害にあったものたちは裂傷なども激しく、直ちに治療が必要な状況だ。

数名は治癒を使えるものが居るが、全く手が足りない。


貴族に関しては女性や子供に関しては生きている率は高かったが、かなり乱暴な扱いを受けておりこちらも相当良くない状況となっている。

特に呼びかけなどに対して何の反応も示さなくなってしまったものも多くあり、心に深い傷跡を残していることが伺えた。


彼らに与える服も食料も十分になく、このままでは数日とはいえ帝都へ送り届ける事もできず、かと言ってこの場で生活させるということも難しい。


門を失ったクラーテルの街は無防備を晒しており、いつまた魔物たちの襲撃にあうか、エフェオデルの侵攻があるかも分からない。

その為の警備としても兵士を動員することとなり、ただでさえ人が足りていない中で兵士の疲労は溜まるだろう。


「エフェオデルの奴らめ……これを狙っていたのか?」


多大な被害を出しつつも、その場所を動けない状況を作り出す。

毒を入れるという方法も水瓶となっているこのクラーテルを無人にするわけにはいかない原因となっているのだ。

一度ここを無人にして一気に立て直し、備えを作ることが出来ればここまで苦労はしない。

おかげでここで立ち往生し、動くに動けない状況となっていた。


飛竜隊の1人を一度帝都まで下がらせて報告させ、迎えの馬車などを寄越してもらうことにした。

それでも生き残りの人数は多く、衣服と食料をもってきてもらうにしても帝都の方でもそこまで大量には出せないだろう。


ともかく。奪還作戦自体は成功した。

これをもってディノスの地位は確固たるものへと変わり、またクラーテルを救った英雄として帝国中に名が知れ渡ってゆくのだった。


□□□□□□


帝都では報告を受けて頭を悩ませていた。

避難民として受け入れたいのはやまやまだが、まずは治療や服などが必要となり、合わせて食料もとなると大分辛い。


なぜかと言えば水がほとんど使えなかったがために、料理を行うことが殆どできず帝都内ですら食料が不足気味だったのだ。

同じく衣服に関しても糸を作ったりする時に水を必要とするし染色も出来ない。

治療を行えるもの達に関しても帝都で起きた毒を含んだ水のせいで、飲んでしまったものたちが次々と運ばれてきてこちらも手が足りていないのだ。

下痢などで済んでいるものはまだいいが、重症になっているものに関しては既に死者まで出ている。


さらに言えば家畜や農耕にも影響が出ており、余裕があるというわけでは決して無い。

他の街などから取り寄せても居るが……それも総数から見れば微々たるものだ。


そんな状態があったことで、ここに来て盛んにハンターに対しての依頼が増え、彼らは食料を確保するために奔走することになる。

魔物は個体数が多いことと、身体が大きいために量が取れることが一番の理由だが、その他にも植物系の魔物であれば水を確保することも可能なのだ。

今まであまり積極的にハンターを活用してこなかった帝国だったが、ついに彼らの有用性を知ることとなる。


対人ではなく対魔物ということで、魔物を狩る事に特化した彼らは独特の戦法や道具を駆使して立ち向かう。

多人数でも上手く連携を取り合うことが出来るのは、クランという大きなグループに複数のパーティーがあり、それらが時には共に戦う事でそれぞれの特性などをよく知り尽くしているからだ。

クランに所属しているメンバーの特技や特性、人格などを考慮するクランの長。

彼が仕切り、軍に負けないレベルの連携を取り、個々の得意分野を上手く活用しながら的確に追い詰めていく……。こういった動きは個を封じて全体を1つの個と見做す軍にはなかなか出来ないことだろう。


飲水は海から来る。

港を持つ街へ海水を蒸留して水を作り出させ、それを大量に買い取っていた。

湖等では一度検査をしてから問題ない所で同じように水を確保していき、飲料水等の確保も目処がつく。


病人はどうしようもないが、こういった努力の末なんとか保っているのが現状だ。


しかしそれでもクラーテルは何としてでも復活させなければならないのだ。

急ぎ新しい領主を決め、建築師や追加の人員、物資等を送り込まなければならない。

その上で病人やけが人を帝都へと入れて治療を行う。


難しいがなんとかするしか無いのだ。


伝令の竜騎士が到着してから1日。全力で用意をして第一陣がクラーテルへと向かう。


□□□□□□


「物資が届きました。数は少ないですが、向こうもいっぱいいっぱいの様です」

「仕方あるまい。追加の人員が来ただけでも有り難いのだ、食料や水だって向こうは足りなくなっているはずだ……」

「そのようです。それと、皇帝陛下からということでこれを預かったそうです」


手紙が入る分ほどの小さな箱。

しかし手順を踏まなければ開くことのないもので、重要な文書などを運ぶのに使われている物だ。

伝書箱と呼ばれ、木箱にしか見えないが頑丈でこじ開けるのは困難なもの。

その中に入っているのは皇帝からの文書だった。


次期クラーテル領主の指名、クラーテル復興へ向けての指令、そして……クラーテルを前線基地としたエフェオデル侵攻作戦に関して。

流石にこのままでは引き下がれ無いと判断したのだろう。

事実、かなり近いところまで食い破られたという事には変わりないのだ。

クラーテルの報復としてエフェオデルへの全面戦争を開始するという内容がそこには書かれていた。


「指揮官を任されているもの全員を呼び出せ。全員が揃い次第重大な発表を行う」

「はっ!」


帝国の出した答えは……領主として軍の司令、指揮官をするものが一時的にあたり、領地の経営を任せて復興と同時に街全体を要塞化。

捕らえられていた市民たちはその労力として使いつつ、対価を払う。

領地内で出来る食料確保などにも力を入れて、クラーテルそのものを最前線の基地として扱い、軍を駐屯させ……準備が整い次第すぐにエフェオデル領内へと侵入してこれを制する。と言うものだ。


人員を送り込み、復興を最速で進めるには軍の設備として扱い、市民達は準軍人として兵力には数えないもののそれを支えるための労働力として徴用する。

その場で食料を生み出し、防御を整えさせるのが目的だった。

足りない分の職人や魔法使い達も送り込み、これから急ピッチで再建が進んでいくだろう。



ちょっとばかし難産でした。

明日から泊りがけで出かけてくるので10日くらいまで更新おやすみです。

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